澤村國矢が超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』(リミテッドバージョン)で初音ミクの相手役「ボーカロイドならではの口調が魅力」
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澤村國矢
2016年より「ニコニコ超会議」の中で公演を重ねてきた「超歌舞伎」。日本の伝統芸能・歌舞伎と超高臨場感通信技術「Kirari!」をはじめとする最新テクノロジーを融合させて、分身の術などこれまでの舞台ではありえなかったような演出を実現。また、中村獅童ら役者とバーチャルシンガー・初音ミクが共演するという、これまた夢のような空間も創出。驚きと称賛が巻き起こった。5回目となる今回は、リニューアルした京都・南座で『八月南座超歌舞伎』が開催され、『お国山三 當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)』『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』などが披露される。そんな超歌舞伎に、中村獅童とともに毎回出演しているのが澤村國矢。『今昔饗宴千本桜』では初演時よりおなじみの敵役・青龍の精を演じるほか、同作のリミテッドバージョンでは主演の忠信を勤める。中村獅童からも絶大な信頼を受け、「超歌舞伎では國矢を見て欲しい」とプッシュを受けているが、当の國矢はそういった言葉をどのように受け止めているのか話を訊いた。
――國矢さんは2016年の第1回目から毎回、超歌舞伎に出演していらっしゃいますが、当初は初音ミクさんのことは「名前は知っているけど、詳しくはよく分からない」という状態だったんですよね。
はい、2016年に共演が決まった際は自分でいろいろとリサーチをしました。ネットでまず動画を調べて、ライブの様子を鑑賞しました。思っていたものとは大きく違って、いきいきと(ステージに)浮かび上がっている姿を見て驚いた記憶があります。
――でも、いざ共演となると、戸惑いの方が大きかったのではないですか。
その場で起こり得るものを、直感でやろうかなと思いましたね。自分で調べているときも、「これって本当にできるのか」と深みにはまりそうだったので、いろんな人から意見を聞きました。
――初音ミクさんはなぜここまで人に愛されているのだと思いますか。
『千本桜』という楽曲の大きさがまずありますよね。初めて聴くジャンルの音楽でしたが、そんな自分であっても「いいものはいい」と実感しました。ブルッと震えるような瞬間がある。ただ一方で、ボーカロイドには馴染みがなかったので、最初は違和感があったのも確かです。
――舞台上では、そうやって違和感を持ったボーカロイドとのやりとりになりますもんね。
ミクさんが歌舞伎の台詞を喋っているとき、やはり生身の人間とは違うので戸惑いました。「こんな感じになるんだ」と。しかし、これがあまりにも生々しいものになるとミクさんの魅力は半減する。ボーカロイドならではの口調だからこそおもしろいですね。
澤村國矢
――歌舞伎はどの時代でもその時々の文化、流行を取り入れ、また先取ることもありますよね。やはり、そういった「その時代をキャッチする感覚」は歌舞伎を作り上げる上においてもっとも大事な要素の一つですよね。
歌舞伎にとって古典の力はすごく大きいし、大切にしなければいけない。でも、「古典だからこうだ」というものを誇示し続けるのではなく、お客様が期待する新作を、時代にあわせて作り上げる必要もある。そして、それがいずれ古典になっていく。歌舞伎の魅力をいかにして広げるか、興味を持ってもらうか。時流を取り入れる必要性はそこにあるのではないでしょうか。
――國矢さんは、6月に南座で人気コミックを舞台化した新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』で薬師カブトも勤めました。もともとそういった漫画、アニメなどのカルチャーもお好きなんですよね。
なにせ僕は『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』の世代ですから! 当時、『聖闘士星矢』の聖衣(クロス)は全部買いましたよ。あと、『キン肉マン』のキン消しも集めていました。
――世代的にそのあたりはドンピシャですよね。
漫画、アニメは大好きでしたね。そして、成長するにつれてハマる対象が歌舞伎になり、それが仕事となりました。『NARUTO』も、原作のファンの方がたくさん足を運んで来てくださります。漫画やアニメなど、もっともっと歌舞伎で舞台化されたら良いですよね。
澤村國矢
――共演の中村獅童さんも、歌舞伎のみならず映画などで漫画などの原作モノに積極的に出演していらっしゃいます。獅童さんは歌舞伎のイメージを新鮮なものに塗り替えた一人でもありますが、國矢さんにとっても特別な存在ではないですか。
もちろんです。古典や歌舞伎だけではなく、映画などすべてにおいて、心をしっかり動かしながら役を演じていらっしゃる。特に古典は、まず型があるので、そこに心を乗せていく過程が非常に難しいものなのですが、獅童さんは(心を)あそこまで乗せて表現する。それが人間味となり、観客を惹きつけていきます。
――先日、獅童さんを取材したのですが、「超歌舞伎は、國矢さんにもっと頑張って欲しい。自分よりも前に出てほしい」とおっしゃっていました。
嬉しいですね。最近は記者会見でもよくご一緒させていただきますが、その期待を強く感じます。獅童さんはかつていろんなオーディションを受けて、そして役を勝ち取っていかれた。さまざまなご経験を持っていらっしゃり、そこで会得したものを生かし、僕をはじめとする後輩を支えてくださっています。本当に感謝の気持ちです。
澤村國矢
――今後も超歌舞伎は、新しい技術を取り入れて続いていくと思います。そして、歌舞伎では不可能だったことが可能になるはず。國矢さんは、最先端の技術で実現させたいことってありますか。
『スターウォーズ』の、あのホログラムみたいなものができるようになってほしい。レイア姫がSOSを出していた、あのシーンです。今は、そういったものは後ろにスクリーンなどを設置してそこに投影させていますし、あとARやVRで見せることもできるのでしょうが、そうではなく実際の劇場で、肉眼で目撃できるようになったら、ますますおもしろいですね。
――演じる側もその方がやりやすいですよね。
そうです。僕らも、それを肉眼で見ながらお芝居ができる。今はどうしても、バーチャルなものはお稽古ではすぐに見ることができない。だから、イメージを作るのが大変なんです。だけど超歌舞伎はそういうことも実現可能なコンテンツ。今後も新しい技術でいろんな作品をお見せしたいです。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=田浦ボン
公演情報
- 超歌舞伎のみかた
- お国山三 當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)
出雲のお国:初音ミク
名古屋山三:中村獅童 - 今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)中村獅童宙乗り相勤め申し候
佐藤四郎兵衛忠信:中村獅童
初音未來/美玖姫:初音ミク
初音の前:中村蝶紫
青龍の精:澤村國矢
一. 今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)
佐藤四郎兵衛忠信:澤村國矢
初音未來/美玖姫:初音ミク
青龍の精:中村獅一
初音の前:中村蝶紫
口上 中村獅童