上川隆也が魅力を語る音楽朗読劇『VOICARION』ーー「超豪華キャスト×生演奏による美しい音楽×上質な演出」関西では初上演
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上川隆也
3月16日(土)〜3月17日(日)大阪・サンケイホールブリーゼにて、音楽朗読劇『VOICARION Ⅳ Mr.Prisoner』が関西初上演されることが決定した。『VOICARION(ヴォイサリオン)』とは、音楽朗読劇創作の第一人者である藤沢文翁が原作・脚本・演出を手がけ、東宝株式会社とタッグを組んで贈る「超豪華キャスト×生演奏による美しい音楽×上質な演出」の三拍子を揃えたプレミア音楽朗読劇。
今回は2016年に3日間限定で東京・シアタークリエで上演された『Mr.Prisoner』の再演となる。キャストは初演と同じく、実力者俳優の上川隆也、声優界の至宝、山寺宏一と林原めぐみ。己の声のみで物語を紡ぎ出し、生演奏や特殊効果でオーディエンスにイマジネーションを与える一流エンターテイメント作品として、大きな話題を呼んだ。
舞台は19世紀のイギリス。ロンドン塔(Tower of London)地下3階の独居房に収容されている「絶対に声を聞いてはならない囚人」をめぐるストーリー。生演奏をする音楽家は、作曲家も含めてジュリアード音楽院の卒業生が手がけるため、ハイクオリティの演奏が期待できる。
去る12月15日、主演俳優・上川隆也が来阪、記者懇談会を行った。『VOICARION』の魅力と再演の喜びを、丁寧に言葉を選びながら語っていた。
◆客席のイマジネーションのため、舞台の空間全てが注ぎ込まれた作品◆
パリッとしたダークスーツに身を包み、登場した上川隆也。
まず、会見の冒頭で「(再演を)望んではいましたが、正直実現するとは思っていなかったので、僕らにとっては嬉しいことでもあり、作品に対する責任感や緊張感を感じている部分もあります。ですが、山寺宏一さん、林原めぐみさんという、僕自身も大変尊敬している、演者として大変な技術や志を持っている方々とご一緒できる機会を再び得られたことはとても嬉しいですし、初演で感じられた3人でのお芝居のユニゾンをさらに強く感じられる、そんな舞台を作り上げて参りたいと思います」と挨拶。
質疑応答では『VOICARION』の朗読劇としての魅力を聞かれ、「舞台の空間全てをお客様のイマジネーションのために、出来得る限りを設えてお届けする、そのための努力やエネルギーが注ぎ込まれた作品だと思っています」と答え、さらに自身は朗読劇を比較できるほど見聞きしていないが、と前置きをしたうえで、「本来でしたら朗読劇は声で作品をお届けする形態が基本だと思いますので、声だけがそこにちゃんとしっかり存在していれば、もしかしたら演者が姿を表す必要がないのかもしれないんですよね。でも『VOICARION』は、演者はきちんと役柄に合った衣装を身に纏いますし、加えて演出効果や視覚効果など、照明や特殊効果機器を使ってふんだんにそれを盛り上げて、お客様により物語に没入していただける工夫を随所に凝らしてお届けする形をとらせていただいております。これは“舞台”という形態を十全に活かし、朗読劇をよりエンターテイメントとしてお届けするものと考えている、藤沢文翁さんのお気持ちや演出意図が大きく反映されたものでしょうし、僕らもそうした設えや演出効果によって、より物語の中に没入していける感覚も味わえる。そのことからも、お客様との一体感は普段僕らが努めている舞台と大差ない作品だったと記憶しているので、朗読劇と銘打ってこそいますが、普通の舞台作品としてお届けしても何ら遜色のないものだと僕は思っています」と話した。
◆お二方と共演できることが、信じられないほどの幸運◆
そして上川は、初演で今作への出演を決めたキッカケが「山寺宏一と林原めぐみと共演できる」という理由を1番に挙げるほど、2人のことを役者として尊敬しているという。
再び2人と共演できることについての想いを問われ、「初演の時はお二方と共演できることが信じられないほどの幸運だと思いました。僕はお二方に比べれば、声でのお仕事は全くもって劣る演者ですので、上演期間中はとにかくお二方についていくことだけを考え、ご迷惑をおかけしないようにと思って努めさせていただきましたが、それでも今回またご一緒できることは、とてつもなく嬉しく思います。また、初演を経たことで、お二方と個人的な交流を得ることもできました。2年間という時間で、人間関係として変化したものもあると思うんですね。それは間違いなくお芝居にも反映されると思います。きっと今回の『VOICARION』が、初演とは少し違ったものになるのではないかなという予感とともに、今回の再会を楽しませてただきたいと思います」と、少し緊張した面持ちで答えていた。
続いて2人の魅力を聞かれた際には、「山寺さんはあれだけのキャリアと実績をお持ちでありながら、決してご自身を過大に評価されないんですね。常に自問自答しているような方です。そのご自身の中に課している切磋琢磨の気持ちは、ほんとに頭が下がるばかりです。一方で林原さんは、どうやって役になっているのか、傍で見ていてもみてとれないぐらい、瞬時にその役柄と寄り添ってしまわれるようなお芝居のやり方をなさっていて、ちょっと顎が落ちそうになるぐらいなんですね。それだけ世界観に没入されて、しかも我々がけどるような瞬間すらもない暇の中で成し遂げてしまわれる、演者としての底力を前回も間近で垣間見せていただけて、そのお二方の全く違うものながら、それぞれお芝居に向けられる姿勢やエネルギーはとても刺激になりましたし、今でもどこかで“かくありたい”と思っている部分でもあります」と語った。
そして「何よりお二人の“凄さ”を、僕はこれまで十二分に様々な作品で受け止めておりましたので、その方々と役者として合間見えることができることはやはり稀有な機会だと思いました。声優さんのお仕事の現場と、僕らが普段お仕事させていただいてる現場の接点って、なかなか得づらいんですよね。でも今回こうした機会が幸いにも得られたものですから、それは僕としてもありがたいこと以外の何ものでもなかった。この機会を見過ごしたくないと思いました」と、改めて2人と共演できることへの熱い想いを口にしていた。
◆声だけで2役を演じ分ける◆
また、上川は今作で「絶対に声を聞いてはならない囚人」に興味を持って調査する、英国文学史上、最大の人気を誇る文豪チャールズ・ディケンズと、「絶対に声を聞いてはならない囚人」の正体を知る男クライヴ・ヘイスティングス卿の2役を演じる。
全く正反対の役柄とも言える2役を演じることへの工夫を質問され、「通常僕らが舞台や映像で2役を演じさせていただく時には、ビジュアルから全て変えていくことができるんですね。なのでお客様にもその演じ分けはよりわかりやすく受け止めていただけますし、こちらの心情+αを盛り込むことができるんですよね。でも声だけの芝居となると、もちろん扮装替えもございませんし、さらには我々は台本を持って、舞台に佇んだままの演技となりますので、より僕ら演者の想像力が必要とされるんだろうと思っているんです。もっと巧みな方々になると、いろいろな技術を使ってたくさんのお役を演じ分けることもできるんでしょうが、私にはそれほどの技量はございませんので、まずはビジュアルや視覚的に訴えることをそぎ落とした状態で、それぞれのキャラクターの心情にどう寄り添っていけるのかしか手札がないんですよ。なので、どう演じ分けるかと言うと、「自分の中に2人の人物を用意します」しかないんですよね。そこからスタートして、細部へ造形を施していく作業になるだろうと思います」と身振りを交えて話していた。
体力面ではどうかとの問いには「やはりフィジカルに動き回るものとは違うのは間違いないんですけども、でもカーテンコールを迎えた時に生まれる充足感は、通常のお芝居と何ら差異はございませんし、演じるというエネルギーにおいても比較のできないものだと思っています」と答えていた。
そして、「一体どんなテイストの作品か?」と聞かれた上川は「難しいですね(笑)。もちろん謎解きの要素を含んでもいますし、一方でハートフルな人間愛の物語でもあります。『オペラ座の怪人』と『足長おじさん』を足して2で割ってちょっとダークな絵の具で色をつけたような感じですかね(笑)」とユーモアを交えて回答。場を和ませた。
さらに「声をキープするために日頃から気をつけていることは?」という質問には「ないです。あまり声で難渋したことはございません。普段通りに過ごしていると、風邪をひかないまま過ごせているということになるみたいです」と回答し、普段から生活に留意していることを伺わせた。
上川隆也
関西初上演となる今作。ぜひ素晴らしいエンターテイメントをその目と耳で目撃してほしい。
プレミア音楽朗読劇『VOICARION』の
取材・文=ERI KUBOTA 撮影=田浦ボン
公演情報
2019/3/3(日) ~ 2019/3/10(日)
シアタークリエ (東京都)
大阪公演
2019/3/16(土) ~ 2019/3/17(日)
サンケイホールブリーゼ (大阪府)
原作・脚本・演出:藤沢文翁
作曲・音楽監督:小杉紗代
ピアノ:斎藤龍
ヴァイオリン:鷲見恵理子
チェロ:松本エル
パーカッション:稲野珠緒