この劇場だからこそ味わえる!? 高級ホテルで起こるドタバタコメディ、ラフィングライブ『Out of Order』開幕

2019.11.29
レポート
舞台

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毎回、小さな嘘があれよあれよと雪だるまのように大きくなって転がり回るドタバタコメディで笑わせてくれる、ラフィングライブの第5回公演『Out of Order』が2019年11月28日(木)に東京・三越劇場にて開幕した。

過去公演と同じく、世界中で絶大な人気を誇る笑劇作家“レイ・クーニー”脚本のワンシチュエーションコメディだ。今度の舞台は四つ星ホテルのスイートルーム。副大臣のリチャードが、いざ野党議員の秘書と甘〜い夜を過ごそうというところにトンデモない事件が勃発! さて、どうなるのか……!?

ラフィングライブは声優、俳優、タレントとして幅広く活躍する山寺宏一水島裕、そして演出家の野坂実がコメディを上演するために2015年に立ち上げた演劇ユニット。毎回さまざまな俳優・声優たちが出演する。『Out of Order』では「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎや、「新世紀エヴァンゲリオン」の葛城ミサトの声優である三石琴乃。「ハイキュー!!」の清水潔子、「交響詩篇エウレカセブン」のエウレカの声優である名塚佳織。俳優・声優等マルチに活躍する岩尾万太郎が初参戦した。

物語は、臨時国会の行われているある夜。イギリス与党副大臣のリチャード(山寺)は当然、国会会場にいなければいけないはずだが……妻・パメラとの思い出が詰まった4つ星ホテル『ウェストミンスター・ホテル』のスィートルームにチェックインしていた。その目的は、野党議員の秘書・ジェーン(寿美菜子)との密会だ。与党の副大臣と野党の議員秘書、しかも二人とも既婚者とくれば、バレたら大スキャンダル! それでも二人は誰にも知られず甘い一夜を過ごすはずだった。しかし二人の気づかない間にその部屋では、もはや誰にも予想することができないだろう大事件が発生していたのだ!

とっさについた些細なウソを隠すために、さらにウソにウソを重ねて収拾がつかなくなっていく……というのはレイ・クーニーの脚本でお決まりの展開だ。これにさらに「なんだ、これは!」という事件が重なるので、さあ大変! リチャード本人もその“事件”の真相がわからないので、混乱に混乱が塗り重なり、場は混乱の渦に巻き込まれる。

リチャードの巻いた火の粉を思いきり浴びるハメになるのが、正直者の秘書・ジョージ。演じる水島が初日前の会見で「振り回されめちゃくちゃな人生を送るハメになった」と言っているとおり、リチャードの嘘にどんどん巻き込まれていく。生来のお人好しに加え、秘書という立場上リチャードを強く拒絶することもできない。あたふたとするうちに、部屋にはホテルの従業員やジェーンの夫など、次々と招かれざる客がやってきて、事態はどんどんこじれていく……。政治家生命のかかった人生最大のピンチを、果たしてリチャードは乗り切れるか!?

予想外の展開に笑うこともあれば、「くるぞ、くるぞ……やっぱりきた!」というお約束の笑いもある。それぞれのキャラクターが濃く、巻き込まれて困り顔のジョージや、とぼけたようすのホテルウエィター(岩崎ひろし)など、それぞれの登場人物らの笑わせ方も個性的。いろんな笑いが詰め込まれた賑やかなおもちゃ箱のようだ。

また、主人公のリチャードが国会議員ということで、政治家ネタのブラックユーモアも。英国コメディらしい毒も小気味良く効いている。

白とクリームとターコイズブルーの色調の落ち着いたスイートルームには、お洒落なデザインのソファや、絵画、生け花があり高級感があるがくつろげる。それが三越劇場の装飾ととてもマッチしているので、ちょっとお出かけして洒落のきいたコメディを見る素敵な時間が演出されている。

ただ、高級感のある空間なのに、部屋にいくつかある扉のどれかからはつねに誰かが出入りしていて、まるでモグラたたきのよう。演出の野坂実は「こんなにギミック(仕掛け)が多いというか……ドアが開いたりとか、けっこう細かくて。タイミングを間違えるとグダグダになってしまうのを、裏方と表に出る役者さんが一丸となってがんばっています。本当に、裏も表も“ワンチーム”で臨んでいる公演となっています」とチームワークを語る。また作品については「通常のレイ・クーニーの作品と違って、すごく遊びが多いので、その部分の役者さんの演技の妙も、今回の芝居の見どころだと思います」と紹介した。

客席では目の前の舞台上で起きている展開に笑いつつも「あの扉のむこうは今どうなってるんだろう、大丈夫かな」とハラハラする。何度舞台に向かって「そのドアは開けちゃだめ!」「ああ、今それどころじゃない!」と叫びそうになったことか! こじれる展開に笑いつつも、自分もトラブルに巻き込まれた気分で落ち着かなくなってしまうかも。

見どころについて、山寺は、水島の俳優人生約50年で初のラブシーンをあげ「がんばってください!」と丸投げ。水島は「ひどいプレッシャーのかけ方でしょ〜!」と困り顔。まるでジョージにすべてお押し付けようとするリチャードとの関係のようだ。野坂は、三石がクローゼットの中にいるシーンでは小声で歌っていることを明かした。席によっては口の形でなんの歌かわかる瞬間もあるかも!?

会見最後には山寺が「92年という歴史のある、こんなに素晴らしい装飾はここしかないという三越劇場で、『Out of Order』という高級ホテルを舞台にした作品ができる幸せを感じております。その一体感を全部楽しんでいただければと思います。そんなに芝居に興味がなくても、三越に、三越劇場に来るということだけでも価値がありますし、なんといっても6階の宝飾品売り場は、昨日がリニューアルオープン日。ピカピカのフロアでお客様をお迎えできますので、そんなのも楽しんでほしいと……」と締めくくろうとしたところ、水島が「ようは『来てね!』ということ」と息ピッタリにまとめ、会場は笑いに包まれた。

「三越に行こうかな、ついでにラフィングライブにも……でもOKですので!」とのこと。歴史ある場所で高級感にどっぷりつかり、思いきり笑う体験をぜひ。

公演は12月2日(月)まで。上演時間は2時間半を予定(休憩15分あり)。

取材・文・撮影=河野桃子 舞台写真=オフィシャル提供

公演情報

ラフィングライブ​第五回公演『Out of Order』

■作: レイ・クーニー
■翻訳: 小田島恒志
■演出: 野坂 実
■出演: 山寺宏一、寿美菜子、岩崎ひろし、斎藤志郎、三石琴乃、高橋広樹、名塚佳織、岩尾万太郎、斉藤こず恵(友情出演)、水島裕
 
■日程:2019年11月28日(木)~12月2日(月)
■会場:三越劇場