俳優も観客も“さらけ出す” 青年たちの葛藤を描いたオフブロードウェイ・ミュージカル『bare』が開幕

2020.1.31
レポート
舞台

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

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オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』が2020年1月30日(木)から草月ホール(東京都港区)で開幕した。
  
青少年の性とアイデンティティへの葛藤などを描いた本作は、2000年10月にロサンゼルスにて初演され、ロサンゼルス最優秀ミュージカル賞、最優秀作曲賞を受賞。ニューヨークのオフブロードウェイへ進出するにとどまらず、カナダ、オーストラリア、イギリス、ベルギー、韓国で上演。日本では、原田優一の演出で、2014年に中野ザ・ポケットで初演、16年に新宿シアターサンモールで再演され、今回で3度目の上演となる。
  

初日を前に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)の様子を写真とともにお伝えする(今回のゲネプロはジェイソン役:安井一真、ピーター役:田村良太、アイヴィ役:増田有華、マット役:神田恭平のバージョン)。 

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

物語の舞台は、カトリックの全寮制寄宿舎高校であるセント・セシリア高校。卒業式を目前に控えた生徒たちが、校長である神父(林アキラ)のミサで祈りを捧げるシーンから始まる。
  
スポーツ万能で成績も常にトップ、女子生徒からも男子生徒からも絶大な人気と信頼を得ている高校のヒーロー、ジェイソン(安井一真/小谷嘉一)。ルームメイトのピーター(田村良太/大久保祥太郎)と同性愛関係にあるが、入学当時からそのことは2人だけの秘密であった。カトリックの教えが絶対的に強い学校・地域で、この秘密が明らかになった瞬間、彼らの居場所がなくなるからだ。

 
しかし、生徒たちが盛り上がるレイヴパーティーの中で、ピーターは2人の関係を公にカミングアウトしたいと言い出す。必死に止めるジェイソンと、納得できないピーター。 ジェイソンとピーターは各々のアイデンティティに苦悩し、それぞれの決断をくだしていく。

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

ジェイソンとピーターの2人が主軸を担うが、学校のアイドル的存在でジェイソンに恋する・アイヴィ(増田有華/茜屋日海夏)、ジェイソンの双子の妹・ナディア(谷口ゆうな)、ジェイソンをライバル視するマット(神田恭兵/宮島朋宏)、黒人の修道女シスター・シャンテル(北翔海莉)、ピーターの母・クレア(伊東えり)など、さまざまな人間関係模様も色濃く描かれる。

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

劇中で歌われる楽曲は全36曲。ゴスペル、ロック、バラード、ラップなど幅広い音楽が、ほぼ全編で奏でられる。リズムや音程など俳優陣にとっては難曲ぞろいだろうが、脚本・作詞のジョン・ハートミアと、脚本・作曲のデーモン・イントラバルトーロがともに20代で作り上げた楽曲ということもあって、勢いといい意味での青臭さがあり、聴いている観客の心へまっすぐに届いた。生演奏の上演というのも嬉しい。

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

この『bare』を通じて思うことは、宗教やドラッグ、性、アイデンティティを真正面から扱うだけに「衝撃」は確かにあるのだが、実はそれらは表面上見えないだけで、多くの人が同じように葛藤や悩みを抱えているのではないか、ということだ。
 
ジェイソンやピーターらはその純粋さ、不器用さゆえに、生き方も表現もストレートになるが、観ている観客は大人になるにつれてそれを「隠して」、今のこの社会で生きやすい方法を選択したのではないか。過去に確かに感じたはずの、若さゆえの葛藤やひたむきさを、気づけばもう忘れかけているのではないか。日本では初演から早くも6年が経とうとしているが初演の時と、今の社会の状況と、何が変わったのだろうか……などなど思いが巡る。
  
『bare』というタイトルの通り、俳優陣だけでなく観客側も「さらけ出す」。そんなミュージカルであると思った。

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』のゲネプロの様子

上演時間は2時間30分を予定(途中15分休憩あり)。2月9日(日)まで。お見逃しなく!
 

演出家・出演者 初日コメント

■安井一真
初日ご来場頂いたみなさま本当にありがとうございます。
初のミュージカルでこの作品に携われた事を凄く嬉しく思います。始まる前は凄く緊張していたのですが…やはりジェイソンを演じていると不思議と緊張も消えていきました。後半につれどんどんジェイソンとしてボロボロになっていくのですが、実際も最後のほうは意識がふわふわとしていて……カーテンコールで皆様から頂いた拍手に「あー今初日が終わったんだ」と無事な感覚に……。
トリプルカーテンコールとスタンディングオベーション本当にありがとうございました。この気持ちを胸に千秋楽まで駆け抜けます!

■田村良太
僕にとって大切な作品『bare』の再再演がついに幕をあけました。
僕だけでなくキャスト、スタッフ、そしてたくさんのお客様に愛されています。
今、観劇を迷ってる方がいたら是非観ていただきたいです。
一度見れば何故この作品がここまで愛されているのか納得していただけるはずです!

■増田有華
遂に初日が開きました!
約4年ぶりにこうしてまたアイヴィを演じられることを嬉しく思います。
何度見ても、何度聴いても、心揺さぶられるこの作品を、たくさんの方に見ていただきたいです。Wキャストもお見逃しなく! 最後まで駆け抜けていこうと思います!

■北翔海莉
原田優一さんの演出ということで、出演をお受けしました。
作品的には、それぞれのキャラクターの人間模様のかなり重いシーンが続きますが(笑)。わたくしが演じるシスター・シャンテルの役の登場の時は、いつも太陽の光が射すような、明るくユニークで、そして愛情たっぷりの厳しさで(笑)。生徒達を導いていけるようにと心掛けています。 
ご来場のお客様の心にも太陽の光が射すよう、舞台からパワーを送ります!!

■演出:原田優一
2020年版『bare』の初日を迎えることができました。演者でいる時よりも、演出として客席にいる時の方が遥かに体力気力を使います。ただ、なによりも信頼できるキャスト・スタッフの皆さんがいるからこそ、楽しんで観ることができています。今回もそうでした。全てのキャラクターに共感できたのがその証だと思います。是非、劇場に足をお運びくださいませ。 

公演情報

オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』
 
日程:2020年1月30日(木)〜2月9日(日)
会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21 草月会館地下1階)
 
脚本:ジョン・ハートミア/デーモン・イントラバルトーロ
作曲:デーモン・イントラバルトーロ
作詞:ジョン・ハートミア

演出:原田優一
翻訳:藤倉梓
音楽監督:桑原まこ
振付:中村陽子 
 
出演:
ジェイソン役:安井一真、小谷嘉一(Wキャスト)
ピーター役:田村良太、大久保祥太郎(Wキャスト)
アイヴィ役:増田有華、茜屋日海夏(Wキャスト)
シスターシャンテル役:北翔海莉
神父役:林アキラ
クレア役:伊東えり
マット役:神田恭兵・宮島朋宏
ナディア役:谷口ゆうな
ルーカス役:おでぃ
ターニャ役:井坂茜
カイラ役:仲里美優
ダイアン役:露詰茉悠
ローリー役:小林風花
ザック役:石賀和輝
アラン役:高木裕和
 
<終演後イベント決定>
以下の公演にて、「アフタートークショー」と「お見送り」を実施。
 
■アフタートークショー
1月31日(金)18:30公演 小谷嘉一、増田有華、北翔海莉、ゲスト
2月4日(火)18:30公演 安井一真、茜屋日海夏、北翔海莉、ゲスト
2月5日(水)18:30公演 北翔海莉、林アキラ、伊東えり、ゲスト
2月6日(木)18:30公演 田村良太、神田恭兵、谷口ゆうな、ゲスト
2月7日(金)18:30公演 大久保祥太郎、増田有華、宮島朋宏、ゲスト
 
MCは演出の原田優一。
※登壇者は変更になる場合がございます。その場合はショウビズTwitter等で告知。
 
■お見送り
2月2日(日)13:00公演、2月5日(水)13:30公演、2月7日(金)公演終了後に選抜キャストによるお見送り。
※参加キャストは追って、ショウビズTwitterにて発表。
 
公式サイト:http://www.show-biz.jp/bare2020/
show-bizツイッター @showbizkakai
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