TRI4TH インストバンドが“みんなで歌おうぜ”と掲げたツアーに見た、新しきジャズの光と道

2019.12.16
レポート
音楽

TRI4TH

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SING ALONG TOUR
2019.11.27 マイナビBLITZ赤坂

インストバンドが“みんなで歌おうぜツアー”だなんて、いかしてるじゃないか。踊れるジャズバンド、TRI4THのツアータイトルは『SING ALONG TOUR』。そこにたとえ歌詞がなくとも、熱くほとばしる思いを唇に乗せればそれは全て歌だ。ニューアルバム『jack-in-the-box』で切り開いた新境地をステージで再現する、今日はツアーファイナルの地、東京・マイナビBLITZ赤坂。バンド史上最大キャパの会場で、最高のチャレンジが今始まる。

ステージ前に下ろされた斜幕に、ツアーのドキュメンタリーが映ってる。旅するバンドの生きざまを刻む、かっこいいロードムービー。「最高のショーを見せますよ」と、伊藤隆郎(Dr)が力強いセリフを放つと、爆音一閃、メンバーのシルエットが浮かび上がり、斜幕が切って落とされる。1曲目はアップテンポのエイトビートチューン「ぶちかませ!」だ。ドラムをど真ん中に据えた横一線のフォーメーションは、つまり全員がフロントマン。メンバー紹介とソロ回しで一気に盛り上がり、さらにテンポを上げてパンクな「Shot the Ghost」、ご機嫌ロカビリースタイルの「Go Your Way」へ。歌詞と呼べるのは“Let’s Go!”と“Go Way!”の二言だけだが、何度も叫ぶうちに高揚感がぐんぐん高まる。「Sand Castle」では、藤田淳之介(Sax)と織田祐亮(Tp)がモンキーダンスでフロアを煽る。わずか4曲でトップスピード、とんでもない加速度だ。

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「帰って来たぜトーキョー! 最後まで一緒に踊ろうぜ!」

伊藤の景気のいいMCに続く「Freeway」では、竹内大輔(Pf)が右手の超高速トリルで度肝を抜き、「Stinger」では藤田がものすごいサックスソロを決める。全くスピードを緩めずに「MONSTER ROCK」へ、フロアからは「Oi! Oi!」の大合唱だ。初めて観る人は間違いなくぶっ飛ぶだろう、これがロックスピリットみなぎるTRI4THのライブだ。

「こんなクソでかい会場でワンマンするなんて、13年前は思いもしませんでした。本当にありがとう」

結成当時と今とを比較する、伊藤の言葉が興奮では弾んでいる。頭に必ず「トーキョーNo.1」がつく、恒例のメンバー紹介に続き、アルバム『jack-in-the-box』の中でも特にぶち切れた超高速ラグタイムチューン「Hasty Rag」は、「トーキョーNo.1速弾きクレイジー・ピアニスト」竹内の独壇場。ピアノって打楽器だったんだ。ライブではお馴染み、ザ・ポーグス(The Pogues)のカバー「Fiesta」では藤田がくるくる回り、関谷友貴(B)もウッドベースをくるくる回す。直線コースを思い切りぶっ飛ばす序盤から、徐々に起伏やカーブの多い展開へ、ライブは中盤へと進んでゆく。

気持ちいいスカビートの「Sunny Side」のあと、竹内が魅せてくれた。冷たく青いスポットライトの下、ピアノソロをしっとり聴かせ、哀愁を帯びたラテン風味の「Night Dream」へと繋ぐ展開は、ロマンチックの一言に尽きる。「Land Scape」は関谷のベースがリードする、ゆったりとした三拍子のミドルバラード。ほの暗い照明に照らされて、アダルトでお洒落に、ゆったりじっくり楽しむTRI4THもいい感じだ。

ここで、ツアー中盤の札幌から始まったという初挑戦のお楽しみトライ。オーディエンスから三つの言葉をもらって組み合わせ、そのイメージを曲にするという即興セッションのコーナーだ。「みんなが思い描くTRI4THってどんな感じ?」というお題を投げ、伊藤が名指した一人目は「鮮やか」、二人目は「鮫」、三人目は「浴衣」、三つ繋げて「鮮やかな鮫の浴衣」。そんな曲できるのか? ご心配なく、どことなく「ジョーズのテーマ」を思わせるフレーズからスタートした即興は、サックスとトランペットの見事な掛け合いを交えた、ファンキーなダンスチューンへと無事着地。「ジャズバンドの本質、即興を俺たちは忘れてねーよ!」と叫ぶ伊藤。続いては、100曲以上あるレパートリーの中から、本日の日替わりメニューとして選ばれた「Dance`em All」で一気にスパーク。予測不能、これだからTRI4THのライブは楽しい。いいもの見せてもらった。

「去年のメジャーデビューの時から、マイナビBLITZ赤坂でやろうと決めて目指して来ました。思い描いたようにはなかなか行かなくて、不安だったけど、こんなにたくさん来てくれて本当に嬉しい。ありがとう」

来年春にはアメリカ、テキサスで行われる音楽の祭典『SXSW 2020』へ参戦。そして2月には名古屋と東京のブルーノートでワンマンライブが決定。伊藤の誇らしげなアナウンスに客席がどっと沸いた。「新曲用意してきました!」という言葉にもっと沸いた。名前のない新曲は英語詞のボーカルを乗せたオールディーズタイプのロックンロールで、聴いたそばからすぐ乗れるパワフルな1曲。リリースが楽しみだ。

TRI4TH

ライブは後半、ここから再び強烈な加速が始まる。いつでもどこでも必ず盛り上がるキラーチューン「Stompin’Boogie」に続き、高速ロカビリー調の「Guns of Saxophone」へ。藤田がお立ち台の上でえびぞりポーズを決め、関谷がウッドベースを軽々とかつぎあげて大喝采を浴びてる。こうなったらもうやめられない止まらない、伊藤のドラムソロを皮切りに、関谷、竹内、藤田、織田が順番にスポットを浴びながら強烈なソロを決めた。いずれ劣らぬテクニシャン、そしてパフォーマー、なおかつエンタテイナー。一瞬もステージから目と耳を離せない。

さあ、あとはゴールを目指して駆け抜けるのみ。猛烈に速い4ビートの「DIRTY BULLET」から、伊藤が愛してやまないランシド(RANCID)のカバー「Time Bomb」へ。ジャズの皮をかぶったオオカミが本性を現した、パンクス魂炸裂のハイテンションプレイと、肝の据わった力強いボーカル。「FULL DRIVE」は、文字通りのフルドライブで猪突猛進。そして本編ラストを締めくくるのはやはりこの曲、アルバムのラストを飾ったボーカルチューン「Sing Along Tonight」だ。陽気なアップテンポ、理屈抜きのパーティーチューン、ホンキートンクなピアノ、煽り立てるホーンズ、そしてフロアの大合唱。ドラムのキックに合わせて♪ラララ~と歌い続ける、笑顔のオーディエンスを見ているステージ上にも笑顔があふれる。これぞシングアロング、踊れるジャズバンドが一つの壁をぶち破った記念すべき瞬間。

「俺たちの旅は終わりません。まだまだ旅を続けます」

アンコール。伊藤はスタッフ一人一人の名をあげてその貢献をねぎらった。5人で変わらずにいるために、変わり続けますと力強く語った。歌があろうとなかろうと、音楽だろ?と叫んだ。「俺たちは新しいことに挑戦し続けます」――。TRI4THは男気あふれる熱いバンドだ。約束したことは絶対に裏切らない。

「これからも俺たちのバンドワゴンに着いてきてくれますか?」と、伊藤のMCからイキのいいロックンロール「BANDWAGON」、そして永遠に終わらないパーティーに捧げる「Maximum Shout」。全ての灯りがともされ、誰もが“♪ハイ・ホー・レッツゴー!”と叫んでる。幸せな気持ちに満たされるエンドロール。「トーキョー、愛してるぜ!」と伊藤が叫ぶ。インストバンドが“みんなで歌おうぜ”=『SING ALONG TOUR』というタイトルを掲げた意味が、フロアを見るとよくわかる。「また来年も一緒に踊ろうぜ!」――新しきジャズの光と道を、TRI4THは信念を持って走り続ける。

取材・文=宮本英夫 撮影=堂園博之

TRI4TH

 

セットリスト

SING ALONG TOUR
2019.11.27 マイナビBLITZ赤坂

-SE-
1.ぶちかませ
2.Shot the Ghost
3.Go Your Way
4.Sand Castle
5.Freeway
6.Stinger
7.Monster Rock
8.Hasty Rag
9.Fiesta
10.Sunny Side
11.Night Dream
12.Land Scape
13.即興コーナー
14. Dance 'em All
15.新曲
16.Stompin Boogie
17.Guns of Saxophone
-Solo Corner-
18.Dirty Bullet
19.Time Bomb
20.Full Drive
21.Sing Along Tonight
<Encore>
22.BANDWAGON
23.Maximum Shout

ライブ情報

2020/2/21(Fri.) ブルーノート名古屋
2020/2/29(sat.) ブルーノート東京

リリース情報

アルバム『jack-in-the-box』
2019年7月10日発売
■初回限定生産盤(CD+DVD) 紙ジャケット仕様
SECL-2447-8 価格¥3.500(Tax in)
■通常盤(CDのみ)
SECL-2449 価格¥3.000(Tax in)
<CD収録曲>
Wake up
Time Bomb
BANDWAGON
Sing Along Tonight
ぶちかませ!
Go Your Way
Night Dream
Landscape
Hasty Rag
ESCAPE
Shot the Ghost
Sunny Side
全12曲収録
 
-特典DVD-
2019年3月15日に渋谷WWWXで行われたツアー追加公演から新曲含む珠玉の6曲を収録
CD音源では聞けない熱いライブ音源&映像をお楽しみください
ぶちかませ!
Go Your Way
Green Field
BANDWAGON
Full Drive
Maximum Shout
全6曲を収録
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