ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2020年秋編】

2020.10.2
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2020年3月13日に「4月12日まで」の閉鎖が発表されてから半年以上、ブロードウェイ再開のめどはまだ立たない。ウエストエンドでは――ここ数日ロンドンには深刻な第二波が来ているようなのでまた変わるかもしれないが――、『SIX』などいくつかの作品が、秋から客席数を減らして再開することを発表。しかしブロードウェイでは、前号の時点では「9月6日以降まで」だった閉鎖期間が、6月29日に「1月3日以降まで」に延長されてしまった。

明るいニュースといえば、延期されていた毎年6月のトニー賞が、“デジタルイベント”として秋に開催されると発表されたこと。今シーズンは新作が出揃う前に閉鎖期間に入ってしまったため、対象作品が極端に少なく、ミュージカルは『ムーラン・ルージュ!』『The Lightning Thief』『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』『ジャグド・リトル・ピル』のみ(リバイバル部門に至ってはゼロ!)。果たして盛り上がるのだろうか……?と心配になるが、きっとトニー賞さんのこと、なんとか楽しくしてくれると信じて続報を待ちたい。

さて、しばらくは配信にスポットを当てようと思っていた本連載だが、頼みのBroadwayHDはラインナップが前号時点からほぼ変わらず、ほかのサブスクをパトロールしてみても、近々で目ぼしい作品が日本から観られる予定はない様子。新作『ダイアナ』が無観客収録からのNetflix配信を行うとの新展開に「お?」と思うも、2021年公開とまだ先の話だった。そんなわけで今回は頭を切り替え、来シーズンの新作に目を向けてみることとする。次号「冬編」では、再開発表のニュースを華々しくお届けできることを祈りながら――。

■伝記系ジュークボックスの新作『MJ』


 

来シーズンの詳しいラインナップは下記のリストをご覧いただくとして、個人的な注目作を三つ挙げるなら、まずは『MJ ザ・ミュージカル』。その名の通り、マイケル・ジャクソンの半生を彼の楽曲によって綴るジュークボックスものだ。伝記系ジュークボックスが量産され続ける現状には賛否両論あるが、筆者は何番煎じでもいいからどんどん作って欲しい、余談だが日本でも安室奈美恵ミュージカルとかそろそろどうですか?と思っている派。演出・振付がバレエ出身のクリストファー・ウィールドンと聞いた時こそ「ん?」と思ったものだが、公式YouTubeチャンネルに上がっている稽古動画を見る限りとてもイイ。楽しみだ。

■ヒュー様とサットンが夢の共演

映画版『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンとして、またトニー賞授賞式の常連司会者としておなじみ過ぎて忘れそうになるが、実はブロードウェイの舞台に立つ姿は観たことがないヒュー・ジャックマン。そして、『リトル・ウィメン』『モダン・ミリー(中止になったが…)』『ヴァイオレット』と、彼女がオリジナルキャストを務めた作品が立て続けに日本で上演されたことで、近ごろ改めてその力を痛感させられているサットン・フォスター。そんな二大スターがそろい踏みし、ほかにも豪華キャストが集う『ザ・ミュージックマン』リバイバルもやはり、絶対に観逃したくない作品だ。演出はリバイバルものに定評のあるジェリー・ザックス、振付はヒュー様の『バック・オン・ブロードウェイ』の演出・振付も手がけたウォーレン・カーライルと、クリエイティブ陣も盤石。難は間違いないだろう。

■思い出の『トミー』リバイバルも!

中学生の時に観た初演の『トミー』は鮮烈で、主演俳優マイケル・サーヴェリスの名は、その妖しく繊細な演技とともに筆者の胸に深く刻まれた。刻まれたところで、ネットのない時代にその活躍を追い続けることはできなかったわけだが、10年以上経って偶然『スウィーニー・トッド』で再会した彼は大げさでなく別人(大人の俳優)になっており、さらに10年後、『ファン・ホーム』のお父さん役でトニー賞を獲得した。筆者にブロードウェイ通いを続ける楽しさを教えてくれた一人である彼のデビュー作『トミー』が来年、実に26年ぶりにリバイバルされるという。まだ詳細は発表されていないが、初演版の脚本・演出を手がけたデス・マカナフが自ら挑む新演出。今度は一体、どんなトミーが誕生するのだろうか?
 

【2020-2021シーズンの新作】

*情報は9月27日時点のもの

『1776』春に開始予定
1969年のトニー賞受賞作をD・パウラス演出でリバイバル。米国独立宣言の裏側を描く。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2020-2021-season/1776/

『Caroline, or Change』春に開始予定
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2019-2020-season/caroline-or-change/

『Flying Over Sunset』春に開始予定
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/


 

『MJ The Musical』3月8日開始予定
マイケル・ジャクソンの半生を『パリのアメリカ人』のC・ウィールドンの演出・振付で。
https://mjthemusical.com/

『ザ・ミュージックマン』4月7日開始予定
H・ジャックマンとS・フォスターが夢の共演。スタッフ陣も盤石で大ヒット確実!
https://musicmanonbroadway.com/

『シング・ストリート』冬~2022年に開始予定
同名のアイルランド映画(副題「未来へのうた」)の舞台化。オフでの好評を受けてBW入り。
https://singstreet.com/

『お熱いのがお好き』秋に開始予定
M・モンロー主演の名作映画をC・ニコロウ(『アラジン』)の演出・振付で舞台化。

『The Who’s Tommy』日程未定
中川晃教主演で日本でも上演されたロックオペラの新演出版。演出は再びD・マカナフ。

 

【2019-2020シーズンの新作】

■閉鎖前に開幕していた作品

『Girl From the North Country
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/

『Jagged Little Pill』
アラニス・モリセットの同名アルバムをミュージカル化。演出は『ピピン』のD・パウラス。
https://jaggedlittlepill.com/

『ムーラン・ルージュ!』
B・ラーマン監督映画をA・ティンバースが演出した話題作。ドラマデスク賞で5冠達成。
https://moulinrougemusical.com/

『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』
ロンドンでの好評を受けてBW入り。オリヴィエ賞ノミネートの主演女優が続投!
https://tinaonbroadway.com/


 

『ウエスト・サイド・ストーリー』
ヴァン・ホーヴェ演出、ケースマイケル振付による大胆リバイバル。評判イマイチ…⁉
https://westsidestorybway.com/

 

■プレビュー中に閉鎖期間に入った作品

『カンパニー』
ソンドハイムの傑作コメディを『ウォーホース』の演出家でリバイバル。P・ルポンが出演。
https://companymusical.com/

 

『ダイアナ』
ダイアナ元妃の人生を『メンフィス』の作家と『カム・フロム・アウェイ』の演出家で。
https://thedianamusical.com/

『ミセス・ダウト』
同名映画を『サムシング・ロッテン!』の作家兄弟と売れっ子演出家J・ザックスが舞台化。
https://mrsdoubtfirebroadway.com/

『SIX: The Musical』
ロンドンで大ヒット。ヘンリー8世の6人の妻がガールズパワーを炸裂させる痛快作!
https://sixonbroadway.com/
 

【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』
『オペラ座の怪人』に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/

『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/

『オペラ座の怪人』
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/

『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやくに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/

■日本未上演の作品

『Ain’t Too Proud』
『ジャージー・ボーイズ』のチームが描くテンプテーションズの軌跡。二番煎じだが良い。
https://www.ainttooproudmusical.com/

『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/

『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/

『ディア・エヴァン・ハンセン』
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/

『Hadestown』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/

『ハミルトン』
超入手困難なモンスター級ヒット作。ディズニー+で配信中(英語音声のみ)。
https://hamiltonmusical.com/

『ミーン・ガールズ』
同名映画の舞台化。なぜか人気。アメリカ的なノリについていける自信があればどうぞ。
https://meangirlsonbroadway.com/