長谷川京子、主演舞台『メアリ・スチュアート』への思いを語る~「怖さもある」
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長谷川京子 (撮影:池上夢貢)
舞台『メアリ・スチュアート』が、2020年1月27日(月)~2月16日(日)、世田谷パブリックシアターにて上演される。今回の戯曲は、18世紀のドイツの大劇作家シラーの『メアリ・スチュアート』を、20世紀のイギリスの詩人スティーブン・スペンダーが上演台本にまとめたもの(ダーチャ・マライーニによる同タイトルの二人芝居とは異なる)。演出を務めるのは、第21回読売演劇大賞・最優秀演出家賞や第64回芸術選奨新人賞受賞など数多くの受賞歴を誇る実力派の森新太郎だ。
16世紀末。イングランド北部にたたずむフォザリンゲイ城に幽閉されている、スコットランド女王メアリ・スチュアート。ロンドン・テムズ河畔のウエストミンスター宮殿の玉座を支配する、イングランド女王エリザベス一世。二人の女王を巡って交錯する人々の思惑と共に、最終章へ向けて、運命の歯車が回りはじめる。
イングランド女王エリザベス一世(シルビア・グラブ)に幽閉されるタイトルロール、スコットランド女王のメアリ・スチュアートを演じるのは、7年ぶりの舞台出演となる長谷川京子だ。これから彼女がどのようなメアリ像を作り上げていくのか、意気込みを語ってもらった。
──7年ぶりの舞台出演になりますが、いかがですか?
緊張しています。まだちょっと(全貌が)見えていないですしね。
──出演発表時のコメントでは「このタイミングで森新太郎さんと出会い、タイトルロールでもある大役を世田谷パブリックシアターのような素晴らしい劇場でやらせていただくのも何かの縁なのでしょうか」と語られていました。
はい。それは何事も縁なのかなと思っています。
──台本をお読みになられた感想を教えてください。
難しいですよね。この大量の台詞、センテンスのなかから核となる部分を拾ったり、話の流れを汲み取ったりするのはとても難しく感じました。それで、この本をいただいた直後に、メアリ・スチュアートとエリザベスの映画を観たら、それが非常に分かりやすくて。
──メアリ・スチュアートという実在した人物に対する印象はいかがですか?
とても素直で正直で、大きな一本の揺るぎない筋が通っている女性だなと思いました。欲や妬みが本当にない、自分の信念に対してまっすぐにそれを信じて生きている人ですね。
──長谷川さんご自身との共通点は?
素直なところでしょうか。自分で素直というのも、ちょっと気持ちが悪いですけれど(笑)。嫌なことも楽しいこともすぐ顔に出る。そういう意味で正直・素直という点が似ているのではないかと思います。
──エリザベス一世役のシルビア・グラブさんについてはいかがですか?
シルビアさんは舞台の大先輩として、とても尊敬に値する方ですから、迷惑をおかけしたくないという思いの一方で、お力を借りたいというのもあります。シルビアさんの力を借りて、自分が思う以上のメアリが引き出せたらいいなと思います。本当に甘えなんですけどね。自分一人で作り上げるより、そういうふうになればいいと思っています。
──本作はメアリとエリザベス一世の対比が物語の軸となるわけですが、長谷川さんご自身としてはどちらに共感する部分が大きいですか?
どちらも分かります。どちらもその立場だったら、そうなるのではないかなと思います。
──今回、演出は森新太郎さんです。
まだ、それほどお話していなくて。お会いした時も探り探りの会話だったので。
──森さん演出の舞台をご覧になったことは?
先日『HAMLET−ハムレット−』(菊池風磨主演)を拝見しました。とてもシンプルな舞台で、本当に芝居を見せる演出をされる方なんだなと、すごく思いました。何かで誤魔化すとか、違う手法でやるとかではなく、非常にストレートでスタンダードだけど、スタンダードよりももっと、芝居を見せていく方なんだなと思いました。
──どのような稽古場になると思いますか?
まったく分かりませんが、どういう状況においても自分が対応できるぐらいの余裕は持っておきたいですね。
──共演の方々についてはいかがでしょうか?
みなさん、今回初めての方ばかりなので、まだ分かりません。映像でもご一緒したことがないんですよ。
──普段、役づくりはどうされているのですか?
その時々によります。体を鍛えるとか、そういうのはありますけど。
──稽古場や現場で作っていくパターンが多いですか?
もちろん、ある程度の意識はしてから入ります。うまく言葉にしづらいのですが、たとえば、その役に対しての色のイメージを探ります。色だけではなく、それは香りの場合もありますが。そういった何かとっかかりみたいなものを見出して、そこから先、詰めていくのが現場、という感じでしょうか。細い部分や物理的なことを、演出家の方に現場でアドバイスをいただいて、返ってくるものも当然あります。
──今回に関しては、何か色のイメージとか?
まだこれからですね。でもこうやって取材でお話させていただく機会があるから、話をしていく中で返ってきて、自分の中で出来上がっていくこともあります。あとは台詞を入れていく過程で、台詞から拾えるものももちろんあるので、相対的にヒントをもらっています。
──今日はヴィジュアル撮影でしたが、何かイメージは膨らみましたか?
メアリはエリザベス一世によって幽閉されている身ですから、華美でもなく、自分に最低限のものしかない。そういうことでいうと、すごくいろんなことを研ぎ澄ませて、シンプルに強さと、一方で憂さみたいなものも出していくのかなと思いました。
──舞台は16世紀のイギリス王室。ジャンルとしては、洋物の歴史ものというわけですが、そのあたりを演じる難しさや楽しさは?
難しいと思います。今までないんですよね。映像で時代劇に出演したことはありますが、洋物でというのはなかなかないです。その時代を生きていないし、それこそ今回のようにカトリックかプロテスタントかみたいな宗教観の話になってくると、深く考える機会がこれまでなかったので、そこを演じるというのはすごくハードルが高いと思います。
楽しさという面で言えば、そのコスプレみたいなところかな(笑)。衣装から入って、その世界観になりきれるというのはあると思います。
──メアリとエリザベス一世の関係や歴史について興味はおありでしたか?
いや、私は恥ずかしながら存じ上げなくて。もちろん、メアリ・スチュアートという名前を聞いたことはありますが、エリザベス一世との関係というのはよく知らなかったので、今回、お話をいただいて、映画を観たりしながら興味を深めました。
──この舞台は、特にどんな方に見て欲しいですか。
それは観たいと思ってくださる方、皆さんに観ていただきたいです。
──映像のファンの方もいらっしゃると思いますが、舞台だからこその魅力も伝わるのではないでしょうか。
そうですね。舞台は、観にいくと定期的に観に行くけれど、行かないと離れてしまう。私もそうなんです。ですから、この作品で舞台を観てもらえるきっかけになったらと思います。
──演じられる上で、映像と舞台の違いは感じられますか?
お芝居をする上で、対カメラか、対観客かというのは大きな違いです。舞台だと、お客さんのリアクションがあるので。そのリアクションを拾いながら演技をするのは、自分の中で本当に成長につながる行為です。対カメラだと、もちろんリアクションはないし、そこに編集が加われば自分の力だけではない要素が多く入ってきますよね。そこが、やはり舞台ですとお芝居に対して直接に向き合わなくてはいけない。そういうシビアな現場だなと思います。ですから怖さもあります。空気感でお客さんが自分に好意的なのか。そうでないないのかも分かるし、とてもシビアです。
──7年ぶりの舞台だからこそ出せるものもあるのではないですか?
はい。それなりに頑張って生きてきたので、何かはあるのではないかなと思います。
○取材・文=五月女菜穂
○写真撮影=池上夢貢
鎌田直樹 タナベコウタ
及川千春(とわづくり)
公演情報
(撮影:山崎伸康/秋澤一彰)
※
・公演日時:2020年2月8日(土)13:00開演の回
・先行受付:2019年11月10(日)12:00~11月15(金)18:00
・受付URL:https://eplus.jp/sf/detail/3137220001