No Party For Cao Dong 来日インタビュー 世界を股にかける台湾オルタナバンドの成り立ちと現在地

2019.11.6
インタビュー
音楽

No Party For Cao Dong 撮影=風間大洋

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No Party For Cao Dong(草東沒有派對)という台湾の4ピースバンドをご存じだろうか。インディ・ポップからラウドまで多様な音楽を吸収したオルタナティヴ・ロックを武器に、本格始動からわずか数年にして本国ではが入手困難となり、グラストンベリーをはじめとした世界各国のフェスにも出演を果たすなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの彼ら。ここ日本でも2018年には『SUMMER SONIC』出演とワンマンライブを敢行しており、そして去る9月には『中津川 THE SOLAR BUDOKAN』出演のため再来日を果たした。本稿では同フェス出演の前日にインタビューを実施。バンドの馴れ初めから音楽性、台湾のシーンについてなどを訊いた。

――まずはおさらいになりますが、どのように結成されたバンドなんでしょうか。

Wood Lin:簡単に言うと、僕とこの2人(Chu Chu、Fan Tsai)が同じ高校で、僕とSam Yangが大学の友達なんです。

Sam Yang:元々は4人とも別々にバンドをやっていたんですけど。大学のときに、まだハッキリとした目的はなかったんですが、4人とも好きな音楽の方向性が一緒だったりもしたので、一緒にやることにしました。

――そのときに共通していた好みってどんなものでしたか。

Wood Lin:2010年にトゥー・ドア・シネマ・クラブを初めて聴いて。それまではChu Chuとパンクやメタルみたいな音楽ばかりやっていたんですけど――

Chu Chu:ニューメタルをね(笑)。

Wood Lin:そう。それでトゥー・ドアを初めて聴いてから、ポップスとかディスコサウンドもすごく良いなと感じてビックリして。そっちの方向に行きたいという思いから、Party For Cao Dongというバンド名をつけたんですけど、それから色々経験していく中で今のバンド名に変更したんです。今はまた元々遊んでいたような音楽性に戻ってきた部分もあります。

Chu Chu:単に戻ったというよりも、4人が今好きな音楽をそれぞれ集めて、新しさを作り出していくモードになってます。

Wood Lin:全て併せて新しいものをね。

No Party For Cao Dong 撮影=俵 和彦

――音源を聴いても、すごくメロウな部分とヘヴィな部分の共存を感じましたが、そのあたりは4人の好みが合わさった結果なんですね。

Sam Yang:4人の焦点を合わせて作っていった感じですね。

――そういった音楽をやっていく中で人気が高まって、ここ日本や欧米でもライブをしたりしている。そういう活動は最初から思い描いていましたか。

Sam Yang:いや、当初はインターナショナルな活動ができるとは思ってなくて。

Wood Lin:小さなライブハウスから始めようと思っていただけです。でも2016年をきっかけに、バンドをステップアップするにあたり、ちゃんと真面目にバンド全員で考えていこうと思って。自分たちの慣れているやり方で「次は何をするか」を考えてはいけないと思うようになりました。今のようにワールド・ツアーへ行って、多くの人と出会って新しい選択肢があったときに、一生懸命に模索をしてゆっくりと歩き続けた。そうやって今に至った感じですね。

No Party For Cao Dong 撮影=俵 和彦

――今回の来日では『中津川 THE SOLAR BUDOKAN』に出演されます。ソーラー電力がこのフェスのコンセプトであり、メッセージでもあるんですが、日本だけ出なく世界的にも、気候変動の問題などから環境について考える時期に来ていると思います。そこに何かお考えはありますか。

Wood Lin:普段から多くのことを考えてます。今回はラッキーなことに、直接このフェスに参加することができて、そういう問題を少しでもいろんな人に知ってもらうために、自分たちがアナウンスの手助けをできることが嬉しいです。環境について訴えることをこれだけのフェスの規模までにしているのは、たとえばただ一つのバンドが「環境保護をやります」って言うよりもすごいことだと思いますし、それだけの人員とかスケジュールを調整するだけでも大変ですよね。それについては感謝もしていますし、これからも支持していきたいと思います。

――ありがとうございます。ちなみに今、台湾の音楽シーンではどんな音楽がよく聴かれているんでしょうか。

Sam Yang:今は特に何が流行っているとかはなくて、みんないろんな音楽を聴いているので、すごく多様化している気がします。

No Party For Cao Dong 撮影=俵 和彦

――世界的にはHIP-HOPが盛り上がっていてバンドの音楽は元気がなかったりしていますが、そのあたりは。

Sam Yang:台湾では少し前までバンドの勢いがすごくて、今はバンドもHIP-HOPも両方、2大音楽みたいな感じになっていますね。

Wood Lin:先ほど多様化されているという話もありましたけど、HIP-HOPしか聴かないみたいな人はあまりいなくて、HIP-HOPも聴くけどバンドも聴くよねっていうような人が多いと思います。

――混ぜてみよう、みたいな考えもあったり?

Fan Tsai:はい。

Wood Lin:今はそういう、混ぜてみたような音楽をやっている人がすごく多いですね……そういう人はすごいですよ。

Fan Tsai:(自分たちも)練習の時はラップして遊んだりはしますけどね(笑)。

No Party For Cao Dong 撮影=俵 和彦

――じゃあそのうちそういう曲も生まれたり?

Wood Lin:トラップのビートとかいろいろな装飾はするんですけど、コードとか編曲は今までの自分たちのものを残しつつ、新しいものを取り入れることは考えています。

――最後に日本の印象についても聞かせてください。過去の来日時には『SUMMER SONIC』出演やワンマンなどもありましたが、どんな感想を持ちましたか。

Sam Yang:『SUMMER SONIC』に出たときは、もう天国に昇ったような気持ちだったし、あの3日間は最高によかったです。新しいものを目にして、新しい扉が開いたような感じでした。

Fan Tsai:音楽以外の部分だと、毎日ラーメンを食べに行っても飽きないということに最近気づきました。

――それは間違いないです(一同笑)。ここ名古屋には台湾ラーメンなる食べ物もありますよ。

Wood Lin:まだ食べてないんです。

Chu Chu:台湾にも「日本ラーメン」って看板に書いてある店が結構あるんですけど、見ればすぐに「多分、日本正統派じゃないよね」って分かるような。それと同じかな?(笑)  でもちょっと試してみたいです。


取材・文・撮影=風間大洋 ライブ撮影=俵 和彦

No Party For Cao Dong 撮影=俵 和彦