般若の目に涙、初の日本武道館ワンマンで魂の40曲を全力投球
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般若(撮影:cherry chill will.)
般若がキャリア初となる東京・日本武道館でのワンマンライブ「おはよう武道館」を1月11日に開催。会場は日本全国から詰めかけたたくさんのファンで埋め尽くされた。
開演後にオープニングムービーとして上映されたのは、119歳になった般若と、崇勲が演じる76歳の息子、Yellow Pato(BAD HOP)演じる23歳の孫が登場する、約80年後の般若家の様子。すっかり老人になって現在の姿は見る影もなく、かつて日本武道館でライブをやったことも孫から疑われている般若が、心臓発作で倒れてしまう。この芝居を2度繰り返し上映したのち、般若のこれまでの半生を記録した写真がまるで走馬灯のようにスクリーンに流れ、黒いスーツに身を包んだ般若がステージに登場。マイクスタンドの前に立ち、この日本武道館公演に懸ける素直な思いを赤裸々にリリックにした「ぶどうかんのうた」を、これから行われるライブへの決意表明のようにラップした。
曲が終わり、彼の気合みなぎるステージングに日本武道館が大歓声に包まれると、続けて般若は「気が付いたら武道館にいた」とリリックを変えて「ここにいる」を披露。コミカルなオープニング映像の雰囲気とは打って変わって、緊張感のあるステージが展開された。その後も「生きる」「世界はお前が大ッ嫌い」「向こう側」「春一番」「FLY」「3:56」と、般若はシリアスでドラマチックな曲を連発。ステージには花道もなく、般若の姿を映す両サイドのスクリーンと彼を照らす照明のみのシンプルな演出で、ラップだけを武器にして日本武道館を埋め尽くす観客を魅了していった。
「3:56」が終わると般若が舞台袖に退場し、再びスクリーンでムービーの上映がスタート。この映像内では、裂固が演じる閻魔大王のもとに、裁かれる亡者としてKEN THE 390と般若が登場した。KEN THE 390は「フリースタイルダンジョン」の審査中にLiLyの胸元を覗いていた罪で地獄行きに。般若は「23歳のときにライブ中に会場のスピーカーに小便をして出禁になった件」と「40歳のときの日本武道館ワンマンで序盤に暗い曲を歌いすぎて観客にドン引きされた件」で裁かれることになったが、般若は「俺このままじゃ終われねえっすよ。武道館がひっくり返るくらいの曲いっぱい持ってきてるんすよ」と熱く訴え、閻魔大王から「お前は地獄でも邪魔だ」と現世に返されることになった。
死の淵からよみがえった般若は、序盤とは真逆の上下ホワイトのジーンズという出で立ちでステージに登場。「理由」「はいしんだ」とアッパーチューンを畳み掛け、会場の空気を一変させた。さらにMACCHO(OZROSAURUS)とNORIKIYOがステージに現れ、「Beats&Rhyme」がスタート。これを皮切りに、昭和レコードの盟友であるSHINGO★西成とZORNが参加した「HUNGRY」など、ゲストを迎えてのお祭り騒ぎが幕を開けた。そして「フリースタイルダンジョン」の初代モンスターであるCHICO CARLITO、T-Pablow(BAD HOP)、DOTAMA、漢 a.k.a. GAMI(MSC)、サイプレス上野(サイプレス上野とロベルト吉野)、R-指定(Creepy Nuts)が全員集合し、「MONSTER VISON」に突入。7人の実力派によるマイクリレーに会場は異様な興奮に包まれた。続いて登場したt-Aceは、般若と共に「ダレも知らないブルース」を歌唱。オーディエンスも共に歌い、会場に一体感がもたらされた。
t-Aceの退場後、般若は「ここでいい知らせと悪い知らせがあるんですけど、いい知らせは、このあと俺がずっと1人でやるっていうこと。悪い知らせは、このあと俺がずっと1人でやるっていうこと」と、これ以降もうゲストが誰も出演しないことを明言。続けて「誰だっけ? 俺の武道館は
いじめを受けた実体験を曲にした「素敵なTomorrow」や、2004年発表の1stアルバム「おはよう日本」からの「タイムトライアル」をラップし終えた般若は、照明係に「もうちょっと明るくしてくれないかな。お客さんの顔が見たいんだ」と要求。明るくなったアリーナに、妄走族時代からライブに来てくれていた宇都宮在住の女性の姿を見つけた彼は「同窓会みたいだ」と感慨深げに語った。そして彼は続けて「ここに来るまで時間かかってゴメンね。アイドルやってりゃよかった。もっとメジャーでやってりゃよかった。いろんな人とケンカしまくっちゃってゴメン。でも後悔してないわ」と観客に話しかけ、かつての“何者でもなかった”時期の自分の思いを生々しくつづった「何者でもない」を披露。さらに、「今やらなきゃいけない曲だから」と言って日韓関係をテーマにした「土足厳禁」をラップし、「俺はこの日の丸の下でこれを歌うのが夢だったんだよ」とつぶやいて「オレ達の大和」「ゼロ」を歌った。
ライブDJを務めるDJ FUMIRATCHによるDJパフォーマンスを挟み、ライブはいよいよ終盤戦へ。般若は観客と共に拳を振り上げながら「スーパースター」「やってやる」で高らかに声を張り上げ、「全員歌えるよな!? 歌え!」という彼の叫びに煽られて「何も出来ねえけど」で会場に観客の合唱が響き渡った。ここで般若は「2018年はツアーをやってみたけど、とある会場で15人くらいしか人が入らなかったりして、あんまり心が折れない俺だけど、いろいろ考えたよね」と、自身の地方での集客を包み隠さず告白。そんなときに書いた曲であると紹介し、「大丈夫」を披露した。この曲のリリックで彼は、少年時代のつらい記憶を振り返り、それがあったから今があると宣言。最後にはステージに膝をついて絶唱し、「夢の痕」でライブ本編を締めくくった。
アンコールではまず、亡くなった自身の父親について書いた曲「家族」を披露。曲中で観客に「あんときはさみしかったけどさ、今日ここにいる全員、家族だろ?」と問いかけ、大きな歓声が湧き上がった。そのまま「家訓」に突入すると、般若は4歳になった自身の息子・響くんをステージに呼び込んで抱きかかえた。なお、曲が終わったあとで般若が響くんに「今一番カッコいいジョジョのスタンドは何?」と聞いたところ、響くんはパープル・ヘイズと答えていた。
その後「新曲やるか。俺、この日のために作ってきたんだ」と般若がつぶやいたが、実際に始まったのは代表曲の1つである「やっちゃった」。しかも近年のライブでほとんど披露されていなかったフルサイズでのパフォーマンスが行われ、意表を突かれたオーディエンスはこの日一番の盛り上がりを見せた。
このとき般若は「俺が狂ったのは長渕剛のせい。一生尊敬してる。兄貴がいなかったら俺は般若になってなかった。妄走族がいなかったら俺は般若になってなかった」「死のうとしたこともあったけど、がんばってここに来れて本当によかった」と感謝の気持ちを言葉にし、もうすぐライブが終わってしまうさみしさを何度も口にしていた。「乱世」では、客席から沸き上がる歌声を聞いた般若が「すばらしいよ!」と叫び、目頭を押さえてひざから崩れ落ちた。そして「修行し直して、マイク1本でまた帰ってくるよ。マジでありがとう。母ちゃん、産んでくれてありがとう」と語った彼は、最後に涙をこぼしながら力を振り絞って「あの頃じゃねえ」を披露。気迫みなぎる「あの頃じゃねえ 一番強えのは 今だぜ」というラップが日本武道館に響き渡り、全40曲に及んだライブは感動的なフィナーレを迎えた。
なお般若はこの日、日本武道館公演のセットリストに入りきらなかった曲で構成するワンマンライブを3月23日に開催することを告知した。会場は原点回帰の意味も込めて、彼の地元である東京・三軒茶屋のHEAVEN'S DOORが選ばれた。
般若「おはよう武道館」2019年1月11日 日本武道館 セットリスト
01. ぶどうかんのうた
02. ここにいる
03. 生きる
04. 世界はお前が大ッ嫌い
05. 向こう側
06. 春一番
07. FLY
08. 3:56
09. 理由
10. はいしんだ
11. Beats&Rhyme(ゲスト:MACCHO / NORIKIYO)
12. HUNGRY(ゲスト:SHINGO★西成 / ZORN)
13. MONSTER VISON(ゲスト:CHICO CARLITO / T-Pablow / DOTAMA / 漢 a.k.a. GAMI / サイプレス上野 / R-指定)
14. ダレも知らないブルース(ゲスト:t-Ace)
15. 最ッ低のMC
16. ライン~境界線~
17. 素敵なTomorrow
18. タイムトライアル
19. 何者でもない
20. 土足厳禁
21. オレ達の大和
22. ゼロ
23. 君が居ない
24. その男、東京につき
25. 路上の唄
26. 関係あんの?
27. スーパースター
28. やってやる
29. ビルの向こう
30. 何も出来ねえけど
31. 大丈夫
32. 夢の痕
<アンコール>
33. 家族
34. 家訓
35. やっちゃった
36. MY HOME
37. 心配すんな
38. サイン
39. 乱世
40. あの頃じゃねえ
般若ワンマンライブ 「三軒茶屋からこんにちは」
2019年3月23日(土)東京都 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR