マタギとゆく、紅葉ブナの原生林トレッキング

2015.11.21
レポート
イベント/レジャー

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え? マタギの山に入れるの?

この日本では年々、山の仕事の一切が衰退の一途をたどっている中、まだまだたくましく山と暮らしてる地域もあります。新潟県の最北端・村上市山熊田もその一つで、最寄駅「府屋」(羽越本線)までおよそ19km、最寄りの集落まで8kmの、県道のどん詰まりにあるマタギの村でもあります。

薪ストーブの煙くゆらす、早朝の山熊田の集落。

 

その山熊田で、「紅葉のブナ林を歩く会」というトレッキングイベントが行われました。なんと、道先案内人は山熊田マタギの皆さんと、地元の山に精通する方々です。

主催者で山熊田マタギの大滝国吉さん

実はブナの原生林が広がるこの山、現在でも山熊田の暮らしに欠かせない大切な山で、日常的に登っています。狩猟の場のみならず、山菜や木の実などの食料、水、燃料、道具や工芸品の素材、山からの恩恵と共存ぶりは凄まじいものです。その山の紅葉の美しさを楽しもうということで、20年以上も前からこのトレッキングは開催されてきました。今では毎回60名ほどが集う恒例の一大イベントとなっています。

 

目指すのは、山形県との県境「二ノ俣峠(標高800m)」。林道の終点まで車で移動し、そこから山登りが始まります。

片道2時間半の山道は、登山道というよりけもの道のような箇所もあるのですが、登山ド素人の私でも空を仰ぐ余裕があるくらいのペース。紅葉した落ち葉をサクサクと踏み進み、様々な植物やクマの爪痕を見つけ楽しみながら進みます。

ブナの大木。この古傷、クマかなあ…。

 息が上がってきたころ、マタギの方が鉈でスパスパッと杖を作ってくれました。ありがたいです!

あっという間に、杖を作ってくださいました!

 

圧倒的な美しさのブナの原生林は黄金色で、その下にはたくさんのブナの実が落ちています。蕎麦の実を大きくしたような三角の尖った殻を割って食べてみると、これがすごくおいしい!マカダミアナッツを凝縮したような抜群のおいしさ。

今年豊作のブナの実。

5年に一度しか実をつけないブナは、今年は豊作だそうで、「今年の熊は良さそうだ」とマタギの頭領の一言で、ここがマタギの山だとあらためて実感します。

 

湧水の集まった沢を渡り、九十九折の細道を行き、無心に歩き続けて、ニノ俣峠の山頂に着いたら、もうそれは絶景!見上げるものだと思っていた山々が目下にあり、月山や鳥海山、以東岳の雪化粧が同じ目線にある。山に登る人の気持ちが全くわからなかった私には、「これか!」と目からウロコの感動的な感触でした。

 

山熊田マタギの頭領と、大鳥マタギ見習いの青年と、ニノ股峠で。

 

かつてこの道は、峠を越えて向こう側にある山形県鶴岡市大鳥地区(ここもマタギの村)との交流交易のための生活道で、この山道を歩いて4〜5時間歩いたそうです。そしてこの辺りの山はゼンマイや栃の実、きのこなどを採ったり、炭焼きや山出し(林業)をしてきた仕事場。峠から目下に見える大鳥池には伝説の魚「タキタロウ」が生息すると言わています。現代の感覚とまったく違うことばかり。

マタギの皆さんが歩きながら「あそこの岩のあたりにクマがつきやすい」とか、「そっちの沢を行くと栃の大木がある」「水芭蕉の群生はあそこの先」と、いろいろ教えてくれます。山を知りつくしたマタギの方々の知識は、ネットで検索しても決してヒットしない体温のある地図そのもので、聞いているだけで想像をかき立てられておもしろいです。

 

「山奥での暮らし」と聞くと、切羽詰まった悲壮感さえ想像しそうなものですが、ここは全く逆で、そのあふれる豊さと伸びやかなスケール感は、山があってこそ。古くからの営みや受け継がれてきた伝統や知恵、暮らしのスタイルなど、そのほとんどを失ってきた現代の日本人にとって、溢れんばかりのロマンを垣間見ることができる、類稀なトレッキングなのではないでしょうか。

 

雪のある3月には「かんじきトレッキング」、雪解けを待って5月には「残雪のブナ林を歩く会」も毎年開催されています。この世とは思えない美しい森里山を歩きます。こちらもオススメ!

 

※ここに限らず、地元の方々が大切にしている山はたくさんあります。マナーを守って山を楽しみましょう。

イベント情報
紅葉のブナ林を歩く会
 日時:毎年10月下旬〜11月上旬のいづれかの週末(2015年は11/3開催・要問合せ)
 会場:新潟県村上市山熊田