キュウソネコカミと四星球が5年ぶりに大阪城音楽堂で共演、音楽×笑いの無敵のハピネスが詰まった3時間
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『風雲!大阪城音泉 〜西宮の湯&徳島の湯 音泉免疫療法両方編〜』
『風雲!大阪城音泉 〜西宮の湯&徳島の湯 音泉免疫療法両方編〜』2020.10.3(SAT)大阪・大阪城音楽堂
キュウソネコカミと四星球が10月3日(土)、大阪城音楽堂にて開催された有観客&生配信ライブ『風雲!大阪城音泉 〜西宮の湯&徳島の湯 音泉免疫療法両方編〜』に出演した。
新型コロナウイルスの感染拡大防止ガイドラインに基づき、定員3000名に対し約1/3のオーディエンスが会場に集ったこの日。大阪コロナ追跡システムへの登録や、検温・消毒・マスク着用と、入場時の対策も万全に済ませた観客に向け、まずは主催の清水音泉・男湯こと田口真丈氏がマイクを取る。
「この2組の対バンは、5年前の『風雲!大阪城音泉』でもやっています。今日までに何度も2組と相談し、条件や制約がありますが、それでもやりたいと言ってくれたので実現しました。一番は皆さんの安心安全最優先で。声援は控えてもらいますが、皆さんの声がなくても必ず演者には届きます。今日は1日ご安全に」
同時にオンラインでの生配信も行われ、たくさんのオーディエンスが画面前にも待ち構えるなか、白塗りの殿様姿で登場したキュウソネコカミのソゴウタイスケ(Dr)による和太鼓を合図に、まずは先攻・四星球のお出ましだ。
四星球
北島康雄(シンガー)は「今日は、身体いっぱい大阪を感じたいと思っております!」との言葉どおり、道頓堀のシンボルのひとつ、グリコの「走る人」マークに扮し、U太(ベース)は今はなき新世界づぼらやのふぐ、まさやん(ギター)はユニバーサル・スタジオ・ジャパンにちなみ『セサミストリート』のビッグバードで登場。
「仕上がってるよ!」(北島、以下同)と表情まで作り込んだくいだおれ太郎姿のモリス(ドラム)で4人が集結し、いよいよ「徳島の湯」が開泉に!
四星球
「別に感謝とかしてないしな! ようやくできる、その喜びだけでやります!」と、この日への気合いを口にしながらも、オーディエンスの立ち上がるタイミングをやり直しさせたり、ガチで曲を間違えるなど、なかなか始まらない。「コレ全部打ち合わせにないヤツです(笑)!」と、テンションMAXの4人は、やっと奏で始めた「運動会やりたい」からいきなりのフルスロットル状態に! 客席同士で紅組と白組に分かれ対決するパートでは「もも上げ」「反復横跳び」と、ソーシャルディスタンスを意識したお題種目が飛び出し、シメは今いくよ・くるよ師匠の「どやさ」ポーズを。「画面の皆さんは「どやさ、どやさ」と打ってください。(Twitterの)トレンドに「どやさ」が入りますように!」なんて生配信ならではのお遊びも。続く「絶対音感彼氏」では、キュウソネコカミの「Welcome to 西宮」のカバーを挟む粋な仕掛けも交え、対バンライブの醍醐味を感じさせてくれる。
四星球
「キュウソネコカミ、10周年おめでとうございます! バンドって、一瞬のうちに消えて伝説になるヤツらと、ずっと続けていって語り継がれていくバンドの2種類あると思ってて。キュウソネコカミは前者のはずなんです。3年目とかでやめてたら伝説になってたと思うんですよ。でも、もうその道は途絶えました。あとは続けていくだけだと思います! 歳取ったら噛みつくことも噛みつけるものも減るけど、そうなったら四星球にオモんないわ!と噛みついてください。今年10周年のツアー、イベント、(コロナ禍により)全部がなくなったキュウソネコカミに、その全国のライブハウスの分だけ歌わせてもらおうと思います!」
四星球
四星球らしい愛とユーモアをないまぜにした激励から続くはアンセム「クラーク博士と僕」。段ボール職人・まさやん渾身のアメ村の街灯を振り回しながらメンバーをシバき倒す北島は、一時マイクが壊れるトラブルに見舞われるも、その求心力は増す一方で、次々と観る者の涙腺を決壊させていく。
四星球
それなのに、当の本人からは「何でこんなの観て泣いてんの(笑)!?」なんて言葉が漏れるのだから、泣いたり笑ったり、何と忙しないライブだろうか。続いて『M-1グランプリ』に挑戦する出場者の裏側を描いた番組『M-1アナザーストーリー』に向け、「頼まれてもいなんですけど、あの番組の最後に流してほしい曲」という新曲「アナザーストーリー」のお披露目。切々と語るような歌声を屈強なリズムが支えるスローバラードは、四星球の新たな境地を開拓していくようだ。
四星球
四星球
一層ヒートアップする大阪城音楽堂には、弾ける笑顔と同時に大粒の涙を浮かべる姿がそこかしこに。コロナ禍の日々の全てを浄化される感覚があり、これが「後半戦いこう!」と披露した「妖怪泣き笑い」の世界観とピタリと一致。<たくさん笑えば 涙が出るなら たくさん泣いたら 笑えるのかな>という歌詞が、こんなに変化した世界でもますます輝いて聞こえるのだから、何と頼もしいことだろう。
「楽しいね! こんなに楽しいのに、社会的には必要とされてないんですよ、この時間って。そういう扱いでしたよね、7カ月ぐらい。生きてくうえでは確かに必要ない。しゃーないよね。でも、その必要ないことに人生を懸けてる人が、命を懸けてる人がいるんですよ。必要ないことに助けられてる人がいて、人生変えられた人がいる。だから、この空間って必要あるなしじゃなくて、もう宝物なのよね。そうでしょ? だから僕らができることは、一生大事に持っておきましょう、それだけ!」
四星球
そう投げかけるや、会場にいる全員で今日イチのジャンプ! さらに北島は「既に十分頑張ってるみんなへ、頑張れに代わる言葉って、コミックバンド的には何だろうと探しておりました。言えることはひとつだけです。笑っていきましょう!」と、ラストの「オモローネバーノウズ」のイントロを奏で……と見せかけて「ライブハウス音頭」をブチかます(笑)! 「この歌を歌いにやってきました!」と、ライブハウスに育てられ、愛されてきた彼ららしく、<ええとこよ>と歌うホーム=ライブハウスへの愛を野外会場でも変わらず爆発させる。
「今日は「ライブハウス音頭」はやらんつもりでした。ライブハウスじゃないやん、ココは。でも「オモローネバーノウズ」をやり初めたとき、やっぱり「ライブハウス音頭」をやらないと今日の意味がないと思ったの。これからはどこでも変わらず歌っていきます。歌い継いでください!」
さまざまな制約下でのステージだが、それでもこの場にいられたこと、画面越しにつながれたことは、きっとライブハウスへの道に、いつものライブを取り戻す道へと続いているはずだ。そんなことを思いながら、今度こそ「オモローネバーノウズ」で大団円へ!
四星球
「いっぱい笑ってくださいましてありがとうございます。歌うのは我慢してくれたけど、笑い声は出ちゃいますよね。いろんなガイドラインがありますけど、それがコミックバンドには通用しなかったという証です! 本当に笑うのは未来で、「2020年のあのライブ、横の人と距離をとって、歌うのはアカン……何やバカバカしかったな」、そう未来で一緒に笑えたらなと思います。未来のライブシーン、調子はどやさどやさ!?」
四星球
そんなエモーションたっぷりの言葉で締めてくれたかと思いきや、突如モリスが大暴れし、U太とまさやんをなぎ倒す! 何とかひとり逃げ切った北島は「助かった! 僕だけ<生きててよかった>……」と、翌日に同会場でライブを控えるフラワーカンパニーズの名曲「深夜高速」に掛けてバトンを渡す巧者ぶり。終始パンパンに詰め込まれたネタと熱い言葉の数々で、一層パワーアップした姿を見せてくれた四星球。楽器と同じように台車に乗せられ退場していくU太とまさやんを、会場全体が温かく(?)見守りながら、その熱きひとときは幕を下ろした。
転換中は大阪城の歴史が書かれた観光用パンフレットを四星球のモリスが、その英語バージョンをキュウソネコカミのソゴウが読み上げる(読まされる)という徹底したネタの散りばめようを見せる『風雲!大阪城音泉』。と、冒頭のアンサーとばかりに、続いては歌舞伎メイクに侍衣装を纏ったモリスが再びステージへ。
四星球
インチキな刀さばきの披露に加え和太鼓を打ち鳴らし、後攻・キュウソネコカミの出陣を宣言!
キュウソネコカミ
「一緒にやろう〜!!」というヤマサキセイヤ(Vo.Gt)の掛け声を皮切りに、まずは「OS」から「西宮の湯」がスタート! オカザワカズマ(Gt)とカワクボタクロウ(Ba)のふたりも初っ端からお立ち台に上がり、最前線で弾き倒す。「KMDT25」では、「全員が同じ動きで揃うことにより、ソーシャルディスタンスを保ったまま踊れます!」(ヨコタシンノスケ・Key.Vo)とのアドバイスどおり、渾然一体となりレスポンスを繰り出す客席。さらにセットリストにはない「Welcome to 西宮」も急遽挟みながらMCへ。
「対バンの感覚を忘れてたね! さっきの四星球のライブまで忘れてた」(ヤマサキ)
「何で「Welcome to 西宮」入れてなかったん、俺ら? (四星球のとき)めっちゃ盛り上がってたし。急遽やりました。こういうのがいいよね」(ヨコタ)
「5年前のことすごく覚えてるんですけど、僕はあごヒゲを生やしていました。大不評で家へ帰って泣きながら剃るぐらい。5年経った今は、ヒゲ脱毛で1週間経っても生えてこない! 人は変わる」(ヤマサキ)
「いいよね、笑い声がなくても成立する空間って」(ヨコタ)
「そうやな。……何や、その遠回しにスベってるからはよ曲いけみたいな! 5年前ぐらいが一番売れてたよね、俺ら。『Mステ』も出てたし。でももう続けるしかない。ありがたいことに清水音泉は一生懸命やるバンドにやさしい! 20周年30周年になってもみんなで“音泉”に浸かり続けよう。清水音泉はきっと君たちの入れる湯をずっと用意してくれるから。僕たちも用意し続ける」(ヤマサキ)
キュウソネコカミ
その流れを汲み、『Mステ』でも演奏した「MEGA SHAKE IT !」へ。「心の声を聞かせてください!」とヨコタが投げかければ、力の限り拳を突き上げるオーディエンス。「聞こえたぞ!」(ヨコタ)と返せば、どんな状況であろうとも、バンドとオーディエンスが共鳴し合うことは決して不可能ではないとひしひし感じる。
キュウソネコカミ
続いては、日清カレーメシとのコラボソング「華麗なる飯」を初披露。オリエンタルなムードもはらみつつ、頭の中までかき混ぜられるような<シャバシャバグルグル>というフレーズの応酬のなか、カレーメシのキャラクター・カレーメシくんも登場! 「メイクがガチ過ぎ」(ヨコタ)のため、遠目にはインド人そのものだったキュウソネコカミ名物マネージャー・はいから氏による、はいからインド人もステージに華を添える。
キュウソネコカミ
「集まってくれて、配信を見てくれて本当にありがとう。みんなの希望でありたいぜ!」(ヤマサキ)と始まったのは、「推しのいる生活」。声はなくともわっしょいと踊りまくる客席との阿吽の呼吸に、ヤマサキも思わず「生きてるぞー!」と返す熱いキャッチボールも。
キュウソネコカミ
「これも初披露だ。さぁミスるなよ! ミスるなよ……。待てよ! (イントロの)コケコッコージリジリジリ……で、ソゴウが2カウントで入る。やんな?」(ヤマサキ)と、やり慣れてない感満載の新曲「御目覚」でも、ソゴウが繰り出す重厚なドラミングと開放感たっぷりの爽快さに、予習バッチリのオーディエンスが隙なく呼応していく。さらに、レキシとのコラボ曲「KMTR645」でも、お約束の<キュキュキュっキュー>ポーズが乱舞! ヨコタの奏でるメロディも極彩色の鮮やかさで、一段と一体感を増す会場。と思えばオカザワが退場し、代わりに清水音泉の番台=代表の清水裕氏がギターを抱えレキシ風のアフロ姿でオンステージ! 来年の『OTODAMA~音泉魂~』(開催未定)で、キュウソネコカミとレキシが共演できるよう願いを込めて、華麗なギタープレイをお見舞いしていく。
キュウソネコカミ
「清水さん、ギター弾けたんですか!?」(ヤマサキ)、「舞台袖の方、チラっと見てましたけど(笑)!」(ヨコタ)と、若干エアギターっぽい感じがしないでもない圧巻のギターソロに拍手喝采! そして、巻き舌でまくし立てるキラーチューン「ビビった」でも、テンションの限界値を突破し続ける彼ら。かと思えばヤマサキの様子がおかしいようで……。
「何で泣いてるの? 何で?」(ヨコタ)
「……俺、7月のライブから「ビビった」病にかかってるわ。全部ミスってる! 1番のサビが来るぞ来るぞ……何やったっけーーって!? ヤバい(笑)!」(ヤマサキ)
「急にライブがなくなって、そこだけぽっかり記憶がなくなってるんじゃない?」(ヨコタ)
「一番やりたい曲を俺はコロナでやられてしまったんかな……やってもーたー!」
「それにしても、清水さんもありがとうございます、よかったよね。一応説明しておくと弾いてませんよ(笑)。清水さんに「四星球でも弾いてください」とか言ったらダメですよ!」
と、キュウソ節全開のわちゃわちゃMCのバックに、ふと気付けば鈴虫の鳴き声が。「どんな夏を過ごしましたか? 僕らは大体家にいました」(ヤマサキ)としっとり奏でるお次は「秋エモい」だ。野外の気持ち良さと澄み切ったキーボードの音色が絡み合い、いよいよエンドロールへ! バンドの決意表明的楽曲「冷めない夢」でブチ上げながら、ヨコタが口を開く。
キュウソネコカミ
「病気が治るとか、そういうことは音楽ではできなくても、今日みたいなライブがあると大丈夫やなと思いました。ライブを楽しみにしてくれてるみんなとか、配信を見てくれるみんなとか、ライブや配信のスタッフ、四星球やキュウソネコカミがいるから、多分“何か大丈夫”やと思います! これからも迷うこともあるかもしれないけど、ついてきてくれ! そして頑張り過ぎるな。頑張り過ぎて壊れるなよ! 8割でいいから、この世の中を一緒に走りましょう。そういう曲を歌います」(ヨコタ)
キュウソネコカミ
そう続けて鳴らすは「ハッピーポンコツ」。ひときわグルーヴィーなリズムで導くカワクボのベース音は、自身も何とも気持ち良さそうな表情でこの波を乗りこなしていく。ラストの「The band」では、ヨコタがステージの端から端まで駆け抜け、画面の向こう側までひとりとして欠けることなく煽り、その姿はまるでコンダクターかのよう!
「いつも俺たちに続ける勇気をくれてありがとうな! また歌える日までお互い続けようぜ!」(ヤマサキ)
キュウソネコカミ
ピリリと刺激的ながら底抜けにやさしい言葉たちと、踊らずにはいられない音楽の根源的な喜びを放出し切ったキュウソネコカミ。熱湯なほどのイイ音で会場を沸かしてくれた四星球とのタッグで、『風雲!大阪城音泉』は無事閉幕となった。
キュウソネコカミ
改めて2組が集った終演後の記念撮影タイムまで、笑いが絶えることのなかったこの日。好きな音楽を楽しむことと笑うこと、それぞれの代え難いハピネスに改めて気付かされた3時間となった。
取材・文=後藤愛 撮影=藤井 拓(キュウソネコカミ)鈴木洋平(四星球)スクリーンショット=田口真丈