VRアイドル「えのぐ」初の個別インタビュー Vol.4 鈴木あんず「えのぐが私の世界を広げてくれた」

2020.9.26
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左から夏目ハル、鈴木あんず、日向奈央、白藤環

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2018年に「VRアイドル」としてデビューした4人組アイドルユニット「えのぐ」。実際の会場で音楽LIVEや握手会を開催するなど、リアルな現場での活動を大事にしてきた彼女達は、2020年8月8日、9日の二日間に渡ってワンマンライブ『えのぐワンマンLIVE2020 -次章-』を開催した。

SPICEでは今回短期集中連載として、鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハルの各メンバーに初となる個別インタビューを敢行した。共通の質問の中で彼女たちが生きて、思っている息吹を感じてもらいたい。

vol.4は鈴木あんず、ほか三人のメンバーが「えのぐの精神的支柱」という彼女の言葉を聞いてみよう――


――連続インタビュー最後は鈴木あんずさんです、よろしくおねがいします。改めて8月のライブ2Daysはいかがでしたか?

私、どんなライブでもそうなんですけど、ライブの前は「ヤバイ、もうすぐライブだ」っていう気持ちになるんです。今回のライブは特にそんな感じで、新型コロナの自粛期間とかであまり体を動かす事ができなかったこともあって、自粛明けのレッスンでもみんな一曲歌うのが精一杯だったりして。それですごく焦ってたんですけど、みんなで「間に合わせなきゃ」って一所懸命がんばって。すごく緊張しましたけれど、メンバーやスタッフさん、そして見に来てくれたファンの皆さんと一緒にライブを作りあげる事ができて、本当に嬉しかったです。

――とてもいいライブでしたね。

がんばったぶん、終わった後にライブロスみたいになったりしましたけど。「終わっちゃったなー」っていう寂しい気持ちもあり、久し振りに大きいライブができて、改めて唄って踊ってメンバーやファンのみんなと過ごすライブの時間って最高だなと思いました。

――他の皆さんも自粛明けのレッスンが大変だったとおっしゃってましたが、体力はかなり落ちてましたか?

すごい落ちてました。前は三曲続けてちょっと息が切れるぐらいだったけど、自粛明けは一曲でめっちゃ疲れてるみたいな感じで。8月のライブは2Daysで曲数も10曲以上あったので本当に焦ってました。

――今回の共通のお題として、メンバーみんなに聞いているんですけど、あんずちゃんにとっての「アイドル」とはどんなものでしょうか?

ああ、なんだろう……「夢」があふれているというか、キラキラした存在だなって思います。

――実際にアイドルになられて、どうですか?

なんか不思議な感じというか、私にとってメンバーのみんなも日々キラキラしててアイドルだなと思っていて、その中にいるから、私もたまに自分がアイドルだってことを忘れてしまうというか。

――環ちゃんからはコミケから「あんたま」の二人でがんばって全国行脚をしたりして、大変だったけどここまできたという話があったんですけど、個人的に、あんずちゃんはすごく垢抜けました印象があります。

確かにそうかもしれない(笑)。昔の私だったら絶対しゃべれてない……。

――あの頃より自信は付きましたか?

正直、自信は今でも全く持てていないんですけど……あの頃よりもできる事とかが増えて、自分を少し認められるようになったから、ちゃんとここに居るのかなって思います。

――自己肯定があまり得意じゃないタイプ、ですかね。

ちょっと……自信ないです。

――できることが増えたということですが、具体的には?

今こうしてお話しすることだったり、生放送配信とかでも以前は受け身なことが多かったけど、メンバーのちょっとした発言に突っ込めるようになったり、みんなといて笑顔が増えたというか……(笑)。

――でも、ライブのMCで最後にいいことを言ってシメたりできてますよ。ああいう時は考えるタイプ? それともその場のノリ?

これだけは言いたいなと考えて、あとはそのときの空気を感じないと言えないこともあるので、ちょっと考える感じですね。アドリブに弱いので、こういうインタビューもちょっとだけまとめたりしてて……。

――事前質問しっかり送ればよかったですね、すいません。

いえいえ!

――でもこの前のライブで初めて見て、「えのぐ」をまとめているのはあんずちゃんかな、っていう印象があったんですけど。

ひええ……(笑)。

――確かによく喋っているのは環ちゃんだけど、最後に「えのぐ」はこうやっていきたい、こう思っていると伝えるのはあんずちゃんなのかなと。

ありがとうございます。

――でも、そんな自分に自身が持てないあんずちゃんが、VRアイドルとしてここまでやってこられたのは何ででしょう?

そうですね……やっぱり、いちばんは環ちゃんのおかげだし、メンバーやスタッフさんにも支えられて、あとはやっぱり応援して下さってるファンのみなさんがすごい近くにいるって感じるというか。みんなが一緒にいてくれるって思うからがんばれるし、今なんとかここに立っていられるのかなと。

――VRアイドルだからこそ、演者としてライブなどで生身のファンとの間の壁を感じたことはありますか?

壁とかは、私は感じた事は無いです。見てくれるファンの人達が壁は無いって思ってもらえているように、うまく言えないんですけど私もライブが始まると、そこにみなさんが居るし、リアルとバーチャルの壁とかを通り越してみなさんが応援という熱量をくれるから、あまり壁は感じないのかもしれないですね。

――確かに見ていた僕らもライブで「えのぐ」の四人からそこに存在している熱量を感じましたね。あんずちゃんから見て「えのぐ」ってどういうグループですか?

私にとっては「家族」っぽいというか、暖かい場所というか、一緒に居るといままで知らなかった歌とか人とか、色々なものに出会えるグループだと思います。私があまり外に出るタイプじゃなくて世間知らずなので、あまり触れてこなかった色々な事に「えのぐ」のみんなが触れさせてくれて、世界を広げてくれるような存在です。

――どちらかというとアクティブに外に出かけるより、お家にいたいタイプですか。

全然です……お家にいたいです。

――でもアイドルとして活動するのはそういう自分と二律背反すると思うけど、自分の中で折り合いはついている部分がある?

元々アイドルになりたいと思ったきっかけが、こんな自分を変えたかったからなんです。でもまだまだ未熟なところがいっぱいあるから、メンバーや応援してくれるみなさんと一緒にダメなところを克服して成長できればと思うんです。自分に自信が無いとか、前に進みたいけど進めないって人はいっぱいいるでしょうけど、私の存在が、そんな人達が一歩前に進む力になれたらいいな。

――「えのぐ」のライブを見ていると、VRの女の子達が「楽しい!」って言葉を発していないのに、見ていて「楽しそう」って感じるのはホンモノなんだなって思いました。そういう楽しい活動ができているのはメンバーのおかげ?

そうですね、それもたくさんあります。

――では、次の共通質問として、他のメンバーについてどう思っているかを聞きたいです。最初に日向奈央ちゃん。

奈央ちゃんはすごいフレンドリーで、私とは正反対なタイプだなって思ってて、初めて会った時に仲良くなれるか、いちばん不安でした。でも、一緒に過ごすうちに仲良くなれたし、私が少し落ち込んだりした時はすぐに気付いて声を掛けたり気遣ってくれたりとか、色んな面がわかりました。

――どんな部分?

奈央ちゃん、家では兄弟の中で長女だから、すごいしっかりしてて。最初会った時はちょっと失礼かも知れないけど、グイグイくる苦手なタイプかなって思っていたけど、全然そんな事なくて、イヤなグイグイじゃなくてフレンドリーで。奈央ちゃんは特に私に、面白かったこととか、私が普段聴かないような曲をよく教えてくれて。奈央ちゃんが教えてくれるおかげで私も好きな物が増えて、世界を広げてくれる存在です。

――では、夏目ハルちゃん。

ハルちゃんは、本人に面と向かって言った事はないんですけど、初めて会った時、本当に美人だなって。本人に美人って言ったこと一回も無いんですけど(笑)。たまに漫画や小説で「見とれる」って表現があるけど、ハルちゃんに初めて会った時に見とれちゃって「ああ、見とれるって現実でもあるんだ」って思うくらい美人です。

――絶賛ですね!

でも喋ってみると、ほんわかしてて、どちらかというと可愛いなって思えて、「あんず~」って甘えてきてくれる時があって、そういうところにギャップを感じてキュンとしますね。でもしっかりしてる時はしっかりしてて、「えのぐ」の楽曲のハモりは、ほぼハルちゃんが担当してるんですけど、楽器も五種類ぐらい演奏できたり、私には無いものをたくさん持っている魅力的な子です。

――最後に白藤 環ちゃん。

環ちゃんがいちばん長く隣にいるから、語るのが難しいんですけど、やっぱり環ちゃんがいなかったら今の私も絶対居ないから、私にとって環ちゃんは永遠にアイドルだし、憧れですね。環ちゃんといると今まで出した事のなかった私の部分……わがままとかそういうのが出てきたりして、本当に信頼できて背中を任せられるようなパートナー的な存在だと勝手に思ってて。昔は甘えてばかりだったから、今度は私が環ちゃんのことを支えられるような存在になれたらいいんですけど。

――これまでの話を聞いていて、変わりたかったとおっしゃってましたが、ファーストアルバムも決まってライブにたくさんのファンが来てくれるようになって、自分はなりたい自分に変われましたか?

昔よりは変われたと思います。そしてちょっとは理想に近づけたかも。歌もダンスも今よりもっと上手くなりたいし、話もちゃんとできるようになりたいし、今は自分に精一杯なところがあるので、もっと周りを見られるようになれたらいいかな。

――そして、9月に待望のファーストアルバムが出ます。環ちゃんと一緒でスタートが早かったあんずちゃんは、どんな思いがありますか?

そっかあ……すごいなあ……ついにアルバム来たかあ……って思います。こうして自分達の曲が増えて、歌っていられて、本当に幸せなことだなって思いますね、うん。

――かなりの楽曲を出していますけど、あんずちゃんの思い入れのある曲は?

やっぱりデビュー曲の「えのぐ」ですね。最初の曲っていうのもありますけど、この曲が私にとっていちばん難しい曲かな。初めて歌った時は深く考える余裕が無かったんです。最近は歌ってて、どう歌ったら思い通りに伝わるか考えたりする曲だし、初心に返りたくなった時にお披露目ライブを見返してます。今見ると「あー」って感じなんですけど、一所懸命だったな、がんばってるなって思いますね。

――8月のライブも何曲も連続で歌ったり構成がハードだなって思ったんですけど、歌っている時は無我夢中ですか?

無我夢中だけど楽しいです。楽しさの源は自分達とファンのみなさんの応援の両方ですね。最近気付いたのは、ライブで歌って踊っている自分がいちばん好きかもしれないと。あんまり自分のこういう所が好きとか、今まで考えた事が無かったというか、考えられなかったんです。でもやっとわかったというか、一つ見つけられた気がします。

――そう思える切っ掛けもあったってことですよね。

一周年記念ライブを三人でやらなくちゃいけなくなった時、みんなも不安になってるし、ステージも広いし、私は小さいから今まで以上に大きく見せるように踊ったりしないと、って考えたんです。その時から私、大きく動くようになって、そうやっていたら「歌って踊るのってこんなに楽しかったんだな」って気付いて。それで最近やっと、みんなとライブしている時間やライブしている自分がすごい好きに思えるようになりました。

――それじゃもっと大きなライブをやって、もっと自分を好きになりたい?

……うん、なりたいですね。

――新曲「Dreamin' World」も先ほど聴かせていただいて、すごく良い曲でした。ちゃんと「えのぐ」のことをわかって書いている曲だと。ライブでも感じたんですけど、「えのぐ」は「そばにいるよ、がんばってね」「応援してるよ、力になるよ」という楽曲のテーマが多いじゃないですか。それが「そばにいてね」「力になってね」と「えのぐ」がファンに鏡写しのように言ってる様にも聞こえたんです。それを新曲はちゃんと体言化しているなと。あんずちゃんが自分を好きになってきているというのはそういう部分なのかなと。そこであんずちゃんからファンにこういうものを与えたいみたいなのはあったりします?

そうですね、ちょっとした勇気とかプラスな気持ちだとか、幸せな気持ちですね。

――これから先「えのぐ」をどうしていきたいか、そして鈴木あんずはどういう存在でありたいですか?

「えのぐ」はずっと世界一のVRアイドルになりたいと言い続けている通り、目指すのは世界一です。でもまだ私達を知らない人がたくさんいるので、いつか「えのぐ」を知らない人の方が少ないくらい、色々なところに飛び出していけたらと思います。そして今、私達を応援してくれている人や、これから出会ってくれる方、そんなみんなとメンバーが一緒に今以上の景色を見られたらいいなと思うし、すごく見せたいです。

――では鈴木あんずは? メンバーのみんなにとっては精神的支柱みたいですし、ファンも含めて、みんなあんずちゃんが思っている以上に、「鈴木あんず」が好きみたいですが。

なんだろう……そこにどっしりと存在する「樹」みたいになれたらいいですね。

 
インタビュー後記
過去にもVRの存在の人たちにインタビューをする機会があったが、今回のえのぐ四人との会話はとても楽しく、とても感慨深いものとなった。彼女たちはそれぞれの考えや思いを持ちながら、示し合わすこともなく共通認識として「VRとして客席との壁はない」と四人とも言い切った。

アイドルという職業に今も憧れと矜持を持ち、胸を張って「応援してもらいたい、応援してもらえた感謝を返したい」というえのぐのメンバー。そんな彼女たちが本当に「世界一のVRアイドル」になれるのかどうか、それをしっかり見届けて行きたいと思える時間をもらえたことに感謝したい。

四人それぞれの個性という色がもっともっと混ざっていった時に、えのぐは何色になるのだろう?

本来の絵の具を混ぜ続けると減法混色の作用で黒に近づいていくのだが、もしそれが「光」だとしたら、混ぜ合わせれば限りなく白に近く輝き出す。えのぐの四人は果たして「光」になれるのか。アイドルを輝かせるのはいつだってファンの声援と願いなのだと信じている。


インタビュー・文:加東岳史

リリース情報

えのぐ1stアルバム『真っ白な夢の世界』

■発売日 :2020年9月27日
■初回生産盤価格 :¥3,500(税抜き)
■収録曲数 :全20曲
 
【初回生産盤】「真っ白な夢の世界」+個別お話し会1枚+えのぐとアルバム全曲鑑賞会抽選権
【ボイスドラマ盤(青)】「真っ白な夢の世界」+ボイスドラマカード(青)
【ボイスドラマ盤(赤)】「真っ白な夢の世界」+ボイスドラマカード(赤)
【ボイスドラマ盤(緑)】「真っ白な夢の世界」+ボイスドラマカード(緑)
【ボイスドラマ盤(紫)】「真っ白な夢の世界」+ボイスドラマカード(紫)
【スペシャル盤(白)】「真っ白な夢の世界」+アクリル時計+クッションカバー+ステッカー+直筆サイン入りポストカード

※アルバム概要は予告なく変更になる場合がございます
  • イープラス
  • えのぐ
  • VRアイドル「えのぐ」初の個別インタビュー Vol.4 鈴木あんず「えのぐが私の世界を広げてくれた」