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今、バズりたい男たちが語る~『バウムちゃんねる映画祭 シーズン2』 永井秀樹×森啓一朗×杉山ひこひこ×眼鏡太郎

2019.10.11
インタビュー
映画

『バウムちゃんねる映画祭 シーズン2』写真左から眼鏡太郎、森啓一朗、永井秀樹、杉山ひこひこ

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昨年(2018年)5月に池袋シネマ・ロサで開催された「バウムちゃんねる映画祭」の第2弾が、昨年同様シネマ・ロサにて2019年10月19日(土)~31日(木)に開催される。

「バウムちゃんねる」とは、芸能プロダクションのバウムアンドクーヘン(以下、バウム)が俳優のプロモーション映像として撮影した短編映画のことで、いずれの作品も出演者は主にバウムに所属する俳優たちだ。それらの作品をまとめて上映した昨年の映画祭には、大ブームを巻き起こした映画『カメラを止めるな!』の公開前だった上田慎一郎監督も参加するなど、各方面で活躍する監督が集結し、いずれもクオリティの高いバラエティに富んだ作品揃いで好評を博した。

第2弾となる今回は、「今年もやつらがやって来る! 11人の刺客とともに――。」というキャッチコピーで、個性的な11人の監督によるすべて新作の短編映画を上映する。今回は一体どのような作品が見られるのだろうか。バウム所属の俳優4名に、今回の映画祭について話を聞いた。その4名とは、それぞれ劇団に所属しており舞台を中心に活動してきた永井秀樹森啓一朗眼鏡太郎と、映像を中心に活動してきた杉山ひこひこで、舞台と映像それぞれの感覚の違いも改めて感じられる座談会となった。

作品によって俳優の様々な顔を見られるという面白さ

――昨年5月の「バウムちゃんねる映画祭」が好評だったので、シネマ・ロサ側からぜひ第二弾を、と言われたこともあっての今回だとうかがいました。昨年開催したときの感想や、周囲の反応などを教えてください。

杉山 僕はまず、映画祭になると聞いてすごくびっくりしました。

眼 最初撮り始めた頃は全然そんな話は出ていなかったんです。元々、YouTubeで「バウムちゃんねる」というのを開設して、そこで流すための映像だったから、映画館の大スクリーンで上映すると思ってなかったよね。

永井 パソコン画面で見るんだろうな、程度にしか思ってなかった。

森 中にはiPhoneで撮った作品もあったんですけど、それでも映画館のスクリーンで上映しても十分見られるのが、今の時代はすごいなと思いました。

『バウムちゃんねる映画祭 シーズン2』永井秀樹

永井 映画祭の話を聞いた別の事務所の俳優からは「こんなことしてくれるんだ!」と羨ましがられましたよ。

杉山 映画を撮りたいけどなかなかチャンスがなくて撮れない人に、基本的にバウムの俳優を使うという縛りと、予算も限られているけれど、映画館で上映できる短編を撮りませんか、と役者側から提案できるというのはいい企画だな、と思いますね。この映画祭がもしかしたらその監督の新たな広がりに繋がるかもしれないし、出演している僕たちもその監督と今後も縁が続くかもしれないし、お互いにとっていいことですよね。

森 一つの映画祭の中で、同じ俳優が違う作品で何度も出てくるというのが、映画の見方としては面白いですよね。基本バウムの俳優たちで撮っているから、作品によって俳優の様々な顔を見られるという面白さは、他の映画祭にはないところだと思います。

眼 僕は前回、上映期間中に出演者も映画館に行ってお客さんを迎えるという文化があることに初めて接して、同じ映画館で次に上映する映画の宣伝のために来てチラシ配りしている人とかもいて、そこは演劇と似ているんだな、と思ってとても新鮮でした。

杉山 でも映画界におけるそういう文化って、ここ最近だと思います。あと世代間の感覚の違いもあると思いますね。映画に出演している人が劇場に来ることを良しとしない世代も多分いますよ。とはいえ、観客動員のことを考えるとそうも言っていられない時代でもあるので、俳優と観客が劇場で接するのも、ひとつの映画体験なのかな、と思います。

「それ言っていく?」(永井)「そんなギスギスした内容でいいの?」(森)

――第一回の作品の中で、特に印象に残っている作品はありますか。

眼 評判がよかったのは、小出豊監督の『ペイル・ブルー・ドット』だよね。

杉山 作品のクオリティで言ったら圧倒的に万田邦敏監督の『逃げ去る愛』だと思ったな。短編の枠を超える印象を与えていたと思う。

永井 岡太地監督の『すでにないている』が一番よかった。リーダー(=森)と照井(健仁)くんと大田(恵里圭)さんが3人で寝転がっているやつ。

眼 あれはかっこいいし、短編って感じがしたね。

杉山 前回は人によって好きな作品がホントバラバラだったよね。(筆者に向かって)何が印象に残りました?

――上田慎一郎監督の『ナニカの断片』シリーズがすごく面白くて、そうしたらちょうど上田監督の新作が翌月に上映されると聞いて、これはぜひ見に行こう、と思っていたら、まさかの『カメ止め』ブームが起きてびっくりしました。『カメ止め』がシネマ・ロサで上映されたのもバウムちゃんねる映画祭がきっかけだったそうですね。

森 ロサ側に上田さんを紹介したのはうちの事務所だそうです。(眼に向かって)『カメ止め』出てたよね。

眼 そうです、『ナニカの断片』シリーズに出演したおかげです。

杉山 昨年の映画祭の作品は一応「5分以内」っていう縛りがあったんだよね。でも長く感じるものも何本かあったな。

永井 それ言っていく?これはどうかと思った作品。

森 この座談会、そんなギスギスした内容でいいの?まあでも、逆に聞きたいけどね、一番嫌いだと思った作品とか。

杉山 多分「嫌い」って思うのは、「好き」と思うものと同じように、何か思いがあるからなんでしょうね。「思い出せない」と言われてしまうよりはいいと思いますよ。

『バウムちゃんねる映画祭 シーズン2』森啓一朗

――明日、森さんと杉山さんと眼さんがご出演される、冨永昌敬監督の『ロストシーバーズ』の撮影だとうかがいました。(※取材日は8月下旬)

杉山 冨永とはもう20年くらいの旧知の仲ですが、今回調子いいですよ。

森 もうわかったの?まだ撮影してないのに。

杉山 台本読んだらね。多分、圧倒的な傑作ですよ。

眼 冨永監督作品の常連がそう言ってるからには、きっとそうなんだろうね。

杉山 去年見ていて思ったんだけど、暗い映画が多いよね。短編映画となると、なぜか内面を描く感じの方向に行きがちで、能天気な映画が少ないのかな。でも、今回の冨永の作品は最高ですよ。アホなおっさん3人っていう。

――(鷲野プロデューサーに)そのあたり、今回はどうなんでしょう?

鷲野 今年は暗い映画はあまりないと思います。例えば近藤啓介監督の『赤ちゃん中華生まれたて食堂』もコントみたいな作品で、バウムの俳優2人に加えて赤ちゃんも出演します。中川和博監督の『週末のイヴ』はSFで、暗くはないですが明るくもないですね。人類が滅亡した地球に一人残った男の話です。バウムの照井くんのみの出演で、あとは別事務所から佐古真弓さんに声の出演をお願いしました。ロケは大島まで行ったそうですよ。

――飯塚貴士監督の作品で、出演者のところに声のみの出演となっているのが気になりました。飯塚さんご自身が人形劇の手法で映像作品を撮る方なんですよね。

森 まず声を録音して、その音声に合わせて人形を使った映像を当てているそうです。脚本も、出演者が飯塚さんに最近の悩みとかをカウンセリングみたいな感じで話して、そこから「じゃあ、こういう話にしましょう」と作っていきました。

「奥さん、映画ですよ!」(杉山)「主婦層を取り込めるかも」(眼)

――今回は11人中3人が女性監督で、バウム所属で劇団東京タンバリン主宰の高井浩子さん、現役大学生ながら監督として活躍されている松本花奈さん、川島海荷さん主演の『携帯彼氏』(2009年)で商業映画デビューを果たした船曳真珠さん、といった個性豊かな面々です。

杉山 真珠ちゃんってどういうの撮ったの?

森 『審判』というタイトルで、僕は面接官の役で出演しています。面接の話なんですが、そこにAIも絡んでくるという、それだけ聞いたらどんな話か想像つかないですよね。

杉山 森さんが面接官っていうのは、ものすごい想像できるね(笑)。嫌味な感じの面接官なんだろうな、きっと。松本さんの作品は、僕と森さんの2人だけが出演しています。

森 パパ活ならぬ『パパ喝』というタイトルで、ひこひこさんが取材のためにパパ活アプリで知り合った女子大生と会おうとするんですけど、待ち合わせに女子大生の父親である僕が現れる、という展開です。僕たち2人のやり取りをぜひ楽しんでもらいたいですね。

『バウムちゃんねる映画祭 シーズン2』写真左から眼鏡太郎、森啓一朗、永井秀樹、杉山ひこひこ

――高井さんの初監督作品も非常に楽しみです。

永井 ここにいる4人の中で出演しているのは僕だけですね。高井はずっと演劇をやってきて映画は初めてだから、普通だったらどうやって撮るのか、といういわゆる映画の常識がよくわからないままやってしまっていたのが逆に面白かったです。映画のことをある程度知っている人だったら「これ撮れないな」と思うところを、「いいから撮っちゃえ」と勢いでやってしまったり。

眼 高井さんの作品が10分くらいだと聞いたんですが、映画祭全体の上映時間ってどれくらいになるんですか?

杉山 全作品が10分だったら、110分?ほぼ2時間だよね。短編映画で2時間連続ってきついよね。前回は途中休憩を入れたけど、今回もそうした方がいいかもね。

眼 レイトショーだから、上映時間が長いと家庭がある人はますます来にくくなりますよね。

杉山 第3弾以降もやるのであれば、次は託児の回を作ろうよ。その日を家族デーにして「奥さん、映画ですよ!」ってサブタイトルを付けるの。

眼 それいいですね。それが実現したら映画館としても新しい流れになるかもしれないですね。今まで映画に行きにくかった主婦層を取り込めるかも。

「タイトルは「みんなやめちまえ」でお願いします」(杉山)

森 もうちょっと今回上映される作品の内容をお話しできればいいんですけど、まだこれから撮るものもあったり、撮ったものもまだ見ていないんですよ。

杉山 それで言うと、演劇の人たちは自分の出ている舞台を客観的に見られないじゃないですか。それでどうやって宣伝するんだろう、っていうのがよくわからなくて、僕からすると不思議なんですよ。

永井 それこそ、完パケ(完全パッケージの略、編集の終わった上映できる状態のもの)ないからね、初日まで。

森 初日が開けたところで完パケかと言われるとそうでもないしね。

杉山 この間舞台に出たときに、自分が出ているところを含めてこの舞台を劇場で見たいけれども、それは不可能なんだな、ということを改めて強く思いました。お客さんが見ているものを自分では観られない、舞台を撮影したものを見てもそれはちょっと違うじゃないですか。それが舞台をやりながらの悩みどころでした。そこが面白いところではあるんですけどね。

『バウムちゃんねる映画祭 シーズン2』眼鏡太郎

――同じ事務所に所属している俳優同士というのは、お互いのことをどういう存在としてとらえているのでしょうか。

杉山 僕以外の3人は、事務所は一緒でもそれぞれ劇団というホームグラウンドを持っていて、そちらの活動に関しては、今それぞれの家にいるんだな、という感じなんですけど、CMが決まった、とか自分も活動しているフィールドの話になると、正直に言ってしまえば純粋に「良かったね」とは思えなくて「悔しいな」と思いますね。でもそれは思っていいんじゃないかな。次は自分も仕事取れるように頑張ろう、って奮起できますから。

永井 でもそれが、みんなが思っている一番正直なところかもしれないね。

森 いいものを見たときに、「いい作品だな」という感動と同時に悔しい気持ちもありますよね。知ってる人が出ている作品だとなおさら「なぜあそこに俺がいないんだ」って思ったり。

眼 僕はバウムの人たちには話をしやすいかな、それがネガティブなことでも。同じ現場の人にはなかなか言えないような話でも、同じ事務所の人ならば、この業界のことも知っていて年も近いし、わかってもらえるかなという安心感はありますね。

森 去年のこの映画祭のときに、うちの事務所はなんだか劇団みたいだな、と思いました。所属している俳優を使って、必要があれば客演を呼ぶ、という作り方は劇団で公演を打つことと感覚的に近いですし、事務所主催で映画祭をやって、自分たちで宣伝したりお客さんを呼んだり、となるとそれは事務所から仕事をもらうだけの関係ではなくなって来ますよね。あと、俳優同士でお互いの出演している作品について「あれ面白いね」とか語り合えるというのは、普通の事務所ではなかなかないから珍しいですよね。

『バウムちゃんねる映画祭 シーズン2』杉山ひこひこ

杉山 この映画祭を見て、うちの事務所に入りたい、っていう人がいたら「やめとけよ」って言いますね。

永井 それはなぜ?

杉山 人が増えたら邪魔だから! これは絶対書いておいてください。この記事のタイトルは「みんなやめちまえ」でお願いします。

眼 そういう攻めてるタイトルで、バズりたいですね。

杉山 なにでバズるかわからないからね。「永井秀樹、ちょっと太る」とかでバズるかもしれない。「え?あの永井さんが太った?」って。

永井 そんなのでバズれるなら太るわ(笑)。

眼 タイトルは「バズりたい」でどうですか?

杉山 「今、バズりたい男たち」。

永井 ダサい(笑)。

森 結構どうしようもない大人たちの座談会になっちゃったけど、大丈夫かなこれ?

杉山 じゃあ、まじめな話を一つ。今や手軽に動画を撮ってウェブとかにアップできる時代じゃないですか。それをわざわざ金と労力をかけて映画館でやる、というところをほめて欲しいです。映画館に行かない人も増えている現代においてわざわざこういうことをしている、「そんな彼らを私は応援したい」みたいな感じで書いておいてください。

永井 結局、丸投げじゃないか(笑)。

杉山 世の中がどれだけ進歩しても、やっぱり「会う」っていうのが一番なんですよ。だから上映期間中、僕たちも可能な限りシネマ・ロサに行って皆さんのご来場をお待ちしていますので、劇場でお会いしましょう!

森 どうなるかと思いましたが、最後きれいにまとまりましたね(笑)。

『バウムちゃんねる映画祭 シーズン2』写真左から森啓一朗、眼鏡太郎、永井秀樹、杉山ひこひこ

取材・文・撮影=久田絢子

上映情報

バウムアンドクーヘン presents 「バウムちゃんねる映画祭 シーズン2」
 
 
■上映日時:2019年10月19日(土)~31日(木)連日20時15分~ 
■劇場:池袋シネマ・ロサ http://www.cinemarosa.net
:前売り1,300円、一般1,500円、大学生・専門学校生1,300円
■上映作品:
『パパ喝』 監督:松本花奈  出演:杉山ひこひこ 森啓一朗
『赤ちゃん中華生まれたて食堂』 監督:近藤啓介 出演:高木公佑 田代源起
『終末のイヴ』 監督:中川和博 出演:照井健仁 佐古真弓(声のみ)
『われらのトリニティ』 監督:飯塚貴士 出演:森啓一朗 眼鏡太郎 高木公佑 葛堂里奈(いずれも声のみ)
『審判』 監督:船曳真珠 出演:田中博士 葛堂里奈 森啓一朗 高木公佑
『こたつ』 監督:高井浩子 出演:安藤朋子 山崎美貴 大田恵里圭 永井秀樹 田中博士 照井健仁 葛堂里奈
『あの娘の神様』 監督:田中聡 出演:永井秀樹 杉山ひこひこ 森啓一朗 葛堂里奈 照井健仁 高木公佑 田代源起
『帰り道』 監督:東海林毅 出演:眼鏡太郎 田中博士 照井健仁 永井秀樹 高木公佑 葛堂里奈
『よだれかけっ子』 監督:筧昌也 出演:眼鏡太郎 葛堂里奈
『ロストシーバーズ』 監督:冨永昌敬 出演:森啓一朗 眼鏡太郎 杉山ひこひこ
『夢の丘』 監督:高橋洋 出演:葛堂里奈 大田恵里圭 高木公佑
■詳細・お問い合わせ:バウムアンドクーヘン:http://baumandkuchen.com info@baumandkuchen.com