女優・奈緒インタビュー「初舞台がこれでよかった」~「神話的世界」と「SF的世界」を描く前川知大の最新作『終わりのない』
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奈緒 (撮影:池上夢貢)
自身が率いる「イキウメ」をはじめ、舞台、映画、TV等とその才能を発揮して高い評価を受けている劇作家で演出家の前川知大が、これまで「奇ッ怪」シリーズで共同制作を行ってきた世田谷パブリックシアターと組み、最新作『終わりのない』を2019年10月29日から同劇場で上演することが決定した。
古代ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」を原典とした本作は、神話的な世界とSF的な世界が共存し、古代と未来を往還するような「長い旅」を描くという。今作に出演するのは、前川作品初登場の山田裕貴と奈緒、イキウメに出演経験のある清水葉月と村岡希美、安井順平や浜田信也らイキウメ劇団員、そして「奇ッ怪」シリーズなど前川作品において重要な役割を果たしてきた仲村トオル、といったメンバーだ。
今作について、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』や『あなたの番です』(日本テレビ系)等話題のドラマや映画などで活躍し、これが初舞台となる奈緒に話を聞いた。
――奈緒さんは今回が初舞台となりますが、このお話しが来たとき、まずどう思われましたか。
ずっと舞台をやりたいと思っていたので、ついに来た、という気持ちが一番大きかったです。前川さんにはオーディションを兼ねた面談をしていただいたのですが、そのときに前川さんの作品で初舞台を踏むことができたらすごく幸せだな、と思ったので、出演の話が来てすごくうれしかったです。
――幸せだな、というのは具体的にどういった部分でそう感じたのでしょうか。
まず自分にとって舞台は初めてのことで、怖いという思いがありました。舞台の演出家さんがどういった感じなのかもわからなくて、怖くて厳しい方が多いイメージがあったのですが、前川さんとお話ししたときに、とても優しくて、私の「わからない」という気持ちを受け止めて、わかるように説明してくださったり、とても大きく包んでくださる方だな、と感じました。もちろん作品も面白いですし、そういう方の率いるチームに参加出来たらいいな、と思ったんです。
――前川さんの作品はこれまでご覧になったことがありますか?
一番最近では『獣の柱』を拝見しました。ものすごくスケールの大きい話なんですが、その中にリアリティがあるところが、前川さんの舞台の面白さだと思います。ちゃんと私たちの手を引いて物語の世界へ連れて行ってくれるし、だからその世界観にのめり込むことができるんですよね。
――そんな前川作品への出演が決まった状態で『獣の柱』を見て、どんなことを思いましたか。
もちろん作品として面白いな、と思って見ていたんですけど、終わった後に、面白かったからこそ「ああ、初舞台がこれ(『終わりのない』)でよかった」と思いました。まだ稽古も始まっていませんが、前川さんやイキウメの方たちと一緒の舞台に参加できることがまず嬉しいな、と心から思ったんです。
――前川さんの作品の傾向として、「人間と人間以外の存在」の関係性が描かれることが多く、『獣の柱』では天や宇宙、「奇ッ怪シリーズ」では妖怪や幽霊などといった存在が登場しましたが、奈緒さんご自身はそういった「人間以外」の存在をどのように受け止めていますか。
私は出会ったことはないんですけど、いるだろうな、と信じています。目に見えないものを信じるということに抵抗がある人もいるでしょうし、見えない、知らないからこそ怖い、と思う人もいると思いますが、私は目に見えないものにすごく興味があって、すべてを目に見える範囲で解決しようとするのではなくて、見えないことや知らないものは自分にとっての“余白”だと思うので、「これは自分が知らないことなのかもしれない」ってとらえることが多い方が、様々な視点を持つことができて、考えの幅が広がって楽しいんじゃないかな、と思っています。
――共演者が、イキウメの劇団員や、奈緒さん同様に前川作品初の山田さん、前川作品経験者の清水さん、村岡さん、仲村さん、といった方々です。
今回、女性の出演者が自分を含めて3人だけで、これまで舞台で拝見してきた村岡さん、そして歳の近い清水さんとご一緒させてもらえるのはすごく楽しみです。映像でもたくさん活躍されている山田さんと仲村さんとご一緒できるというのも、いつも映像で見ているお二人とは違う姿を共演者として身近で見られるのが楽しみですね。
――舞台の場合、稽古が約1か月くらいあって、今回はツアーも含めると本番が1か月強あるので、トータルで2か月間くらい皆さんとみっちり一緒に過ごすことになります。
映像の現場だと、もうちょっとお話ししたかったな、と思うことがあるんですけど、きっと舞台だったらいろいろお話しできる時間もあると思いますし、どうやってみんなで作っていくのかも私にとっては未知の世界ですし、すごく楽しみですね。
――逆に、今の時点で不安に感じている部分はありますか?
初舞台なので、舞台に向いてなかったらどうしよう、と思います(笑)。これはやってみないとわからないので、前川さんは「大丈夫ですよ」って言ってくださったのですが、不安です、すごく。でも、共演者の皆さんや、前川さんに胸を借りるつもりで、初めての舞台というのも一回限りのことなので、この初めての機会に教えていただけること、学べることをできるだけ吸収したいです。そして、皆さんに迷惑をかけない範囲で、できる限りいっぱい恥をかいてこの舞台に挑みたいと思っています。
――今回が初舞台ですから、映像で奈緒さんのことを知っている人も、舞台での奈緒さんを見るのは当然初めてになります。ご自身としては、どういうところを見てもらいたいと思いますか。
舞台を見るときの面白さは、映画やドラマと違って、自分が見たいところを見られることだと思います。極論ですが、皆さんが私のことなんて見ていなくても、好きなところを見て楽しんでいただければそれでいいと思っています。その視線の先に自分がいたらうれしいな、とはもちろん思いますが、カットもかからないし編集もない中で、舞台に立っている人がその場で生きている、っていうのを見てもらいたいですね。
――『半分、青い。』で奈緒さんのお母さん役だった池谷のぶえさんも舞台女優として活躍されていて、前川作品にも出演経験があります。撮影のときに、池谷さんと舞台のお話しはされましたか。
池谷さんに「舞台をやってみたいんです」という話をしたことがあります。そのとき「どういう舞台をやりたいの?」と聞いてくださったので、「自分が面白いと思える作品、一緒にやってみたいと思える方と出会えたらうれしい」と答えました。そうしたら池谷さんも「本当にいい演出家といい脚本に出会えたら、舞台はすごく面白いよ」と言ってくださって、でもそのときは、池谷さんが何度もご出演されている前川さんの作品で初舞台を踏むことになるとは思っていませんでした。だから次に池谷さんとお会いできたら、もっとお話ししたいですし、いつか舞台でご一緒したいです。
――では、最後にこの舞台を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
前川さんのファンの方はもちろん、今までこうしたSF作品の舞台をあまり見たことない方にも楽しんでいただけるような舞台になったらいいなと思っています。私の初舞台でもありますので、それを一緒に体験してもらえたらうれしいです。ぜひ劇場にいらして下さい。
取材・文=久田絢子 写真撮影=池上夢貢
公演情報
■会場:世田谷パブリックシアター
兵庫公演 11月23日(土・祝)12時/17時、24日(日)12時 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
新潟公演 11月30日(土)13時30分 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
宮崎公演 12月 4日(水)18時30分 宮崎県立芸術劇場 メディキット県民文化センター
■出演:
山田裕貴 安井順平 浜田信也 盛 隆二 森下 創 大窪人衛
奈緒 清水葉月 村岡希美
仲村トオル
■問合せ:世田谷パブリックシアター
03-5432-1515(10:00~19:00)
■公式サイト:https://setagaya-pt.jp/performances/owarinonai20191011.html
■企画制作:世田谷パブリックシアター エッチビイ
■後援:世田谷区
■協賛:トヨタ自動車株式会社 東邦ホールディングス株式会社 Bloomberg
■協力:東京急行電鉄株式会社