中村橋之助、南果歩、宮崎吐夢が現代版ギリシャ悲劇を熱演~舞台『オイディプス REXXX』フォトコールをレポート
-
ポスト -
シェア - 送る
『オイディプス REXXX』の一場面。オイディプスを演じる中村橋之助(左)と、イオカステを演じる南果歩
『オイディプス REXXX(オイディプスレックス)』が2018年12月12日からKAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で開幕する。開幕前日の11日、報道陣向けに舞台の一部を上演するフォトコールが行われた。
父を殺し、自らの産みの親と夫婦となった若き王が、破滅への道を転がり落ちるまでを描いたギリシャ悲劇『オイディプス王』。杉原邦生演出のもと、オイディプスを四代目中村橋之助、オイディプスの妃・イオカステなど4役を南果歩、イオカステの弟・クレオンなど3役を宮崎吐夢が演じている。本作のタイトルにある『REX』とは王様の意味で、この3人のキャストと、物語に繰り返し登場する「三つの道」の象徴として名付けられている。
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
この日公開されたのは2場面。まずはプロローグ。全身黒い服を着て、黒いサングラスをかけた6人の「コロス」(古代ギリシャ劇の合唱隊)が、音楽に合わせてラップ調でセリフを話すという斬新な場面だ。確かに「ギリシャ悲劇」のそれではあるのだけれど、スタイリッシュでテンポがいい。主宰劇団KUNIOの他にも、古典歌舞伎を独自の見せ方で上演する木ノ下歌舞伎などでも高い評価を得てきた杉原の演出力が光る。
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子。右はクレオンを演じる宮崎吐夢
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
続いて、「自分を陥れようとしているのではないか」という疑念を抱いたオイディプスがクレオンを詰問し、イオカステが仲裁に入るシーン。劇場の中央に舞台が設置され、観客が四方から観劇するという特殊な舞台であるので、俳優たちはとにかく動き回る。
歌舞伎以外の舞台が今回初めてとなる中村橋之助だが、堂々とした立ち居振る舞いと明快な台詞回しで、底力を見せ、芝居を引っ張っていた。イオカステを演じる南果歩と、クレオンを演じる宮崎吐夢も、十二分に存在感を見せつける。フォトコールでは公開されなかったが、南は他にも神官、羊使い、第二の使者の3役を演じ、宮崎は盲目の預言者・テイレシアス、第一の使者の2役も演じる。杉原によれば、これは作品が初演された紀元前427年ごろの上演形式に則ったスタイルだという。
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
フォトコール後、出演者が取材に応じた。
初日を前にした心境を問われた橋之助は「自分にとって新しいことばかりで毎日が充実している。お客様に見に来てよかったなと思っていただけるように、そしてアンケートで橋之助という単語が一番出るように全力で務めたい」と意気込む。
南は「1か月以上稽古をやって、キャスト・スタッフ問わずいいチームワークができた。個人的にこの作品を復帰作を位置付けているので、本当にいい作品に出会えたなという喜びがある」と笑顔だった。宮崎は「これまでギリシャ悲劇について全く知らなかったが、こんなに面白く分かりやすいものだとは思わなかった。見ていただいたお客様にも面白さを伝えたい」と話した。
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
本作が初のストレートプレイ出演となる橋之助は、歌舞伎との違いについて、「歌舞伎だと先輩方のものを正確になぞることを意識することが多いが、今回は1か月かけてお芝居を作った。初めての経験だらけで、自分の思ったことを伝えられる楽しさを感じた。4歳から歌舞伎をさせていただいて、これまでほとんど歌舞伎のことしかやってこなかったが、この稽古中はスポンジのように、白いキャンバスのようになって、皆さんに色をつけていただいた。歌舞伎役者というより俳優としてみてほしい」と話す。
それに対し、南果歩も「まるで本物の王子のような、持って生まれて品格がある。これは小さい頃から培ったもの。頼り甲斐がある年下の“夫”です」と話し、橋之助を信頼している様子だった。
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
『オイディプス REXXX』のフォトコールの様子
最後に2018年を振り返る質問があった。
橋之助は「今年7月で全ての襲名披露が終わった。今回は初めてストレートプレイだが、これからも歌舞伎だけにとらわれず、いろんなことに挑戦したい。2018年の締めくくりとして、橋之助としての第一歩を踏み出すメインイベントとして、命をかけて本作品を頑張りたい」と語り、宮崎は「今年は6本のお芝居に出演した。最後の最後に皆さんにお会いできて、いい一年だった」と振り返った。
南は「ギリシャ悲劇どころではない激動の一年だったが、本当に一年の最後に素晴らしい作品に出会えて、やっと今年を終えることができる。去年、今年は人生最悪の時だったが、どうにかここまで来ることができた。感謝の気持ちでいっぱい。私と同じように乳がんやうつ病といった経験をされた方や、劇場に足を運んでくださった方に、私がこうして復帰して、生きているということをお見せしたいと思う」と話した。
『オイディプス REXXX』に出演する、宮崎吐夢、中村橋之助、南果歩(左から)
上演時間は約1時間50分(途中休憩なし)。お見逃しなく。
取材・文・撮影=五月女菜穂
【関連記事】
・中村橋之助と南果歩が描く「オイディプス王」は、躍動感溢れる新たな切り口の物語!
・2500年後の今、ソポクレスが蘇る?! 杉原邦生×河合祥一郎が『オイディプスREXXX』を語る
公演情報
■翻訳:河合祥一郎(光文社古典新訳文庫「オイディプス王」)
■演出:杉原邦生
■出演:
中村橋之助 南 果歩 宮崎吐夢
大久保祥太郎 山口航太 箱田暁史 新名基浩 山森大輔 立和名真大
■日程:2018 年12 月12 日(水)~12月24 日(月・休)
■会場:KAAT 神奈川芸術劇場 <大スタジオ>
■
6,500 円(全席指定・税込)
U24
シルバー割引6,000 円(満65 歳以上)