スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR “同騒会”』 KANA-BOON、キュウソ、バニラズ、SHISHAMOが魅せた圧巻のライブと列伝の絆

2020.2.12
レポート
音楽

『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR“同騒会”』

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『SPACE SHOWER TV 開局30周年記念公演 スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR “同騒会”』
2020年2月10日(月)東京/Zepp DiverCity(TOKYO)

スペースシャワーTVが開局30周年を記念して、2014年に開催した『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2014』に出演したKANA-BOONキュウソネコカミgo!go!vanillasSHISHAMOの4バンドによる同窓会ツアー『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR“同騒会”』を開催した。以下のテキストでは、名古屋、大阪、福岡公演を経て、ファイナルとして開催されたZepp DiverCity(TOKYO)の模様をレポートする。「あの日」から、それぞれが別々の道を歩き、悩みや葛藤を乗り越えて再び集結した4組は、この6年間で格段に進化した姿を見せてくれた。

SHISHAMO

トップバッターはSHISHAMO。SEにのせて、吉川美冴貴(Dr)、松岡彩(Ba)、宮崎朝子(Gt.Vo)が順番にステージに現れると、今年1月にリリースされた最新アルバム『SHISHAMO 6』に収録の「ひっちゃかめっちゃか」からライブはスタート。吉川、松岡が繰り出す黒いグルーヴのうえを、ラップのように言葉を詰め込んだメロディが軽やかに転がる。6年前、19歳だったメンバーは現在25歳。当時を振り返り、「リハーサルで何をやるのかもわからなかった」というほど初々しかった彼女たちも、いまやスタジアム公演を開催するほどのバンドになった。活動を重ねるごとに音楽性の幅を広げ、自分たちのイメージを打ち壊し続けるのが今のSHISHAMOだ。

SHISHAMO

痛快に突き抜けるメロディが“良いことばかりじゃない”日々に勇気を与える代表曲 「明日も」のあと、MCでは、「6年前、KANA-BOONとは全然仲良くなれなかった」と、“超”が付くほど人見知りで有名な先輩バンドをイジって会場を笑わせる場面も。そんな言葉の端々に、2014年列伝組の仲の良さが伝わってくるのも微笑ましい。6年前には歌えなかったような大人っぽいラブソング「君の大事にしてるもの」などを披露して、本編を締めくくったのも、最新アルバムからの「曇り夜空は雨の予報」だった。ステージをブルーに染め、ゆったりと紡がれるメロディには、切なさが狂おしいほど溢れていた。年を重ねることで当たり前に変化してゆく自分たちの姿を決して飾らずに音楽として奏でる。そんなSHISHAMOの軌跡が凝縮された30分だった。

キュウソネコカミ

転換中、ステージにシンセサイザーが運びこまれただけで、次はキュウソネコカミだと察したお客さんから歓声があがった。1曲目は、6年前にも披露した「ウィーワーインディーズバンド」。当時は現在進行形で「ウィーアーインディーズバンド」だった曲だが、メジャーデビュー以降はタイトルを変えて演奏し続けている。続けて、「良いDJ」「メンヘラちゃん」という彼らのライブでは一軍を担う強力なアンセムが連発されると、フロアの熱気は一気にマックスへと達していった。ひたすら地元愛を歌う「Welcome to 西宮」では、ヤマサキセイヤ(Vo/Gt)が何度もフロアにダイブして、お客さんにもみくちゃにされる場面も。思えば、6年前のキュウソは、誰もやらないことをやって爪痕を残す精神でがむしゃらに突っ走るバンドだったが、その爪の鋭さは、6年を経て、変わらないどころか、いっそう鋭さを増していた。

キュウソネコカミ

さらに、MCでは「僕たちが(4バンドのなかで)いちばん消えるって言われてきたけど、6年間がんばってきました!」と、ヤマサキ。ライブハウスこそ自分たちの生きる場所。そんな覚悟をもって走り続けるライブバンド=キュウソの全力を叩きつけたステージのラストは、1月にリリースされた最新ミニアルバム『ハリネズミズム』に収録の「冷めない夢」だった。「俺たちの10周年に作った曲だけど、列伝ツアーにもぴったりな気がする」。ヤマサキの紹介で披露されたその曲には、バンドの泥臭い生き様が刻まれている。ド頭から思いきり笑わせておいて、最後には泣かせてくる。気づくと、明日もがんばって生き抜こう、なんて思わせてしまう。これが、キュウソが6年間貫き続けてきたステージだ。

go!go!vanillas

「準備はいいかー!?思いっきり騒げー!」。牧達弥(Vo/Gt)による気合いのこもった叫びを皮切りはじまったgo!go!vanillasは、「チェンジユアワールド」からスタート。初っ端からジェットセイヤ(Dr)がドラム台に立ち上がり、渾身のちからで刻むビートのうえを、牧は、ギターを持たず、ハンドマイクで踊るようにメロディを紡いでいた。6年前から、彼らが抱くロックンロールへの経緯や愛情は変わらないが、今のバニラズはその枠だけにとどまらず、同時代のポップミュージックからの影響も貪欲に取り入れた音楽を鳴らしている。柳沢進太郎(Gt)と長谷川プリティ敬祐(Ba)がステージ際まで歩み出て、これぞロックバンドという華やかなパフォーマンスでも魅了した「カウンターアクション」から、6年前にも披露された「ホラーショー」へ。賑やかな爆音ロックンロールが完全にフロアを掌握する。

go!go!vanillas

MCでは、「6年前はまだ俺らのことを知らない人も多かったけど、今日のお客さんの歓声を聞いて、顔を見て、俺たちがやってきたことは間違ってなかったと思いました」と伝えた牧。6年前に列伝ツアーを経験したことで、お客さんと向き合うことの大切さを学んだという彼らは、あの頃よりも、明確なバンドの意志を持ち、それを伝える術を持つバンドになっていた。最後に届けた2曲は、そんな今の彼らだからこそのナンバー。同じ時代に生きる同士たちに捧げる 「平成ペイン」と、何度でも蘇るという不屈の精神を刻んだ「No.999」だった。振り返ると、2014年以降のバニラズは、メンバーチェンジもあり、プリティの交通事故による3人での活動期間もあり、何度もバンド存続の危機を乗り越えてきた。そうやって止まらずに転がり続けてきたバンドだからこそ、説得力をもって伝えられる歌があるのだ。

KANA-BOON

トリは、6年前の列伝ツアーでも、ツアーファイナルの赤坂BLITZ(現在のマイナビBLITZ赤坂)でトリを務めたKANA-BOON。メンバーの登場と同時に、あの時と同じようにフロアから割らんばかりの歓声が湧きおこると、昨年リリースされた「まっさら」からライブが始まった。先日、飯田祐馬(B)の脱退を発表したKANA-BOONは、サポートベーシストを迎えた新体制によるステージだ。「3バンドが燃やしてくれた火をもっともっと燃やしたいです!」。谷口鮪(Vo/Gt)の言葉を合図に、「フルドライブ」や、6年前も演奏した「ないものねだり」といったアップテンポなバンドの代表曲を惜しげもなく披露していく。だが、曲は同じでも、この6年間で巨大なアリーナ会場を埋め、フェスのメインステージに立つまでのバンドに成長を遂げた今のKANA-BOONが鳴らすその威力は当時とは桁違いだ。昔の自分たちだけではなく、現在進行形の自分たちの姿を見せたいと届けた新曲 「スターマーカー」は、キラキラとした疾走感が溢れるバンドの真骨頂となるナンバーだった。

KANA-BOON

ラスト1曲を残したところで、「あいつらがいるから、僕らもここまで踏ん張れました」と、かつて一緒に列伝ツアーをまわった仲間とのあいだには特別な絆があることを伝えると、最後はインディーズ時代から大切に歌い続けている「眠れぬ森の君のため」で終演。新たなスタート地点に立った今だからこそ、彼らの原点のひとつである「列伝」という場所で、バンドへの初心を込めたこの曲を選んだ意味は大きかった。

『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR“同騒会”』

アンコールは、本家・列伝ツアーで恒例になっている、出演バンド総勢16人がステージに立つセッションが行なわれた。6年前は、ここでレミオロメンの「3月9日」をカバーしたが、この日は、今回のためだけに書いたという列伝オリジナルソングが披露された。バニラズ・牧が弾き語りで作ったものを、KANA-BOON谷口が曲にして、SHISHAMO宮崎が作詞した曲だという。“ああ列伝 永遠(とわ)に”と、列伝への愛をたっぷり込めた楽曲は、“合言葉はこの刹那全力で!”というキュウソ・ヤマサキの叫びで終わった。願わくば、10年後、20年後、再び「同騒会」で、この4バンドには集結してほしい。そんなふうに思わせる万感のフィナーレだった。


取材・文=秦理絵 撮影=藤川正典

『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR“同騒会”』