名古屋のperky pat presentsが、坂手洋二作『いとこ同志』を5月20日まで上演中

2019.5.9
インタビュー
舞台

perky pat presents『いとこ同志』の出演者と演出家。前列左から・川村ミチル、早川綾子 後列左から・古場ペンチ、いちじくじゅん、演出家でプロデューサーの加藤智宏

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坂手洋二が作・演出を務め、2005年に「まつもと市民芸術館」のプロデュースにより上演された『いとこ同志』。初演時には渡辺美佐子、串田和美、佐藤アツヒロ、宮本裕子が出演し、2007年には一部キャストを変え全国ツアーも行われたこの作品を、perky pat presentsが名古屋の「円頓寺Les Piliers」にて、5月20日(月)までロングラン公演を行っている。

perky pat presents 16『いとこ同志』チラシ表

電車内を主な舞台として、異性同士の2組のいとこの関係がミステリアスかつロマンティックに描かれた『いとこ同志』は、自身が主宰する燐光群では社会的な問題を扱った作品を多く手掛け、大人数が出演することの多い坂手洋二作品には珍しいテイストの4人芝居だ。夜行列車で出会う「女」と「男」。それぞれ小説家と国際機密機関の工作員を名乗る二人は、女の方が幾つか年上の“いとこ関係”であるらしい。「男」は予知能力を持つ代わりに記憶を無くしていき、そんな「男」の話を元に「女」は全18巻の冒険小説『いとこ同志』を長年に渡って発表していく。そしてもう一組、同じくいとこ関係の「彼」と「彼女」が加わり、4人は「女」の別荘で出会う…。

稽古風景より

perky pat presents及び「円頓寺Les Piliers」を主宰する演出家でプロデューサーの加藤智宏は、以前から「いつか一緒に芝居を」と約束していた、俳優で劇作家・演出家の川村ミチルと今回の舞台を企画。川村が坂手作品のファンであったことから作品を探し、今回の企画に適した『いとこ同志』を上演することにしたという。過去と現在、夜行列車と別荘など、時間や場所、人間関係が複雑に絡み合い交錯する本作を手掛けるにあたり、
「前の舞台を観ていないし、坂手さんの作品だから2時間は超えるだろうと思っていたけど、戯曲を読んでみたら1時間50分位だった。こういう劇場だから(古い長屋を改造した収容人数24名の小空間)2時間を超えるとキツイなと思ったけど、1時間50分くらいで収まるならなんとかなるかな、と。客席用のクッションも新たに買いましたし(笑)」と加藤。

perky pat presentsでは、これまで北村想や筒井康隆などさまざまな作家の作品を取り上げてきたが、原作の内容を一切変えずに上演することを信条としている加藤は、今回も同様の姿勢で演出に取り組んでいる。
「話としては長くないけどシーン転換がすごく多いので、それをどうしようかと。電車の中のシーンでも現在と過去を行き来するし、“トレイン別荘”という電車を改装した別荘にも行く。加えてキャストの着替えも必要なわけで、それをどうやってこの狭い「レピリエ」で転換するのか、というのがひとつの課題というか面白味でやっています。この転換がうまく決まると、すごく綺麗な舞台になるかなと思っています」

稽古風景より

坂手作品としては異色ともいえる本作について、また坂手作品を初めて演出することについては、
「燐光群の公演の時の坂手さんのホンは、世相というか現代社会に対する風刺みたいなものが前面に出てきて、それはこの作品にもあるにはあるんだけども、なにかファンタジーなところがあるのがちょっと違うかな、という気がしますね。これは本当に現実の話なのか虚構なのか? 話の中に出てくる『いとこ同志』という冒険小説のシリーズの登場人物が具体的になっちゃった話、という風にも取れるし、そのあたりの境界線をこちら側でどう考えながら演出していくか、入れ子構造になっているところを読み解いていく作業がすごく面白いですね」と。

出演者についても、「彼女」を演じる早川綾子以外は初めてや久々の共同作業となる顔ぶれで揃え、演出家・プロデューサーとして作品面でもキャスティングでも初の試みを楽しんでいる様子の加藤。また、今回は「この曜日の休みがないから観に行けない、ということがないよう全ての曜日を網羅しました」と、12日間全15ステージ(途中1日のみ休演日あり)のロングラン公演を敢行している。今ではほとんど乗る機会のなくなった夜行列車の独特な雰囲気も味わいつつ、濃密な空間でミステリアスな異色作を堪能してみては?

perky pat presents 16『いとこ同志』チラシ裏

 
取材・文=望月勝美

公演情報

perky pat presents 16『いとこ同志』

■作:坂手洋二
■演出:加藤智宏
■出演:川村ミチル(劇団そらのゆめ)、いちじくじゅん(てんぷくプロ)、古場ペンチ(Pinchi 番地)、早川綾子

■日時:2019年5月9日(木)19:30、10日(金)19:30、11日(土)14:00・19:00、12日(日)14:00・19:00、13日(月)19:30、14日(火)19:30、15日(水)19:30、17日(金)19:30、18日(土)14:00・19:00、19日(日)14:00・19:00、20日(月)19:30 ※16日(木)は休演
■会場:円頓寺Les Piliers(名古屋市西区那古野1-18-2)
■料金:一般前売2,800円、一般当日3,000円 学生以下前売1,800円、学生以下当日2,000円
■アクセス:名古屋駅から地下街ユニモールを抜け、「国際センター」駅2番出口へ。地下鉄桜通線「国際センター」駅2番出口から北東へ徒歩5分
■問い合わせ:office Perky pat  加藤 090-1620-4591 rsm87200@nifty.com
■公式サイト:
http://officeperkypat.web.fc2.com/indexperkypatpresents.html
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