池田純矢がエン*ゲキシリーズ第5弾『-4D-imetor』で挑戦する新たな演劇の形ーー「生の舞台だからこそできる体験を味わってほしい」

インタビュー
舞台
2020.2.16
池田純矢 撮影=福家信哉

池田純矢 撮影=福家信哉

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池田純矢が作・演出を手掛けるエン*ゲキシリーズ第4弾『絶唱サロメ』からわずか半年。早くも5作目となる最新作、『-4D-imetor(フォーディメーター)』が5月に東京・大阪で上演されることが発表された。今作は生駒里奈と池田純矢のW主演。奇術 x 謎解き x 演劇の融合で、劇場にいるだけでイリュージョンやマジックが体験できてしまうという、その名も「アトラクション・エンターテイメント」。これまでも「演劇はエンターテイメント」と捉え、観客が楽しめることを第1に数々の作品を産み出してきた池田。前作『絶唱サロメ』のプロモーションや上演が進行する中、水面下で整えられてきた。もちろん物語を主軸に置きながら、新たな試みをふんだんに盛り込んだ内容。キャストには玉城裕規、松島庄汰、田村心、阿南健治といった個性豊かな俳優陣を、さらに出演・イリュージョン監修には「ブレインダイブ」で注目を集めたマジシャン新子景視を起用。とんでもないことが起こる予感がする。

池田純矢 撮影=福家信哉

池田純矢 撮影=福家信哉

●イリュージョンとマジックを駆使して不思議な現象を舞台上に巻き起こす、体験型の舞台●

タイトルの『-4D-iimetor』は池田が作った造語。「〜する人」の「tor」の部分と、フォーディメンション=4次元をあわせた言葉で、直訳すると「四次元の人」という意味を持つ。

前作の『絶唱サロメ』は音楽 x 演劇の融合がテーマだった。物語の中に見事に音楽を溶け込ませ、これまでとは一線を画した新たな演劇のあり方を提示した。今作は「アトラクション・エンターテイメント」と銘打たれたもの。どんな舞台になりそうかと聞かれた池田は「今までのジャンルにない方向になるかと思ってます。四次元、量子力学、超能力、ちょっと小難しい内容ではあるんですけども、これを直感的に視覚的に、エンターテイメントとして楽しんでいただくために、イリュージョンとマジックを駆使して不思議な現象を舞台上に巻き起こそうじゃないかと。客席に座ったお客さんがまさにアトラクションに乗っているような感覚になっていただけるように、見るだけじゃなくご自身が体験していただく。そんな作品になればいいなと思っております」と述べた。

また、前作から半年で最新作を発表というスピード感については「面白いこと思いついちゃったんで(笑)。前作とは別の部分で変わった形の舞台を作れるんじゃないかなというひらめきがあった。それがアトラクション・エンターテイメントでした」と話した。

10年前に書きかけていたプロットの残骸が始まりになったという今作。「途中で断念して、最後まで書ききれなかった残骸だったんですよね。今回新作を作ろうといろんなプロットを見てた時にこれと目が合った。エン*ゲキシリーズにおいては全て、僕は「今この作品を作らなきゃ」といった確信めいたものがあって手を出す感じ。『絶唱サロメ』と『-4D-imetor』を短い期間でやっていますが、今、水面下で動いているものがあるかと言うと無いんです。もしかしたら10年20年出会わないかもしれないし、明日ひらめくかもしれない」と制作のキッカケを口にした。

アトラクション・エンターテイメントに関しては、「マジックって多分あんまり目の前で見ることってないと思うんです。当然タネや仕掛けはあるんですが、まさに劇場に座ったままお客様自身が体感していただくことによって、嘘がないとわかっていただけるんじゃないかなと。おそらく現段階で僕が想像している通りの現象をうまく巻き起こすことができれば、お客さんはきっと「あの人ほんとに超能力者じゃないか」と思ってしまうはずです。そんな不思議な体験が要所要所に散りばめられているので、お客さんが一体となって感じていただけると思います。」と期待を膨らませる回答を返した。

●生駒さんは存在感があって、抜群のエネルギーと生命力に溢れる人●

池田純矢 撮影=福家信哉

池田純矢 撮影=福家信哉

記憶を失った少女・ノアを演じる主演の生駒里奈を選んだ理由は「今回はアテ書きではなく物語先行で先に脚本があった状態。主人公の1人であるノアは記憶を失った謎の少女、そして四次元に干渉できる四次元人なんですけども、結構パンチが効いていつつ、すごく難しい役どころだったんですよね。生駒さんと会った時、僕が直感的に感じた印象なんですけど、彼女は国民的アイドルグループのセンターで歌って踊ってた子ですから、すごく存在感があって、抜群のエネルギーと生命力に溢れてる人だなと思ったんです。そんな側面がありつつ、中心に儚さや透明な部分がある。いろんなことを説得力をもって表現してもらえるんじゃないかと思って、オファーすることになりました」と述べた。

また生駒にオファーをする際、「彼女が『絶唱サロメ』を見に来てくれた時に、「すごく面白い。自分がやりたいことのような感覚を持った」という話をしてくれたので、お互い目が合ったのであれば、せっかくなら一緒にやりませんかと。今回はバディとしてのW主演ですが、「僕とタッグを組んでください!」という形でお願いをしました」と、エピソードを紹介した。

さらに今回は池田純矢自身も主演。脚本を読んだプロデューサー陣に数ヶ月にわたり熱心に口説かれたそう。「他の方で探しましょうと言ってたんですが、「やっぱり池田でいきたい」という言葉をいただいて。純粋に俳優・池田純矢としてこの作品に必要だと声をかけていただいたのであれば、それは全力でお受けするしかないなと思いましたね。」と意気込みを力強く語った。

●マジックショーをやりたいわけではなくて、あくまでも演劇。物語を届けたい●

池田純矢 撮影=福家信哉

池田純矢 撮影=福家信哉

質疑応答で改めてW主演について聞かれ、「物語を作ってる時点ではキャスティングは想定しておらず、単純にこういう物語が面白い、そのためにはこのキャラクターが必要だ、と思って最初からW主演で書いていました」と答えた。池田演じる役どころは「超能力を研究しているオカルトちっくな変態天才という役なので技術力が必要。量子力学や超能力を言葉巧みに説明しつつ、わかりやすくお客さんに伝えながらも専門的でなければならない。かつ、物語の主人公でもありますから、エモーショナルな部分も必要で、いろんな方面に特化してる人じゃないとなかなか表現するのは難しいんじゃないかなと思っていました。……自分で言いながら首絞めてますね(笑)。もうオリンピックで金メダル獲るくらいの気持ちです」と述べた。

演出家と主演としての距離感をどう感じているかという質問には「遠いと思います。自分が演出をしていて思うのは、俳優と演出家の意見がわかれた時や、全く違うベクトルで想像していた時こそ面白いものが生まれる。それが1人の人間だとどうしても凝り固まってしまいがちなので、切り離して考えるべきだと思うんです。なので俳優の時は演出のことを考えずに好き勝手やる。そして、その映像を見ながら演出家として、自分にオーダーを出していくことになるのですが、その時はいくら俳優として心動いた瞬間であれ、必要でなければカットするべき。そこをちゃんと切り分けて、1番遠い存在でなければいけないなと思っています。僕自身は俳優として少なからず演出家・池田純矢を信頼しているので、演出家が言うなら仕方ないかと(笑)」と、想定される大変さに言及した。

超能力については「超能力を理論的に解き明かすシーンがあるんですが、四次元世界があると仮定して、量子力学のこのベースを使えば成立するなと1番最初に思いついたのがテレポーテーションだったんです。これは物語の核になってると思います」と述べた。出演とイリュージョン監修を務めるマジシャン・新子景視の起用について「数年前からTVを見て「すごいなこの人」と思ってたんです。「ブレインダイブ」という、人の脳に潜り込んで本人しか知り得ない情報を見事引き出すという、まるで超能力みたいなマジックを得意としてらっしゃる方で。今作を作る上で、マジックショーをやりたいわけではなくて、あくまでも演劇なので物語を届けたい。その説得力を持たせるためのマジックだから現実に根ざしてる方がいい。大々的なイリュージョンも表現しつつ、不思議があまりに浸透しすぎて、見てる時は不思議と思わないんじゃないかぐらい現実感のあるマジックを表現したくて、飛び込みでオファーをしました」と話した。

●映画やドラマではできない、生の舞台だからこそできる作品●

池田純矢 撮影=福家信哉

池田純矢 撮影=福家信哉

今作は生駒が主演であることで、これまで演劇に馴染みがなかった層も来場することが予想される。「入口としてはすごく入りやすい作品だと思います。代もそこそこの値段がありますが、映画感覚で来ていただくのがいいなと思っていて。今回キャッチフレーズに「好奇心の扉を開けよう」とありますが、お客さん自身好奇心の扉をこの作品で開けていただけたらなと。ライトな層でもコアな層でも楽しんでいただけると思います」と力強く語った。

最後に「物語としては謎解き要素や心がふるえる部分がありつつ、マジックが見れたり、2時間の中でいろんな感情が目まぐるしく掻き立てられるような作品になっています。映画やドラマではきっとできない、生の舞台だからこそできる作品だと思っておりますので、是非体験しにきていただきたいです。ここで観ておかないと二度と体験できなくなると思うと、すごく勿体ない。それくらい自分自身は素敵な作品だと思っておりますので、お客さんにも是非共感していただきたいです。」と締め括った。

取材・文=ERI KUBOTA 撮影=福家信哉

次ページでは個別インタビューを掲載!→●僕、超能力なんてあるわけねえと思ってるんです●

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