Kバレエカンパニー『シンデレラ』の魅力を、プリンシパルの中村祥子と宮尾俊太郎が語る
待望の「シンデレラ」大阪公演まであとわずか! (C)H.isojima
2012年に熊川哲也のBunkamuraオーチャードホール芸術監督就任記念として世界初演を果たしたファンタジーの傑作Kバレエカンパニー『シンデレラ』が遂に大阪にやって来る。プロコフィエフの音楽と一体となった熊川哲也の美しい振付や、絵本の世界が現実に出現するゴージャスな舞台セットや衣装は、観る者の心を掴み、初演では全12公演がソールドアウトという大成功を収めた。その後、繰り返し再演が行われてきたが、大阪での公演はなく、初演から7年経った令和元年、待望の大阪公演の開催が決まった。
この日、フェスティバルホールのメーンホワイエでは、『シンデレラ』のタイトルロールを踊る中村祥子と王子役の宮尾俊太郎というKバレエカンパニーのプリンシパル二人を囲んで、記者懇談会が行われた。
中村祥子 Kバレエカンパニーで『シンデレラ』を踊らせていただくのは、2016年に続き今回が2度目となります。それまでに、ベルリン国立バレエ団でマラーホフ版の『シンデレラ』を踊ったことはありますが、そちらはバレリーナ設定で現実的な舞台。絵本の世界がそのままステージ上に再現されるKバレエの『シンデレラ』は、細かなディテールにまでこだわったゴージャスな夢の世界で、観る者を絵本の世界に誘います。セリフはありませんが、観て頂ければすべて理解していただけるはずです。
「シンデレラ」のタイトルロールを踊るプリンシパル 中村祥子 (C)H.isojima
中村祥子に続いて、宮尾俊太郎も『シンデレラ』への思いを語る。
宮尾俊太郎 2012年の初演から王子役をやらせていただいております。この作品は初めて熊川哲也さんが出演されずに上演した作品で、私自身も深く印象に残っています。強くカタルシスを感じる事が出来る作品で、お客様が幸せな気分で家路について頂けるのではないでしょうか。とにかくゴージャスでファンタジーな舞台です。実際に火の付く暖炉や立派なお城。ステージ上を走る馬車は実際の乗り心地も抜群(笑)。舞台美術と衣装デザインは、Kバレエが誇るヨランダ・ソナベンドさんが晩年に手掛けられたもので、煌びやかな中にもおどろおどろしさが混在する唯一無二の世界感!魔法にかかるポイントが多い作品ですので、気に入って頂けるはずです。
王子役はプリンシパル 宮尾俊太郎 (C)H.isojima
ここで記者から興味深い質問が飛んだ。
「お二人は普段、どんなことを心掛けて踊っていらっしゃるのでしょうか。」
中村 自分が感じたままに、踊りを通して表現していく事を心掛けています。『クレオパトラ』の時はどうしたらクレオパトラに見えるかを意識し過ぎたように思います。熊川さんからは「鏡を通して見てはいけない。自分がクレオパトラだと思えばクレオパトラの形になるのだから」と言われたのですが、それはとても難しいこと。プロですので踊れるのは当たり前。その上で自分の内面を自然と出すことが大切だと思っています。
宮尾 現在35歳です。バレエダンサーとしていちばんいい時期を迎えていると思います。ダンサーという仕事は寿命のある仕事。いずれは舞台を去らねばならない訳で、それを考えると舞台で踊ることに愛情が生まれます。最近はただ踊るだけでなく、役をちゃんと生きているかどうかを凄く意識するようになりました。
座っていてもそれとわかるバレエダンサー特有の美しい姿勢で、質問する記者をじっと見つめて受け答えをする二人。
Kバレエカンパニーが誇るプリンシパルの二人は組む機会も多いと思われるが、お互いの事をどのように見ているのだろうか。
中村 彼は見た目から王子様ですよね(笑)。先ほど話が有りましたが、役をどう生きるかを考えながら踊るのは凄いことだと思います。彼とは一緒に踊る機会が多いのですが、同じ作品でも毎回違ったものを投げかけてくれますし、パートナーとしてキャッチボールがしっかり出来る超一流のダンサーであり表現者だと思います。宮尾 10年以上ご一緒していますが、祥子さんは常に自分と厳しく向き合われています。そのことは、結婚、出産を経験されてもなお、バレリーナとしての体形、ラインをキープされていることからもお判りになると思います。技術的な事は勿論ですが、内面的にも成熟度を増されて、一層素晴らしく、一緒に踊っていてたくさんの事を投げかけてくださいます。
プリンシパル二人による豪華共演は、ため息モノの美しさ!
なるほど、この絶対的な信頼関係があの奇跡のような踊りを生みだすのだろう。
Kバレエカンパニーの大阪の本拠地と言えば、ここフェスティバルホール。旧ホールの時代はもちろん、2013年の新ホール杮落し公演のベートーヴェン『第九交響曲』から、昨年の『ロミオとジュリエット』まで、実に感動的な作品が並ぶ。プリンシパルの二人はフェスティバルホールに対してどんな印象をもっているのだろうか。
中村 2017年に『クレオパトラ』を踊らせていただきましたが、こんなに素晴らしい劇場は他にないと思います。どこか海外の劇場で踊っていると錯覚するほど。ここで踊れるのは本当に嬉しいです。
宮尾 フェスティバルホールは品格が有って、大好きな劇場です。広いステージもステージから見る客席も、美しい楽屋も、ホールに鳴り響くサウンドも、すべてが素晴らしいです!そして、何と言ってもここのホワイエは最高だと思います。劇場に入った瞬間、日常を忘れて夢見心地になり、公演に対する期待が一気に高まると思います。そんなフェスティバルホールで『シンデレラ』をやっていないことが驚きです。ゴージャスでいかにもお金がかかっている世界。大阪のお客さまは絶対に好きなはずです(笑)。
豪華な馬車をはじめ、絵本の世界がそのままステージ上に出現!
記者の質問に応える形で「シンデレラ」の魅力を語る二人がどんどん饒舌になっていく様子を見ていると、この作品に対する自信や誇りのようなものを強く感じる。うーん、これは素晴らしい公演になりそうな予感が!
最後に、決意に満ちたお二人のメッセージをどうぞ。
中村 ラストのハッピーエンドに向かってシンデレラの気持ちになって踊っています。お客さまにもそんな思いはきっと伝わるはず。この『シンデレラ』を見たらバレエをやりたくなるのではないでしょうか(笑)。
宮尾 バレエを初めて観る人には、うってつけの作品だと思います。バレエの概念が変わると思いますよ。言葉はなくてもファンタジーで煌びやかな世界は、皆さまに伝わるはず。観に行こうかどうしようか、迷われている方は、とにかくお越しください。足を運んでくだされば、後はこちらが責任を持ちますので!(笑)。フェスティバルホールで皆さまのお越しをお待ちしています!
(C)H.isojima
インタビューを終えた二人は、フォトセッションのためにフェスティバルホールのステージに移動。客席をバックにポスターを挟んで左右に立つ二人の姿が、あまりに美しく絵になっていて……。この広い空間に鳴り響くプロコフィエフの音楽と、ゴージャスな舞台、そして煌びやかな衣裳を身にまとったKバレエカンパニーのダンサーによるスケールな大きな踊り。今から本番が待ち遠しい。
フェスティバルホールでお待ちしています! (C)H.isojima
取材・文=磯島浩彰
公演情報
■日時:2019年6月6日(木)18:30開演(17:30開場)
■会場:フェスティバルホール
■出演:シンデレラ:中村祥子、王子:宮尾俊太郎、継母:ルーク・ヘイドン、仙女:山田蘭
ほかKバレエカンパニー
■芸術監督:熊川哲也
■指揮:井田勝大
■管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー
■料金:S15,000円、A11,000円、B8,000円、C6,000円、BOX20,000円 バルコニーBOX30,000円(2席セット・電話予約のみ)
■問い合わせ/フェスティバルホール 06-6231-2221
■フェスティバルホール公式サイト:https://www.festivalhall.jp/
■会場:東京文化会館 大ホール
■日程:2019年5月24日(金)~26日(日)
■出演
<5/24(金)14:00>中村祥子、宮尾俊太郎、ルーク・ヘイドン、山田蘭 ほかKバレエカンパニー
<5/25(土)14:00>矢内千夏、高橋裕哉、ルーク・ヘイドン、戸田梨紗子 ほかKバレエカンパニー
<5/26(日)14:00>成田紗弥、山本雅也、ルーク・ヘイドン、浅野真由香 ほかKバレエカンパニー
■会場:Bunkamuraオーチャードホール
■日程:2019年5月31日〜6月2日
■出演
<5/31(金)14:00>中村祥子、宮尾俊太郎、ルーク・ヘイドン、山田蘭 ほかKバレエカンパニー
<6/01(土)13:30>成田紗弥、山本雅也、ルーク・ヘイドン、浅野真由香 ほかKバレエカンパニー
<6/01(土)17:30>矢内千夏、高橋裕哉、ルーク・ヘイドン、戸田梨紗子 ほかKバレエカンパニー
<6/02(日)13:00>小林美奈、栗山廉、ルーク・ヘイドン、井上とも美 ほかKバレエカンパニー
■日程:2019年6月4日(火)18:30開演
■会場:アクトシティ浜松
■出演:中村祥子、宮尾俊太郎、ルーク・ヘイドン、山田蘭 ほかKバレエカンパニー