笑うことは生きること! トム・プロジェクト『芸人と兵隊』柴田理恵インタビュー
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柴田理恵
劇団チョコレートケーキの古川健と日澤雄介が作と演出を手がけるトム・プロジェクトの新作『芸人と兵隊』が、2月から3月に福岡、東京をはじめ全国を巡演する。昨年上演して好評を博し、主演の戸田恵子が演劇賞を受賞した『Sing a Song』に続く、戦地慰問を背景にした硬派な芝居だ。
日中戦争中に戦地に派遣された慰問団「わらわし隊」。昭和16年春。あるベテラン夫婦漫才師が、中国大陸への慰問の旅に出る。芸人を続けるには、戦争に協力するしか方法がなかったのだ。夫婦や芸人仲間たちは前線近くまで旅を続ける。兵士に笑いを届けることで、再び芸人としての喜びを感じていた。そんな旅も終わりに近付いたある日、慰問団は遂に戦闘に巻き込まれる──。
戦地で戦う兵隊に生きることを伝えようと、命をかけた慰問団の芸人たち。この作品で村井國夫と夫婦役でベテラン漫才師を演じる柴田理恵。自身の活動でも大切な「笑い」というテーマを熱く語ってくれた「えんぶ2月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。
笑っているその一瞬は、現実を忘れられる
──作・演出の古川さんと日澤さんの作品について、どんな印象がありますか?
劇団公演の『熱狂』を拝見したのですが、骨太で社会派な芝居だなと。私はドキュメンタリーが好きで、ヒットラーについても色々見ていたのですが、『熱狂』ではナチスが第一党になるまでを2時間の中に凝縮して描いて、人間同士のぶつかり合いとか、いがみ合いとか、反対派を懐柔していく様子などが、とてもリアルで感服しました。同じお二人の作品『Sing a Song』も拝見しています。戸田恵子さんが淡谷のり子さんをモデルにした歌手の役で、兵士たちの前で軍歌は歌いたくないと軍部と闘うんです。本当に面白かったし感動しました。その『Sing a Song』の芸人版とでも言うのが今回の『芸人と兵隊』ですから、出させていただけるのがとても嬉しいです。
──慰問団の中で、戦地でどんな漫才をしたらいいのか悩む話も出てきますね。
私たちも震災の直後、笑いは自粛という風潮の中で、芸人さんや落語家さんたちと「自分たちはどうしたらいいのだろう」と悩みました。6月頃にやっと仙台で公演できることになって、普段はやったことないのに全員でお客様をお出迎えしたんです。そうしたら、皆さん「ありがとう、ありがとう!」と、まだ何もお見せしてないのに手を握ってお礼を言われるんです。本当に笑いを待っていらっしゃったのだなと。
──苦しみの中にいる方たちにこそ、笑いが必要ですね。
私のネタは酔っ払い芸者で、お客様に「一杯ついでよ」と言って、オムツの中にお酒を注いでもらうんです。オムツって一升近く大丈夫なんです(笑)。そういう子供にだってわかるようなバカバカしいネタを、大喜びしてくれるんです。戦地の兵隊さんもきっと、考えずに笑えるものを求めていたのではないでしょうか。舞台を見て笑っているその一瞬は現実を忘れられますから。
面白い作品はどこへ行っても大丈夫
──慰問団の団長で芸人として揺るがない信念を持っている漫才師を村井國夫さんが、妻で相方を柴田さんが演じます。村井さんとは?
バラエティでは何度も共演していますが、お芝居では初めてです。新劇出身の王道を行く先輩で、しかもミュージカルでも活躍されている素晴らしい役者さんですから、夫婦役なんておこがましいのですが、胸をお借りするつもりでがんばります。
──座組は6人で、九州から北陸や東北まで巡演します。地方公演への期待は?
それはお酒と食べ物でしょう(笑)。でもどこでも沢山のお客様が待っててくださるので、それが一番の楽しみです。以前、トム・プロジェクトさんの『淑女のロマンス』(2014年)で、前田美波里さんとキムラ緑子さんと3人芝居で色々な場所を回らせていただいたんです。こんなところに人がいるのかしらと思うような、野生動物しか見当たらないような(笑)ところでも、ちゃんと劇場にはお客さんがいらっしゃって、感動しました。どこのお客様もちゃんと楽しみ方を分かっていて、笑うのも涙するのも真剣で150%楽しんでくださる。面白い作品はどこへ行っても大丈夫だと思いました。今回も全国を回れるのが楽しみです。
──最後にこの公演への意気込みをぜひ。
笑いは、人の心の根本に響いて蘇生させる力があるんです。ですからどんな状況でも笑いながら前に進むことが大事で、そして、笑いを職業にした人間の生き様は、国家にも侵せない個人の自由だと思っています。笑うことは生きることだし、人間は笑いなんです。この作品でもそこを表現できたらいいなと思います。
しばたりえ○富山県出身。劇団東京ボードヴィルショーを経て、1984年、佐藤正宏や久本雅美らとWAHAHA本舗を旗揚げ。劇団公演のほかドラマや映画、バラエティー番組などで活躍中。レギュラー番組も多数。06年に映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』でハリウッドデビュー、『来る』が2018年12月から公開中。近年の舞台は『淑女のロマンス』『くちづけ』『梅と桜と木瓜の花』『雪まろげ』など。
構成・文/宮田華子 撮影/田中亜紀
公演情報
作◇古川健
演出◇日澤雄介
出演◇柴田理恵 村井國夫 カゴシマジロー 髙橋洋介 向井康起 滝沢花野
●2/13(水)~24(日)◎東京芸術劇場シアターウエスト
●2/4(月)◎福岡 ももちパレス 大ホール
〈問い合わせ〉トム・プロジェクト 03-5371-1153 (平日10時~18時)
https://www.tomproject.com/peformance/post-362.html
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