ツリーの中の夢世界に迷い込む 斎藤友佳理芸術監督、主演の川島麻実子・柄本弾にきく、東京バレエ団の新制作『くるみ割り人形』 

2019.12.6
レポート
クラシック
舞台

photo:Shoko Matsuhashi

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2019年12月13日(金)から15日(日)の3日間、東京バレエ団は新制作『くるみ割り人形』を上演する。
『くるみ割り人形』は東京バレエ団の母体であるチャイコフスキー記念東京バレエ学校(1960年開校)の初めての上演作品でもあり、東京バレエ団となってからも55年の歴史の中で、上演を重ねてきたレパートリーのひとつ。バレエ団の歴史ともいえる伝統的な作品を、斎藤友佳理芸術監督が37年振りに改訂するのが今回上演される新制作版だ。「ゼロから作る方が楽だった」と斎藤芸術監督が語るように、わずか10カ月という製作期間のなかで、バレエ団の軌跡を残しながらの改定は想像を絶する数々の困難が伴ったという。
今回はいよいよ公演を間近に控えての公開リハーサルと、その後に行われた、斎藤芸術監督、主演の川島麻実子柄本弾の記者懇親会でのコメントをお届けする。(文章中敬称略)

スペインの踊り photo:Shoko Matsuhashi

■人形たちに伴われておとぎの国へ

公開リハーサルでは第2幕のはじまりからグラン・パ・ド・ドゥの直前までを通して披露された。マーシャは川島麻実子、くるみ割り王子は柄本弾が踊る。
改訂版の2幕ではマーシャがクリスマスツリーを登っていき、「お菓子の国」を目指すという設定となっている。これは斎藤芸術監督のアイディアだ。おそらく1幕の、ネズミたちとの戦いの時からだろう、マーシャとくるみ割り王子はコロンビーヌ、ピエロ、ムーア人の人形らとともにクリスマスツリーの中の世界に到着し、おそらくツリーに飾ってあるお菓子か人形の化身であろう者たちの歓待を受ける。スペインやアラビア、中国やロシアなど、各国の踊りを眺め、時に彼らとともに踊りに混じるマーシャと、彼女を見守るコロンビーヌらの姿がとても微笑ましく、ネズミたちとの戦いを経て、皆が心を通わせてきた様子がうかがえる。

2幕の振付は「スペインはほぼ大元の形に近く、また中国、フランス、金平糖と王子のグラン・パ・ド・ドゥは原型を残した」と斎藤芸術監督が語るように、それ以外のところはほとんどが新しく改訂されている。「アラビアの踊り」の振付はバレエ団のスタジオ・パフォーマンスでもしばしば振付作品を披露している、ブラウリオ・アルバレスによるそうだ。

アラビアの踊り photo:Shoko Matsuhashi

バレエスタッフの木村和夫が時折「つなぎを丁寧に!」「動きや流れを意識してメリハリを」と指導の声を飛ばす。24人で踊られる「花のワルツ」は優雅でロマンティックなムードを漂わせ、本場ロシアでつくられたという衣裳が加わるとどうなるのか、非常に期待が膨らむ。なによりリハーサルに挑む場の空気が非常に明るく前向きで、ダンサーらの「公演が楽しみでならない」というモチベーションの高さが感じられたのは、非常に心強かった。

花のワルツ photo:Shoko Matsuhashi

■マーシャの心の成長が感じられるストーリーを

リハーサル後に行われた記者懇親会で、斎藤芸術監督は振付の改定に当たり「柱を残しながら手を加えていくほど、難しいものはない。しかしバレエ団の前身である東京バレエ学校ではじめて上演された作品で、故・佐々木忠次さんの思いやバレエ団の歴史や伝統もこもっている作品でもある。私も自分が踊っていた時のことを思い出しながら挑んだ。舞台美術や衣裳製作など、全てが時間との戦いだった」と振り返る。

左から柄本弾、川島麻実子、斎藤芸術監督 photo:Shoko Matsuhashi

この新制作版の『くるみ割り人形』は先にも述べた通り、「東京バレエ団の、今回の改訂版ならではの味わいを出したかった」と斎藤芸術監督が語るように、クリスマスツリーの中の世界の旅となる。マーシャたちはクリスマスツリーの下から頂上を目指しながら登っていき、最後のグラン・パ・ド・ドゥはクリスマスツリーの頂で踊られるのだという。マーシャ役の川島麻実子は「今回はコロンビーヌやピエロなど、人形たちが一緒に旅をする。見守ってくれる、いつでも誰かが寄り添っていてくれるという、そういう温かさも伝えたいので、それぞれのダンサー達とコミュニケーションを取りながら、場面ごとの見せ方を考えている。クリスマスツリーを登りながら、マーシャが経験を積み、成長していく様子が表現できれば」と話す。

フィナーレの川島麻実子と柄本弾 photo:Shoko Matsuhashi

くるみ割り王子を踊る柄本弾は「『くるみ割り人形』で川島さんと組むのは今回が初めてだが、互いの役どころや、登場人物の内面を伝えるにはどのようにすればいいかなど、話し合いをしながらリハーサルをしている。マーシャとともに、王子の精神的な成長もみせられれば」と語る。また今回の新制作版について「“みんなでつくっている”という感じがとても楽しい。いい舞台になると確信している」と自信を込めて語った。

バレエ団の歴史に新たに刻まれる『くるみ割り人形』の舞台に期待したい。

公演情報

東京バレエ団
『くるみ割り人形』全2幕 新制作
 
■日程:2019年12月13日(金)~15日(日)<全3回公演>
■会場:東京文化会館

■音楽:ピョートル・チャイコフスキー
■台本:マリウス・プティパ(E.T.Aホフマンの童話に基づく)
■改訂演出/振付:斎藤友佳理(レフ・イワーノフ及びワシーリー・ワイノーネンに基づく)
■舞台美術:アンドレイ・ボイテンコ
■装置・衣裳コンセプト:ニコライ・フョードロフ

■指揮:井田勝大
■演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
■児童合唱:NHK東京児童合唱団

■キャスト:
12月13日(金)19:00
川島麻実子(マーシャ)/柄本 弾(くるみ割り王子)
12月14日(土)14:00
沖 香菜子(マーシャ)/秋元康臣(くるみ割り王子)
12月15日(日)14:00
秋山 瑛(マーシャ)/宮川新大(くるみ割り王子)
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