サッシャ・ゲッツェル(指揮)
-
ポスト -
シェア - 送る
サッシャ・ゲッツェル ©Özge Balkan
コルンゴルトの音楽には、歴史が凝縮されています
ウィーン生まれのサッシャ・ゲッツェルは、フリーのヴァイオリン奏者としてウィーン・フィルなどで活躍後、指揮者に転向。著名な教師パヌラと小澤征爾に師事した。
「正式な指揮の勉強は、タングルウッドで小澤さんに教わったのが最初です。彼は自身の持つ宝のような知識を惜しみなく与えてくれました。その教えは私の中で常に息づいています」
現在はイスタンブール・フィルの芸術監督を務め、ウィーン国立歌劇場等に客演。そして2013年から神奈川フィルの首席客演指揮者を務めている。同楽団とは07年以来、共演を重ねてきた。
「いま神奈川フィルのサウンドは、発展期・変革期にあると思います。若い人が大勢入り、経験豊富な奏者と共に音を作っている状態。だからこそ粘土細工のように形を変えられます。このフレキシビリティは魅力でもあります。また皆さん心が温かく、やる気があって、常にベストを尽くす音楽家たち。コンサートも上手くいっていますし、メンバーも楽しんでいるのを感じます」
次の客演は今秋11月、ブラームスのピアノ協奏曲第2番とコルンゴルトの「シンフォニエッタ」を並べたプログラム。コルンゴルトの作品は、今年1月の客演時も2曲取り上げるなど、紹介に力を注いでいる。
「コルンゴルトは、ウィーンを中心とする中欧音楽200年の伝統であるモーツァルト、ベートーヴェン、ブルックナー、ブラームスなどのエッセンスを全部含んでいるもっと積極的に紹介されてもよい作曲家。今回は彼の作品に含まれた伝統を示すために、19世紀の作曲家であるブラームスを対比させました」
「シンフォニエッタ」は、そのタイトルのイメージと相反する、大編成オーケストラによる45分もの大作だ。
「これは、ニヤッとするような、ウィーンらしい逆説的ネーミングです。この曲は、豊かな色彩感を持つ管弦楽法の全ての手法が注ぎ込まれた作品。ウィーン風のダンス音楽やハリウッドの映画音楽の要素も含まれていて、いわばオーケストラと交響曲の歴史が全て詰まった“交響曲の祭典”のような音楽です」
ブラームスの協奏曲は、おなじみのゲルハルト・オピッツがソロを弾く。
「これもシンフォニックで、技術、音楽性、共に要求されるレベルが高い作品。ピアノとオーケストラが“ブラームスの言葉”で対話し、深みや広がりを表現しなければなりません。でも若い指揮者とベテランのソリストが難曲を共演することで生まれる緊張感が、清新かつ深い表現に繋がると思います」
「新しい発想を継ぎ足しながらウィーンの伝統を引き継いでいく責任を感じている」と語り、「他にシュレーカーなど20世紀初頭の忘れられた音楽を繰り返し取り上げていきたい」と意欲を示すゲッツェル。その音楽にぜひ生で接したい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
サッシャ・ゲッツェル(指揮)
第314回 定期演奏会 11/27(金)19:00 横浜みなとみらいホール
特別演奏会 オーケストラ名曲への招待
11/30(月)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:神奈川フィル・
http://www.kanaphil.or.jp