『そこから奏でまSHOW! Vol.3』20・30・40・50! 世代を超えた新感覚エンターテイメントに初潜入

2019.10.23
レポート
音楽

『そこから奏でまSHOW! Vol.3』

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『そこから奏でまSHOW! Vol.3』2019.8.25(sun) Zepp Namba

 2019年8月25日(日) Zepp Namba、一夜限りの謎だらけのSHOW『そこから奏でまSHOW! Vol.3』が開催された。SHOW開催を間近に控えた8月某日、都内某リハーサルスタジオに今回の5人の出演者は集まっていた。レギュラー出演者とされる奥田民生山崎まさよし岡崎体育。準レギュラーとされるYO-KING。そして、初出演のあいみょん。世代も性別も超えて集結した5組のアーティストが、特殊な雰囲気の漂うスタジオで、横一列に並べられた5つの椅子に座っている。そして、当SHOWのプロデューサーであるPLUMCHOWDER梅木氏より、簡単なイベント内容の説明と出演者、STAFFの紹介が行われ、淡々と説明を聞く5人の出演者達。説明が終わるとスタジオ内に、家庭用よりは少し大きめの液晶モニターが持ち込まれ、昨年開催された『そこから奏でまSHOW! Vol.2』の様子が映し出される。5人の出演者はこの映像を見て笑ったり、ダメ出しやツッコミを口にしたりしながら、今年用のネタを頭の中で膨らませていっているのである。一通り映像を見終えると、当日の登場シーンなどで使う映像の簡易的な撮影がスタジオ内で行われた。この日、誰も一度も楽器に触れることなく、誰も一度も歌うことなくリハーサルは終了してしまった……。

8月25日(日)本番当日の正午過ぎになると、続々と出演者達が楽屋入りをしていく。アーティストは通常、本番前に集中力を上げることなどを考慮して、自分だけの個室に入ることが多いが、出演者5人の楽屋は相部屋であった。

楽屋前の通路に用意された小道具

「仲良くなるため」というようなテーマでもなく、お互いの創造力を上げるために相部屋に通されて一緒にいるように思える。しばらくすると、楽屋前の通路に陳列された衣装やカツラなどの小道具を試着し、何かしらインスピレーションのヒントを引き出してみたり、土壇場の発想を導こうとするような行動が増えてくる。日頃から大規模な会場でコンサートを行う大物アーティスト達からは想像もできない一面……。そして、都内での事前リハーサルと同様に、本番当日のリハーサルもあっさりと終了。楽屋は相変わらずなんとも言えないゆるい緊張感の中、開場の時間を迎える。ここまで見てきて、よくあるオムニバスイベントとは全てが異なる状況であることだけは良く理解できた。

奏でさせ役 中島ヒロト

SHOWのはソールドアウト。開場時間が近づき会場の外では、何が起こるかわからないこのSHOWに期待を寄せる老若男女で溢れた。開演時刻を迎え、過去2回開催時の映像や、今年7月に北海道で開催された『JOIN ALIVE』に企画ごと出張した際の映像が流れだす。すでに内容をよく知る常連客からは笑い声もあがり、映像が終わると同時にスクリーンには『そこから話しまSHOW!』と映し出される。すると、奏でさせ役の中島ヒロトがステージに登場。『そこから奏でまSHOW! Vol.3』の開演が高々と宣言され、5人の出演者がステージ上へと呼び込まれた。

今回はまず「一人で奏でまSHOW!」から進行されることが告げられ、その順番がステージ上でじゃんけんにて決定した。

「一人で奏でまSHOW!」トップバッターを務める岡崎体育は、少し不釣り合いなサングラスをかけて登場。大都会の孤独を連想するようなアーバンなメロディをバックに「Voice of Heart 2」を切なくスタイリッシュに歌い上げたかと思いきや、心の声がその歌を遮り出す。心の声によってサングラスが奥田民生氏のものだということがバラされ、さらに自虐的なツッコミが鋭く刺されていく。MCでは自分より年下で、今回初出演になるあいみょんを紹介。Wikipediaの情報によると、あいみょんが6人兄弟であるということに触れながら「FRIENDS」を披露。一人っ子の自分も本当は兄弟が欲しかったと漏らし、同じ兵庫県西宮生まれの、あいみょんとはライバルだけど仲良くしたいという想いを伝え、これから難解なSHOWに挑む新しい仲間を先輩として温かく歓迎した。

山崎まさよし

2番手を務めたのは山崎まさよし。1曲目は「Englishman In New York」のカヴァーを弾き語りで披露。ブルージーな歌声と乾いたように弾けるギターの音色で会場の空気を一変させ、続く「Plastic Soul」では圧倒的な声量と特徴的な声質でますます自分の空気感へと導いていく。3曲目には「晴男」を演奏し、会場からは自然と手拍子が沸き起こる。終盤には客席とのシンガロングにより、わずか3曲という短い持ち時間の中でも客席との一体感を生み、情熱的な空間を作り上げた。シンガロングの途中、少しだけ歌われた「Everything’s gonna be alright」というワードは、この後に待ち受ける『そこから奏でまSHOW!』コーナーに挑む自分自身へのメッセージにも聴こえた。

続けて3番手として登場したのは奥田民生。客席からの声援に応えるように左手を挙げてゆっくりとステージを歩き、ステージ中央にセットされた機材にそっと触れ、キャッチーなSEを流し、これまでとは違った空気感へと導く。そのままギターを抱えて1曲目は「さすらい」を披露。良い温度に温まっている客席からは自然と歌声が鳴り響く。2曲目は「自分の曲のように人の曲を歌おう」と、斉藤和義の「歌うたいのバラッド」を少し不慣れな様子を見せながらも見事に奥田節で歌い上げる。ステージに置かれたドリンクで喉を潤し、まるでプライベート空間にいるような雰囲気を作り上げ「風は西から」を披露。曲後半の歌詞にある「it’s gonna be alright」というワードは、山崎まさよし同様、この後の自分自身へのメッセージのようにも聴こえた。

4番手には初出場のあいみょんが登場。「6人兄弟の次女のあいみょんです。」と、岡崎体育の「FRIENDS」に応えつつ、今日のSHOWに3番目の妹が来場していて、実は岡崎体育のファンであることを公言し会場の空気を和ませた。「今日はここでほんまもんのあいみょんを見せつけておく」と話すと、「真夏の夜の匂いがする」を弾き語りで披露。キャッチーなメロディと軽快なリズムが印象として先行するが、曲調が複雑に変化するという特徴も併せ持つ楽曲で、歌とアコースティックギターだけでもその転調は心地よく客席に浸透していった。続いて、思春期に誰もが経験するような、恋が心を締めつける想いの詰まった「恋をしたから」を静かに熱く歌い上げた。MCでは「なんでこんな仕事受けたんやろう?」と、この後に起きる展開に不安を覗かせながらも、彼女の代表曲である「マリーゴールド」でしっかり客席の心を掴んだ。

「一人で奏でまSHOW!」ラストはYO-KING。ステージに登場するなり「シュッとしてるでしょ?ってことは?」とだけ告げ「バランス」を歌い出す。イントロでハーモニカの音色が響き、客席は一気にこれまでとはまた違った色に染まり出す。曲が終わると「みんな愛してるぜ。」と、トップバッター岡崎体育のネタを引っ張り自らが失笑。続けて「遠い匂い」を披露したかと思えばもう一度「みんな愛してるぜ。」と、連続で惜しみなくKING節を披露。楽曲とキャラクターのギャップで客席がどんどん和んでいく中、「みんな疲れてないかい?夜はまだまだこれからだよ。」と客席への気配りを見せながらも、「ヘイ!みんな元気かーい!」と、高らかに客席を煽り、これから始まる怒涛の奏で合いに向け、出演者と客席に元気を繋いだのであった。
 
約20分間の休憩を経て、改めて奏でさせ役の中島ヒロトが登場。これから「みんなで奏でまSHOW!」が始まることが告げられると、改めて5人の出演者がステージ上に呼び込まれた。まるでクイズ番組のように装飾されたテーブルに並んで座り、明るくなったステージに吊られた50個のお題に目を向ける。奏でさせ役よりこれから5人は、このお題に沿った形で音楽を表現していくことが説明される。

5人はすでにこの50個の全てのお題について予習してきているということがアナウンスされるが、誰も奏でさせ役とは目を合わせようとしない……。

YO-KING

そんな気まずい空気感の中、「我先にという方は挙手で!」という、奏でさせ役の言葉にYO-KINGが素早く反応を見せ客席が湧く。「今日のためにオリジナル曲を作ってきた」と、開始早々、企画の趣旨とはズレたことを話しながらもギターを担ぎ、ステージ中央に置かれたマイクに歩み寄る。すると、「どか~んと一発、奏でましょう〜」という、よく聞いたことのあるようなないようなフレーズを歌い出した。曲中の随所に「奏でましょう」というフレーズが使われ客席は盛り上がりを見せる。

奥田民生

ここで当SHOWの名物であるという「(小さすぎる)奏ディアン抽選マシーン」が登場。抽選により奥田民生が選出され、「英語禁止でしょう」に挑戦することが決定する。ギターを抱えステージ中央に立つと、PUFFY「アジアの純真」を奏で出した。国・民謡・民族楽器など様々な外国語の名称を独自のセンス(アジア=この辺)で日本語に置き換え、見事に歌い切り客席を盛り上げた。

山崎まさよし

次は、山崎まさよしが挑戦。横浜銀蝿「ツッパリHigh School Rock’n Roll(登校編)」を奏でようとするが、いきなり冒頭の「リーゼント」でつまずき、改めて1から歌い直すが、今度は「High School Rock’n Roll」を何度もそのまま歌ってしまう。意識すればするほど英語にできなくなる流れに陥りかけたが、最後は「県立石巻高校」と、とても腑に落ちるハイセンスな和訳で凌ぎ切った。

岡崎体育

流れを途切れさせることなく、続いては岡崎体育が挑戦。自ら持ち込んだとされるカラオケマシーンにデンモクを使ってリクエストを入力すると、Perfume「チョコレイト・ディスコ」のキラキラしたイントロが流れ出す。「◯◯(製菓メーカー)の代表作・踊り場」と、余裕のある様子でステージ上をところ狭しと動きながら歌い、レギュラーメンバーとしての安定感を見せつけた。

あいみょん

続いてはあいみょんがスーパールーキーと紹介されて登場。「紅白より緊張する」と、今の心境を話しながら荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」を奏でる。「シンデレラ・ボーイ」を「門限夜12時までの男」などと歌い、華々しくデビューを飾ったが奏で方が「YO-KING寄り・YO-KING流」であると奥田民生に見抜かれてしまった。あいみょんに触発されたのか、おもむろにYO-KINGがカラオケマシーンに歩みより、佐野元春「ガラスのジェネレーション」をリクエスト。選曲の妙もあり、「もう一度チューして」などと、1度も詰まることなく英語禁止を守り抜きスマートに奏でた。負けじと奥田民生がギターを担いでスキマスイッチ「全力少年」を歌い出し、冒頭の「置いてかれんだ」を「日めくりの暦」と技術点まで付与されそうな解釈と奏で方で客席の爆笑を誘った。


続いて山崎まさよしによって、小泉今日子「なんてたってアイドル」を「なんてったって偶像」と昭和感のあるカラオケサウンドで熱烈に奏でる。すると、もうこの空気に慣れたのか、あいみょんが挙手。自らの楽曲である「君はロックを聴かない」を「君は内田裕也を聴かない」と、独自の感性で奏でた。ここまで「英語禁止でしょう」の流れが続いたが、岡崎体育は「逆に日本語を英語にする。」と大胆に宣言し、ゆず「夏色」のアップテンポな日本語詞を淡々と英語詞に変えていく。客席からは自然と大きな拍手が湧き起こり、共演者からは「これは、ルー大◯りましょうだ!」と、自然に合わせ技までも出してしまうその技術力を賞賛した。

YO-KING

ここでまた、YO-KINGが「オリジナルソングを作ってきた」と、またしてもルール違反ギリギリの一言が飛び出す中、カラオケマシーンにリクエストを入力した。「ENDLESS SUMMER 奏でましょう」と告げられ、歌詞のありとあらゆるところに「奏で」というフレーズを含み、マイペースにフルコーラスを歌い切った。YO-KINGが自席に戻ると、奏でさせ役より、「YO-KINGさんはオリジナルソング禁止です。」と告げられ、SHOWは2回目の休憩に……。

奥田民生

約10分間の休憩を経て、奏でさせ役から「絵に乗せまSHOW!」をテーマに進めていくことが告げられる。ステージ上のスクリーンに、何も共通項のない10枚の写真がランダムに映し出された。出演者はこの写真から1枚を選び、その写真の内容に沿った歌を奏でるというテーマである。出演者はもちろん、この写真をステージ上で初めて目撃しているのだが、「山崎まさよしコスプレ姿の奥田民生」の写真をチョイスした山崎まさよしがここで瞬発力を見せる。「One more time, One more chance」を自身の鼻をネタにした自虐的な替え歌で奏でると、すかざず「切り株に乗った二匹のフクロウ」の写真を奥田民生がチョイス。北島三郎「与作」の「へいへいほー」を「ほっほっほー」と歌い、「切り株」と「フクロウ」のどちらにも触れるという技術力の高さで奏でて見せた。

「本物のあいみょんと、あいみょんコスプレ姿の岡崎体育の2枚の写真」が並んで映った写真をチョイスしたのは岡崎体育。「マリーゴールド」をカラオケマシーンに入力し、会場にいると思われるあいみょんの妹を替え歌でいじりながらも、最後には「あいみょんのコスプレは二度としません」と詫びながら奏でる。すると、あいみょんも同じ写真をチョイスし、小田和正「言葉にできない」を歌い、2枚の顔写真を某生命保険会社のCMに例えて奏でて見せた。奏でさせ役から「絵に乗せまSHOW!」の最後はYO-KINGが指名され、YO-KINGは「落雷の様子」の写真をチョイス。「なごり台風」とタイトルコールしたかと思うと、ギター弾き語りで音楽フェスと台風の関係性をメッセージ性の強い歌詞で切なく奏でた。
 
SHOWも終盤戦になり、ここからは自らお題を選んで進めていく流れに入っていく。あいみょんは「出演するのは今日が最初で最後」とは言うものの、表現者としてのスイッチは入ってきている様子で「擦れましょう」と「ちっちゃく奏でましょう」の2つのお題をチョイス。Chara「優しい気持ち」をすごく擦れた小さな声で奏でた。あいみょんのポテンシャルの高さを認める共演者のコメントもあり、このままだと第4回に呼ばれてしまうのではないかと心配する表情をのぞかせていた。

岡崎体育

岡崎体育は「ボケましょう」をお題に、浴衣に身を包み大泉逸郎「孫」を独自の鋭い解釈で奏でた。ここで、奥田民生がカラオケマシーンを使い、HOUND DOG「BRIDGE〜あの橋を渡る時〜」を、「頭に「あ」か「え」をつけましょう」、「英語禁止でしょう」、「ハウンドりましょう」、「アニメりましょう」の4つのお題による合わせ技をリーダーとして大胆に奏でて見せた。見事な合わせ技が飛び出したところで出演者の奏で合いはヒートアップを見せる。あいみょんは「マリーゴールド」を「篠◯涼子りましょう」のお題によるモノマネで会場の笑いと拍手を誘うと、山崎まさよし奥田民生「さすらい」をチューバッカのモノマネで追い上げる。

すると、ステージには第二回の出演者であるトータス松本の顔はめパネルが登場し、そのパネルに顔をはめながら、奥田民生がウルフルズ「バンザイ」をトータス松本のモノマネで奏でて流れを締めた。最後は「ものすご!響かせまSHOW!」というお題で、出演者全員でウルフルズ「ガッツだぜ!!」が奏でられ、三半規管がおかしくなるようなものすごいリヴァーヴの効いた声が会場に響き、会場は大歓声に包まれた。鳴り止まない拍手から自然とアンコールが起こる。

出演者は再びステージに呼び戻されると、円広志「夢想花」を奏でさせ役からのモノマネのフリに応えながら、精一杯奏で切ったところでSHOWはフィナーレを迎えた。

暗転したステージに吊るされたスクリーンには、出演者が戻ってくる楽屋の様子が映し出され、20代・30代・40代・50代と、世代を超えて集まった大物アーティスト達が全てを出し切った様子に、客席からは改めて大きな拍手が贈られた。
 
そこから奏でまSHOW!』は真夏の屋内で開催されていることも含め、よくあるオムニバス形式のフェスティバルとは違う唯一無二、超一流の即興SHOWだ。最初から最後まで謎の多いSHOWではあったがSHOWの事前リハーサルから本番までの一連の流れを近くで見ていく中で、出演者が「面白いこと・楽しいこと」を追求するプロフェッショナルな様子は様々な場面でたくさん垣間見ることができた。

この特別なSHOWはそれだけに留まらず、出演者が自ら表現のスキルの限界に挑んでいるようにも見え、出演者は皆、自身のコンサートでは見せないような緊張感のある表情でこのSHOWと向き合い、このSHOWを通して得られる特別な経験値を求めているようにも見えた。その経験値は出演者それぞれの立場や価値観によって得られるものであり、その大きさもそれぞれによって異なるものだと思う。ただ、

その経験値が20代・30代・40代・50代と、幅広い年齢層のアーティストがお互いを刺激し合うことで生まれていることに重要性を感じるのである。年齢の壁を崩すことで新たなコミュニケーションが生まれ、そこから新たな文化や価値観を生み出すことこそ、日本のエンターテイメントが令和の時代に奏でていかないといけないことなのだと改めて感じさせられたのであった。終演後の打上げでは、ようやく緊張から解放された出演者達が、達成感の溢れる様子で交じり合い、次に共に奏でる日のことを楽しそうに語り合っていたのが印象的だった。
 
取材・文=北岡良太 撮影=河上良

イベント情報

そこから奏でまSHOW!vol.3
公演日:2019年8月25日(日) OPEN 16:30 / START 17:30
会場:Zepp Namba (OSAKA)
 
出演者:あいみょん / 岡崎体育 / 奥田民生 / 山崎まさよし / YO-KING(真心ブラザーズ)
奏でさせ役(司会者) : FM802 DJ 中島ヒロト
代金:1Fスタンディング/2F指定席 ¥6900(税込・ドリンク代別)
 
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