「パリ・オペラ座バレエ・シネマ2020」で極上極美のバレエ芸術を味わい尽くそう!~第1弾『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』は3月20日(金)スタート
『デフィレ』(C)Paris Opera Ballet
2020年2月27日(木)~3月8日(日)、パリ・オペラ座バレエ団が来日した。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて多くの舞台公演が中止・延期となる中で、『ジゼル』『オネーギン』という2演目計10回の公演を実施した。そこでの、オペラ座の威信を賭けたような入魂の舞台に感じ入った。連日ダンサーたちは熱演し、華麗で感動的なステージを見せてくれたのだ。人気が高いカンパニーであるが日本の観客との絆が特別なものになったに違いない。
(C)Paris Opera Ballet
パリ・オペラ座バレエ団の来歴はルイ14世の時代にまでさかのぼる。19世紀前半に『ジゼル』『ラ・シルフィード』というロマンティック・バレエの代表作を初演するなどバレエの歴史を生んできた存在だ。現在では「バレエの殿堂」にふさわしく古典全幕から現代作品まで多彩なレパートリーを誇る。極上極美のダンスを、壮麗な夢の宮殿であるガルニエ宮、モダンで洗練された趣のオペラ・バスティーユという本拠地で接すれば、誰しもがバレエの虜になるだろう。
でもパリまでなかなか足を運べないーー。そんな日本のバレエを愛する人々、バレエに興味関心を抱く方々にとってのプレゼントが「パリ・オペラ座バレエ・シネマ2020」だ。2012年以降の演目から注目の舞台をスクリーンで体感できる。第1弾として3月20日(金)~東劇を皮切りに各地で順次公開される『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』の試写を見ることができた。オペラ座の粋を極めたような、一見の価値があるプログラムである。
『エチュード』(C)Paris Opera Ballet
これは2014/2015シーズンの『デフィレ』『エチュード』それに『くるみ割り人形』(ハイライト)で構成される。この『デフィレ』を見るとオペラ座の成り立ちが一目で分かる。シーズン開幕ガラなど特別な時に披露され、ここではパリ・オペラ座バレエ学校の生徒100人と団員154人が集まり、舞台奥から客席に向けて行進する。オペラ座が優れたダンサーを輩出し続けている原動力が傘下のバレエ学校の教育にあるのは間違いない。優美で香り立つような身体のライン、滑らかな脚使いといった観る者を魅了する要素はそこで培われる。
そしてオペラ座といえば厳格な階級制度である。上位からエトワール(フランス語で「星」の意味)、プルミエール・ダンスール(男性)/プルミエール・ダンスーズ(女性)、スジェ、コリフェ、カドリーユと5段階に分かれる。ここでは14名のエトワールたちが一人づつ行進する。マチュー・ガニオやオレリー・デュポン(現在の芸術監督)のなんと誇らしそうなこと! プルミエまでは毎年行われる昇格試験で空席を争うが、エトワールは総裁の許可のもと芸術監督が任命する狭き門だ。心技体すべてが充実した真のスターがエトワールの名に値するのである。
『くるみ割り人形』(C)Paris Opera Ballet
『エチュード』(ハラルド・ランダー振付)は一人の女性ダンサーが膝を深々と曲げるグラン・プリエに始まり、バーレッスン、そして数々の超絶技巧などクラシック・バレエの基本から華やかなテクニックまでを惜しげもなく披露する。出演はドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト、カール・パケットほか。『くるみ割り人形』ハイライトはルドルフ・ヌレエフ版。ヌレエフは1980年代~1990年代初頭の黄金期を率いたカリスマだ。クララはミリアム・ウルド=ブラーム、ドロッセルマイヤー/王子はジェレミー・ベランガール。『デフィレ』も含めすでに定年などで引退した人も出ており懐かしさもあるが、豪華三本立てを堪能できる。
『夏の夜の夢』(C)Paris Opera Ballet
5月1日(金)からは第2弾としてバランシン版『夏の夜の夢』(2017年収録)、6月26日(金)からは第3弾の『ミルピエ/ロビンズ/バランシン』(2015年収録)を各地で順次上演する。前者はオペラ座での新制作時の舞台で、衣裳・美術をクリスチャン・ラクロワが手掛けていることでも話題になった。後者は前芸術監督のバンジャマン・ミルピエがアメリカ・バレエの巨匠、ジョージ・バランシンとジェローム・ロビンズへのオマージュとして企画したプログラムで、バランシンの『テーマとヴァリエーション』、ロビンズの『作品19/ザ・ドリーマー』そしてミルピエの『クリア、ラウド、ブライト、フォワード』によるミックス・プロ。日本では紹介されにくいオペラ座の現代的な演目を大画面で堪能できるのは本当にありがたい限りである。
『クリア、ラウド、ブライト、フォワード』(C)Paris Opera Ballet
2019年末からオペラ座のダンサーらが年金をめぐってストライキを行っているというニュースが報じられた。彼らは年金の早期受給が保証されているからこそ、身体を過酷に駆使するバレエ芸術に安心して身を投じることができる。オペラ座はフランスの宝で、ダンサーたちは生きた文化財産だ。コロナウイルスやストライキの影響が心配だが、近いうちに劇場公演で再会できることを願いつつ大スクリーンで彼らに触れ、至高のバレエを満喫したい。
文=高橋森彦
上映情報
東劇(東京・東銀座)
3月20日(金)〜『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』(2014-2015)
5月1日(金)〜 『夏の夜の夢』(2017)
6月26日(金)〜『ミルピエ/ロビンズ/バランシン』(2015)
ミッドランドスクエアシネマ(愛知・名古屋)
なんばパークスシネマ(大阪・なんば)
神戸国際松竹(兵庫・神戸)
札幌シネマフロンティア(北海道・札幌)
4月 3日(金)〜4月9日(木)『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』(2014-2015)
5月8日(金)〜 5月14日(日)『夏の夜の夢』(2017)
6月26日(金)〜7月2日(木)『ミルピエ/ロビンズ/バランシン』(2015)
YEBISU GARDEN CINEMA(東京・恵比寿)
5月15日(金)〜『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』(2014-2015)
7月31日(金)〜『夏の夜の夢』(2017)
9月4日(金)〜『ミルピエ/ロビンズ/バランシン』(2015)
【公開情報HP】https://www.culture-ville.jp/parisoperaballetcinema
【公開情報Twitter】 cinema_ballet
【公開情報facebook】 @Paris.Opera.Cinema