探していた想いが見つかりそうなバンド、マイアミパーティーとは何者か?SPICEインタビュー

2019.5.14
インタビュー
音楽

マイアミパーティ / さくらいたかよし(Vo.Gt)

画像を全て表示(6件)

フォーキーなギターバンドにも聴こえるし、ポストロック的なアンサンブルやフレージングも昇華できるバンドとも受け取れる。サウンド的には不思議ないなたさと洗練が共存している。でも何より耳に飛び込んでくるのは放り出された喋り言葉に近い膨大な歌詞と、その内容の正直さだ。しかもその正直さはボーカル・さくらいたかよしが紡ぐ物語性の中で聴き手の腑に落ちる。現メンバーでの活動は2年弱だが、昨日今日、バンドを始めたメンバーでもない。それゆえにリスナーそれぞれの内面がマイアミパーティを通り映し出されるような、自由度の高い聴き方ができるのがこのバンドの魅力だし、特性なんじゃないだろうか。4月17日に待望の1stフル・アルバム『美しくあれ』をリリースし、活動のギアが一段上がった彼ら。今回はフロントマンであり、すべての作詞を担当するさくらい自身のミュージシャン人生を知ることからインタビューは必然的にスタートした。

――名前と音のギャップに「?」が浮かぶ人に、改めてマイアミパーティのバンド名の由来をお願いします。

andymoriというバンドの「マイアミソング」ってリリースしていない曲があるんですけど、それが好きで。あとカナダのケイジャン・ダンス・パーティというバンドも好きなので二つ合わせて、マイアミパーティにしたんですけど、ま、どうなんだろ?と(笑)。パーティ感もないので。

――(笑)。違和感が面白い。さくらいさんは地元・札幌でバンドを組む前に東京で一回バンドを組もうとしたんですよね?

そうです。もともと札幌で“うつくしくあれ”ってバンドをやっていたんです。それが5〜6年前の話で、1年半ぐらいやったんですが、解散になりました。それから札幌で新たにバンドをやるのか、東京で新たに組むのか、どっちがいいのかな?と考えた時に、東京で組んだ方が、その後も潤滑に行くのではないかと思い一人で出てきました。その頃にはマイアミパーティってバンド名は既にあって、上京した時に困らないように6曲入りの音源を友達に手伝ってもらって作りました。そこから、弾き語りでいろんな場所でやっていて、そのCDを本当にばらまいてたんです。ばらまいたり、対バン相手に「バンドやろう」とか、バンド掲示板とかいろんなところに行きましたけど、2年間振られ続けて、メンバーが一人も集まらなかったんです。50人以上はいました。返事がこないとか、当日のスタジオに来なくなったとか、2回目から来なくなったとか、そういうのがかなり多かったんです。それで滅入っちゃって、札幌に帰ることにしました。すると帰ったタイミングで、現在のメンバーが当時やっていたバンドを解散したり、一人になったタイミングになった人が多くて、ようやく組めたんです。

――その体験は全部マイアミパーティの歌詞になってるんじゃないかと。

ああ、思いますね。僕も。

マイアミパーティ / さくらいたかよし(Vo.Gt)

――2年って微妙に意地張った歳月じゃないですか。

ほんとにそうですね。地方から東京くる時って、一大決心したというようなことを、周りが感じるという感覚があるんです。僕が「上京します」と言ったら、「うわ、こいつはもう音楽に命をかけて」とか「音楽で食ってくために東京に行くんだな」っていうのが周りの見え方。なので、東京で失敗した時にはもう札幌帰れないな、みたいな事はすごく思いました。ほんとは1年半ぐらいで帰りたかったんですけど、帰るのは情けないのと、札幌のライブハウスに笑いながら入れるかな?とかいろんなことを思っていました。でも結局は帰りました。

――札幌に戻ったら今のメンバーもメンバーを探してた?

そうですね。最初はサポート入れて何回かライブをやってたんですが、それを見ていた友達とか、前のバンドである、うつくしくあれから僕のこと知っていて、「やってみたかったんだよね」みたいな形で今のメンバーが集まりました。

――さくらいさんの音楽的な背景は何が一番影響が大きいんですか?

僕は一番最初に音楽を始めた時と、最近ではかなり変わってきています。一番最初は、僕が専門学校卒業する時に初めて友達の音楽ライブを観に行ったことです。僕はもともと、例えばアイドルだとかSMAPだとか斉藤和義だとか、そういうテレビの中の人は生まれてから、すぐこういう世界に飛び込んで音楽をやってるんだと思ってたんです。テレビの中と外、芸能人と一般人っていうのは、もう育ちが違うというのが明確に頭にありました。だから自分が音楽をやるって発想は全くなかったし、できないと思っていました。ただ、その友達のライブを観に行ったとき、普段仲良くしてる友達なんですけど、ギターを弾いて歌をうたってたんです。それが僕にはすごい事に思えて。でも、それを観た時に、「僕でもできるんじゃないか?」と思ってしまって、そこから始めました。ただ、詞に関して僕はずっと書いていたので、音楽を書いていない頃から。何か別の形でアウトプットできればいなと思っていました。それがようやく音楽なのかなと思って始めたんですけど、最近は親孝行ですかね。

――(笑)。

親孝行したくて、言い方悪いかもしれないんですけど、売れたい、成功したいというのもあるし、テレビなどに出たら友人は喜んでくれるじゃないですか?なんか僕が身近な人の人生に、スパイスみたいなものを割と与えることができるんじゃないか?と思うんです。例えば、マイアミパーティは公式LINEをやっていて、よくお客さんから気軽にメッセージが毎日入ってくるんです。それで、このアルバム発売した時や、MV発表した時とかの反応の中に、「結婚して5年経ちました、で、今こんなLINEが旦那さんからきて」って、このアルバムのジャケットの話だったり、彼らのLINEのやり取りの画面が僕に送られてきたんです。そういうのを見ていると、あ、こういうのもコミュニケーションの一つになったり、ちょっとしたスパイスになってるのかなと思うと、やっぱりもっともっとそのスパイスになりたいなと思って、最近はやっています。

――これまでの経験や、今歌ってることも含めて、自分の環境に見栄を張る必要を感じてない気がします。

あまり自分の見え方と生活にギャップがないんです。話が脱線しちゃうんですけど、多分、お笑い芸人さんとおんなじで、アンテナを張っていれば、結構日常の中に見えてくることとか、たくさんあるんです。中には大胆なことをしないと見つけられない人もいるんですけど、僕は割と日常生活の中で、同じ道歩いてても思うことは全然違うので。だから見栄張らないのかもしれません。

マイアミパーティ / さくらいたかよし(Vo.Gt)

――だから、さくらいさんのこれまでを考えるとマイアミパーティの曲はラブソングにも思えるけど、誰にでもある話なのかな?と思います。

ああ、すごい嬉しいです。ラブソングだけっていう捉えられ方ではないのが嬉しい。僕はラブソングとして書いてるわけではないので。なので、ちょっと嬉しいです。

――僕とか君って人称は誰にでも通用するから。

だから音楽で僕と君が出てきたら大体は恋愛で、そっちに頭が行きがちなんですが、割と一歩引いてみると、そんなこともないんだなっていう見え方してくれたら嬉しいなと思います。

――ところでマイアミパーティの曲自体はどうやって作ってるんですか?

そこが僕はマイアミパーティの好きなところなんですけど……。

――どういうことですか?

僕はほとんど洋楽は聴かずにきたので、邦楽ロックバンドしか聴かないんです。ただ、うちのメンバーは逆に洋楽しかほぼ聴かない人たちなので、そこでの化学反応みたいのがすごく面白いんです。大体、アルバム1枚11曲通すと、バンドから僕抜きで作ったものが6曲ぐらいと、僕が持ってきた曲が5曲ぐらいあるような感じです。

――「おはよう、おやすみfeaturingかしわ」のイントロのギターリフからすると、メンバーにはポストロックとか好きな人がいるのかな?と。

ああ、もう大好きです。メンバーは特に。

――例えばLITEとかインストバンド的なアレンジに対照的なさくらいさんのボーカルが乗ってる感じがする時があります。

それはすごく嬉しいですね。ベースの人ですね。ずっとインストバンドやってた人なんです。この「おはよう、おやすみ」もベースの人が持ってきた曲なので。

――きっとポストロック好きなんじゃないかなぁって。

だっていつも着てるパーカに「POSTROCK」って書いてあるし(笑)。

――そうそう、MVでも着てましたよね(笑)。

そうなんですよ。

――あれは「面白いバランスのバンドなんだよ」って意思表示かと思いました。

仲良いからわかるんですけど、このベースのセルジオくんも伝えたいことが有り余ってるんです。でも喋る機会がなくて。僕はこうやって喋って自分の中で「ほんとはこうやってたんだ」とか「僕がこう思ってます」とか言える立場にいるからいいんですけど、でもセルジオくんはベースを鳴らすしかないので、ほんとのやりたい音楽とか割とTシャツで表したりするんですよ(笑)。

マイアミパーティ / さくらいたかよし(Vo.Gt)

――「おはよう、おやすみ」は名曲ですね。

これ、僕、家族に向けて書いたんです。いつも誰かに向けてっていうのではないんですけど、こうやって淡々と書いて、改めて見たときに「僕は誰に向かって歌ってるんだろう」と思った時に、家族って言っても、自分は家庭を持ってるわけでもないので、自分の親だとかお姉さんだとか、そういうところに向けてなのですが。

――作曲のクレジットはバンド名になってますが、さくらいさんのandymori好きの側面は4、5曲目に出ているかな?と今、思いました。

あ〜……それどっちも僕持ってきた曲です(笑)。そうなんです、僕が持ってきた曲は全部そういうルーツが丸見えになっちゃうんですよ。〇〇っぽいとか言われちゃうのは好きじゃないし、全編、僕の曲にしちゃうと飽きちゃうので。っていうのもあって。メンバーは他にも好きなバンドがたくさんあるので、あんまりバンド全体のルーツが見えないんです。

――この「誰かの答えになればいい」はさっきからさくらいさんが言ってるように、自分の音楽が誰かの答えになりたいわけでしょ?

うん、そうですね。

――まさにそういう曲じゃないですか?

ストーリーを説明できる機会ってあまりなくて。だからなんか改めていうのもあれですけど、今日、結構嬉しいです(笑)。

――(笑)。

「誰かの答えになればいい」っていうのは、その曲の中で、「生きるってきっと明日見る君の顔に安心して、次また会えるまでお互いに元気に過ごすことなんだろうな」みたいな歌詞があって。それは僕、お客さんに向けて歌ってるんです。地方のお客さんは3ヶ月とか期間が空いちゃうじゃないですか。だから「明日きてくれるかな」とか、いろんなこと考えてて、いざ当日ライブをしたら、きてくれて、すごい元気な顔してて、「ありがとう」って言って、僕らはもうその街を出るわけじゃないですか。そして明日からまた、その人たちは元気でいるようにって祈るしかない。次、いつ来るかも決まってないし、っていうのを基本的には連続してて。そんなところから、生きるってことはいろんなことに対してこういうことなんだろうなって思ったんです。この曲、最初はタイトルが違ったんです。それを僕らについててくれるカメラマンさんに送ったんですね。そしたら「さくらいくんにとって生きるってそういうことなんだね」って返事が来たんですよ。それがショックじゃないですけど、「あ、これって僕の答えなんだ」と思って。僕はこれ、みんなの答えだと思ってたので、「人生の、生きる答え、出たよみんな!」って感じでお伝えしたんですけど、曲で。「これはさくらいくんにとっての答えなんだね」ってことは、この曲、僕の答えではあるんだけど、全員じゃなくていいので誰かにとって答えになってくれたらいいなって思って、タイトルになりました。

マイアミパーティ / さくらいたかよし(Vo.Gt)

――サウンドの話に戻ると「あお」はセルジオさんですか?

「あお」は(笑)、セルジオさんとギターの中川くん。中川くんがあのイントロ作ってきてくれて。「もう、それだけでいい」って言って歌乗せましたね。

――サウンドプロダクションが洗練されてるし、しかも最後の一行「上手に話すより ずっと 正直に話す方が 言葉は響くから」、ここが曲全体の雰囲気を表してる。

「あお」の最後の行も、これお客さんに向けてで。お客さんて僕らに声をかけてくれるときって、「語彙力なくてすいません」とか言ってくるじゃないですか。「それしか言えないんですけど、すごく良かったです」って。ただ、それが僕ら的には一番グッとくるので。だからほんとに最後の行じゃないけど、同じことですね。上手にうまく話すよりは正直に話してくれた方が僕らの心はグッとくる。

――でも本当に言いたいことは言えない気持ちもあって、「最終列車」はそうかも。

言えないと言うよりは、どれだけ言っても言い切った気になれないって方が近いですかね。

――言葉で言ってもどうにも表現できないこととか。

ありますね。インプットが大事なのでいろんな言葉を見てるけど、こないだ見たのは、確か外国の何十年も前に亡くなったコメディアンであり、政治家の人の言葉でした。その人が言っていたのは、人間は息を吸うことが一番大事だけど、息をするのも忘れるじゃないけど、早い話、人生の中で何回ハッとできるかだと。僕も似たようなことを思って。僕ら言葉扱う仕事だけど、言葉を失った瞬間がもっともっと大事。言葉を失った瞬間に出会いたくて。で、言葉失った瞬間に言葉を生み出さないといけない、言葉失ったままだと失格なので。言葉を失った瞬間をうまく表現できたらいいんですけど。

――確かに。それにしても考えるほど面白いバンドですね。そもそものバンド名が今回のアルバムタイトルになり。

うん、そうですね。

――しかも初のフルアルバムなのは、人生最初の節目がきた感じしません?(笑)

ははは。そうですね。僕もそう思いますね。ようやくですから。しかも上京したんですよ、先々週から。それこそ一個の節目だし。

マイアミパーティ / さくらいたかよし(Vo.Gt)

――でもリベンジって感じでもない?

リベンジって感じでもないんですが、やっぱり二の轍は踏めないので、メンバーにはいろんなアドバイスはしたいですね、生活する上でとか。東京に来たらまずはじめにバンドがやらなきゃいけないと言うか、地方のバンドが東京に来た時に何を思うか?って、どのライブハウスでやっていけばいいのかわからないとか、どのライブハウスに出ればいいのかわからないとか、それにまず苦労するだろうなと思うんです。あの4年前の自分をすごく褒めてあげたいのはそこなんですよ。その2年間で東京のライブハウスと弾き語り小屋みたいなとこーー渋谷、新宿、下北沢辺りはほぼほぼ一人で出たんですよ。で、店長の人柄とか、「あ、ここは出ていい」「ここは出ないほうがいい」って切り分けをすごいして。

――これからのマイアミパーティの動きが注目されます(笑)。

そっか(笑)。そしたらなんかバンドでこう、ちゃんと親身で話聞いてくれるとことかあって……そう言う言い方しちゃダメか(笑)。

――いや、それは見に行く人もわかってるほうがいいと思うんです。お客さんもバンドに還元されるライブハウスに見にいきたいじゃないですか。

だから最初にそれは終わらせてることなので。去年とか一昨年に。あとは自分らの音楽を届けやすい場所で地道にやっていくしかないなと思います。

――では5月からのツアーの抱負を締めにさせてください。

それこそメッセージをくれる人とか通販を買ってくれる人は全国にいて、それは東京や名古屋、大阪だけじゃなくて地方が多いんです。そこに今回、ようやくライブしに行けるのがすごく嬉しくて。そんなにお客さんとはやりとりしないんですけど、ずっと文通してた友達に会いにいくみたいな気持ちですね。プラス、やっぱりマイアミパーティってバンドは音源で聴くのとライブで見るのでは全然違うので、それを観てくれる、感じてくれる瞬間が未来に待ってると思うと、すごく楽しみです。

 

ツアー情報

"マイアミパーティ presents 1stフルアルバム「美しくあれ」リリース記念「ただいま、おかえりツアー2019」"

○5月23日(木)札幌COLONY ※ワンマン
○5月31日(金)仙台enn3rd w/ 3markets[ ] [NEW] and more
○6月8日(土)高松TOONICE w/ w.o.d. [NEW] and more
○6月9日(日)福岡graf w/ w.o.d. [NEW] / ベランパレード [NEW]
○6月23日(日)名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL w/ ネクライトーキー [NEW] / TETORA [NEW]
○6月29日(土)大阪PANGEA w/ FINLANDS [NEW] / kobore [NEW]
○6月30日(日)岡山PEPPERLAND w/ FINLANDS [NEW] / kobore [NEW]
○7月11日(木)下北沢SHELTER w/ 後日発表


■2次先行:~4月7日(日)23:59
■一般発売:4月20日(土)10:00~

リリース情報

美しくあれ

FULL ALBUM

2019.04.17 Release / 2,300yen (tax in)

Living, Dining & Kitchen Records / 303-LDKCD

1. つれづれ|2. おはよう、おやすみ featuring かしわ|3. 夜明け前|4. 誰かの答えになればいい|5. 最後の最後|6. 奇数と偶数|7. あお|8. 最終列車|9. 愛されたいのさ!|10. レイトショー|11. ジーザスクライスト