センラ　歌とダンスと遊び心で魅了したワンマンツアー東京公演をレポート

SENRA LIVE TOUR 2019-Luge-
2019.11.17　Zepp Tokyo

浦島坂田船の一員であり、2ndソロアルバム『Luge』（リューゲ）をリリースしたばかりのセンラが、大阪、名古屋、東京、福岡の4都市を巡るワンマンツアー『SENRA LIVE TOUR 2019 - Luge-』を開催。11月17日に東京・Zepp Tokyoにて行ったセミファイナル公演でも、彼の歌力と遊び心を堪能することができた。 
ドイツ語で“嘘”を意味する言葉を冠した『Luge』の楽曲を全曲披露したこの日、オープニングナンバーはアルバムのラストを飾る「シックスセンス -6th SENSE-」だ。ネオンに彩られる都会のビルを模したセットが組まれたステージに現れた、ロングコートをスタイリッシュにまとうセンラ。「今日はみんなで楽しんでいきましょう！」と呼びかけ、嘘に翻弄されながらも＜信じたい＞という想いを託したしなやかで艶のある歌声を響かせれば、一気に惹きつけられてしまう。

「もっともっと楽しんでいきましょう！」と笑顔を見せ、「ライアーダンス」ではダンサーのかずず、R1kutoとともにダンス！ のちのMCで「あのダンス必死やった！（笑）」と明かしたが、歌いながら躍動するその姿はとても華やか。浦島坂田船での活動、ソロで参加している『XYZ TOUR』など、多くの場数を踏むことで表現欲がますます高まってもいるのだろう。いっぽう、大歓声を上げるセンラー（センラのファンの呼称）は、センラのイメージカラーであるイエローのペンライトで場内を染めつつ、＜踊っちゃって＞ ＜染まっちゃって＞に続けて＜ライアー！＞と大きくコール。なんて楽しい夜なんだ。

「セミファイナルを東京で迎えられる喜び、噛みしめてやっていきます！」という言葉に続いたのは、甘美で背徳的な世界へといざなう「Faker」。＜僕の嘘に溺れてしまえ＞とは、罪深いにもほどがある。かと思えば、「ステゼリフ」は森谷優里が奏でる鍵盤主体のオシャレな曲調と＜最低な男＞を演じる男性の切なさ、そのコントラストが音源に増して印象深いナンバー。さまざまな色が宿る“嘘”に、気づけば魅入られてしまっているではないか。

「ダチュラと林檎」では、ドラマーのcamachoとウッドベースを用いる二家本亮介を中心に生み出す心地よいスウィング感にセンラのきれいな高音がよく映えて、余計に“二番手”の悲哀が色を濃くしていく。

男子、女子、保護者の方々と順繰り声出しをしてもらって一体感を高めたところで、「ここから地獄の時間やで（笑）」と言って始めたのは、スクリーンに手作り映像を流しながらのツアーグッズ紹介。東京にちなんだ東京2020オリンピックマスコットの画像や、“身の丈発言”で話題の某文部科学大臣などの際どいネタも交え、“マイメロコラボ マグカップ”と“バングル”の魅力を言葉巧みに伝えていくセンラ。噛み噛みなところはご愛敬、彼ならではのユーモアセンスはもちろん、さすが営業職のサラリーマン！なプレゼン力も感じずにはいられない。

一転、「ソロでツアーをさせていただくのは、本当にありがたいことです。一緒に思い出を作れたらいいな、と思っています」という篤実な言葉から、「嘘吐」へ。＜優しい嘘＞がやるせない歌詞と最後のグっとくる独唱、さらには「ミレエジ」の優しい歌声。必ずしも正しく生きられず、時に白黒はっきりつけられずに曖昧なままでいるしかないのが、私たち人間。だからこそ、きれいごとだけではない言葉たち、そこに想いを込めたセンラの歌声に心が動く。

また、「スパイラル」「ファーストレディー」というドラマティックなナンバーににじむのは、切ない女心。その歌声に女性が共感し、涙してしまうのは、彼が感受性豊かで繊細な人だからなのだろうなとも思う。

スペシャルムービー『情熱胸毛大陸』では、営業マンとして働くセンラに迫る……のかと思いきや、この夏に拠点を地元・名古屋から関東に移し、ソロアルバム『Luge』をリリースした彼の制作中の姿を特別公開。自ら作詞したコミカルなナンバーも初披露しつつ、うさんくさいプロデューサーやクセの強すぎる振付師などにも扮したセンラ、そのなりきりぶりはロバート秋山の“クリエイターズ・ファイル”にも迫る、と感心してしまったのは筆者だけだろうか。

その後、爽やかなストライプのシャツを羽織って再登場したセンラ。「スキスキ絶頂症」では、＜純情ぶってセンラのことが！＞と歌うセンラに続き、センラーが声をそろえて＜好き好き絶頂症！＞と全力で応えると、センラも思わず「東京やるやん！」と、破顔一笑だ。

中毒性の高い「エノウ」では、「もっと声出せるんじゃないですか！？」と煽りつつ、巻き舌やがなり声でドキっとさせたり。「マスカレイダア」では、ファルセットの入れ方で唸らせたり。「リコレクションエンドロウル」では、ギタリストの鳴風やSumと絡む姿や、かわいらしいシェイクダンスで沸かせたり。ガラリと異なる表情を次々に見せていくセンラは、まるでカメレオンのようでもある。

ダンサーと共に“パラパラ”なダンスで盛り上げ、センラーの大きなコールが響いた「脳内シェイカー」では、曲中で自ら小道具を運び、テーブルクロス引きに挑戦する場面も。

そして、「give you up」はアルバム『Luge』の幕開けを飾るナンバー。自らの気持ちを押し殺して元カノの幸せを願う、あまりにも美しく切ない歌声は、“嘘”をテーマにした作品を携えてのツアー、その本編を締めくくるのに相応しいものであった。

わちゃわちゃ振り切った「コールボーイ」、オトナ色な「Fake my dreams」と、その豹変ぶりであらためて驚かせたアンコールでは、あらためて気持ちを言葉にしたセンラ。

「みなさんが振ってくださるペンライト、すごくきれいでした。大阪、名古屋、東京と、どんどんお客さんとの一体感が増している気がして嬉しく思います。センラはまだまだ止まりませんのでついてきてください！」

感謝と決意を込めて最後に届けてくれたのは、高揚感たっぷりな「Make a pass」。センラーのクラップも、とても力強くあたたかかった。その愛を支えに、センラはこれからもソロに浦島坂田船に、色気ある歌声で酔わせていくことだろう。
 

文＝杉江優花　撮影＝小松陽祐（ODD JOB LTD.）

※アルバムタイトル・ツアータイトル「Luge」の「u」はウムラウト記号が正式表記