クリス・ハート、人生に裏付けされた充実した3時間のショー
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クリス・ハート/2015.11.29 東京国際フォーラムホールA
師走を目前に控えた11月最後の日曜日に、クリス・ハート『47都道府県 Tour 2015-2016 ~続く道~』の35公演目、かつ年内最後の単独公演が東京国際フォーラムホールAで開催された。
弦楽カルテットを含む10人編成のサポートメンバーがやさしい旋律を奏で、ふんだんに木やグリーンが配されたステージに登場したクリスは、最新シングルでツアータイトルでもある「続く道」でステージをスタート。オリジナル曲に加え、「やさしさに包まれたなら」などカバーも織り交ぜて、一気に満員の観客を歌の力で引きこんでいく。声量よりも、やさしさや穏やかさに感じ入るものが多いのも、クリスの歌が今求められる理由なのかもしれない。
これまで3作のカバーアルバムをリリースしてきたが、「歌いたい歌が多すぎて」という理由から、シリーズである『Heart Song』と『Heart SongII』の中からメドレーで届ける際のバンドアレンジの巧みさもごくスムーズだ。例えば「たしかなこと」の凛とした歌唱から「First Love」でのエモーショナルな表現への移行など、ただ名曲をシームレスに歌うだけではない、クリスとバンドのこだわりが随所に見受けられた。
そしてこれは後で意図がより鮮明に分かったのだが、“ある人の人生のストーリー”をオリジナル映像と歌で届けるコーナーが前半、後半のフックになっていて、前半は “結婚までの物語”を歌い上げた。
中盤のMCでは、バンマスでキーボードの堀倉彰とともに、ここまでの長かった各地での公演をご当地クイズを交えて振り返ったり、クリスのプライベートなエピソードなども披露。そして来年(2016年)、ツアーのファイナルとして、自身初の日本武道館公演を4月30日に行うことをここで発表すると、会場からひときわ大きな拍手と歓声が沸き起こった。
そしてストーリーコーナーの後半は、新たな家族の誕生から、その娘の結婚までが映像で描かれ、“産んでくれてありがとう”と母への感謝を歌う「memento」でコーナーを締めくくった。
子供の頃から日本に憧れ、24歳のときにようやく来日し、営業マンとして働きながらJ-POPシンガーを目指してきた彼が、さまざまな人に出会い、もちろん失恋もしたけれど、結婚もできて「来年2月には子供が生まれます」と嬉しそうに報告してくれた時、このセットリストに現れた彼の素直さに驚かされた。それほど、ファンの存在は彼の言葉を借りれば“日本の大きな家族”ということなのだろう。
クリス・ハート/2015.11.29 東京国際フォーラムホールA
本編終盤には、これまでもコラボレートし、武道館公演の先輩でもあるMay J.がスペシャルゲストとして登場。「最近、いろんなニュースが世界から伝わってきて、希望を持てなくなりそうなときもあるけれど、でもこの長いツアーで皆さんにエネルギーをいただいて、また希望を持とうと思える」と、二人で力強く「I Believe 〜手をつなごう〜」を息を合わせて歌いきった。誰かと歌を歌うこと、それは人を理解する大きな一歩だなと、改めて実感する場面でもあった。そして、ライブの始まりと同様、これからも続く人生を思わせるように丁寧に「道」を歌い、本編の幕を閉じた。
アンコールでは、昨年の『紅白歌合戦』で着た思い出深い衣装で再登場。いかに彼にとって日本での一つひとつの出来事が大切であるかを思い知り、サービス満点な選曲や演出が決して過剰に感じられないのは、クリス・ハートというシンガーの本物の人生に裏付けられたものだからなのだと、深く納得した。3時間に渡る充実したショーは、来年さらに磨きをかけ、武道館で一つの果実になることだろう。
文=石角友香
クリス・ハート/2015.11.29 東京国際フォーラムホールA
『クリス・ハート 47都道府県Tour2015-2016~続く道~ presented by IBJ』
2月11日(木・祝)宮崎市民文化ホール
2月12日(金)鹿児島市民文化ホール 第1ホール
2月14日(日)びわ湖ホール
2月20日(土)神戸国際会館こくさいホール
2月21日(日)和歌山市民会館
2月27日(土)米子コンベンションセンター
2月28日(日)鳴門市文化会館
3月06日(日)仙台サンプラザホール
3月18日(金)長崎ブリックホール
3月19日(土)広島HBGホール
3月21日(月・祝)松山市民会館
3月31日(木)ロームシアター京都
『クリス・ハート 日本武道館LIVE 2016 "僕はここで生きていく"
~47都道府県Tour2015-2016~続く道~ FINAL~』
4月30日(土)日本武道館
開場/開演 16:00/17:00