MOROHA、SUPER BEAVERへの真っ向勝負のライブ「……予感もいいけど、だけどそれ以上に欲しいのは実感だ!」

2019.2.15
レポート
音楽

MOROHA 撮影=日吉“JP”純平

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MOROHA自主企画『月金でギンギン!〜職場の死神背負って来い〜』新宿LOFT編

「バレンタインデーに似つかわしくない2組だ」とSUPER BEAVERの渋谷龍太(Vo)がライブ中に語っていたが、人と想いを共有して生きて行きたいという願いを暑苦しいほど歌に託し続けるという点では、これほど「愛の日」に似合う2組もいないと実感する一夜だった。

2月14日、新宿LOFTにてMOROHAの自主企画『月金でギンギン!〜職場の死神背負って来い〜』が開催された。そのタイトル通り、月曜日から金曜日まで通しで2マンライブを行う企画で、この日はバレンタインデーということもあって、12月の当企画発表の時点では「ゲストは当日発表」というスペシャル感を煽る告知がされていた。……のだが、そのニュースに添付された写真には何故か、MOROHAのふたりに加えてSUPER BEAVERのドラムである藤原“30才”広明が写っていた。

「ゲストって誰だろう?」という疑問ももはや野暮。昨年の同じ日に開催された2マンライブと同様、「バレンタインデーにチョコレートの数を競う」という名目でMOROHASUPER BEAVERがガチンコの2マンを行うことは明白だったし、わざわざ藤原とともに3ショットのアーティスト写真まで用意して笑いを誘ったMOROHASUPER BEAVERの「茶番」には、彼らのリスナーにとっても重要であろうバレンタインデーにライブへ足を運んでくれることへの感謝を感じるのであった。チョコレート競争においては、MOROHAふたり、SUPER BEAVER4人という人数の不公平さを軽減するために、藤原がMOROHAチームの「助っ人」となる点も、昨年に続いて(藤原に大変失礼だが)「全然助っ人じゃない!」という総ツッコミの嵐。愛嬌のあるバンドキャラクターも互いに面白がり合っている様からもまた、2バンドの信頼関係や相互理解が窺えるのであった。

そんな特別感溢れるライヴともあって、開演前から異様な高揚感に満ちている新宿LOFT。バースペースには既にダンボールが用意され、入場する人は次々にチョコレートをその中へ置いていく。すぐにパンパンになったダンボールと同様、会場内も超満員御礼である。

SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平

SUPER BEAVERは、登場するや否や「美しい日」で口火を切る。「我々がゲストだと当日発表にもかかわらず(笑)、こんなに集まっていただいて……」と「茶番」を自分自身で笑いながらも、当然、本筋のライブは血眼の歌、歌、歌。「音楽で一体感だとか、ひとつになるとか、そんなもんじゃない。一人ひとりでかかってこい」と、彼らの歌の真髄を凝縮した言葉を語気強く投げかけながら終始どう猛なライブを見せる。

SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平

最新アルバム『歓声前夜』がシンガロングと細やかなリズムを主軸にした作品だったのに伴って、それ以降の渋谷は音楽に乗ってステージとフロアを一気に掌握する力を急速に増幅し続けている。たとえば「美しい日」のように縦に跳ねたリズムが主役になっていた曲も、ライブでは前へとグイグイ突き進む力強さを体感させるものへ。「うるさい」のようにソリッドなギターが前に出た曲も、音の鋭さを凌駕する歌の掛け合いがBPM以上のスピード感を生むものへ。盟友MOROHAとの2マンであるということも手伝って、各曲の突進性がよりハッキリと伝わるパフォーマンスを次々に見せていく。

SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平

MOROHAは友達だし仲間だ」と語りながらも、彼らが歌い続けてきた通り、仲間というのは決して肩を組んで寄りかかっているだけの存在ではない。ただお互いを慰め合うだけに必要なものではない。別々の存在だからこそわかり合えない部分も違う部分もあるということを共有して受け入れ合うことができるのが仲間なのだと。ステージから客席の方へ突進して鳴らされた「証明」はまさに、その人間観とこの日そのものを明確に表す曲として響いてきた。

SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平

音楽性も編成も何もかもが違うが、たった一人として存在できるのは人と出会い続けるからこそなのだと伝え続ける点は両者とも同じ。その、2バンド同士にとっても、そして人と人にとっても、外側だけでは見えない精神性の部分での繋がりを訴え続ける真骨頂のライヴだった。 

SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平

そしてMOROHAの登場である。「革命」の冒頭を<あいつ、寝て起きたらポケットがチョコレートでいっぱいだったらしいぜ>というリリックにアレンジしたアフロにまずは大拍手が起こる。最近のライヴでは常に1曲目に選ばれているこの曲だが、まさに、彼らの生き様を端的に表しているからこその名刺代わりである。

MOROHA 撮影=日吉“JP”純平

Zepp Tokyoのワンマンライヴを売り切るまでに階段を上がってきたMOROHAだが、それでも彼らが伝え続けたいのは「たった一人の孤独な闘い」だ。その覚悟を人にも自分にも問い続けるのは一切変わらないのだと改めて提示するのがこの「革命」だ。リリックに遊びを加えようが、その血眼のヴォーカルは一切ブレない。

MOROHA 撮影=日吉“JP”純平

「予感のするほうへ。楽しい予感のするほうへ。……予感もいいけど、だけどそれ以上に欲しいのは実感だ!」ーー。

MOROHA 撮影=日吉“JP”純平

SUPER BEAVERの「予感」を弄った言葉を叫んだアフロに、淡々とギターと向き合いながらも熱量を増し続けるUKのプレイ。わかりやすい熱狂や拍手もなく静かに聴き入るフロアだが、「SUPER BEAVERがそう出てくるなら俺はこう出る」という真っ向勝負のライブに対して、誰もが心の拳を握っていることがよくわかる。さらに彼らのライブが素晴らしさは、「俺のがヤバイ」と何かに噛み付く以上に、自分の弱さを吐露した楽曲での暴発感にこそある。ギターのメロディこそ温かだが、「拝啓、MCアフロ様」、「夜に数えて」といった楽曲で苦しみもがきながら心の傷と孤独に向き合うアフロのヴォーカルはライブごとに凄絶さを増していく。真の仲間との2マンライブだ。バレンタインデーだからこそのお楽しみも用意したライブだ。しかしステージに上がれば、彼は彼自身との孤独な闘いを今も繰り返すのである。

MOROHA 撮影=日吉“JP”純平

その点で、終盤に披露された「ストロンガー」が凄まじかった。<手の中に残った悔しさだけがギャランティ>と歌われるその曲は、今もなおMOROHAが歌い続けるその理由だけが綴られた楽曲だ。こうして信頼できる仲間に出会えた。それでも安易に肩を組んでいるだけでは何も生まれない。結局、俺達はそれぞれに悔しさと弱さを超えて生きていくしかないーー。盟友とのステージだからこそ、さらに「一人」を提示して彼らは叫び歌い続けるライブだ。

MOROHA 撮影=日吉“JP”純平

ラストに演奏された「五文銭」の最後、「バレンタイデーじゃなくたって、告白してもいいんだ。俺は、今日来てくれた人は告白してくれたって思ってるよ。チョコレートをくれた人、チョコレートじゃなくてもお金を払って観に来てくれた人ーー俺も、いつも告白し続けていくよ。そして、いつの日か、自分の告白にYESと言いたい。俺は俺を幸せにしたい」と叫んだアフロ。終演後の楽屋の彼は、喉に氷を当て、肩で息をするようだった。

SUPER BEAVERも、MOROHAも、人と自分にどれだけ誠実に生きられるのかを常に問い続ける歌を今なお歌い続けている。人への愛とはなんだ? 自分を愛するとはなんだ? おそらく答えなど一切出ない自問自答だからこそ音楽にしているのだろうし、そんな音楽だからこそ彼らの軌跡は人生とともにまだまだ続く。そんな予感と、人とともに生きていることの実感を得る一夜だった。

取材・文=矢島大地 撮影=日吉“JP”純平

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