2.5次元で体感する“震える心”青春ストーリー編/ホーム・シアトリカル・ホーム ~自宅カンゲキ1-2-3[Vol.13] <2.5次元舞台編>

2020.5.3
コラム
舞台

イラスト:春原弥生

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自宅で。あるいは移動中に。はたまた時間がぽっかり空いたとき。そんなすきま時間に手に取れる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品を、エンタメ界隈に棲息する人々が「3選」としてジャンル・テーマ別に語り尽くします。今回は「演劇編」のなかから、世界でも注目を集め、いまやひとつのジャンルとして確立した、「2.5次元舞台」をお届けします。(SPICE編集部)


ホーム・シアトリカル・ホーム ~自宅カンゲキ 1-2-3[Vol.13]<2.5次元舞台編>
2.5次元で体感する“震える心”青春ストーリー編​
by 潮田茗

【1】『ミュージカル「スタミュ」』
【2】SCHOOL STAGE『ここはグリーン・ウッド』
【3】「ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』」


演劇はいつだって、心のありかを教えてくれる存在。目に見るもの、聞こえてくる音が作り上げる物語に触れると、世界が広がるような感覚が沸き上がる。ここでご紹介するのは、“2.5次元”と呼ばれる作品。漫画やアニメ、ゲームなど原作の息吹をさらに強く、熱くしてくれる魅力に触れた瞬間が数多くあった。

今回のピックアップテーマは「心が震える青春ストーリー」。人生を振り返ると、真っ先に思い浮かべるワンシーンが高校時代という方も多いだろう。日常のなかで生まれた仲間との切磋琢磨、何かを成し遂げる達成感、若さゆえに経験してしまったほろ苦い思い出――高校生たちが織りなす物語に思わず笑って、しっかり泣いてしまった3作品をご紹介。じんわりと胸を温かくしてくれる、心震える体験に出会えますように。

『ミュージカル「スタミュ」』

『ミュージカル「スタミュ」』 (C)ミュージカル「スタミュ」製作委員会

観劇後はしばらくの間、“ドキドキ”と“ワクワク”が収まらない。自分のなかにもまだキラキラと輝く感情がこんなにあったのだと思い出させてくれた。原作は、音楽芸能分野の名門校・綾薙学園に通う生徒たちを描いたテレビアニメ『スタミュ』。舞台も長く愛されるシリーズ作となったが、入門としてはやはり2017年4月に上演された第一作をおすすめしたい。アニメ第1期にあたるストーリーを基に描かれており、“スタミュ”の世界へいざなってくれる。

作品を牽引するのは、ミュージカル学科への入科を目指す主人公・星谷悠太(杉江大志)のひたむきさ。歌やダンスの経験が浅く、他の生徒たちより実力は劣ることからチームメイトである“team鳳”のメンバーとぶつかる場面も。思わず逃げ出したくなる状況でも、まっすぐにぶつかっていく姿には素直に胸を打たれた。ライバル“team柊”の存在も大きく、圧倒的なパフォーマンスは最も実力派ぞろいである”スター・オブ・スター”という肩書きを持つ役どころに説得力を与えている。終盤、2チームによるそれぞれのミュージカルシーンでは終始鳥肌が止まらなかった。学園を取りまとめる“華桜会”が関わるドラマティックな展開も豊富だ。

「憧れの高校生と同じ舞台に立つ」という夢に突き進む主人公像はもちろん、他の多彩なキャラクターの魅力が際立つ。登場人物は多いが、まんべんなく愛すべき一面を感じられるので見せ場が途切れない。『-2ndシーズン-』、『-3rdシーズン-』のほか、劇中劇を描いたteam柊 単独レビュー公演『Caribbean Groove』、チームの垣根を超えた共演が実現したスピンオフ 『SHUFFLE REVUE』など、どんどん広がっていくスタミュの世界も併せて楽しんでほしい。

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SCHOOL STAGE『ここはグリーン・ウッド』

SCHOOL STAGE『ここはグリーン・ウッド』 (C)那州雪絵/白泉社

オープニングから予感はあった。歌って踊るキャラクターたちの姿からあふれ出る、若さと希望を凝縮したみずみずしさに、一気に引き込まれたのを覚えている。原作は1986~91年に『花とゆめ』(白泉社)で連載された那州雪絵による同名コミック。男子寮を舞台にした青春ストーリーとして、長きにわたり愛されてきた名作だ。時を経ても変わらない作品の強さが、ありのまま現代で表現された舞台だった。

主人公は、不運に愛されてしまった体質の“すかちゃん”こと蓮川一也(小西成弥)。全寮制の名門男子高校へ入学し、「緑林寮」(通称「グリーンウッド」)に入寮するが、失恋の痛手から胃潰瘍を患ったせいで入学が1カ月遅れていたり、どう見ても女子にしか見えないルームメイト・如月瞬(大平峻也)に騙されたりとてんやわんや。生徒会長・手塚忍(影山達也)や寮長の池田光流(長妻怜央)といった主要キャラクターはもちろん、おなじみの個性豊かな人物が至るところで活躍するのも楽しい。

印象的だったのは、春夏秋冬をはっきりと描いていたこと。季節の匂いすら感じそうな質感で物語が進み、繊細に描写されていくが決してスローテンポには感じない。ドタバタコメディシーンだけではなく、それぞれの家族や兄弟、友人関係に言及するストーリーが織り込まれており、思春期ならではの距離感は心に刺さる。保健医でもある唯一の肉親・兄の蓮川一弘(山田ジェームス武)との複雑に絡まった家族愛の行く末も丁寧に描かれていた。舞台ならではの要素として加わった歌やキレのあるダンスも見応え抜群だ。

なお、原作漫画が白泉社の総合エンタメアプリ・マンガParkにて5月4日(月)までの期間、全話無料で読むことができるのでこちらも必見だ。

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「ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』」

「ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』」 (C)'76,'79,'88,'89,'93,'96,'01,'05,'13,'15,'19 SANRIO MSSB 2018

観劇中に受けた、衝撃ならぬ“笑撃”は計り知れない。笑い過ぎただけでなく、ちょっぴりの切なさと感動と……それぞれ違う感情で涙を流してしまった。サンリオキャラクターをこよなく愛する男子高校生の日常を描いた『サンリオ男子』。ツイッターや漫画、アニメやゲームなど数々のメディアミックスプロジェクトが展開されてきたが、舞台版は生の芝居だからこそ誕生した、生き生きとした”サンリオ男子”たちの姿を見ることができる。

軸となるのは“普通”すぎることが悩みの主人公・長谷川康太(北川尚弥)をめぐる物語。2018年11月に上演された第一作では、水野祐(笹森裕貴)らサンリオ男子たちと教室で談笑したり、サンリオピューロランドでアルバイトをしたり、舞台版から仲間に加わった豊原夢ノ介(定本楓馬)ら“関西サンリオ男子”と出会ったりと、青春のワンシーンを切り取りながらオムニバス形式で進行する。三十路の教師コンビ”サンリオおじさん”のやりとりは、大人であるがゆえ心が締め付けられるものばかりだった。合間には漫才、歌やダンスがぎっしりと詰まっていて、ハイテンポで進む疾走感がたまらない。

終始コメディかと思いきや、「好きなものを好きでいること」というシンプルで強いメッセージを訴えかけられ、思わずグッときてしまう。本編はもちろん、サンリオキャラクターも登場する終盤のショーパートは圧巻。キャッチ―な振り付けは見ているだけでも楽しいが、キャストに合わせて一緒に踊ることができるのも自宅観劇の特権なので試していただきたい。大分のハーモニーランドと“九州サンリオ男子”たちも登場する『〜ハーモニーの魔法〜』もぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

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文=潮田茗

作品情報

『ミュージカル「スタミュ」』
 
公演日:2017年4月1日(土)~16日(日)
会場:Zeppブルーシアター六本木/森ノ宮ピロティホール
 
演出:吉谷光太郎
脚本:大和田悟史
出演者:杉江大志、山中翔太、ランズベリー・アーサー、鈴木勝吾、高橋健介ほか
 
発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
 
(C)ミュージカル「スタミュ」製作委員会

SCHOOL STAGE『ここはグリーン・ウッド』
 
公演日:2019年7月19日(金)~28日(日)
会場:天王洲 銀河劇場
 
原作:那州雪絵「ここはグリーン・ウッド」(白泉社)
脚本・演出:ほさかよう
出演者:小西成弥、大平峻也、影山達也、長妻怜央ほか
 
発売・販売元:ネルケプランニング
 
(C)那州雪絵/白泉社

「ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』」
 
公演日:2018年11月29日(木)~12月9日(日)
会場:天王洲 銀河劇場
 
原作:サンリオ
出演:北川尚哉、笹森裕貴、吉澤翼、宮崎湧、和合真一ほか
 
発売:ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』製作委員会
販売元:ポニーキャニオン
 
(C)'76,'79,'88,'89,'93,'96,'01,'05,'13,'15,'19 SANRIO MSSB 2018