関西拠点の「中野劇団」が代表作『10分間』を引っ提げて11年ぶりの東京公演~あっと驚くシチュエーションコメディ

2019.5.7
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中野劇団(三条上ル・中野守)

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関西を拠点に活動する「中野劇団」が代表作『10分間』で約11年ぶりの東京公演を行う。2003年に京都で旗揚げされた中野劇団は、緻密なシチュエーションコメディを得意とし、関西小劇場シーンで幅広い支持を得ている。その代表作『10分間』は、大学の映画研究部同期で集まった飲み会で巻き起こる騒動、同じ10分間を何度も繰り返すループ現象「タイムリープ」をモチーフにした一作だ。だが、この作品を単なるコメディと侮るなかれ。シンプルなシチュエーションをあの手この手で盛り上げ、細やかなアイディアと大胆な物語展開が観る者に様々な感想を抱かせる“人間ドラマ”となっている。これから中野劇団を知るにはうってつけの『10分間 2019』は、2019年5月10日~12日まで大阪・HEP HALL、5月24日~26日まで東京・こまばアゴラ劇場にて上演。このインタビューでは、劇団主宰であり作・演出を担当する中野守、看板俳優の三条上ルの両名に話を聞いた。

中野劇団(三条上ル・中野守)

−−中野劇団を初めて観たのはQSC(クォータースターコンテスト)という演劇動画のコンテストでした。『進路相談』という作品を今でも憶えています。中野劇団は、他にも沢山の動画作品をネットにアップしているので、中野劇団初見の方へ「おすすめ動画」を教えて欲しいのですが。

【動画】中野劇団『進路相談』


 

中野 なるほど……、それは悩みますね。

三条 うーん、何がいいやろ~。

中野 短編で『ラーメン屋』というのがありまして。

【動画】中野劇団『ラーメン屋』


−−それ、僕の大好きな1本です(笑)。

中野 勢いやテンポが分かり易い形で出ているコントだと思います。まず『ラーメン屋』から入って頂いて、他にも色々なタイプのコントがありますので、その変化を味わって頂けたら。

三条 『嘆願』はどうですか? 話の展開に一癖あり、最後まで観てもらうと全貌が分かるコントです。

【動画】中野劇団『嘆願』


 

−−僕は『中入後』という相撲速報のコントが好き。

中野 あれもおすすめ候補です。

三条 暗転芝居ですね。

−−暗転芝居?

中野 演劇の公演中に着替える時間が欲しくて、暗転中に流した音声コントになります。

【動画】中野劇団『中入後』


 

−−それでは『10分間 2019』の話に移ります。この取材用に2016年バージョンの公演映像を拝見して、映像作品以外の中野劇団を初めて観劇しました。中野劇団といえば「シチュエーションコメディの劇団」という認識があったのですが、『10分間』は人間ドラマの側面が強かった。ベースはコメディだけど「コメディ」という一言では語れない。それが正直な感想です。

中野 やはり、笑いだけではないと思います。「笑いを武器に」というのは、いわばキャッチフレーズ的に言っていることで、自分が武器にしているのは、実は「驚き」なんです。物語のどんでん返しでマジシャンのように人を驚かせる。そこに一番の醍醐味を感じています。ですから、笑いはそのタネを隠すツールであり、驚きを倍加させる装置という感覚です。もちろん笑いも得意分野だし、それ自体も武器になっていて欲しいですが。

−−『10分間』を観た後にその発言を聞くと、とても腑に落ちます。

中野 自分は、どんでん返しが絶妙だったり、あっと驚くような映画が大好きで、そういう映画を観まくっているうちに、自分でも脚本を書くようになりました。コメディが書きやすいのでベースはコメディなのですが、いつも終盤でひっくり返したくなる(笑)。その為にはどうしたら良いのだろう? ということを常に意識しています。観た人が「おー、ビックリした!!」という作品を作りたいし、自分もそれを観てみたい。

−−その「驚き」や「どんでん返し」を象徴するシーンが『10分間』の中にありますよね。ネタバレをしない範囲で、それに関するお話を聞きたいです。

中野 その話をするのは、さっきの「おすすめ動画」より難しいですね~(笑)。うーーん……。でも、そうですね、それについて、自分からあまり言わないようにしてきたんですよ。だから、自分が「驚かせたい人間」というところから想像して欲しいかな。

中野守(中野劇団)

−−僕もヒントを出すつもりは一切なく、でも、あの感覚を少しでも読者へ届けたくて。

中野 期待して頂いて大丈夫だと思います。その期待を超えられるかどうか、それは作品の出来次第なので、とにかく頑張ります。

三条 お客さんの感想を聞くと、やっぱりちょっとドキッとするみたいですよ。

−−三条さんは初めて台本を読まれた時、どう思われました?

三条 「そういうことかー!」と(笑)。

−−何度も再演している中野劇団の代表作なので、既に知っている方も多いと思いますが、初見の方はなるべくまっさらな気持ちで観て頂けると、より楽しめると思います。これは個人的な感想ですが、観劇しながらスポーツドキュメンタリーを観ているような気持ちになりました。タイムリープから抜け出せなくて七転八倒する主人公。その姿にゆっくり感情移入していき、終盤には「がんばれ!」と応援したくなる。その辺りも、今作が単なるコメディではないと感じた理由のひとつです。

中野 主人公に感情移入してもらえたら、ちょっと前のめりで観てもらえるかも。お客さんにもタイムリープを味わってもらえるというか、舞台上で起こっていることに、喜んだり悔しがったりイライラしたり、してもらえたら。

三条 主人公の立場だと「(タイムリープを)もっと早う信じてや!」という気持ちだろうし、観ているお客さんもイライラすると思う(笑)。映画なら、すぐに信じて「よし、俺も協力するから一緒に頑張ろうぜ」みたいな展開になるだろうけど、実際問題として、友達と飲みに行き、いきなり「同じ10分間が巻き戻って繰り返される」なんて言われたらどうするやろ? とは思いますね。「えー、なにそれ、乗っかったらええの? はー、すごいなぁ」みたいな、そんな反応になりそう。にわかに信じがたいですよ。

−−そうなんですよね。主人公以外の記憶は巻き戻ってしまい、周囲の人間はタイムリープを実感出来ない。

三条 何度も信じかけるけれど、やっぱり信じられないという状況です。主人公と芝居のお客さんだけ、どんどんフラストレーションが溜まっていく(笑)。

三条上ル(中野劇団)

−−そして、今回は約11年ぶりの東京公演だとか。

中野 2016年の再演が終わった時点で「東京でやりたかった」という気持ちが強かったんです。で、自分としては半分軽口のつもりで打ち明けたら、劇団員が「だったら実行した方がいい」と乗ってくれて。いざ東京公演が決まると、やっぱりモチベーションも上がってきます。前回の東京公演は2008年で、それを観たお客さんにもう一度中野劇団をお見せしたいという気持ちもあります。

−−この東京公演で良い反応があれば、来年以降に東京で中野劇団が観られる可能性もある?

中野 気持ち的にはありますが、未確定な部分もあります。色々な作品を日本各地で上演したい気持ちは当然あるので、勢いがつけば、その勢いを維持したいです。

−−観劇後に物語を反芻したり感想を語り合ったりするのが楽しい作品だと思います。お二人の個人的な視点で構いませんので、観劇に関するワンポイントアドバイスをお願いします。

中野 脚本家の視点になりますが、これ、居酒屋の個室が舞台で、そこから外側へ展開しない物語なんです。とにかく掘り下げて深めていくお話なので、その過程を味わって欲しいと思います。面白いドラマにありがちな、場面があちこちへ移動して、それがスピード感に繋がる……という展開を敢えて使わず書いたので、そこに着目して、驚いて頂けたら。

三条 普通に観て下さっても面白いと思うのですが、裏設定が色々ある作品なので、観終わった後に「俺はアレに気が付いた。コレには気が付かなかった」という発見があると思います。それでリピート観劇してくれるお客さんもいますし。

−−二人以上で観に行くと、より楽しい観劇体験になるのかも。

三条 あー! そうですね!

中野 観終わった人同士で、答え合わせなり、感想なりを楽しんで頂けたら、とても嬉しいです。

中野劇団(三条上ル・中野守)

取材・文=園田喬し

公演情報

中野劇団 第20回公演『10分間 2019 ~タイムリープが止まらない~』​
 

 
<大阪公演>
■会場:HEP HALL(大阪)
■日程:2019年5月10日(金)~12日(日)
5月10日(金) 19:30
5月11日(土) 14:00/19:00
5月12日(日) 12:00/17:00
■アフタートークゲスト
・5月10日(金)19:30の回終演後
上田誠(ヨーロッパ企画 代表・脚本・演出)

 
<東京公演>
■会場:こまばアゴラ劇場(東京)
■日程:2019年5月24日(金)~26日(日)
5月24日(金)19:00
5月25日(土)13:00/18:00
5月26日(日)11:00/16:00
■アフタートークゲスト
・5/24(金)19時の回終演後
冨坂友(アガリスクエンターテイメント 主宰・脚本・演出)
・5/25(土)18時の回終演後
畑中智行(演劇集団キャラメルボックス 俳優)

 
■脚本・演出:中野守
■出演:
三条上ル
川原悠
延命聡子(以上、中野劇団)

 
河口仁(シアターシンクタンク万化)
丹下真寿美(T-works)
桐山篤
濱辺緩奈
長橋秀仁

 
湯川知行(中野劇団)(5/10のみ)
真野絵里(中野劇団)(5/11のみ)
桐山泰典(中野劇団)(5/12のみ)
金田一 央紀(Hauptbahnhof)(東京公演のみ)
 
■料金:大阪・前売¥3,500 東京・前売¥3,000 ※ほか各種割引あり。詳細は劇団公式サイト
■上演時間: 約2時間(休憩なし)予定
■問い合わせ:080-5367-8181(制作・さがら)
■中野劇団/公式サイト:http://nakanogekidan.com/
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