[ALEXANDROS]、Perfume、あいみょんら登場 晴天の山中湖が揺れた『SWEET LOVE SHOWER 2019』2日目
-
ポスト -
シェア - 送る
[ALEXANDROS] 撮影=西槇太一
SWEET LOVE SHOWER 2019 DAY2 2019.8.31 山中湖交流プラザ きらら
■藤井 風
藤井風 撮影=古溪一道
朝イチの湖畔のステージに登場したのは、いまYouTubeのカバー動画で注目を集める22歳のピアノマン・藤井 風。まだオリジナル音源のリリースはないが、その若い才能を目撃しようと、多くのお客さんが会場に詰めかけていた。サンダルを引っかけたラフなスタイルで登場した藤井は、真骨頂と言われる椎名林檎「丸の内サディスティック」、クラシカルなアレンジで聴かせたORIGINAL LOVE「接吻」カバーなど、卓越したピアノと泥臭い歌声で会場をゆったりと揺らす。MCでは「朝早よから、こがんぎょうさん集まってくれて」と、朴訥とした岡山弁で和ませると、最後に未発表の新曲バラード「優しさ」を披露(本人曰く、これは「優等生」な感じの曲で、もっと悪い感じの曲はワンマンでのお楽しみ、とのこと)。今後、頭角を現してくるであろう実力派新人の貴重なアクトだった。
藤井風 撮影=古溪一道
ズーカラデル 撮影=AZUSA TAKADA
各日の朝一番、スペースシャワーTVが注目する新鋭アーティストが登場するFOREST。様々なアーティストのファンが集まるなか、2日目はズーカラデルが軽快なロックンロールをのびのびと届けた。曲が終わる度に吉田崇展(Gt/Vo)が言う「ありがとーう!」はリズミカルで、それ自体が歌に聞こえる。不器用さを隠しきれていないMCのあとに演奏されたバラード「友達のうた」が特に素晴らしかった。他の曲のときより一際やわらかな声色をした吉田のアカペラから始まるこの曲では、“同じ音楽の中に居合わせた他人同士”の関係性が描かれている。あなたの喜びや悲しみをすべて理解することはできないが、あなただけのものであるその感情を侵すつもりもない。このような形で“自由”を歌ってくれるバンドがいるのだという事実に、私は心から救われた。
ズーカラデル 撮影=AZUSA TAKADA
Hump Back 撮影=渡邉一生
スコーンと青空に突き抜ける林萌々子(Vo/Gt)の真っ直ぐなボーカルがFORESTに響きわたった初登場のHump Backは、痛快な青春パンク「拝啓、少年よ」を皮切りに、森のステージをライブハウスへと変えた。「短編小説」では、「大事なものは心のなかにあるんだ!」と叫んだ林がステージを降り、最前列の柵を乗り越えんばかりの勢いでお客さんの近くへと駆け寄る。泣いたっていい、明日こそ笑えれば。感情の起伏を力強くも繊細になぞるHump Backのロックには、そんな揺るぎない優しさと包容力がある。大自然に囲まれたロケーションを楽しむように、ぴか(Ba/Cho)は「やっほー!」と山彦のようなコール&レスポンスを巻き起こし、切ないラストソング「星丘公園」まで、そのステージには、ライブハウスを信じ続ける彼女たちのロックバンドへの愛情とロマンがこれでもかと詰まっていた。
Hump Back 撮影=渡邉一生
あいみょん 撮影=AZUSA TAKADA
見渡す限り、人、人、人、状態のLAKESIDEに登場したあいみょんは「愛を伝えたいだとか」のファンクサウンドからスタート。続く「君はロックを聴かない」では歌詞を口ずさむ人が驚くほどたくさんいて、すごい光景が生まれる。「私、(今年の)夏フェスこれで最後なんですよ。だから全部置いて帰ります!」というMCのあとにはアコギでコードをジャーンと鳴らし、あの曲の登場を察した観客が喜びの声を上げる。そう、3曲目は「今夜このまま」だ。「生きていたんだよな」を終えると、最新曲「真夏の夜の匂いがする」を披露。色彩豊かなサウンドの上を滑る彼女の歌はしなやかで、時にはバンドを引っ張る腕っ節の強さも光る。その後「貴方解剖純愛歌 ~死ね~」からの「マリーゴールド」でライブは終了。大勢からの期待を一身に背負ったあいみょんは、代表曲を惜しげもなく披露し(リハでは「ふたりの世界」も)、その期待に真っ向から応えてみせた。
あいみょん 撮影=AZUSA TAKADA
sumika 撮影=古溪一道
「sumika、はじめまーす!」。片岡健太(Vo/Gt)の叫び声を合図に、また一回り大きなバンドへと成長を遂げたsumikaのめくるめくショータイムが幕を開けた。「伝言歌」」から「Lovers」へと、軽やかなピアノが絡むにぎやかで心踊るアンサンブルがLAKESIDEに特大のシンガロングを巻き起こしていく。今年で3年連続の出演。「こんなラブシャは見たことない!」とメンバーが表情を綻ばせた視線の先には、まるでsumikaのホームグラウンドのような素敵な景色が広がっていた。ブラックミュージック系のルーツが色濃い「Flower」や「Traveling」といった最新のナンバーで、音楽的にも芳醇な進化を遂げているバンドの“いま”を伝えると、片岡が「何かあったときに、ここが待ち合わせ場所になるように」と願いを込めた、ラストソング「フィクション」へ。このフェスが終わったあとの日常にも鮮やかな彩りを与えてくれる、陽性のエネルギーに満ちたハッピーなステージだった。
sumika 撮影=古溪一道
■クリープハイプ
クリープハイプ 撮影=西槇太一
エレキを鳴らしながら尾崎世界観(Vo/Gt)が「栞」を歌い始めたものの、「こっちもさあ、変わり映えのないセットリストで最初から盛り上がる曲やってるんですよ。もう少しくださいよ」と中断、からの再開——という幕開けだったクリープハイプ。観客の手拍子が不釣り合いにも見えるほどヒリヒリとした音を鳴らした序盤。陽の光が差し込むなか演奏された「ラブホテル」、「イト」。そして「1年休んだらこの枠に別のバンドが入ってきて盛り上がるのかと思うと、やっぱり他に渡したくないと今日来るとき思いました」と「HE IS MINE」で締めたラスト。<愛・・・・してない訳 無い・・・・けどさ>と歌うあのサビが裏返しを重ねる言い方であるように、尖っては丸くなり、唾を吐いては愛情を求めるこのバンドのライブは捻くれていて歪ではある。でも本来、お利口で解りやすくある必要なんてないんだよなあ。だってロックバンドなんだから。
クリープハイプ 撮影=西槇太一
■松本 大(LAMP IN TERREN)
松本大(LAMP IN TERREN) 撮影=渡邉一生
夕刻の強い陽ざしが照りつけたWATER FRONTでは、LAMP IN TERRENの松本 大によるアコースティックステージがはじまった。「ボイド」ではアコギを、「花と詩人」ではピアノをと楽器を使いわけ、時に儚く、時に荒々しく紡がれるメロディ。どんな伴奏のなかでも、ロックボーカリストらしい歪な翳りが滲む松本の歌には、「歌が上手い」とか「声がいい」とか、そんな次元を超えた存在感がある。マイクスタンドをステージ際まで移動して、よりお客さんに近づいたMCでは、ラブシャに帰ってこられたことを喜びつつ、本当はバンド編成で来たかったと悔しさを滲ませる場面も。最後に「このステージで始まることがある」と、高ぶる気持ちに身を任せて届けたラストソング「BABY STEP」まで、ありのままの自分で生きていくという想いを、丸裸な歌で届けた生々しいステージだった。
松本大(LAMP IN TERREN) 撮影=渡邉一生
フレデリック 撮影=AZUSA TAKADA
メンバー同士が向かい合って音を合わせるなか、「35分一本勝負、フレデリックです。よろしく!」と三原健司(Vo/Gt)が宣言。「KITAKU BEATS」から始まったフレデリック。この夏彼らは10月リリースの新作収録曲を各地のフェスで先駆けて披露しているようで、“35分一本勝負”の軸にあったのはそれら新曲群だった。1つ目の新曲「イマジネーション」はギターに引っ張られるようにして、初めはクールだったサウンドがどんどん生っぽくなっていく展開が熱い。2つ目の新曲「VISION」は爽快なアッパーチューンで、「イマジネーション」よりも歌を聴かせることに重きを置いたアレンジという印象だ。また、その他既存曲にもバンドの意図を投影。例えば、普段終盤に演奏されがちだが今回は2曲目だった「飄々とエモーション」はビートに工夫をが施されていて、スケール感はそのまま、よりダンサブルな“2曲目仕様”になっていた。
フレデリック 撮影=AZUSA TAKADA
Perfume 撮影=渡邉一生
2日目のLAKESIDE、5番目に登場したPerfumeは4年ぶりの出演だった。セットリストは新曲の「ナナナナナイロ」含め、全曲が9月18日リリースのベストアルバム収録曲。3輪の花みたいに見える衣装を纏った彼女たちの動作にはキレがある一方、どこかたおやかさもあるため、機械的には感じられないのがすごい。MCではPerfumeが今年でデビュー15周年、スペースシャワーTVが30周年であることに触れつつ、長いこと共にやってきたマネージャーが今日で卒業することをあ~ちゃんが明かす。それぞれの進む道を照らすよう願いが込められた「無限未来」には凛とした美しさがあったのだった。因みに恒例のP.T.A.のコーナーでは「SUSHI PIZZA」(やついいちろう&IMALU)という曲が取り入れられていたのだが、あ~ちゃん曰く「やついさんとカラオケ行ったときに良い曲だと思ったから、この夏真似してます!」とのこと。
Perfume 撮影=渡邉一生
[ALEXANDROS] 撮影=西槇太一
いよいよ2日目ヘッドライナー、[ALEXANDROS]の出番だ。磯部寛之(Ba)、白井眞輝(Gt)にサポートメンバーを加えた5人の演奏がはじまり、最後に川上洋平(Vo/Gt)がステージに現れると、会場は割れんばかりの歓声で包まれた。美しいイントロと疾走感あふれるビート、グッドメロディが昂揚感を一気に駆り立てる「Run Away」、激情を孕んだ不穏なバンドサウンドにのせて、川上が「もっと声出せ!」と挑発的な声を浴びせた「Kick&Spin」。いまやスタジアム級のロックスターの風格をその一挙手一投足に漂わせる彼らだが、そのステージでは誰よりも無邪気に音楽を楽しんでいた。
[ALEXANDROS] 撮影=西槇太一
30周年を迎えたスペースシャワーTVに向けては、「いろいろな音楽があることを教えてくれた先輩のような存在」と、アーティストである以前に、ひとりのミュージックラバーである川上らしい言葉で祝いの言葉を添えると、来年デビュー10年を迎えるバンドの集大成ともいえる最新ナンバー「月色ホライズン」へ。今いる現在地を更新するために、その瞬間ごとに自分自身と向き合い、命を燃やし続ける[ALEXANDROS]が鳴らす闘志のロックは、いつも私たちを無敵にしてくれる。
取材・文=秦理絵(藤井 風、Hump Back、sumika、松本 大(LAMP IN TERREN)、[ALEXANDROS])
蜂須賀ちなみ(ズーカラデル、あいみょん、フレデリック、Perfume)
撮影=各写真のクレジット参照