ロフトグループが2020年2月2日に新店舗『Flowers Loft』をオープンを記念して新店長菅原氏と音楽統括大塚氏が語った
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菅原 雄氏(『Flowers Loft』新店長)、大塚智昭氏(ロフトプロジェクト音楽統括)
一号店開店から40余年。新宿ロフトを中心に今や「日本を代表する有名ライヴハウスグループ」とも称せるロフトプロジェクト。2019年も新宿ロフト歌舞伎町移転20周年のアニバサリー企画が大展開され、過去輩出した多くの著名や所縁あるアーティストたちを始め豪華なラインナップが毎夜集結し、連日多くのお客さんで賑わった。また、ここ近年は地方出店も含め多種の形態での出店も印象的な同社。根底には常に多岐な意味での「ライヴハウス=発信する場」の意志を保ち続け、トーク等の情報発信スペースやアコースティック形態対応、大人が集える店舗やDJバー等々、様々な形態の精力的な出店も記憶に新しい。合わせて昨今は新規にてアーテイストエージェント業務も開始。レーベル業務他、音楽部門にも已然力を入れている。そんなロフトプロジェクトが2020年2月2日に新店舗『Flowers Loft』をオープンさせる。下北沢駅直結の好立地にて演者も観者も気軽にナチュラルに集える場を設けたいとの発想の下、従来のライヴハウスになかったもの、かつての魅力の再考と共に海外へのコミットも視野に入れている同店。そんな『Flowers Loft』も踏まえ、ロフトプロジェクト音楽統括の大塚智昭氏と、『Flowers Loft』新店長、菅原 雄氏に、同地とロフトプロジェクトの現状とこれからを問うた。ちなみに菅原氏は「じゃいあん」のニックネームにて旧渋谷club乙-kinoto-(以下 : 乙)の店長として13年間親しまれ、大塚氏も新宿ロフトの店長を最近まで10年間務め、共にアーティストや業界にも信望が厚い。そんな2人の目論む新店舗、絶対に面白いに決まってる!!
――まずはお二人のロフトプロジェクト内での現在の役割と仕事内容から教えて下さい。
大塚:音楽部門を総括しています。新宿LOFT、下北沢SHELTER、LOFT HEAVEN、そして今度の「Flowers Loft」の管理責任者を主に、レーベルとエージェント業務も担当しています。
菅原:自分はこの「Flowers Loft」の店長です。とは言っても入ったばかりで(笑)。この新店の為に声をかけていただきました。今はちょうどオープンに向けての準備期間中です。
――菅原さんは以前のライヴハウスから移られて、かなり環境も変わったのでは?
菅原:全然違いますね。前職はブッキングがメインで、バンドと一緒にお客さんも含めて育てていくタイプのライヴハウスでしたから。対して今度の「Flowers Loft」での新しい感覚の構想やその発信には非常に興味があります。個人的にもある種、挑戦する意気込みで入りましたから。
――大塚さんが菅原さんに声をかけたポイントはどんな点だったのでしょう?
大塚:ライヴハウスをやっていく上で最も重要な事項の一つに「人と人との繋がり」があるんです。お客さんにしろ、出演者にしろ。じゃいあんはそんな人と人を繋げるのに長けた人だなと以前から感じていて。いわゆる、「その人の周りに人が集まってくる」そんな人だな…って。
菅原 雄氏(『Flowers Loft』新店長)
――では「Flowers Loft」では元から何かしらのビジョンがあり、そこに菅原さんがハマったわけですね。
大塚:シンプルに言うとそうです。ライヴハウスはライヴを観る場所でありながらも、お酒等を楽しむ場所でもあるな…と近年改めて感じていて。いわゆる、そこに人が集うサロンみたいな…。立地的にもそれをやるに理想的な場所と出会えたので、「この時代、もう一度その辺りをやるのも面白いかな…」と。
菅原:その話は聞いていたんで、それもあり声をかけてもらえたのは非常に嬉しかったです。僕自身、お酒を飲むのも好きだし、幅広い人が周りには居る。音楽もそう偏らず色々なジャンルが好きだし。「Flowers Loft」ではキチンとものも言うし、色々と外に向けて発信していけたらなと。色々な出会いやキッカケの場所になってもらえるのが理想です。
菅原 雄氏(『Flowers Loft』新店長)、大塚智昭氏(ロフトプロジェクト音楽統括)
――それにしてもこの「Flowers Loft」は立地がいいですね。
菅原:駅を出て徒歩10秒のライヴハウスなんて他に無いでしょう(笑)。改札を出たらみなさん必ず目にするでしょうし。それほど気楽に来れる場所なので、それらを有効活用したいです。
――そもそも何故今回、下北沢に新しいライヴハウスを演ろうと?ブランドのシッカリとした老舗も含むライヴハウスがかなり群雄割拠している激戦区ですよね?
大塚:この建物の大家さんに声をかけていただいたのも大きいです。凄く「文化を発信したい!!」と公言されている方で。理解もあるし。元々ビルの地下一階にライヴハウスを入れたいとのビジョンを持っていて、それを前提にうちに声をかけて下さいました。あとはそこに合う店長が居れば…って矢先にじゃいあんが現れて。
菅原:「そろそろまともな社会人として働くか!!」と思っていた矢先の声かけでした(笑)。
大塚:そもそも新店はずっと探していたんです。というのも現在、ロフトプロジェクトは立地が良い場所で条件が合えばバンバン出店しようとのモードなので。
――ちなみに大塚さんの中で、この立地を訊いた際、自身の中ではどのような構想があったんですか?
大塚:先ほどと重複しますが「みんなが集えるライヴハウス」です。昔で言うインクスティック芝浦や恵比寿MILKのような。そこに行けば誰か知り合いがいたり、誰かと知り合える。そんな人脈や繋がりが作れたり生まれたりできる、そんな昔のサロン的な、しかもライヴも出来る場所が理想でした。もちろん今でもDJバー等ではそのような場所もありますが、ライヴハウスレベルでは現在無いな…って。
――それをこのライヴハウスひしめく下北沢の土地で行おうとしている部分にもどこか「挑戦」を感じます。
大塚:下北のライヴハウスってどれも特色があり方向性は定まってはいますが、逆に自分たちはカラーや特色が無い方でオリジナリティを出して勝負していきたいんです。ビジョン的には、「下北沢の色々なライヴハウスの方々が終業後、ここに飲みに来て、出会ったり色々と情報交換が出来たりできる場所」ですから(笑)。
菅原 雄氏(『Flowers Loft』新店長)、大塚智昭氏(ロフトプロジェクト音楽統括)
――菅原さん的にはその辺り明るかったりするんですか?前職の乙はそれこそ「ロックのライヴハウス!!」ってハコでしたよね?
菅原:そう思われがちなんですが、乙は昔、深夜イベントを土日はほぼ毎晩のようにやっていた店だったんです。当初は僕もその担当も多く。それもありクラブミュージック周辺も明るかったりはします。逆にこの「ロックからクラブミュージックまでのオールマイティ」の方がより自分的には合ってるかなと。もちろん音にしても、クラブはクラブの良さ、ライヴハウスはライヴハウスの良さがあるので、その辺りが上手く混ざると凄く面白くなるんじゃないかなって。逆に夜のライヴハウスの使い方の大きな可能性も感じています。
大塚:なのでサロンはもちろん、クラブとライヴハウスの双方のカルチャーの共存や融合が出来たらなとは考えています。
――では、その辺りをあえて下北沢で展開する勝算は充分にあるわけですね?
大塚:勝算まではいきませんが、条件的にも肌感覚的にも下北沢でそれらをやれる自信はあります。今回はまず、居ぬきではなく新築なので内装からキチンと仕込める。下北沢の駅から最も近く。キャパシティも200人~250人のイメージで作っています。あと、入り口にはラウンジを設置する予定です。
――ラウンジ…ですか。
大塚:音ももちろんですが、そこにもこだわりを持ちます。いわゆるそのラウンジでの居心地の良さのこだわりと言うか…。お客様に少しでも長く心地良く居ていただく。その為のサービス等にも細心します。となると接客やバーテンの質や教育も必要にはなってきて。そこも準備しています。そもそも従来のライヴハウスは再入場不可で入っちゃうと逃げ場がない。そこも何とかしたかったし、途中休憩できる場所やたばこが吸えるスペースの用意等々…その辺り、せっかくゼロベースから作れるので真剣に考えています。これは以前言ったことがあるんですが、「ライバルはみなさんがライヴ後に移動してしまう居酒屋等だな」って。うちもバー営業しているのに他に場所を変えられてしまうのは、やはりうちはそこに居心地の良さで負けているわけで。そこは挽回したいし、ライヴが終わっても長く居てもらい、お酒等を楽しんで欲しいですから。
菅原:なので、それこそお昼ぐらいから開こうかなと。ラウンジはずっとカフェ営業をして、その奥に
大塚:なので公演中もラウンジのバーは普通に一般の人も入れるように営業しようかなって。理想を言えばテレビモニター等で中の映像が見れて、「いいな…」と感じたら
菅原:とにかく入口や間口は幅広い方が入りやすいようしたいです。今のライヴハウスでもけっこう外国人の方がフラッと来られますが、やはり日本のライヴハウスの
大塚智昭氏(ロフトプロジェクト音楽統括)
――斬新さも含め、きっと従来の下北沢のライヴハウスにはなかった展開が色々とありそうでオープンが楽しみです。ここからは現在の勢力的なロフトプロジェクトの出店や事業展開の話を訊かせて下さい。まずは現在ロフトプロジェクトが目指している方向性みたいなものはあったりするんですか?
大塚:会社としては店舗の拡大です。いい物件があれば、そこでライヴハウスをやりたい、そこは変わっていません。レーベル、プロダクション、本の出版や映像制作等々、色々な事業を手掛けてきましたが、店舗経営がこの会社の最も得意とする面ですから。そこを更に強化していきたい。それこそ、いい場所といい人材がいればどんどん作っていきたいです。特に最近は縁とタイミングが合致したこともたまたま重なり、立て続けに出店させてもらっています。
――音楽のみならずトークやDJバー、カフェを重視した店舗等も生を伝える為の場所としての「ライヴハウス」という理念はどれもブレてませんもんね。
大塚:そうなんです。「ロック喫茶的なものを作りたい!!」との意志の下もあれば、場所を見て「大人も座って楽しめる基本座りのライヴハウスがいいな」と思いついたり、この「Flowers Loft」に関しても、自分は当初は特に場所は限定していなかったんです。「サロンの機能もありロックで踊れる、そんなライヴハウスがあったらいいな…」程度で。そんな中、この物件と出会いましたから。他にも色々と今のグループ全体でビジョンがあるので、都度それにマッチする物件を探してはいます。重複しますが各地、それこそアイデアと縁と人、それが結びつけばどんどん新店は作っていきたい所存です。うちの会社の理念はやはり「出演者とお客さんとスタッフが同じ立ち位置で、その日や場所、空間や雰囲気を作っていく」なので。
――立地にしても、東京・大阪のみならず、長野県の松本にも新店舗を出しましたが、こちらは?
大塚:松本も人との繋がりや場所の縁でした。いまそこで一緒にやっている方が松本を拠点にイベントプロモーターをやっており、会長の古くからの友人なんです。その方が「自分の店が欲しい」と相談があり一緒に店を作るノリで。そこにタイミングよく駅前に合う物件が出たんです。そこで始めました。そこではそれこそロフトプロジェクトの縮図みたいに、ライヴもあればトークもあったりとカルチャー全般を発信しています。今後は相手もロフトも「協業」という形で、自分たちの長年培ってきたノウハウをキチン教示してブランドを使ってのフランチャイズ展開も地方都市ではありだと考えています。今だとその松本もそうですが、東京の新高円寺の「LOFT X KOENJI」も近い形態です。
菅原 雄氏(『Flowers Loft』新店長)、大塚智昭氏(ロフトプロジェクト音楽統括)
――店舗プロデュースも魅力ですが、やはり「ロフト」を名乗れる頼もしさやお客さんやアーティストさんからの信頼や信憑性もありそうです。だけどそれは裏返すと、そのぶんネームバリューで集ったお客さんを裏切れない面もあり、その辺り逆に慎重さが求められそうです。
大塚:そうなんです。なので絶対に安売り的には映らせたくないし絶対にしません。そこはキチンと留意しています。
――店舗戦略以外の他の音楽関係部門の今後はいかがですか?先程「アーティストのエージェントも始めた」とおっしゃってましたが。以前もマネージメントはなさってましたよね?
大塚:以前とは違った形態でのお付き合いなんです。エージェントは代理人的な立ち位置で。アーティストの全ての面倒を見る形ではないんです。逆に我々がアーティストさんに雇われているというか。マネージメント業務も今は行ってませんが、自分たちがやりたいアーティストが現れれば、また復活させたいです。
――「やりたいアーティスト」と言えば、最近の御社でのレーベル業務は、まさにロフトのスタッフさんたちが「やりたい!!」と声を挙げてリリースさせている形態ですね。
大塚:そうです。最近も下北沢シェルターからCASANOVA FISHというアーティストのリリースの熱望があり発売しました。これも含めて幾つか作品も出しているので、これらもゆくゆくはマネージメントも視野に入れて一緒にやってます。来年はもっとリリースタイトルを増やしたいですね。目標は24タイトルです(笑)。
――月に2枚ペース!?原石をいち早く発見できる場所や機会を多く持っているのもみなさんの強みですもんね。
大塚:レーベルに関しては、いま多くのアーティストが「CDを出したい!!」とは思っているでしょうが、そのリスクの大きさも懸念し躊躇しているケースが多いと感じます。そのリスクを出来るだけ減らした形でアーティストの手伝いが出来たらなと。我々もライヴハウスやウェブやフリーペーパー等々、協力してより広めることは沢山出来ると自負しているので。
菅原 雄氏(『Flowers Loft』新店長)
――菅原さん的には今後「ロフトでこんなことをしたらいいんじゃないか?」や「自分はこうしたい!!」的なビジョンを持ってたりするんですか?
菅原:各店舗が独自でやりながらも、キチンと連動や連携されているのがこのロフトプロジェクトの魅力でもあるので、その辺り最大限に活かしたいですね。アイデアさえあればそれを実現出来、成功させられる力を持っているので、それこそ色々なことが出来るでしょうから。個人的には自分は英語も出来るし、ロフトのスタッフでも英語を喋れる方もいるので、海外のアーティストの招聘等も行ってみたいですね。海外のバンドがもっと気楽に日本に来てライヴが出来る環境づくりには憧れます。あとはこれからに向け、外国人の方の対応も絶対に必要でしょうし。なので、「Flowers Loft」の
大塚:やはり我々としても今、インバウンドには非常に興味がありますから。
――夢は広がりますね。最後にお2人のロフトプロジェクトへの今後のビジョンをお聞かせ下さい。
菅原:自分はまずは、とにかくこの『Flowers Loft』をしっかり運営していくことです。あとは、このロフトプロジェクトに入っての間もなさと、これまでの経験値や他で見てきたこと学んできたことをフレッシュな視点で色々と会社に向けて提案や改善していけたらなと。それから個人的には、「ライヴハウスに入りづらい」等のイメージを払拭させたい。とにかく来やすくし、来てもらい、ライヴハウスとそこで観る音楽を好きになってもらいたいです。より一般の方にライヴハウスにフラッと来てもらいたいんです。その為にもこの「Flowers Loft」はそれを実現できるし、新しいことも生み出せる場所だと信じ運営していきます!!
大塚:じゃいあんには新しい風の吹き込みも含め色々と期待しています(笑)。自分個人的にはもっと音楽業界の待遇改善をしていきたいなと(笑)。現状、難しいのは承知ですが、やはり労働時間等、色々と考えたり、見直したりしなくてはならない課題は山ほどあるので。これをまずはロフトプロジェクトで取り組んだら、音楽業界に対しても新しい何かのキッカケになるんじゃないかなとも考えています。
取材・文=池田スカオ
新店舗情報
About Flowers Loft
2020年2月2日、下北沢駅の真正面に新設された銅板貼りの特徴的な外面と植物の緑が美しいSHIMOKITA FRONTビルの地下一階に、ロフトプロジェクト系列では12店舗目となるライブハウス「Flowers Loft」がオープンします。
新宿LOFTにも似た2フロアで成り立っており、ステージがあるメインフロアは最大250人収容予定。入り口側となるラウンジフロアはバーカウンターを中心にDJブースも完備したリラックスできる空間となっています。下北沢初のライブハウス「下北沢LOFT」がオープンした1975年当時、まだローカル線のいち商店街だった下北沢は、その後、劇場や古着屋、飲み屋など若者の拠点が続々とオープンし、いまや“世界で最もクールな街”として広く知られるエリアとなりました。小さな路地が四方八方に広がる街の中には多くの個性的なライブハウスが点在し(その数は新宿や渋谷と同じぐらい存在すると言われている)、毎晩たくさんのミュージシャン、バンドマンがライブを繰り広げていま
す。
全てのカルチャー、もちろん音楽というものも、過去と未来を含有しておりそれが「ライブ」という現在において表現されていると思います。様々な過去の偉大な発明・努力・流行などを踏まえつつ、全く新しい刺激的・革新的なものを産み出そうとする現実的な試み、それをまさに目の前で体感出来るということ。このことがライブハウスをライブハウスたらしめており、これからも変わらない文化的役割ではないかと思っています。
花という言葉は、愛と平和を象徴する言葉です。ロックの歴史の中では、60年代に生まれたフラワームーヴメントをはじめ、多くの優れた楽曲やアルバムのタイトルにも使われてきました。また3・11の震災後は復興を象徴する言葉にもなっています。音楽は理想を追い続けるためになくてはならない表現手段です。世界中の私たち一人一人がプライドを持って美しく咲き誇る姿、それがFlowers Loftのめざす世界です。
about ふらわーばー
下北沢駅から徒歩 30 秒の SHIMOKITA FRONT ビル地下 1 階に位置するライブハウス Flowers Loft が、2 月 2 日(日)にグランドオープン。ステージのあるメインフロアとバーフロアに別れた作りとなっており、バーフロアを別名「ふらわーばー」と命名。
ふらわーばーは