フレンズが挑戦だらけの1年を越えて提示した最新型は
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フレンズ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
シチュエーション・コメディーseason4 2020.1.12 LINE CUBE SHIBUYA
ステージを覆う紗幕には“FRIENDS”のロゴ。SEが鳴り始めると、幕の内側の照明がついて熱帯植物のようなステージセットが明らかに。開演前特有の緊張感に包まれた客席の空気がふとやわらぐと、幕が上がり、カラフルな衣装を着たえみそん(Vo)、ひろせひろせ(MC,Key)、長島涼平(Ba)、三浦太郎(Gt)、関口塁(Dr)、サポートの山本健太(Key)が登場した。「フレンズ、ツアーファイナル、始まるよ~!」(えみそん)と始まった1曲目は、プチアルバム『HEARTS GIRL』の冒頭を飾る「take a chance」。ひろせが「渋谷盛り上がってますか!?」と投げかけるまでもなく、観客たちは手を上げたり身体を揺らしたりしていて、バンドのサウンドに浸っているようだ。「今日は3階、2階、1階、(サイドの席を指しながら)こっちのみんなも、最高の日にしようねー!」と、えみそんの朗らかな声が場内に響きわたった。
フレンズ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
全国6ヶ所をまわったフレンズのワンマンツアー『シチュエーション・コメディーseason4』のファイナル公演。会場は昨年10月にLINE CUBE SHIBUYAとして生まれ変わった、旧・渋谷公会堂である。昨年9月にリリースされた『HEARTS GIRL』はハツガ(=発芽)と読むタイトルが象徴するように、関口の作曲した曲を初めて収録したり(これでメンバー全員の作った曲が世に出たことになる)、河田総一郎を作詞家として、大久保薫をアレンジャーとして迎えて制作に臨んだりと、バンドにとって挑戦の多いアルバムだった。そんな作品を携えた今回のツアーは新鮮さを感じる場面も多数。またMCによると、メンバーとしては原点回帰に近い感情を抱いていたようだ。
フレンズ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
ひろせのラップと観客の「Yeah!」の掛け合いで盛り上がった「NO BITTER LIFE」。Bメロのリズムに合わせメンバーがジャンプする様子も目に楽しい「iをyou」。冒頭3曲はテンポこそゆったりとしているが、バンドのグルーヴやビートがはっきり打ち出されていて、急かされていないのにしっかりノせてくれる感じがある。心地よい高揚感だ。最初のMCではひろせが、この日のセットリストが最新曲も昔の曲も網羅した“神セトリ”であることを宣言。その言葉通り、続く「DIVER」、「とけないよ」は2016年リリースの会場および通販限定盤『ショー・チューン』収録曲である。照明のトーンも落とし、しっとりと届けた2曲を経て、「じゃあ次はみんなで踊ろう!」(えみそん)と始まったのは関口作曲の「Nothing」。往年のディスコソングに通ずる雰囲気のある曲で、メンバーもステップを踏みながら演奏に興じていた。2度目のMCではえみそんが必須アミノ酸を暗唱。人それぞれ覚え方があるが自分は歌で覚えたという話から、リジンを摂るにはたまごを食べるのが良いとか、ゆで卵のゆで時間は9~10分が好みだという話になり……と相変わらずのマイペースっぷり、天然っぷりを発揮する。
フレンズ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
えみそんが「男性目線で初めて書いたバラード」と紹介していた「12月のブルー」は6分超の大作バラード。鍵盤の音色を軸にドラマティックな展開をする曲で、特に転調を機にバンドサウンドが一気に溢れ出す終盤は生で聴くと圧巻だ。観客もじっと聴き入るなか、アウトロではえみそんがスキャットを披露。関口の重々しいキック3発で同曲は幕を閉じた。そして「0:25」は、まず、えみそんのソウルフルな歌い出しに意表をつかれる。分かりやすい“癖”やそれっぽく見えるフックに頼ることなく、どの曲も分かりやすくクリアに歌えることがボーカリスト・えみそんの長所だとしたら、この曲ではその揺るぎない土台を基に艶っぽい表情を見せている。この人には私たちの知らない引き出しがまだまだ隠されているのではないか、とドキドキさせられた。「0:25」は三浦が“ひろせにカッコいいラップをしてほしい”というイメージで作った曲らしいが、関口も歌唱に参加しているし、先述の通りえみそんのボーカルも他とは一味違う。バンド全体に新しい風を入れるような存在になったようだ。
フレンズ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
ひろせが観客に着席を勧め、えみそんが“2020年、メンバーに会わせたい人”を語るリラックスしたトークを挟み、“ようこそ!フレンズんちへ”と命名されたアコースティックコーナーへ。「NIGHT TOWN」、「夜明けのメモリー」、「またねFOREVER」の3曲を、ひろせ:シェイカー&ウィンドチャイム(「またねFOREVER」ではギター)、三浦:アコースティックギター、長島:アップライトベース(「またねFOREVER」では通常のベース)、関口:カホンという編成で演奏した。山本のキーボードもエレピ調の音色に切り替えられていて、甘美で肌触りの良いバンドサウンドにみんなうっとりとしている。ひろせが「全編アコースティックのツアーもやってみたい」と言うと、観客も拍手で応じる。確かに、他の曲もアコースティックアレンジで聴いてみたいと思えるほど素敵な仕上がりだった。
フレンズ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
本編ラストのMCではメンバーが2019年の活動を振り返る。東名阪での新春ワンマン、メンバーの地元をまわった『青春チャレンジツアー』、シングル「楽しもう / iをyou」とプチアルバム『HEARTS GIRL』のリリース、そして11月から始まった今回のツアー。全体を通してチャレンジの多かった1年についてひろせは「フレンズ強くなったなあと」「バンドってRPGなんよ」と手応えを語っていた。
フレンズ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
「渋谷ゲットだぜ!」「おーっ!」という独特なコール&レスポンスでえみそんが観客を立ち上がらせ、「楽しもう」の躍動感から本編ラストブロックへ。「HEARTS GIRL」ではえみそん、ひろせがハンドマイクに持ち替えたほか、三浦や長島もステージ前方に躍り出て演奏。客席の温度がさらに上がる。「塩と砂糖」はやはり、あのイントロが始まった瞬間から幸福感がものすごい。ひろせのラップと長島のスラップがバトルを繰り広げるなか、三浦が上体をそらしながらギターをガシガシと鳴らしていて、その後ろでは関口と山本がアイコンタクトをとりながら楽しげに音を合わせている。「Love,ya!」ではえみそんが歌詞の一部を<LINE CUBEで待ってて>に変えてみせた。
フレンズ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
本編ラストに選ばれたのは、<また会おうねばいばい>と再会を約束するようなフレーズのある「地球を越えても」。この曲の演奏前にはひろせが、今回のツアーを通じて、リスナーたちとともに“この5人で東京ドームワンマンをやりたい”という気持ち(結成当初からフレンズが掲げている目標である)がさらに強くなったと語っていた。フレンズには制限がない。メンバーのスキルに裏打ちされた音楽性はどこまでも柔軟で、5人とも曲を書くし、曲が良ければそれを採用する。また、音楽面以外に関しても同様。昨年1月のNHKホールでは寸劇もやったし、メンバーがソロを弾く場面ではケチャ(アイドル現場でよく見かけるオタ芸)で盛り上げることだってある。つまり、この5人でやれることならば何でもOK的であるということ。それは逆に言うと、この5人でやることが他の何よりも大事だ、ということでもある。
挑戦尽くしの1年を経て、自分たちにとって大切なことを今一度確認できた今回のツアーは、フレンズにとって実りの多いものになったのではないだろうか。そんな彼らは、2020年で結成5周年を迎える。アンコールでは早速東名阪ツアー(夢の舞台に程近いTOKYO DOME CITY HALLでの公演も含む)が発表されたが、今後もいろいろと企画があるとのこと。楽しみにしていたい。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
セットリスト
2.NO BITTER LIFE
3.iをyou
4.DIVER
5.とけないよ
6.Nothing
7.12月のブルー
8.0:25
9.NIGHT TOWN
10.夜明けのメモリー
11.またねFOREVER
12.楽しもう
13.HEARTS GIRL
14.塩と砂糖
15.Love,ya!
16.地球を越えても
[ENCORE]
17.パーティーしよう!
18.夜にダンス
19.ベッドサイドミュージック
ツアー情報
■日程
5月28日(木)名古屋 ボトムライン OPEN 18:15 / START 19:00
5月29日(金)大阪 バナナホール OPEN 18:15 / START 19:00
6月 5日(金)東京 TOKYO DOME CITY HALL OPEN 18:00 / START 19:00