押井守氏が原案の実写映画『ビューティフル ドリーマー』の劇場公開が決定 本広克行監督、主演・小川紗良らがコメント
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上段左より、小川紗良、藤谷理子、神尾楓珠、内田倭史、ヒロシエリ 下段左より、森田甘路、斎藤工、秋元才加、瀧川英次、升毅 (C)2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会
本広克行監督、押井守監督、小中和哉監督、上田慎一郎監督が参加する映画実験レーベル“Cinema Lab”(シネマラボ)が発足。レーベル第1弾作品として、本広克行監督、小川紗良主演による映画『ビューティフル ドリーマー』が2020年11月6日に劇場公開されることが決定した。
Cinema Labは、参加監督たちがATGこと日本アート・シアター・ギルドに着想を得て、作家性を最大限に活かす「監督絶対主義」で映画を制作する実験レーベル。映画化の条件を「限られた制作予算」のみとし、制作過程となる企画開発、脚本、キャスティング、ロケーション、演出などすべてのクリエイティブは、それぞれの監督が自由に手掛け、作品を公開していく。
押井守監督
レーベルの第1作を飾ることとなった『ビューティフル・ドリーマー』は、押井守監督が書き下ろした『夢見る人』を原案とした作品で、映画を撮ったことのない映画研究会の部員たちが“いわくつきの台本”の映画化に挑む姿を描いた青春映画。『踊る大捜査線THE MOVIE』シリーズなどで知られる本広克行監督が2年半ぶりの実写映画のメガホンをとることになる。なお、本広監督は、本作では完全な脚本を用いず、おおよその筋だけを立て、現場で俳優との口頭打ち合わせで芝居をまとめる“口立て”を用いた手法で演出しているという。
(C)2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会
主演は、NHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』などで知られる小川紗良。本作では、監督としてメンバーをリードする主人公のサラを演じる。また、カメラ担当のカミオ役で『HiGH&LOW THE WORST』の神尾楓珠、助監督兼雑用係のモリタ役で所属で森田甘路(劇団ナイロン100℃)、プロデューサーのリコ役で藤谷理子、メイク担当のシエリ役でヒロシエリ、録音担当のウチダ役で劇団スポーツ主宰の内田倭史が共演。また、映研OBのタクミ役で斎藤工、確かな演技力で撮影に貢献するサヤカ役で秋元才加が登場するほか、瀧川英次、升毅らが本人役でキャスティングされている。なお、今後は本ポスタービジュアル、本予告、ストーリー、キャスト、追加出演者などの発表を予定とのこと。
本広監督、主演の小川、Cinema Lab参加監督の小中氏のコメントは以下のとおり。
本広克行(監督)
本広克行監督
シネマラボというレーベルは、当初小中監督から「現代のATG」を作らないかという提案から始まりました。ラボ=実験。予算に制限がありながらも監督の作家性を最優先し、後世に残る作品を生み出す事を目的としたレーベルです。映画はオールドメディアであり、長い間その形を変えていません。それをどのような形で進化させるのかをいつも考えています。興行的には、厳しいかもしれません。でも、やらないと後世に残る映画は作れない。作家性のある作品が少なくなっている今、次世代の若者のクリエイターたちが撮りたいものを撮れる場を作れないか、というのをずっと思っていました。その土台に、押井監督、小中監督、上田監督をはじめ私達がなれればいいと思っています。
その第一弾となったのが、「ビューティフルドリーマー」です。ずっと押井守監督と組んで実写を撮ってみたいと思っていました。今回の為に押井監督には「夢みる人」という原案となる本を書いてもらいました。当初は登場人物が軽音楽部だったのですが、それを私なりにアレンジして映画研究会にし、主演を小川紗良さんに演じてもらいました。小川さんは実際に大学で映画研究会に入って作品を作っていて、自然と出る演出する言葉を知っているのと、信じた事に周りを巻き込んで猛進して行きそうな強い眼差しが今回の主演に絶対に必要な人でした。全ての映像作品を作っていてずっと思っていた事があります。今や当たり前のように作品の中だけで交わされる省略された無駄のない台詞を、演者から出るリアルな話し言葉を使って作品を作れないか。今では機材の性能が上がっていて、昔は録音できなかった台詞も今だからできる方法があります。急に違う作り方をすると観ている人は拒否反応がある事を知っていながらも、このシネマラボで自分なりの「実験」として、エチュードという形で映画の中の台詞をリアルに演出させてもらいました。是非この不思議な映画を、多くの人に色々な感情で楽しんでもらえればと思います。
小川紗良
小川紗良
大学時代、サークルで映画を撮っていた私にとっては、あの頃を追体験するような日々でした。映画サークルって、色々な珍事件が起きるんですよ。データが飛んだり、お金が尽きたり、機材が壊れたり、しょうもないことで喧嘩したり、色恋沙汰がもつれたり。それでも映画を撮りたい気持ちは突っ走って、かぐや姫もドン引きな無理難題を言ってみたり。部室には余計なものがいっぱいあって、3留くらいしてる先輩が昼寝してる。”伝説のOB”はいつまでもサークルにはびこって、ああだこうだと言ってくる。本当に、映画サークルって変。
それでも、サークル活動や映画撮影の在り方が変わり果ててしまった今となっては、あの変な日々も懐かしく思えたり。2020年、思いがけずこの映画は「癒し」になるかもしれません。
人と人との距離の近さが生む珍事件たちに、ぜひ心をふっと緩ませてみてください。
夢みる人、そしてかつて夢みた人に、届きますように。
小中和哉(監督)
小中和哉監督
映画ファンにとって、最大公約数的な大型商業映画だけでなく、意欲的、冒険的、個人的な限られた予算で制作された映画が見られることは大切なことだと思います。それが映画の裾野を広げ、テレビとは違う映画という文化を豊かにすることだと感じております。
かつて日本映画にはそのような限られた予算で意欲的に制作された映画がありました。「ATG」(日本アート・シアター・ギルド)は「限られた予算」という条件と引き換えに自由を得た監督たちが勝負を挑む場として観客の注目を集めました。
前衛や反体制、芸術という要素に映画ファンが興味を示した時代でした。
オリジナルビデオという映画館にかからないビデオ用映画では、アクションややくざ、エロというジャンル映画が量産される中傑作が生まれましたし、ビデオ市場メイン、ミニシアター単館公開という図式で作家性の高いユニークな映画も生まれる余地がありました。しかしビデオが売れなくなり映画館での回収がメインとなった昨今、映画興行も映画制作も制限があると感じています。変化している時代に多様なジャンルの映画作品を届けるため、監督一個人ではなく、志のある映画監督が集まり、共同戦線を組み、ムーブメントを作り上げる必要を感じていました。バラバラに時々いい作品があっても、継続して一つのジャンルを作り上げないと、映画ファンには届きません。ATG映画、Vシネマに匹敵する新しいブランドが一つ存在しても良いと思うのです。そんなことを考えて本広さんや押井さんの賛同を得てシネマラボ企画は動き出しました。自主映画からスタートして商業映画に進出した大先輩・大林宣彦監督は生涯《映画監督》ではなく、《映画作家》と名乗っていました。
商業主義に飲み込まれることなく、自主映画、アマチュア映画の心を忘れず、プロフェッショナルな監督ではなく、作家であろうとしてきました。今回の企画は、大型商業映画を撮ってきた押井、本広両監督は、初心に戻って個人の想いに忠実な自主映画のような作品を作ろうという気持ちがあるでしょうし、自主映画から商業映画へ活躍の場を広げた上田監督にとっては、自主映画の自由さを失わずに商業映画が撮れる場としての魅力を感じての参加だと思うのです。
つまり、「監督が自由に映画に情熱を注ぐ魂」と「商業映画」の幸福な融合ができればと考えています。
『ビューティフル ドリーマー』は2020年11月6日(金)テアトル新宿、シネ・リーブル池袋ほかにて全国順次公開。