佐藤アツヒロ主演、鈴木勝秀脚本・演出の『hymns(ヒムス)』が11年ぶりに上演 中山祐一朗、山岸門人、陰山泰、新納慎也が共演
(左から)佐藤アツヒロ、中山祐一朗、山岸門人、陰山泰、新納慎也
2019年4月、鈴木勝秀脚本・演出による、佐藤アツヒロ主演舞台『hymns(ヒムス)』が東京・博品館劇場、大阪・サンケイホールブリーゼにて上演されることが決定した。
本公演は、鈴木勝秀(スズカツ)による脚本・演出で上演した『LYNX(リンクス)』(1990、98、2004年)、『MYTH(ミス)』(06年)に次ぐ作品で、人間の内面を描いたオリジナル3部作の最後の作品として2008年に上演された。2004年の『LYNX』再々演を佐藤アツヒロ主演で上演し、この作品で佐藤と出会ったことによってインスピレーションを得て『MYTH』、2008年の『HYMNS』が誕生しており、スズカツにとっても、佐藤にとっても思い入れの深い作品でもある。
本公演は、モノトーンの世界、シンプルな舞台装置、効果的な照明の中でミステリアスな男たちが繰り広げる心理ドラマで、見る者の想像力を大いにかき立てる物語。2019年版は、5人の男たちの物語としてリライトされ、新演出での上演となる。
主演は、初演に引き続きスズカツの信頼も厚い佐藤アツヒロ。初演において、画家オガワを繊細な心と強い自我をもつ人物として作りあげた佐藤が11年ぶりに同役に挑む。また佐藤は、スズカツ作品には2009年の『フロスト/ニクソン』以来の出演となり、“スズカツ×アツヒロ”の10年ぶりの再会がどのような化学反応を生むのかにも注目だ。
また共演に、一連の作品群の常連ともいえる中山祐一朗、陰山泰、『LYNX LIVE Dub』シリーズにも出演した山岸門人に加え、狂気と正気、悲劇と喜劇を自在に行き来する俳優・新納慎也の出演も決定した。5人の癖のある俳優たちの競演も大きな見どころとなる。
若くして名のある美術展で大賞を受賞するも、今では自己表現として真黒な絵ばかりを描く画家オガワ。そんなオガワと、彼を取り巻く画商、友人、そしてギャンブルで生計を立てる謎の男のやりとりがフラッシュバックのように描かれ、思いもよらない展開を見せる物語。謎の男とは一体、何者なのか……。
脚本・演出 鈴木勝秀 コメント
2008年に上演した『HYMNS(ヒムス)』は、佐藤アツヒロをメインに据えた『LYNX(リンクス)』『MYTH(ミス)』に続く三部作の最後の作品である。あの三部作は、僕のオリジナル作品の中でも、かなり充実した時期のものだったと思っている。なかでも『HYMNS』は、表現者としての決意表明的ニュアンスの強い作品で、非常にポジティヴな芝居だった。
僕はオリジナル作品を書くとき、カットアップとサンプリングを多用するのだが、『HYMNS』のベース・テキストは、それまで書いたオリジナル作品であった。つまり、自分の過去の作品をサンプリングして、それをカットアップの手法で、より自分のエッセンスが濃くなることを目指したのだ。要するに『HYMNS』には、スズカツが凝縮されている。
舞台上の佐藤アツヒロは、『LYNX』で出会った当初から、驚くほど内省的な役者だった。主役であるにもかかわらず、そのほとんどを「受け」を主体とした演技で芝居を構築する。だが見終わったとき、アツヒロの印象が誰よりも強く残っている──それは僕の目指している、"自己主張をしない表現"にとても近い感覚である。僕はそんなアツヒロに託して、『MYTH』『HYMNS』を書いた。
僕の中で『HYMNS』は、「再演したいリスト」の上位に常にあった。初演から十年が経過し、アツヒロが『HYMNS』を書いたときの僕の年令に近づいてきた。そこで、若手画家だったオガワを中年画家にすることで、現在進行系の『HYMNS』を提示しようと考えた。タイトルを『HYMNS』を『hymns』とすることで、2作品の差別化を図った。
新納慎也、中山祐一朗、山岸門人と、僕の世界観を理解し体現してくれる役者も揃った。さらに、『HYMNS』には登場しなかった「ある男」役に陰山泰も加わえて、最強の布陣で臨む。
この企画は、間違いなく僕にとって新たなステップになる。そう確信している。
佐藤アツヒロ コメント
スズカツさんは、僕に内在する心の揺れや葛藤を引き出してくださる。静と動で言うならば、「静」の芝居を導いてくれる作家であり、演出家です。特別な役作りをせずとも、そこに書かれている台詞とその裏にある感情、それを自分の中に流し込んで表現をすることで生まれる芝居を、いつも受け入れてくださいます。
今回、久しぶりにご一緒するにあたり、スズカツさんから「まずは、もう一度『HYMNS』をやる。その先に新しい世界が広がるのではないか」とのご提案をいただき、僕は、その思いに身を委ねることにしました。
そうして、11年の時を経て、『hymns』のオガワを演じることになりましたが、今は、新作に臨むような心境です。そこでは、以前とは台詞の捉え方も変わるだろうし、今の“佐藤アツヒロ”を通してオガワを表現することになります。これまで通り、構えずにやってみようと思います。あくまでも自然に。スズカツさんも、それを望んでいると思うのです。
スズカツ作品では、そこに集う役者も芝居巧者揃いです。稽古でも日々芝居を変え、どこから何が飛んでくるかわからない。だから僕は、ひたすらそれを受ける芝居をします。そして、本番では稽古で共通認識を持った振り幅の中で、お互いに自由に芝居をする。スズカツさんの芝居は予定調和とは無縁のセッションのようです。
その場に居合わせた人だけが感じ、共有することができる芝居。記録に残すのではなく、記憶に残るもの。それが “スズカツワールド”です。こうして、また、その世界に身を置くことができることを、光栄に、幸せに思います。
今回の『hymns』は、いわばエピソード・ゼロ。その先に何が待っているのか、僕自身、楽しみでなりません。
みなさんも、ぜひ劇場で、僕らのセッションを楽しんでください。