劇団スタジオライフ、三原順原作漫画を舞台化した『はみだしっ子~White Labyrinths~』が開幕 舞台写真&レポートが到着
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『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム
2020年1月8日(水)に舞台『はみだしっ子~White Labyrinths~』が開幕した。オフィシャルより舞台写真、レポートが届いたので紹介する。
劇団スタジオライフの公演、『はみだしっ子~White Labyrinths~』がシアターサンモールにて開幕した。
1975年から1981年に花とゆめに連載され、数多くの熱狂的な読者を生み出した傑作漫画『はみだしっ子』。
作者の三原順は本年、没後25年を迎える。スタジオライフはこれまで2017年に『はみだしっ子』、2018年にその続編となる『はみだしっ子~in their journey through life~』を舞台化。今回はいよいよ満を持して、作品の中核を成す『山の上に吹く風は』のパートを上演する。
グレアム、アンジー、サーニン、マックスの少年4人はそれぞれ複雑な家庭の事情により親元を離れ、心に闇を抱えたまま放浪生活を続けている。厳しい世間に傷つきながらも、ときにはぶつかり合い、ときには笑い合って、互いを頼りとして日々を送る4人。彼らの関係性に希望を感じさせるエンディングを迎えたのが前作だった。しかし、一転して本作では4人が大人の世界と向かい合わざるを得なくなる事件に巻き込まれる。4人が乗ったバスが雪山の中で遭難。バスで乗り合わせた大人たちといやおうなしに向かい合わなければいけなくなったのだ。極限状態の中で、大人たちは心のうちに隠していた本音をあらわにする。4人は容赦ない“世間の風”を浴びせられる……。
『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム
『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム
雪山遭難という隔絶した状況のいわば、“密室劇”。初演、再演と同じく階段状の舞台に一本の街灯のみが立つというシンプルな美術(乗峯雅寛)だが、演劇的な効果で観客を雪山の世界へと誘う。観客は4人と一緒にバスに乗った気持ちになり、たどり着いた山での雪の白さも凍てつく空気も、ありありと想像できるのだ。
脚本・演出の倉田淳はアガサ・クリスティを連想させる筆致で4人の、そして大人たちのキャラクターや人間性を徹底的に浮かび上がらせる。スタジオライフは1996年の萩尾望都原作『トーマの心臓』初演以来、数多くの漫画作品を舞台化してきた。「2.5次元」という言葉が生まれるずっと以前から、作品を演劇として立ち上げ、人間ドラマを描くことに専念してきたのだ。その確かな歩みが、今回の作品に結実する。4人を取り巻く大人たちがそれぞれの持つ過去を彷彿とさせるキャラクターを描出することで、物語にリアリティをもたらした。
『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム
『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム
バスに乗り合わせた乗客の中で、物語のキーになる男、ジョイを演じる松本慎也が繊細に役柄にアプローチ。抗えぬ運命の中で生きていかねばならない男性の悲哀を浮き彫りにして、物語に奥行を与える。歌手の女性シャーリーを演じるのは石飛幸治。ミュージカル『レ・ミゼラブル』にも出演する石飛が乗客の心を慰めようと歌う歌声に深い癒しの響きがあった。
ダブルキャストでの公演で、筆者はCAPチームを観劇。今回初登場となる関戸博一(グレアム)と八島諒(マックス・客演)、前々作から続演となる宇佐見輝(アンジー)、澤井俊輝(サーニン)が演じるチームだ(もう一方のTBCチームは、仲原裕之のグレアム、松本慎也のアンジー、千葉健玖のサーニン、伊藤清之のマックス)。
『はみだしっ子~White Labyrinths~』TBCチーム
『はみだしっ子~White Labyrinths~』TBCチーム
社会へと目を向けなければいけなくなった4人。4人を襲う状況はあまりにも苛酷だ。そんな中でも、それぞれ懸命に生きる姿が胸を打つ。関戸は深い苦悩を抱え込み、虚無を漂わせるグレアムを真摯に演じて、胸を打つ演技。宇佐見は終盤の長台詞で、アンジーの強い意志を発露する。澤井は今回3度目のサーニン役で、まっすぐなキャラクターを体現。八島が最年少のマックスをピュアに演じてドラマ性を高めた。
厳しすぎる“世間の風”に4人の絆が試される。つらい展開に心が痛むが、かすかな希望の光を感じさせるエンディングに心を揺さぶられた。人と人が結ぶ絆について、考えさせられる舞台化だった。倉田は製作発表で今回の舞台化について「心して向かい合わなければいけない」「この先を舞台化するのは、ちょっと時間をおかないとできないかもしれません」と語っていたが、4人の旅路をスタジオライフの舞台で見届けたいと願う。
『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム
上演時間は約2時間。濃密な時間だ。
劇団スタジオライフ公演、『はみだしっ子~White Labyrinths~』は1月19日(日)まで、シアターサンモールにて上演される。
文=演劇ライター 大原 薫
公演情報
【原作】三原 順「はみだしっ子」(三原 順/白泉社)
【脚本・演出】倉田 淳
グレアム、アンジー、サーニン、マックスの少年4人は、それぞれ複雑な家庭の事情により親元を離れ、心に闇を抱えたまま共に放浪生活をしている。様々な場所を転々とし、いろいろな人に出会い、助けられ、裏切られながら、互いの固い絆を頼りに日々を送っている。ある日、事件に巻き込まれ、一人は加害者の立場となり、二人は加害者の少年を庇って隠蔽し、もう一人は何もできなかった自分を悔やみ、4人の少年たちは更なる苦悩を抱え込むことになる。やがて個から社会へと意識を拡げざるを得なくなった4人の心情を追いながら、彼らの成長を描いてゆく。
ている公演は終演後「トークショー」有。*開場は開演の 30 分前。(受付開始は開演の 60 分前。)
一般 6,000 円 club LIFE 会員 5,700 円(club LIFE 優先予約 5,500 円)学生 3,000 円 高校生以下 2,500 円
http://www.studio-life.com/stage/hamidashi2020/
スタジオライフ公式ホームぺージ
http://www.studio-life.com/
企画・製作・お問合せ
Studio Life
公演情報
舞台『死の泉』
原作:皆川博子『死の泉』(ハヤカワ文庫刊)
脚本・演出:倉田淳
東京公演:2020年2月27日(木)~3月8日(日) 紀伊國屋ホール
大阪公演:2020年3月13日(金)~3月15日(日)近鉄アート館
※AチームとBチームのダブルキャスト公演になります。
イープラス先着先行:1月23日(木)12:00~1月25日(土)18:00
一般発売:1月26日(日)10:00~
https://eplus.jp/shinoizumi/