『デザインフェスタ vol.50』レポート アーティストと交流できるフェス クリエイティビティにたっぷり浸る2日間
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「自由に表現できる場」の提供をコンセプトに、国籍や年齢、ジャンルを問わず、オリジナルであれば無審査で参加できるデザインフェスタ。1994年から始まり、15000人ものアーティストが集結する本イベントは、2019年11月16日(土)・17日(日)で通算50回を数える。デザインフェスタは近年、春・夏・秋の年3回開催されるが、昨年秋のデザインフェスタでは約60,000名もの人が訪れたという。以下、さまざまジャンルに渡る作家たちの、魅力的なパフォーマンスや作品を紹介しよう。
デザインフェスタを盛り上げるショーやパフォーマンス
多様なイベントでフェス気分を味わう
会場入り口すぐに見えるショーステージは、アーティストがパフォーマンスを行う賑やかな空間だ。広いステージでは歌や殺陣、ファッションショーやバトントワリングなどが催され、常に賑わいを見せている。アーティストたちはトークで観客を沸かせたり、美しいダンスで魅了したり、会場をさまざまな形で盛り上げている。デザインフェスタの”フェス”という華やかな面に触れ、気持ちを盛り上げることができるエリアだ。
ほくろうショー
dance to earth
会場奥のパフォーマンスエリアで爽やかな音楽を奏でていたのは、女性ボーカルのスローミュージック、「tomteyule(トムテユール)」。ボーカルのユールの声、ギターのトムテとベースのヒナタが奏でる音はファンタジックで優しく、聴く人の気持ちを和ませる力がある。曲によってはユールの澄んだかわいらしい鉄琴の音が入り、子供の頃の記憶が蘇るような懐かしい気持ちになる。デザインフェスタの賑やかな会場で、まるで森の中にいるかのような、ほっと息抜きできる空間をもたらしていた。
世界の味を堪能できるフード・カフェエリア
美味や珍味が盛りだくさん
フードエリアやカフェエリアでは、カレーやイタリアン、ハンバーガーやフレンチフライ、メキシカンや金沢ご当地料理、煎餅やプリントクッキーなど、ワールドワイドな料理やお菓子を堪能することができる。フードを売るキッチンカーや各店舗のディスプレイも工夫が凝らされており、外観を見るのも楽しい。
カフェエリアのひときわ長い行列は、「ハッピーハッピーメロンパン秘密基地」に並ぶ人々だ。飛ぶように売れているのは、クッキー生地1ミリの食感にこだわり、外側サクサク、内側ほわほわが特徴のメロンパン。代表取締役の阪田紫帆里氏によれば、メロンパンをパンではなく、スイーツに位置づけるというコンセプトより、ケーキやデザートのようなメロンパンやラスクを打ち出してきたとのこと。
ハッピーハッピーメロンパン秘密基地
メロンパンは各種ユニークな名前がついており、カスタードとホイップのダブルクリームを挟んだ「死んでも地獄におちない」、ホイップクリームとメロンパンのシンプルな「上司の話は聞きたくない」などが特に売れ筋だという。個性的なネーミングは、メロンパンを差し入れた時などに話題にすることでコミュニケーションの手段にする、という隠れたテーマもあるそうだ。
ハッピーハッピーメロンパン秘密基地 メロンパン
ホイップクリームとキャラメル味のメロンパン「深夜のおやつジャンキー」
メロンパンラスクの売れ筋は、「失恋ショコラ味」、「シュガーバター味」や「塩バター味」とのこと。「黒胡椒ガーリック味」というユニークなラスクもあり、お酒のおつまみにもよさそうだ。店の唇のマークは、「ダイエットは明日から」という悪い言葉を囁く唇とのこと。メロンパンもラスクも、名前やコンセプトにパンチがあるだけではなく、一口で幸せになれるような優しい甘さで、全種類試してみたくなるおいしさだ。
ハッピーハッピーメロンパン秘密基地 ラスク
ハッピーハッピーメロンパン秘密基地 代表取締役 阪田紫帆里氏
デザインフェスタの飲食系の変わり種、「うめぼしの松本農園」では梅干しや梅酒などを販売している。お店に立っているのは三重県の梅農家の五代目夫婦で、センスの良いパッケージは、梅干しを上品なお菓子のように見せている。店舗の看板は三代目(祖父)が作っていた机をリメイクしたものとのことで、レトロで味わいのある雰囲気を高めている。
うめぼしの松本農園 5代目代表 松本清氏
リンゴ酢を使って実現させたという、塩分0%の梅干しも。塩分が気になる人も、この梅干しなら安心して食べることができるだろう。デザインフェスタ出展者の方が買ってくださる機会も多いとのことで、恐らく出展は体力を使う仕事なので、クエン酸が豊富な梅干しで疲れを取るという狙いがあるのだろう。特に人気があるのははちみつ梅干しやかつお梅干し、しそ梅干しなどとのことで、一粒からでも購入できる。
うめぼしの松本農園
うめぼしの松本農園のはちみつ梅干しとかつお梅干し。パッケージがかわいらしい。
アーティストたちのクリエイティビティに触れる
場内を彩るライブペインティング
会場では随所でライブペインティングが行われている。夜空に出没したおしゃれな絵描きといった風情のアーティストは「インディゴ夜想曲」の比嘉凜氏。比嘉凜氏は宇宙をモチーフにしたアクセサリーを製作・販売しており、ポップな雰囲気の絵は最終的には宇宙になるとのこと。
インディゴ夜想曲 比嘉凜氏
インディゴ夜想曲
このブースのサポートに入っているSHION ZIZZ(シオン・ジズ)氏は骨の架空生物たちのグッズ「B.bone」を製作・販売しており、「B.bone」の世界の案内役というコンセプトの扮装で滞在、来る者を異世界へ誘い込むような不可思議な空気を生み出していた。
B.bone
左:SHION ZIZZ(シオン・ジズ)氏 右:比嘉凜氏
「空想絵画物語」のなお(田中尚幸)氏のライブペインティングは、会場のさまざまなペイントの中でも、ひときわカラフルでダイナミックだ。絵画『Voice of Thunderstrorm』には、感情と意思という同じ一つの心の中の相反する自分が描かれているというという。少女がメッセージを叫びながらピアノを弾く絵はほとばしるエネルギーを感じさせ、見ていると元気をもらえるような気がしてくる。
空想絵画物語 なお(田中尚幸)氏
暗闇の中で輝く繊細なアート
「暗いエリア」で密やかに広がる作品世界
デザインフェスタには「暗いエリア」があり、暗い照明の空間でブース内を演出することができる。闇の中で賑わいを見せていたのは「アトリエココ」(ATELIER COCO)のブースで、照明で輝くランタンカードが人気を博していた。大型の作品は2か月もの時間を要するというランタンカードは繊細で美しく、カードという狭い領域に広がる世界の密度の高さには感嘆するばかり。アーティストはこの道12年で、ファンタジーやゲームが好きとのこと。さまざまな要素から唯一無二の幻想世界を作り上げる技巧と想像力は、たくさんの人を魅了していた。
アトリエココ
アトリエココ
アクセサリー、雑貨、小物、服……
普段会えない作家たちと交流しながら、お気に入りの一品を見つける
デザインフェスタの中でもひときわ賑わいを見せるアクセサリーのブースでは、ロボットの形をしたユニークなアクセサリーが。「マサノヴァアート」(MASSANOVAART)の小さなロボットは、ネジやナットのような工業製品部品を、ステンレスや鉄、ガラスなどの特徴を活かし、精密加工技術を駆使することで生み出されている。ロボットたちの表情は一つ一つ異なっており、お気に入りの一体を探すのも楽しい。ネックレスや指輪、イヤリングやピアスなどのさまざまなアクセサリーがあるので、贈り物にしても喜ばれるだろう。
マサノヴァアート
マサノヴァアート
雑貨を含むブースの一角では、パウダービーズをつかった小鳥たちのぬいぐるみやグッズ、ワンピースやトートバッグなどが並ぶ。制作者のCoCoCoは二人組で、文鳥やセキセイインコ、オカメインコ、その他空想の鳥など、小鳥たちの世界をつくりあげている。パステルカラーの小鳥たちが、手触りの良いモフモフのぬいぐるみになってこちらを見上げる姿はとても愛らしく、通りかかる人の目をひく。CoCoCoは普段、関西を拠点に活動しているとのこと。作り手とコミュニケーションを取り、普段は出会えない作品、手に取ることができない作品を知り、購入することができるのは、デザインフェスタならではの醍醐味といえるだろう。
CoCoCo
CoCoCo
日本の東西南北から多種多様なアーティストが集結し、交流して作品を購入することができるデザインフェスタ。アーティストは数多く、会場は広く、扱う品やパフォーマンスのジャンルは多岐に渡るため、全て見て回るには体力が必要だ。一日で見る場合は場所を絞って効率よく、二日間鑑賞できる場合は、全体を見た後で気になったブースをじっくりチェックするのが良いだろう。普段出会えないアーティストと交流し、見る側もクリエイティビティを刺激されるデザインフェスタ、次回以降も見逃さずに足を運びたい。
イベント情報
(会期終了)
場所:東京ビッグサイト西ホール全館・南ホール1・2ホール
時間:両日ともに11:00~19:00