新国立劇場バレエ団が公演再開 森山開次演出・振付、「浦島太郎」をモチーフにした世界初演・新作バレエを上演
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『竜宮りゅうぐう~亀の姫と季(とき)の庭~』
2020年7月24日(金・祝)~7月31日(金)、オペラパレスにて、新国立劇場バレエ団が5ヶ月ぶりとなる公演『竜宮りゅうぐう~亀の姫と季(とき)の庭~』を上演する。日本の御伽草子『浦島太郎』をモチーフにした新作バレエで、世界初演。ダンサー・振付家として国内外の舞台やテレビで精力的に活躍する森山開次が初めてバレエを演出・振付する。
森山開次
豪華絢爛な竜宮城には、愉快な海の生き物たちがおり、太郎をもてなし、春夏秋冬の美しい四季が堪能できる不思議な季(とき・時)の部屋が。そして故郷に帰った太郎を待っていた運命とは?これまでに『サーカス』『NINJA』などを手掛けてきた森山らしい遊び心あふれる世界観で描かれた、子どもも大人も楽しめる新作バレエ・ファンタジーだ。
『御伽草子』では、私たちが知る『浦島太郎』の物語と違い、カメが竜宮城のプリンセスという設定。太郎が竜宮城から帰ってからの結末も、太郎が翁になった後に更なる展開が待ち受けている。本作では、この『御伽草子』の『浦島太郎』を下敷きにしつつ、海の中の竜宮城の設定も取り込まれ、オリジナルのバレエの物語を作り上げているという。今回、森山は演出・振付だけでなく、美術・衣裳のデザインも手掛ける。カメのプリンセスをはじめとして、おもてなし担当のお茶目なフグ、タンゴを踊るイカの三兄弟など、竜宮城には愉快な海の生き物たちがたくさん。物語以外の部分でもチャーミングな衣裳に身を包んだ、ユーモア溢れるキャラクターたちの踊りを楽しむことができ、まさに森山ワールドというべき想像力を掻き立てられる舞台を堪能することができるという。
演出・振付森山開次からのメッセージ
新作バレエ『竜宮』は、『御伽草子』の浦島太郎を下敷きにしています。
その物語を読んで私が先ず驚いたのは、助けたカメが竜宮城のプリンセスだったこと。そして一番驚いたのは太郎がお翁(じい)さんになったあと、さらに鶴に変身して亀の姫と再会、最後には鶴亀の夫婦明神(めおとみょうじん)となって人々を守っていったという話です。「なんで鶴に変身するの?」って、子どもたちにもびっくりしてもらいたい、そしてバレエらしいロマン溢れる舞台を皆様にお届けしたいと思っています。『御伽草子』の竜宮城は島、陸の上にあるのですが、このバレエでは海の中に設定し、ふぐやタコ、マンボウなど愉快な海の仲間たちが登場して太郎を<おもてなし>します。
今回は、美術・衣裳までトータルで担当させていただくので、身が引き締まる思いです。でも多くのプロフェッショナルなスタッフがサポートしてくれ、私のプラン、世界観を具現化してくれる、その共同作業がとても楽しい。一人では舞台は作れるものではないことを、改めて感じています。
新国立劇場バレエ団とのコラボレーションは、昨年秋のワークショップから始まりました。私の振付はコンテンポラリー・ダンスに分類されますがオリジナルで、バレエもベースに取り込んでいます。今までは、私が先ず踊ってみせることが多かったのですが、イメージを伝えるだけで「バレエだったら、こういう動きがある」とアイデアを出してくれる。クラシック・バレエの伝統を保ちつつ新しい表現へ挑戦しようとする新国立劇場バレエ団のメンバーの<創作に対する意識>は、とても高いと感じています。
この作品にはテーマとして「時」が流れています。竜宮城には、不思議な「季(とき)の庭」があり、一度に春夏秋冬の美しい四季を堪能することができます。太郎が竜宮城にいる間に700年もの年月が経過していました。ふるさとで玉手箱を開けた太郎はお翁(じい)さんになってしまいます。玉手箱には、時が封印されていた、そうこれは「時の物語」なのです。
時とは何か。そして、竜宮城とは何か。なぜ、太郎は故郷に帰ったのか。現代を生きる私たちも「今」という時をどのように生きるべきか、あらためて見つめることができるかもしれません。ダンスや音楽は、時の芸術でもあります。そして舞台は、今を共有できる時の空間。舞台上の一瞬を届けるために、私たちは鍛錬と稽古を繰り返す。
当たり前のようにあった<舞台のありがたさ尊さ>をあらためて感じる今。時の感覚も違って感じられます。新国立劇場バレエ団のみんなと、今また創作ができる喜び。どんな『竜宮』が誕生するか、心から楽しみにしています。