古屋敬多がミュージカル『プリシラ』再演への意気込みを語る~「アダム役は運命の出会い」
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古屋敬多(Lead)
大ヒットを記録した初演から2年、華麗なドラァグクイーン達が往年のディスコヒッツで歌い踊る、超ゴージャスなミュージカル『プリシラ』が帰ってくる。1994年公開のオーストラリア映画を元に、2006年にミュージカルとして誕生した『プリシラ』は、3人のドラァグクイーンたちのどたばた珍道中の物語を高いエンターテインメント性とドラマ性で描いた人気作。15か国以上の国で上演され、世界中から愛され続けてきた。日本初演は2016年に宮本亜門演出のもと、ミュージカル界を牽引する山崎育三郎を主演に迎え上演。多くの観客を魅了し、連日満員の劇場で熱い盛り上がりを見せた。このほど、本作のメインキャストであり、初演時にアダム役で鮮烈な印象を残した古屋敬多に、前回の公演を振り返りながら再演へ懸ける意気込みを語ってもらった。
アダムちゃん降臨!!
“運命的な出会い”だったアダム役
――初演から2年ぶりの再演です。再演のお話を聞いたときのお気持ちは?
前回の公演の終盤頃には、もしかしたら再演があるかも……というお話は聞いていたんですが、僕はもうアダムという役が大好きすぎて、運命の出会いのように感じていたので、「早く演りたい、まだかまだか!」という気持ちでいましたね。
――古屋さんにとっても待望の再演だったんですね。アダムという役をとても愛していらっしゃるということですが、初演時は演じるうえでご苦労があったとか。
アダムは感情的、欲情的なタイプだと思うんですが、そこが自分にはあんまりないところで。この役を演じるには、飛び越えていける「勇気」が必要なんだなと感じて、まずそこで壁にぶつかりました。毎日戸惑いの連続でしたね。でも日々稽古を重ねていくうちに、アダムは物語を動かしていくぐらいのパワーのある人物なので、「もっと、もっと、もっと激しく…!」と自分の中で突き詰めていったときに、途中からだんだん楽しくなってきて。それで“本番で爆発した!”って感じだったんです。
――先日、ティック役の山崎育三郎さんにお話をうかがったときに、古屋さんがいちばん稽古と本番で変わった、とおっしゃっていました。古屋さんご自身の中でも、大きく変わったという感覚があったんですね。
ありましたね。元々そういうタイプというか、ステージに上がると人が変わっちゃうところがあるんです。それは自分が活動しているLeadというグループのメンバーにもよく言われるんですが、「リハと全然別人だよね」って驚かれるんです。
――それがミュージカルの舞台でも起こったんですね。
そうでしたね。なので、育三郎さんや陣内(孝則)さんは戸惑ったかもしれないですね(笑)。「どこまでふっ切れるか」が課題だったんですが、初日からお客さんの盛り上がりも最高だったので、気持ち良く演じることができました。なので、今回は稽古から全開で飛ばしていきたいと思っています。この調子で本番を迎えたらどうなるのか、今から楽しみですね。
――アダム役はユナクさんとダブルキャストです。ご自身のアダムとの違いはどんなところに感じますか?
僕のアダムの5年後くらいというか、もうちょっとお姉さんで、落ち着いた印象がありますね。合わせる必要がある部分は大事にしながら、でもお互いに全然違うものでいい、という意識を持っているので、ダブルキャストならではのおもしろさを感じてもらえると思います。
役に入り込んだとき、人格が自然と降りてきた
――初演で古屋さんのアダムを拝見したときに、まるで最初からアダムとして生きてきたかのようなリアリティのある存在感に魅了され、衝撃を受けました。役作りはどのようにされたのでしょうか。
いろんなドラァグクイーンの方の動画をたくさん見たんですが、「ア゛ハハッ!」「アーーッ!!」(甲高い声で)みたいな、テンションの高い特徴的な笑い方をする印象があったので、最初はそういうところから取り入れていきました。振る舞いや仕草に関しては、自然にそうなっていたんです。アダムという役に入り込んで、おネエという人格が降りてきたときに、勝手にそうなっちゃうというか。
――自然にできてしまうのがすごいですよね。
「もしかしたら、自分もそういう一面があるのかな?」って思いました。まだ扉が開いていないだけで。あとは、(宮本)亜門さんが稽古で実際に見せてくれる動きを参考にさせていただきました。それを全力でやり切ることでアダムが完成していった気がしますね。
ミュージカル界のプリンスの意外な一面に困惑!?
――前回の公演を振り返って、印象に残っているエピソードはありますか?
育三郎さんは“プリンス”というイメージが強いと思うんですが、稽古場では「男の子」って感じで、すごくやんちゃなんですよ。そのギャップがおもしろくて。ある日、「ちょっと敬多、陣内さんに“もうちょっとダンス頑張れよ!”って上から目線で言ってきて」って言われて(笑)。
――なかなかの無茶ぶりですね(笑)。
なっかなかですよ!陣内さんは僕と同じ福岡出身の、大スターですから。その大先輩に勇気を振り絞って、「もうちょっと……がんばれよッ…!」って言って(笑)。
――言ったんですか!(笑)
そしたら陣内さんが、「あっ、古屋さんすいません…!頑張らせてもらいますっ!」って乗っかってきてくれたんですよ(笑)。僕は怒られると思ってたので、もうめちゃくちゃびっくりしましたね。パッって育三郎さん見たら裏ですっごいケタケタ笑ってました(笑)。そのあともそういう無茶ぶりが何回かありましたが、そのおかげで一気に打ち解けることができたんです。
――日本のミュージカル界をリードする山崎さんとの共演は、学ぶところも多そうですね。
全てにおいてプロだなと感じますし、面倒見がよく、すごく後輩想いなところもある方なので、一人の人間としても尊敬しています。あと、なんといっても歌が素敵ですよね。歌唱の面でもアドバイスをしてくださるんですが、一緒に歌わせていただきながら、すごく贅沢な時間だなと感じています。
体と心、両方進化した姿と人間味のある一面をお見せしたい
――再演へ向けて、どんなアダム像をお考えですか?
「前回のアダムを越える」という意識で取り組んでいるんですが、筋トレを始めて体重も5キロくらい増えて、肉体改造と同時に精神的にも強くなれた気がしているんです。体型の変化と精神的な強さ、両方の面で進化した姿をお見せできればと思っています。あと、アダムはぶっ飛んでいるところもありますが、人並みの感情も持ち合わせていると思うので、その微妙な「人間らしい部分」も今回は見せたくて。弱さや脆さがあるから強がっているところってあると思うんですよね。それが見せられたら、前回より人間味のあるアダムになるんじゃないかな、と思っています。
――『プリシラ』で初めて本格的なミュージカルに挑戦されましたが、今後もミュージカルに出演したいというお気持ちはありますか?
やりたいですね。いろんな作品に挑戦してみたいです。『RENT』という作品にも興味があります。以前ユナクが「“エンジェル”っていう役、絶対合うと思うよ」って言ってくれて。(※ユナクさんは2015、2017年に同作でロジャー役で出演)
――確かに、絶対合いますね……!
いつかエンジェルやってみたいですね。こういう役ばっかりのイメージになりそうですけど(笑)。
――それでは最後に、お客様へメッセージをお願いします!
こんなにド派手な作品は他にないと思います。往年のヒットソングの名曲、たくさんの衣装替えも見どころですし、普段では垣間見ることができないような、非日常感に溢れた世界を劇場で楽しんでいただきたいですね。また、ドラァグクイーンが抱える苦悩や、偏見に立ち向かっていく勇気―、“人間の強さ”を感じてもらえる作品だと思いますので、ぜひそういったところにも注目していただけたらと思います。
取材・文・撮影=古内かほ
公演情報
山崎育三郎、ユナク(超新星)/古屋敬多(Lead)(Wキャスト)、陣内孝則
ジェニファー、エリアンナ、ダンドイ舞莉花、大村俊介(SHUN)/オナン・スペルマーメイド(Wキャスト)
石坂勇、三森千愛、キンタロー。/池田有希子(Wキャスト) ほか