韓国ナショナル・シアターカンパニー『ボッコちゃん ~ 星新一 ショートショートセレクション ~』が開幕
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「ボッコちゃん」 (Photo by Nah Seung-yeol, provided by National Theater Company of Korea.)
SF作家・星新一のショートショート「ボッコちゃん」を原作とする舞台『ボッコちゃん ~ 星新一 ショートショートセレクション ~』が、韓国ナショナル・シアターカンパニー(National Theater Company of Korea)により、2019年5月30日(木)より東京芸術劇場 シアターイーストで上演を開始した(~6月2日まで)。日本初演。韓国語上演だが日本語字幕あり、上演時間は90分の予定だ。
「知人たち」 (Photo by Nah Seung-yeol, provided by National Theater Company of Korea.)
「おーい でてこーい」 (Photo by Nah Seung-yeol, provided by National Theater Company of Korea.)
6演目のオムニバス形式で上演される舞台で、韓国では最も権威のある東亜演劇賞を3部門で受賞している。演目は次の通り。
1.「ボッコちゃん」(『ボッコちゃん』所収)
2.「知人たち」(『たくさんのタブー』所収)
3.「おーい でてこーい」(『ボッコちゃん』所収)
4.「鏡」(『ボッコちゃん』所収)
5.「宇宙の男たち」(『宇宙のあいさつ』所収)
6.「ひとつの装置」(『妖精配給会社』所収)
※すべて新潮文庫刊
「鏡」 (Photo by Nah Seung-yeol, provided by National Theater Company of Korea.)
東京芸術劇場と韓国の関係といえば、2014年に明洞芸術劇場(現:韓国ナショナル・シアターカンパニー)と共同制作された野田秀樹作・演出『半神』を思い出す向きも多かろう。そもそもは、現・東京芸術劇場芸術監督である野田秀樹による『赤鬼』が1997年に韓国で上演された際、韓国の観客に強い衝撃を与え、韓国演劇界において野田の名前が広く知られることとなったことがきっかけという。2013年には同じく野田の『THE BEE』が明洞芸術劇場で上演され、これも好評を博した。このような経緯を経て、2014年に日韓国際共同制作事業として『半神』上演へと至る。野田自身が演出、出演者には韓国人俳優を起用し、美術や照明などプランナーは日本人という布陣で、東京・ソウル両都市で公演を行い、日韓両国において話題となった。2017年には『ワン・グリーン・ボトル』が明洞芸術劇場で上演され、再び歓迎を受けた。今年2019年は『ボッコちゃん』来日公演、次年度以降では、再び日韓の共同製作公演が計画されている。
「宇宙の男たち」 (Photo by Nah Seung-yeol, provided by National Theater Company of Korea.)
「ひとつの装置」 (Photo by Nah Seung-yeol, provided by National Theater Company of Korea.)
【演出家 チョン・インチョル コメント】
何年か前に、星新一さんの「ボッコちゃん」という作品に出会いました。それは短い話でしたが、とても感動的で私は心を動かされました。その後、私はできる限りの星さんの作品を読みあさったのですが、星さんの作品は、コメディ、寓話、そして悲劇の3つのカテゴリーに分類できるということに気づきました。星作品では、作者の人間味あふれた大きな愛情を感じることができます。星さんの小説を舞台化する作業は、まるで星さんと対話でもしているような気持ちでした。彼は、誠実で素晴らしい作家で、想像力溢れ、人への深い愛情を持ち、これからやってくる未来を予言している作家です。
私は、ほとんどの星さんの作品を読んだのですが、数にしたら1,000作品あまりを読んだことになります。私はそれらの作品の中で、近未来について書いている悲劇作品に特に魅力を感じました。驚嘆すべきなのが、私たちの生活スタイルが自分や周りの人、地球をも壊していく様子を書いた作家の温かさです。そのため、ソウルで公演した際の公演タイトルは、『I Am a Murderer(私は殺人者です)』と名づけました。その公演で私は、人間の暗い未来を書いた悲劇を7つの作品のオムニバスからなる舞台にしました。
私が、演出家としてのキャリアをスタートさせたとき、蜷川幸雄さん、野田秀樹さんの作品が本当に大好きでした。2人の演出家のことを知るにつれて、日本に住んでいる人たちについても興味を持ちました。演劇が、それほどの影響を与えることを大変興味深く思いました。
日本では、星新一さんはとても有名な作家であると伺いました。韓国で上演した際に、韓国の観客は、星新一さんが書いた人間の暗い未来を直視することに、かなりばつの悪さを感じたようでした。私は、日本の観客が私たちの舞台にどのような反応をするのか、とても興味があります。
【脚色・演出 チョン・インチョル プロフィール】
チョン・インチョルは、2006年の『沈黙』で演出家としてのキャリアをスタート。旧知の仲である劇作家のキム・ウンサンと『スヌ伯父さん』『シドン洋服店』『木蘭姉さん』でコラボレーションし、高く評価された。また、『黄色い封筒』『ゲーム』では社会と政治の矛盾を扱い、注目を浴びる。2015年にシアターカンパニー“ドルパグ”(突破口)を立ち上げ活発に創作を続けている。
【韓国ナショナル・シアターカンパニー】
韓国ナショナル・シアターカンパニーは、長い歴史を持つ、国営の重要なシアターカンパニーの一つである。1950年4月に創立し、2020年には70周年を迎える。ソウルに明洞芸術劇場と2つのスタジオ・シアターの3つの劇場を持ち、韓国でもっとも多くの演劇を制作しており、新作のみならず、世界の古典を現代版に蘇らせて上演し、年間に20公演以上を制作している。韓国ナショナル・シアターカンパニーは、韓国の演劇の中心として、伝統を受け継ぎ、近代演劇の新しい展望を切り開いている。
【東亜演劇賞】
1964年に東亜日報により創立された韓国でもっとも長い歴史を持つ演劇賞で、演劇の現場スタッフに支持されている賞でありながらも、ニュー・コンセプト演劇賞(新しいアイディアを取り入れた前衛的な作品を創作する演出家に授与する)などを新たに設けるなど進化を続けている。演出家チョン・インチョルは第54回東亜演劇賞演出賞を受賞(2017年の作品・活動を対象に、2018年1月受賞)。この部門では2013年に多田淳之介が『かもめ』や日韓合作の『カルメギ』で、史上初の外国人受賞者になっている。
【星新一 SF作家(1926~1997年)】
1926年、星新一は当時アジア最大の製薬会社と言われた星製薬の創業者・星一の長男として生まれた。東京大学農学部卒業後、同大学院に進学し発酵の研究をつづけたが、24歳のときに父親が急死。大きな負債をかかえていた星製薬の社長に就任したものの、会社を人手にわたすことに。失意の底で途方にくれていたときに目にしたのが「日本空飛ぶ円盤研究会」を紹介する新聞記事だった。想像力の競い合いのようだったこの会合に出席したのをきっかけに、日本初のSF同人誌「宇宙塵」に参加。同誌に書いた「セキストラ」が商業誌「宝石」に転載され、1957年に作家としてデビュー。その翌年に書いた「ボッコちゃん」で自信を得て、SFショートショートのスタイルを確立。星新一は戦後の日本SF界にあらわれた初の専業作家となり、「ボッコちゃん」は1963年にアメリカの雑誌に掲載された初の日本SFとなった。日本SF作家クラブ初代会長。代表作に「おーい でてこーい」「きまぐれロボット」「午後の恐竜」など。1968年に作品集『妄想銀行』(および過去の業績)で日本推理作家協会賞を受賞。1969年、インターネット社会を予測した長編『声の網』を発表。1970年には、短編映画「花ともぐら」(原作:花とひみつ)がベネチア国際児童映画祭で銀賞を受賞。1983年に目標だったショートショート1001編を達成し作家を半引退。癌闘病後、1997年に71歳で他界。翌年、生涯にわたる功績に対して日本SF大賞特別賞が贈られる。没後も人気はおとろえず、ミリオンセラーの文庫が現在18点。香港の子供向け科学雑誌でショートショート連載、中国、韓国、台湾、インド、チェコ、ベトナム、セルビアなどで単行本出版、アメリカと韓国の教科書に作品が選ばれるなど海外でも高く評価され、2009年にはNHK「星新一ショートショート」シリーズが国際エミー賞コメディ部門の最優秀賞を受賞、2017年には韓国国立劇団による星作品8話のオムニバス公演が、東亜演劇賞の演出賞など3部門を受賞した。(星ライブラリ提供)
星新一公式サイト : http://www.hoshishinichi.com
公演情報
『ボッコちゃん ~ 星新一 ショートショートセレクション ~』
韓国 東亜演劇賞3部門受賞作品
<東アジア文化都市2019豊島スペシャル事業>
■脚色・演出:Jun In-chul チョン・インチョル
■出演:韓国ナショナル・シアターカンパニー(National Theater Company of Korea)
Yoo Byung-hoon ユ・ビョンフン
Ahn Byung-sik アン・ビョンシク
Kim Myung-ki キム・ミョンギ
Lee Bong-ryun イ・ボンリョン
Kwon Il クォン・イル
Kim Jung-min キム・ジョンミン
Park Hee-jung パク・ヒジョン
字幕・コーディネーター:Jooyong Koh コ・ジュヨン
舞台美術 Park Sang-bong パク・サンボン
照明 Choi Boyun チェ・ボユン
衣裳 Kim Woo-seong キム・ウソン
メイク+小道具 Jang Kyoung-suk チャン・キョンスク
音楽&音響 Park Minsoo パク・ミンス
映像 Jung Byungmok チョン・ビョンモク
映像テクニカル・ディレクター Kim Sung-ha キム・ソンハ
振付 Keum Bae-sub クム・ベソプ
芸術監督 Lee Sung-yol イ・ソンヨル
製作 The National Theater Company of Korea(韓国ナショナル・シアターカンパニー)
表紙(原画)真鍋博「ミステリマガジン 1979年1月号/早川書房」愛媛県美術館所蔵
■公演日程:2019年5月30日(木)~6月2日(日)
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■一般前売開始:2019年3月2日(土)10:00~
東京都/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)/豊島区
■後援:駐日韓国文化院
■助成:文化庁劇場文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
■協力:星ライブラリ/新潮社