世界の「STAY HOME MUSICAL」動画まとめ、第一弾! 心に染みる癒やしソングを集めてみた

2020.5.1
コラム
動画
舞台

ロンドン・ウエストエンドのソンドハイム劇場(旧クイーンズ劇場)


劇場へ足を運び、客席に座り、舞台を観て、感動の拍手を送る。
それがどれほど尊いことか痛感している演劇ファン、ミュージカルファンの方が大勢いると思います。筆者もその一人です。
急激に変わった世の中、日々の生活に疲れてしまうこともありますよね。そんなときこそ私たちに必要なのは、エンターテインメントではないでしょうか。

ミュージカル界でも多くの演劇人が、試行錯誤しながら“今できること”に取り組んでいます。今回はその中の一つ、自宅から歌い、演奏し、ミュージカルの曲を配信しているYouTube動画(STAY HOME MUSICAL)に注目してみました。私たちの心にそっと寄り添ってくれるような動画を、ミュージカル作品別にご紹介します。おうち時間のお供に、ぜひ。

レ・ミゼラブル

♪【Shows at Home】民衆の歌 / Do You Hear The People Sing ? - Les Miserables -

2019年の『レ・ミゼラブル』で革命家アンジョルラスを演じた俳優・上山竜治によって立ち上げられたプロジェクト「Shows at Home」の第一弾。総勢36名のミュージカル俳優が「民衆の歌 / Do You Hear The People Sing?」を歌い継ぎ、最後の大合唱に勇気づけられる。日本のミュージカル界を牽引する豪華メンバーが集い、海外からラミン・カリムルーも参加(しかも日本語で!)していることで大きな話題を呼んでいる。

♪70 West End stars perform Les Misérables’ Do You Hear The People Sing


日本と同じく劇場閉鎖が相次ぐロンドンのウエストエンド。この動画では、そんなウエストエンドで活躍するスター70名によって圧巻の歌唱が繰り広げられる。前出の日本版「Do You Hear The People Sing?」と歌詞の違いを比較してみてもおもしろいかもしれない。動画の冒頭で挨拶を務めるのは、イギリスのテレビ司会者かつ俳優のクリストファー・ビギンズ。彼の想いの込もったメッセージにもぜひ耳を傾けてほしい。

♪Bring Him Home performed by Alfie Boe, John Owen-Jones and more

NHS(National Health Service)というイギリスの国営医療サービスの人々を称えるべく、アルフィー・ボー、ジョン・オーウェン=ジョーンズら著名な俳優陣が美しい歌声を届ける。「Bring Him Home」は『レ・ミゼラブル』の主人公ジャン・バルジャンが、バリケードで命懸けで戦う学生マリウスの無事を願い、どうか彼を家に帰してほしいと神に祈る名曲。この舞台設定が、今命懸けで医療現場の最前線で戦う人々への想いと見事に重なっているところが素晴らしい。

オペラ座の怪人

♪All I Ask Of You | Phantom London Orchestra | ALW Response Video

『キャッツ』、『エビータ』など名だたるミュージカル作品を生み出したイギリスの作曲家、アンドリュー・ロイド・ウェバー。外出自粛生活が続く中、彼はSNSを通じてリクエストされた曲をピアノ演奏する動画を連日公開している。この試みの第一弾となったのが、『オペラ座の怪人』でクリスティーヌとラウルが愛を語り合うデュエット曲「All I Ask Of You​」だ。この動画は、そんなロイド・ウェバーの活動を知った『オペラ座の怪人』のオーケストラメンバーがあとから加わり、編集したもの。様々な楽器が加わったことにより、美しい旋律がより一層ロマンチックなものに仕上がっている。

♪Masquerade | The Phantom of the Opera World Tour

現在、韓国のソウルに滞在しているという『オペラ座の怪人』ワールドツアーカンパニーによる「マスカレード」。外出自粛中に精力的に動画配信を続ける作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーに対して、『オペラ座の怪人』カンパニーから感謝を伝えるという趣旨の動画だ。とてもピアノ伴奏のみとは思えない、豪華で迫力満点の1曲となっている。よーく見ると、数名がしっかりダンスまで踊っているので注目してみてほしい。

♪Music of the Night - Ramin Karimloo and and The Broadgrass Band

 

2020年4月18日〜20日深夜(日本時間)にアンドリュー・ロイド・ウェバーがYouTubeで無料配信を行った『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』で、主役のファントムの美声に酔いしれた人は少なくないのではないだろうか。そのファントムを演じていたラミン・カリムルーが、今度は「Music of the Night ​」をThe Broadgrass Bandと共にしっとりと歌い上げたのがこの動画だ。豪華絢爛なオーケストラも良いが、小編成のバンドと合わせるのも趣があってなかなか良い。

ラブ・ネバー・ダイ

♪Till I Hear You Sing Once More - Ramin Karimloo

『オペラ座の怪人』の続編とされ、2010年にロンドンで初演を迎えた『ラブ・ネバー・ダイ』。その主演ファントム役のオリジナルキャストであるラミン・カリムルーが、オーケストラメンバーの演奏に乗せて「Till I Hear You Sing Once More」を絶唱する。ファントムが歌姫クリスティーヌへの熱い想いをほとばしらせるこの曲は、伸び伸びとして深みのあるラミンの歌声の魅力が存分に発揮される曲の一つだろう。必聴だ。

♪Once Upon Another Time - Sierra Boggess and Ramin Karimloo

ミュージカルファンにはお馴染みになりつつある、ラミン・カリムルー×シエラ・ボーゲスのゴールデンペアによる貴重な動画配信。シエラはラミンと同じく『ラブ・ネバー・ダイ』のオリジナルキャストを務めており、その後『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』でもファントムとクリスティーヌとして共演している。「Once Upon Another Time」は、ファントムとクリスティーヌによる切なくも美しいデュエット曲。その耽美的な旋律もさることながら、過ぎし日を振り返りながらも前に進もうとする歌詞がグッとくる。

回転木馬

♪"You'll Never Walk Alone" from Carousel | sung by West End stars + Irish Youth Musical Theatre

ロンドンのウエストエンドとアイルランドのミュージカルシアターの人々によって制作された「You'll Never Walk Alone」の動画。タイトルからして、今の世の中にぴったりな応援歌と言えるだろう。『回転木馬』はブロードウェイで誕生したミュージカル作品で、日本では過去に宝塚歌劇団や東宝によって上演されたこともある。ちなみにこの曲はミュージカルソングであると同時に、世界のサッカーファンの間でサポーターズソングとしても親しまれているそうだ。

デスノート THE MUSICAL

♪「私のヒーロー We All Need A Hero」スペシャルver. デスノート THE MUSICALより


『デスノート THE MUSICAL』の歴代キャストが集結! 2015年初演と2017年再演のキャスト浦井健治、柿澤勇人、小池徹平はもちろん、2020年再々演の村井良大、甲斐翔真、髙颯らも登場している。ピアノ伴奏は作曲者のフランク・ワイルドホーン。動画の冒頭、ニューヨークの自宅でトレードマークのキャップを被り、明るい笑顔を見せてくれた。「私のヒーロー We All Need A Helo」の選曲は意外であると同時に、なるほどと思わされた。未来への希望とあたたかさを感じさせる歌詞とメロディが、今の状況下の私たちに前向きな勇気を与えてくれる。

ウィキッド

♪Thank You Frontline Workers | “For Good” | WICKED the Musical

WICKED communityにより制作された「For Good」。ブロードウェイの『ウィキッド』で善い魔女グリンダを演じるジーナ・クレア・メイソンと、悪い魔女エルファバを演じるリンジー・ピアースの2人が、最前線で懸命に働く全ての労働者に対して感謝を込めて歌う。曲中、現在のニューヨークの様子や、医療従事者をはじめとする労働者、そしてウィキッドカンパニーの写真などが映し出される。「I have been changed for good」という歌詞になぞらえて、「You've changed the world. #ForGood」の文字で締めくくる演出も素敵。

レント

♪Seasons of Love [Rent] - The Welsh of the West End

The Welsh of the West Endによる「Seasons of Love」(『レント』より)の歌唱動画。ミュージカルファンの中には、前奏のピアノ伴奏の時点で涙腺が刺激される人もいるかもしれない。また、普段ミュージカルを観ない人にとっても聞き馴染みのあるメロディなのではないだろうか。思わず口ずさみたくなるハーモニーが魅力的な曲だが、後半にかけてのパワフルなソロ歌唱も聴き応えたっぷり。人の歌声の美しさ、そして音楽の持つ力を再認識させられる曲だ。

タイタニック

♪"We'll Meet Tomorrow" from Titanic musical | 70 performers sing from isolation


1997年初演のブロードウェイミュージカル『タイタニック』より、「We'll Meet Tomorrow」。涙なしには見れない名シーンの大曲だ。計6つのタイタニックプロダクションのパフォーマー70名による、実に壮大な歌唱動画となっている。『タイタニック』は日本ではフジテレビ制作版が2007年、2009年に上演され、その後は梅田芸術劇場制作で2015年、2018年に加藤和樹主演で新演出版が上演されている。

ディア・エヴァン・ハンセン

♪Ben Platt & Cast of Dear Evan Hansen Perform 'You Will Be Found'​


2017年のトニー賞でミュージカル作品賞を受賞した『ディア・エヴァン・ハンセン』。人と接するのがとても不器用で友達がいない、社交不安に苦しむ17歳のエヴァンが主人公の作品だ。
動画は、『一人の男と二人の主人』でトニー賞演劇主演男優賞したジェームズ・コーデンが彼の人気番組「ザ・レイト・レイト・ショー」で、オリジナルキャストであるエヴァン・ハンセン役のベン・プラットと、現在ブロードウェイと全国ツアー中のキャストを紹介。コーデンの心にも響いた曲「You Will Be Found」の歌唱が、彼らによって披露されている。

♪"You Will Be Found" in Japanese

 


同じく『ディア・エヴァン・ハンセン』から「You Will Be Found」を、柿澤勇人をはじめとする俳優陣が日本語(訳詞:福田響志)で披露。外出自粛が続き、日々孤独を抱える私たちに通ずる歌詞が胸に迫る。作品のテーマカラーなのだろう、ブルーとホワイトで服装を統一しているところにこだわりも感じる。現時点で日本での上演予定はまだないのだが、もしかしたら……と期待する人も多いのでは。
 

以上、9つのミュージカル作品から計15動画をご紹介しました。次回はとびきりハッピーになれる明るい動画を中心にご紹介する予定です。お楽しみに!

文・写真 = 松村蘭(らんねえ)