【インタビュー】藤田和之のレジェンド王座に挑む“甦ったサムライ”船木誠勝「現役生活のベストバウトの1つに入れたい! 最強の選手と節目で戦えるのは運命」
-
ポスト -
シェア - 送る
藤田和之と船木誠勝
リアルジャパンプロレス「ストロングスタイルプロレス Vol.4」(12月5日、後楽園ホール)では第14代レジェンド王者・藤田和之に船木誠勝が挑む一戦が実現する。藤田を「日本プロレス史上最強」と評する船木だが、これがシングル初対決。ようやく巡り会えた形となる相手に、「運命だと思ってやります。今回は本当に一発勝負、もう2度とないシングルだと思っています」と意気込む。リアルジャパン、令和元年最終決戦、ベルトはどちらの腰に巻かれるのか!
≪メインイベント レジェンド選手権試合 60分1本勝負≫藤田和之vs船木誠勝
≪メインイベント レジェンド選手権試合 60分1本勝負≫
【第14代レジェンド王者】藤田和之(はぐれIGFインターナショナル)
vs
【挑戦者】船木誠勝(フリー)
■その時の最高のコンディションでぶち当たっていきたい
船木誠勝
――先日腓骨を骨折をされたそうですが回復具合はいかがですか?
船木「先日レントゲンの撮影をして、もうくっついているということで大丈夫です。怪我は本当につきものなので、これは慣れっこというか、もう30年やってますので、怪我をしている時の調整とかも分かっています」
――こういった場合の調整はどのようにされるのですか?
船木「やっぱり少しずつ動いていく感じです。なので今は本当に基本のシャドーとか、その辺を中心にしています。実は骨折とは別にちょっと風邪も引いていまして、それがちょうど治ったので、ここから12月5日の試合へ向けてコンディションを持っていきます」
――本当に「怪我はつきもの」で、プロレスラーである以上避けれないものだと思います。
船木「たとえ怪我や風邪があっても試合をしますし、なので本当に“その時の自分の体調で挑む”という感じになっています」
――これまで万全でない状態で臨まなければならなかった試合もあったと思います。その時はどのように戦ってきたのでしょうか。
船木「やっぱりその時にできる技を選ぶというか。たとえば今回は浴びせ蹴りで足を壊してしまいましたので、浴びせ蹴りは使えないんです。なので浴びせ蹴りと違うものをやろうかなって、そういう感じはありますよね」
――たとえコンディションが万全でなくても、それに応じたやり方があると。
船木「その時の自分の体で1番よいパフォーマンスをするよう心掛けています。それは40でプロレスに復帰してそこから10年、この間で習得しました。全日本プロレス時代は巡業中に怪我をした時もあるんです。ですけど痛み止めを飲んで、テーピングを巻いて試合に出続けていましたので、そういうことはやっぱりこの10年ですごく学びました」
――ではたとえ完璧なコンディションが作れない時であって……
船木「対処してやると。なのでそれで精神的に落ち込むとかっていうことがなくなりました。前はやっぱり“最高の状態でいつもやりたい”っていう、そういう気持ちで常にいたんですけど、それが変わりました」
――それは総合格闘技に取り組んでいた時はそのように思っていたのでしょうか。
船木「そうですね。なんですけど、その時もそういう気持ちでやっていればよかったなって逆に後悔しています(笑)。もう怪我や不調というのはつきものなので、“その時の状態で1番いいパフォーマンスをする”という考えです。だから“自分の最高の状態”ではなく、“その時の自分の最高の状態で頑張る”という気持ちでいれば、当時ももっと頑張れたような気がします」
――完璧に仕上げたい、理想のコンディションで上がりたいと思っても実際はなかなか難しいところがあります。
船木「それで精神的に苦しかった部分もあったと思います。特にヒクソンとの試合の時なんかは、毎日練習でコンディションが変わる訳ですけど、その都度悩んだりいらないエネルギーの浪費が多かった気がします。なので今はあまり堅苦しく考えずにやってます。もう50で、第一線でやれるのは本当にあと3年、5年だと思うんです。だから本当に悔いなく、一戦一戦名残り惜しさを噛み締めながら、今は試合をしています」
――“こうでなければならない”といったとらわれや力みなく、自然体で臨まれているのですね。
船木「そうですね。だから今は残り少ない現役生活の一戦一戦を“その時の最高のコンディションでぶち当たっていきたい”、そういう気持ちでいます」
■サイや大きな動物を蹴っているイメージ
船木誠勝
――人間誰しも調子に良し悪しはあるもので、これは一般の人にも通じる心掛けかと思います。そんな中でレジェンド選手権王者・藤田選手に挑む一戦が決まりましたが、藤田選手とはヒクソン戦の前にスパーをしたの最初だったのでしょうか。
船木「彼がちょうど初めてPRIDEに出る前で、高橋(義生)選手が連れてきて、それで自分もちょうどヒクソン戦の練習に入っていたので、ヒクソンとタイプは違うんですけどスパーリングをしました。彼がまだレスリングしか知らない時だったと思うんですけど、タックルにヒザを合わせたら逆にそのまま吹っ飛ばされました」
――藤田選手を「日本プロレス史上最強」と評されていましたね。
船木「はい、最強だと自分は思います。それはまず本当に日本人離れしている体、体の厚み、瞬発力、あとはスタミナですね。オリンピッククラスの肉体を持っていて、それプラス彼の気持ちです。以前話していたら、『試合のことを考えると泣けてくる』って彼が言うんです。涙が出ると。そのぐらい気持ちを入れて、きっといろんな感情が入っていると思うんです。ただ度胸があるだけだと、行ってやられておしまいになってしまうケースが多いじゃないですか。だけどそういう風にきっと恐れもあると思うんです。恐れもあるから自分を守るために戦う。そういう怖さも彼には入っていて細やかな部分もあるので、格闘技者としてすごく一流だと思っています」
――藤田選手がどのように日本人離れしているのかについて教えてください。
船木「ほんと外国人とか、それに近いですよね。なので彼がPRIDEとかで外国人とやってもほぼ互角に戦えていたというのはそこだと思います。今まで対戦した相手で、ああいうのは他の日本人選手にはなかったです」
――そんな藤田選手とどう戦いますか?
船木「もう外国人と思いながらやります(笑)。やっぱり打撃なんかもかなり強く入れないとダメだと思います」
――藤田選手とはこれまでタッグで対戦がありますが、実際に打撃を入れた時の感触だったりはいかがですか?
船木「違いますね、足応えが。なんかサイを蹴っているみたいな感じです。もちろんサイを蹴ったことはないんですけど、そういった大きな動物を蹴るイメージです」
――通常であれば効いた、ダメージがあったということが分かると思うのですが、藤田選手の場合は?
船木「分からないですよね、本当に。だから倒れないと分からないです。なのでこっちの体力が尽きるか、向こうの体力が尽きるかという形になると思います」
■本当に本当の“挑戦”
――今年1年、令和元年を締めくくる一戦でもありますが、これについてはいかがですか。
船木「最後の最後でこのタイトルマッチを組んでもらえて本当によかったです。特にリアルジャパンは今年は初対決が多かったのでいろんな刺激をもらえたんですけど、最後の最後でこんなに最高の舞台を用意してもらってすごく嬉しいです。今年は振り返ると去年より試合数も多くなってしまって、仕事のパーソナルトレーニングもすごく充実していて、もうアッという間に11月で、こないだ年が明けて新年会をやった感じがします」
――でも毎年そんなふうに感じているのではないですか?
船木「特に今年は早いと思います。もう休みがほとんどないっていう。風邪をひかないと休めない感じです。本当にそんな感じで突っ走ってきました」
――先ほど話にありましたが、現役生活はラストスパートという心境ですか?
船木「そうですね。あと10年で還暦なので、本当にこの3年、5年が本当に最後に活躍できる時間かなと思っています。今回挑むレジェンド王座はフリーになって初めて巻いたベルトで思い入れがあるし、やっぱり定期的に巻きたい、巻いていたいなっていう思いはあります。それに自分が最強だと思う相手とシングルで1回やってみたかったんです。藤田選手がリアルジャパンに出るとも思っていなかったし、彼も一時期休業していましたよね。そこからまた戻ってきてそれで再会できている。きっとそれもまた運命だと思ってやります。今回は本当に一発勝負、もう2度とないシングルだと思っています」
――分かりました。それでは最後にファンへのメッセージをお願いします。
船木「残り少ない現役生活の中のベストバウトの1つに入れたいと思ってますので、自分が思う最強の選手と、50歳という節目で戦えるのは本当に運命だと思っています。後のことを考えず、ぶつかっていきます。本当に本当の“挑戦”です」
藤田和之、船木誠勝、初代タイガー
リアルジャパンプロレス『初代タイガーマスク 佐山サトル ストロングスタイルプロレスVol.4』
(取材・文:長谷川亮)