TRI4TH 踊れて、叫べて、そして歌える、ジャズバンドの限界を突き破る新作『jack-in-the-box』に溢れるロックスピリット
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TRI4TH(L⇒R:竹内大輔/Pf、関谷友貴/Ba、伊藤隆郎/Dr、藤田淳之介/Sax、織田祐亮/Tp)撮影=堂園博之
踊れる、叫べるだけじゃない、今度は歌えるジャズだ。ロックスピリット溢れる演奏でジャズバンドの限界を突き破る、TRI4THのメジャー第二弾リリースは全曲新曲のフルアルバム『jack-in-the-box』。びっくり箱のようにアメイジングで、ジェットコースターのようにスリリング、シャンパンの泡のように爽快にハジける全12曲。ランシドのカバー「Time Bomb」を筆頭にホットでアッパーな楽曲をずらりと揃え、この夏ロックフェスへ大量進出する旬のバンドの勢いを詰め込んだ自信作。聴けばわかるさ。
パンクスさえも踊らすことができるジャズバンドは俺たちしかいないという自負はあるので。モヒカンもタトゥーも踊らせたいと思います。
――前作の『ANTHOLOGY』が改めての自己紹介だったとすると、“次は全部新曲で”というプランは最初からあったのかな?と思うんですけど。
伊藤隆郎(Dr):そうですね。『ANTHOLOGY』はメジャー1作目で、これまでライブでやってきた代表曲を中心に再録してリリースさせてもらったんですけど。今回はカバーも含めて新曲で行こうということは決めてました。だいたい今まではライブで披露して育てて、というのが僕らのやり方だったんですけど、今回ほとんどの曲がライブで披露していないので、リスナーの人もCDで初めて聴く、刺激的な1枚になったんじゃないかと思います。
竹内大輔(Pf):今までの作り方がとても役に立っていますし、さらにいいものを作ろうという発想になりましたね。ライブでやるとこういう画が見えるとか、いつもそういうことを想像しながら作っていたんですけど、“だったらもう一歩先に行けるんじゃないか?”という感じで作れたんじゃないかと思います。
藤田淳之介(Sax):その中で僕らが得意としている“踊れる、叫べるジャズ”から“歌える”という新しい要素に、どうやったらリスナーがついてくるか?とか、テンションが上がるか?ということをすごく意識しました。それぞれが作曲して、音を出して、“この曲は弱いな”というものを切り捨てて、また次の曲を作っていく。時間がない時は、1曲をなんとか形にすることをやりがちなんですけど、あえてそれをせずに切り捨てて、次へ次へと、数も作りました。
――ダメだと思ったらその場でガシャン!みたいな。まるで陶芸家のような。
藤田:そうですね。あとで拾ったりもするんですけど(笑)。
竹内:このカケラはなんとかならないかな?みたいな(笑)。
伊藤:Bメロだけ蘇るみたいな、そういうのはけっこうあったと思う。わりとそういうところは、DJ的な発想でやってるところもあるので。作曲者が誰でも、違う人のメロディを混ぜたりとか、そういうのは数曲ありますね。
竹内:たぶん全部新曲だからできたんだと思うけど、そういう意味では柔軟に作れたのかもしれない。思い切ったことも、パッと思いついて“やってみようか”って、みんなでやれる感じになってましたね。
TRI4TH 2019.7.10 渋谷クラブクアトロ 撮影=堂園博之
――リード曲はどれで行きます?
伊藤:「Time Bomb」でミュージックビデオを作りました。ランシドのカバーではありますけど、自分たち流にアレンジしてるので、一推しという感じです。
――まるで持ち曲のようにハマってますけどね、そもそも誰が言いだしたのか。
伊藤:元々僕がずっと好きだったんですよ、自分のルーツとして。TRI4THはこれまでもスカを取り入れて、自分たちなりに消化していくということをトライしてきた中で、気づいてる人もいると思うんですけど、「FULL DRIVE」という曲に入ってる“ワン、ツー”っていう掛け声は、スペシャルズとマッシュアップするつもりでやってるんですよ。その流れで、ランシドの「Time Bomb」を自分たちなりに面白くできないかな?というのが最初のスタートではありました。最初はぶっちゃけ“できない!”と思いましたね。好きすぎて“ランシドよりかっこよくできんのかな”って思ったのと、ランシドぽさを残しつつ、インストゥルメンタルバンドたる主張の仕方をどうすればいいか、そのバランスに最初は悩んだんですけど。いざやってみたらサクサク進んで、“行けるかも”という感じになっていきました。
――伊藤さんの男っぽいワイルドな声、ちょっと似てません? ランシドのティムに。
伊藤:ティムが降りてきましたね(笑)。10代からずっと聴いてて、たぶんアルバム全部持ってると思うんですよ。時と共に聴く音楽が変わってきて、中学生高校生の時に夢中になったけど今は聴かない、というものあるんですけど、僕は今でもランシドを聴くんですね。カバーできたことがむちゃくちゃ嬉しいし、だからティムが降りてきたんじゃないかと。
藤田:見出しだね。“ティムが降りてきた”(笑)。
伊藤:実際聴くと、ああいうふうに歌ってないんですけど、僕にはそう聴こえてるんですよ。“イエー!”っていう叫びも、原曲はダルい感じでそんなに張ってないのに、僕には張ってるように聴こえてて、“たぶんこうだろうな”というものがあって。それがTRI4THとしてまとめれたのはすごく嬉しいです。
――それと2曲目の「ぶちかませ!」。この路線得意ですよね。煽り系と言いますか。
伊藤:アジテートですね。トランペットの織田くんの曲なんですけど、最初から「ぶちかませ」って楽譜に書いてあって、ここで言うんだなと(笑)。2回じゃぶちかませないな、やっぱ4回ぐらいぶちかまさないとって。
竹内:このワードから構成を考えていった感じですね。「ぶちかませ」がもう一周いるな、とか。
伊藤:ライブで男性も女性も関係なく“ぶちかませ!”と叫んでくれるのは、見てて楽しいですね。
――この曲、そこはかとなく漂う「テキーラ」感がたまんない。
伊藤:気づいていただけて良かったです(笑)。そういうオマージュ的なことは、前作の「Stomping’ Boogie」でも、ビッグバンドのアレンジで聴いたことがあるようなフレーズを出してくるという、秀逸な作り方が織田くんはうまいですね。パクリではないですよ(笑)。
――「Sunny Side」は、スカというかロックステディというか。めちゃくちゃ気持ちいい。
伊藤:ネオスカというか、速いテンポのツートーンな感じというのは、今回の中だと「Time Bomb」とか、今までも「FULL DRIVE」とかでトライしてきたんですけど、こういうオーセンティック寄りの、スカタライズ、デタミネーションズみたいな感じのものもいつかやりたいなと思っていて。でもノリ自体にうねりがあって、僕らはギターがいないからピアノで裏打ちのビートをフォローしていて、ノリ自体がすごく難しい。スカってジャマイカンジャズじゃないですか。それを僕らもできるぜ、というところを、ようやく出せたのかなという気がします。
TRI4TH 2019.7.10 渋谷クラブクアトロ 撮影=堂園博之
――新しさを感じたと言えば、「Shot the Ghost」のグルーヴィーなオルガン。最高にかっこいいですよ、竹内さん。
竹内:これはもう、本当にトライでした。キーボードのオルガンじゃなくて、本物のハモンドオルガンを弾かせてもらって、楽しかったですね。ピアノはリズムの要だと思われてるんですけど、オルガンはもっとギター寄りだったり、管楽器風とも言えるところがあって、それにどう寄り添って、しかもアッパーなものに持って行けるのか?と思いながらやってました。これがTRI4THの新たなサウンドの一つになったらいいなと思います。
藤田:サックスがベースリフをやる曲が毎回あるんですけど、今回で言うと「Shot the Ghost」がそれですね。普段はメロディを吹いて、間奏はほかの楽器に任せて、もう一回メロディに戻ってソロを吹く構成が普通の曲のあり方なんですけど、メロディを吹いて、リフを吹いて、ソロを吹いてまたリフを吹いて、いつ休む?みたいな(笑)。やってて死にそうになるんですよ。
伊藤:ギリギリ限界をね。
藤田:最近どんどんライブパフォーマンスが激しくなってきて、3年前とかよりも運動量が3、4倍上がってるんですよ。体力つけなきゃいけなくて、アルバムを作ってツアーをするたびに、土手を走り続けてます。
伊藤:土手っていうのがいいね(笑)。
藤田:健康のためとかじゃなくて、辛いと思ってからもしばらく息を吐き続けられるように。中距離走みたいな感じで走ってます。
竹内:アスリートだね。
藤田:でもその、辛そうにして振り絞ってる感じを見て、お客さんがまた上がるというのも感じてるんで、やめられないなと。この曲は、ライブの時には見ものですね。
伊藤:織田くんも同じように体を鍛えてると言ってるんで、秋頃にはすごい痩せてるんじゃないかな(笑)。これは活字で残しておいてもらわないとね。ツアーが始まる時にちゃんと痩せてなかったら、あいつサボりやがったなという、そこをみなさんにぜひチェックしていただきたいので。
TRI4TH 2019.7.10 渋谷クラブクアトロ 撮影=堂園博之
――「BANDWAGON」の、トランペットとサックスの掛け合いも最高じゃないですか。
藤田:これは曲名が先にできてたパターンですね。先につける時は曲の作り方が変わってくるんですけど、ソロもそういうところを意識して、“旅するバンド”というストーリーが自分の中にあったので、それに対して織田が返すという。
――ああそうか、あれは会話なのか。
藤田:セリフがあるわけじゃないんですけど、バンドでの旅は楽しいことばかりじゃないとか、時には苦境があって……とか、そういう思いは入ってます。
伊藤:初めて聞いた。それが魂の叫びになってる。
竹内:トランペット、めちゃめちゃハイノートやってるでしょ。
伊藤:あれはたぶん、旅の辛さを表現してる。バンドのワゴン車に揺られて12時間、九州についた時の気持ちみたいな(笑)。
――インストってそういうイメージが広がる余地がたっぷりあるのがいいですよ。そう考えるとタイトルって大事ですよね。「Shot the Ghost」って何なんですか(笑)。
伊藤:これは僕が作ったんですけど、まあ、ゴーストをショットしてるという(笑)。後からつけたタイトルなんですけど、ゴーストというのは亡霊みたいなものというか、自分の中で振り切りたいものがあって、それを撃つというイメージだったんですね。ホーンもわりとハードボイルドな感じで、ドラムとベースもハードコアなリズムで、自分の背景にある断ち切りたいものを表してるというか。鉄砲を撃ってるイメージで、SHOTかBANGのどっちかにしようかと思ってました。
――そしてラストの「Sing Along Tonight」、これはもう完全に歌ものと言っていいですね。
伊藤:全部歌うというコンセプトは最初からありました。僕ら、ライブでポーグス(THE POGUES)の「Fiesta」をカバーしているんですけど、僕らのリスナーはポーグスとかアイリッシュ・パンクをほぼほぼ知らないと思うんですよ。知らない中でも「Fiesta」を演奏した時の手応えがすごくあって、アイリッシュの独特の踊れるビートとか、今回は取り入れてないんですけどバグパイプ、ティンホイッスルとかが鳴ってる祭り感みたいなものを、僕らの編成でどうやったら表現できるんだろう?という感じでトライしてみました。“みんなで歌って、一つになれるような曲を作ろう”というのが最初にあったんで、シンプルなメッセージを歌詞にしてます。まさか自分が歌うことになるとは思いませんでしたけど(笑)。
――これは誰か降りてきたんですか? ポーグスのシェインかな。
伊藤:そうですね(笑)。いろんな人の力を借りて(笑)。もうライブで披露させてもらってるんですけど、メロディが覚えやすくて、1回聴けばすぐに参加できるんで、みんなで歌える曲になってると思います。
藤田:フェスとか、自分たちを聴いたことのないであろう方が集まっている場所であっても、いい感じに沸いてたので。歌う曲でも盛り上がれるという新しい形ができていくんだろうなと思いますね。
TRI4TH 2019.7.10 渋谷クラブクアトロ 撮影=堂園博之
――10月からのツアータイトルも『SING ALONG TOUR』ですからね。インストバンドが“一緒に歌おう”って、面白いなあ。
竹内:去年が“SHOUT”ツアーだったので、その流れも汲んで。
伊藤:もともとインストゥルメンタル・バンドとしてスタートしてるから、僕としてはけっこう不安だったんですよ、歌うということが。もう完成しているところに声が足されると、良くもできるけど悪くもできるし、曲のイメージを左右するから。人の声はやっぱり楽器とは違うので、ちゃんとやんねえとヤベぇなと。
――それは、歌とバックバンドになってしまうということ?
伊藤:そういうことも含めて、バランスとしてどうあるべきか。もちろん歌う以上は歌が立っていかなきゃいけないんですけど、歌が前に出てきた中で、初めて聴く人にも、今までの僕たちを知っている人にも、どういうふうに受け入れてもらえるのか。結果的にそのチャレンジは成功したと思うし、たくさんの人に受け入れてもらえる曲ができたと思います。
――伊藤さん、そもそもいい声ですもんね。ね?
竹内:いい声です。もっと生かしましょう。
――ほかに歌える人いないですか?
藤田:いやー、ダメですね。
伊藤:みんな歌うんだよ!
藤田:♪ラララ~のところは全員参加してますけど、歌詞のところはやめとこうと(笑)。
――秘密兵器ほしいですね。
伊藤:織田くんが、実はサッチモだったとか(笑)。管楽器奏者って歌える人が多いから、ジュン(藤田)も行けるはずなんですけどね。
藤田:じゃあ、土手で練習してきます(笑)。でも新たなことにはどんどん挑戦していけたらと思ってるんで、まだまだ自分らには可能性があるんだと思い続けてます。
TRI4TH 2019.7.10 渋谷クラブクアトロ 撮影=堂園博之
――そんなアルバムのタイトルが、びっくり箱。『jack-in-the-box』ですか。
伊藤:前作の『ANTHOLOGY』は、新録音のベストアルバムとして象徴的な言葉を使わせてもらいましたけど、その前まではロックなイメージを打ち出して、わりと攻めたタイトルが多かったんですよ。今回もロックな感じで攻めてるんですけど、それ以外にうまく表現できる言葉はないかな?と考えて、僕のイメージは遊園地のジェットコースターだったんですよね。1曲1曲バリエーションに富んでいて、歌うということにもトライして、今までの僕らを知ってる人が聴けば本当にびっくりするアルバムなんじゃないか?と思って、それを一言で言い表すために『jack-in-the-box』になりました。アートワークにも反映させていただいて、面白いものに仕上がったと思います。
――そして秋のリリースツアー……の前に夏フェスがある。7月から9月までで10本くらい出るし、相当張り切ってます。
伊藤:昨年メジャーデビューさせてもらって、今年は攻めの1年として、『SUMMER SONIC 2019』をはじめとしたロックフェスに進出する最初の年になりますね。ジャズバンドなので、ジャズのスピリッツはずっと変わらないですけど、ロックフェスのお客さんで、ジャズを聴いたことのない人にもかっこいいなと思ってもらえることが、僕らのやるべきことだと思うので。僕らが入り口になってディープなジャズを聴いてもらって、若い世代にも楽しめる音楽なんだということを伝えていけたらいいなと思います。
――特に『サマソニ』。なんとランシドと同じ日ですよ。すごい偶然。
伊藤:ランシドは、唯一ガキの頃から何回も見に行ってるアーティストなので。僕が初めて『サマソニ』に出る同じ日にランシドも出て、同じ場所に名前を連ねることができるのは、夢が1個叶ったと思います。元々パンクバンドをやっていて、ジャズバンドをやると決めてTRI4THを結成して、ジャズバンドなのにランシドをカバーするとは10年前は思ってなかったですし。自分の中でいろいろ環境が変わりつつ、軸はブレずにジャズバンドとして看板を持ちながら、パンクさえも飲み込むことができたと思ってるので。パンクスさえも踊らすことができるジャズバンドは俺たちしかいないぜ、というぐらいの自負はあるので、モヒカンもタトゥーも踊らせたいと思います。
取材・文=宮本英夫 撮影=堂園博之
TRI4TH 撮影=堂園博之
リリース情報
2019年7月10日発売
SECL-2447-8 価格¥3.500(Tax in)
■通常盤(CDのみ)
SECL-2449 価格¥3.000(Tax in)
ライブ情報
<オフィシャルHP先行受付>
<プレイガイド最速プレオーダー>