ただ美しいだけではないヤマザキコレの世界を表現 舞台『魔法使いの嫁~老いた竜と猫の国~』ゲネプロレポート
舞台『魔法使いの嫁~老いた竜と猫の国~』(C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
ヤマザキコレの大ヒット作『魔法使いの嫁』の舞台第2弾公演が2020年10月17日(土)スタートした。
2019年10月に行われた初演の好評を受けて、チセ役 工藤遥、エリアス役 神農直隆が続投で第2弾が製作された。初日を前にゲネプロ公演の様子をレポートする。
舞台『魔法使いの嫁〜老いた竜と猫の国〜』 (C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
ゲネプロ前記者会見「今朝初めて“はるちゃん”って呼んじゃった」
羽鳥チセ役 工藤遥:昨年とは状況が変わってしまってなかなかこうしてみんなで集まって演劇をやるっていうのが難しくなっていますが、キャストスタッフ誰一人欠けることなくやってこれたので、この先も気を抜かずに最後まで走り抜きたいと思っております。
エリアス・エインズワース役 神農直隆:演劇をやるって贅沢なことなんだなと思いました。稽古中はそれを忘れてしまって熱くなって、仲良いことも腹立つこともいろいろありますが、家に帰って思い返すと、いや違う、こうして演劇を考えられるっていう時間は尊いものなんだと毎日感じていました。このホールに来てからも強烈に思います。幸せなことです。最後まで全うできるように気を引き締めて全員一丸となってやっていきたいと思います。
――工藤遥さんにお伺いします。今回の出演が決まった際、プレッシャーなどは感じましたか?
工藤:ありがたいことに、昨年の公演をたくさんの方が見てくださって評価してくださったおかげで今回があると思っています。そんな大事な瞬間に立ち会えることも、またチセを演じられることを、まず有難いな、光栄だなと思う気持ちが大きかったので、プレッシャーは稽古が進んで本番が近づくにつれて徐々に湧いてきたかなと思います。
――神農直隆さんにお伺いします。エリアスを演じてみて、昨年と大きく違うところは?
神農:顔が出てきたなと。僕の目線はあまり変わってないですが、客観的には変わってますね。高羽さんと話してきて、人間の表情をどこまで見せていいのかとか。むしろ僕のこの中身の顔が、エリアスの頭骨のような感じでやればいいのか、エリアスの心の動きを表現したらいいのか……稽古場でいろいろ考えながら、今も僕の中では試行錯誤中です。やりながら何が効果的かなって毎日考えてますね。でもチセと相対することが多いので、チセに対する印象が良いものだったらいいな。でも神農さん見たくないってあったら言ってください。
工藤:いやいや! 見えやすくなったことですごく変わります!
神農:変わった? どう変わった?
工藤:読み取りやすくなったのもあります。昨年一緒にやっている分、わたしたち自身の距離も近くなっているじゃないですか。なので私は逆に壁を。知りすぎていたらいけないなと思って今回はわざと壁を作っていました。
神農:壁作ってたんだ! ああ、ごめん。今朝初めて“はるちゃん”って呼んじゃった。
一同:(笑)
工藤:距離をぐっとね。仲良く頑張りましょう♪
舞台『魔法使いの嫁〜老いた竜と猫の国〜』 (C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
――愛原実花さんにお伺いします。今回特に大変だったところ、またはやりがいがあったというところはありますか?
ミナ役 愛原実花:やはり原作があるものはすでに見守るファンの方がいらっしゃるので、そこの世界観を大切にしたいなと意識しています。昨年の公演も大成功していると聞いていたのでプレッシャーもありましたが、スタッフキャストの方々皆とても良い方で、そしてこの時期だからこそみんなで頑張ろうっていう団結力があり、今まで経験したことがないようなパワーを私も感じて一緒に頑張ることができました。千秋楽まで走り続けられたらいいなと思っています。
――伊藤裕一さんにお伺いします。今回の作品のみどころは。
マシュー役 伊藤裕一:僕も猫を飼っています。今回のお話である猫の国ウルタールがあったら僕も移住したいなと思うくらいの場所です。魅力的なキャラクターもたくさん登場するので、みどころを絞りづらいんですが、やはりチセとエリアスのおふたりのお話なので、僕もそれぞれの魅力を感じながら稽古に挑んでいました。工藤さんは目のお芝居がすごく魅力的。神農さんは声がものすごく良くて。僕は神農さんに悪口を言われてそれに突っ込む、というシーンがあるんですが、声が良すぎて悪口として全く受け取れないんですね! 全く怒りが湧かずにツッコミできない、ありがとうございますって感じで聞いちゃったりも(笑)。そしてなんといっても僕と愛原さんは相手役としてやらせていただいています。稽古場でも仲良くしてくださって、いろんなことを相談しながら作ってきました。関係値もすごく作れたので、僕らのシーンにも注目していただければと思っています。
舞台『魔法使いの嫁〜老いた竜と猫の国〜』 (C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
――高羽さんにお伺いします。アニメの脚本も手掛けられていますが、『まほよめ』を舞台にするにあたり、気を付けられたことは?
脚本・演出 高羽彩:ヤマザキさんのもつファンタジーの世界は、ただただきれいで夢のある世界というだけではなく、この世界の残酷な面、自然の厳しさなどもちゃんと同等な価値観の中に描かれているものだなと思っています。舞台上にもただ美しいものきれいなもの、人を傷つけないものだけではなく、この世界の良い面悪い面あわせもってひとつの美しい世界なんだということを意識して、あえて美しくしすぎなかったり優しくしすぎなかったりする形で脚本演出をまとめさせていただきました。
――(記者からの質疑応答):工藤さんにお聞きします。昨年の会見で弟さんにコメントをもらっていたと仰っていましたが、弟さんは前作をご覧になられていたんでしょうか。
工藤:『まほよめ』の大ファンである弟は、去年は劇場に来てくれました。エリアスのクオリティの高さに本当に喜んでいて、「お前だけだ、原作と違うのは」って言われたんです……!
神農:ひどい(苦笑)。
高羽:厳しい!
工藤:姉としてかっこいい姿を見せられたかどうかはわかりませんが、すごく楽しんでくれていたみたいでよかったなとは思っています(苦笑)。今回は「老いた竜と猫の国」というサブタイトルがついたので、ファンの方も同じだと思いますが、このあたりのお話をやるのかな、このあたりを再現するのかなというようなワクワクが妄想で膨らんでいたみたいで、「あれやるの? ここどうするの?」って弟に質問されました。でもそれは「観てください」って言ってあるので、きっと劇場に来てくれるか配信で観てくれるんじゃないかなって思ってます。
――(記者からの質疑応答):コロナ禍により席数などイレギュラーなことが多く、だからこその生配信もあり、逆に言えば全国の人が一斉に見られるという点でいままでとかなり違うと思います。そのことについてどう思われますか?
工藤:もしかしたら思いもよらぬ方の目に触れることがあるのかもしれないというドキドキや、配信観るよって声をかけてくださる方もいるんですが、舞台のスケールの大きさがどこまで届けられるのかなって不安がまだ正直大きなところもあります。でも細かいことでいえばチセちゃんの目の色は緑なので私もカラコンしていますし、エリアスの目も赤だったり、細かい衣装や造形も含めて見つけていただいてより楽しんでもらえたら、それは生配信の面白さなのかなと思います。
高羽:舞台作品を作ってきた人間としては、劇場で生で観ていただく以上のものはないなと思ってはいるんですが、コロナ禍ではなくてもいろんな事情で劇場に足を運べない方っていうのはたくさんいらっしゃって。そういった方と劇場との懸け橋になるといいなと思います。劇場に来られなくても生配信なので通常の録画配信よりもさらに生の舞台を見るのと近い体験ができるので、ぜひその場にいるような気持ちで応援して観ていただければと思います。
舞台『魔法使いの嫁〜老いた竜と猫の国〜』 (C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
――最後に意気込みとメッセージ、高羽さんはキャストのみなさんへメッセージをお願いします。
工藤:いよいよ始まります。今日もぎりぎりまでみんなで詰めて、より良いものをと一生懸命頑張ってきました。今までやってきたことをお客様にお届けできればいいなと思います。配信という形でお芝居をするのは、私は初めてなのでどんな形で伝わるのかなっていうのがちょっと未知なところもあります。画面を通してでも『魔法使いの嫁』のすばらしさが届けばいいなと。一生懸命チセちゃんを演じていけたらいいなと思っております。
神農:各セクション、良い状況です。本番に向けてこの勢いのまま行って、より良いものになるように邁進したいと思っております。お客様を楽しませるために全力投球やれるカンパニーだと思っています。僕は俳優としてそこを目指したいです。
愛原:稽古初日からとにかくとっても楽しくて、『まほよめ』の世界に浸ることができました。見に来てくださったお客様が、私が感じられた幸せと同じような幸せをひとときでも感じていただけたらなと思い、自分も頑張ります。
伊藤:本当に魅力的なキャラクターがたくさん登場する作品です。これだけのキャストがいて、実は倍以上のキャラクターが登場します。ひたむきに頑張っているカンパニーだと思っています。そのひたむきさや僕たちの情熱、想いが伝わっていければいいなと思っております。
高羽:このコロナ禍において演劇を作りあげるということがいかに困難なことであるかというのを、稽古が始まったころからひしひしと感じながらも、稽古場で誰も弱音を吐くことなくこの日を迎えられたのは本当に奇跡的なことですし、スタッフの尽力とキャストの理解があって今ここにこうしていられるんだなと思っております。キャストのみなさんもここに今いられることの奇跡を存分に楽しんでください。客席のお客様、そして来れなくてもこの作品を気にしてくださるお客様に、素敵なものを届けようという気持ちを忘れずに最後まで楽しんでこの世界を生きていただければと思っております。
たくさんの登場人物、パペットの存在も独創的
「老いた竜と猫の国」というサブタイトルがついている通り、エリアスの師・リンデル(三上俊)と竜たち、そして猫の集う街・ウルタールでのお話である。1作目の舞台では描けなかった原作の部分が取り入れられている。
チセが競売にかけられ、エリアスが競り落とすという『まほよめ』の重要なシーンから物語は動き出す。チセはエリアスの家で暮らすようになり、あらゆる場所で「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれることに疑問を持ちつつ、魔法使い・魔術師という今までとは全く異なる環境に順応しながら師匠であり未来の夫ともなるエリアスの生きる世界を知っていく。そんな様子が優しく、神秘的で、時にありのままの残酷さを伴って描かれていく。
舞台『魔法使いの嫁〜老いた竜と猫の国〜』 (C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
チセ役を演じるのは工藤遥。原作では瞳の奥深さが特徴的であるが、同様に工藤も力強い瞳で演じる。チセの悪夢、戸惑い、優しさを等身大で表現している。エリアスを演じるのは神農直隆。今回はマスクも変化し、表情が見やすくなったとのこと。神農の声は心地よい重低音で、聞いているととても安心感がある。チセを軽々と抱き上げるシーンは思わずきゅんとしてしまう。
舞台『魔法使いの嫁〜老いた竜と猫の国〜』 (C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
猫の国の登場人物であるマシューとミナは悲しい結末を迎えてしまったふたり。マシュー役の伊藤裕一は斬劇『戦国BASARA』などの舞台の他、MC、脚本などでも活躍している。ミナ役愛原実花は宝塚歌劇団2009年雪組トップ娘役の経歴を持つ女優だ。このふたりが描く圧倒的な芝居は非常に愛おしく、悲しく、つらく、心がひどく揺さぶられた。
妖精たちやパペット、キャラクターを取り巻くモブを含め、登場人物は非常に多いが、キャストが少ないのも前作同様の作り方。誰がどんな姿で他の役を兼ねているのかを探してみるのもみどころのひとつなのかもしれない。
舞台『魔法使いの嫁〜老いた竜と猫の国〜』 (C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
そして囲み会見でも触れているが、今回は生配信もある。感染症対策として公演を生配信する舞台作品は昨今とても増えているが、全国各地どこにいても同時に公演を見ることができるという点は非常に便利であり、様々な作品に気軽に触れることができる。舞台『まほよめ』も出演者の座談会映像などの特典付きで生配信が予定されている。
舞台『魔法使いの嫁~置いた竜と猫の国~』は東京・紀伊国屋ホール、大阪・サンケイホールブリーゼにて11月8日(日)まで。特典付きのインターネット生配信は10月24日(土)18:30の回を予定している。
舞台『魔法使いの嫁〜老いた竜と猫の国〜』 (C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
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取材・文・撮影:松本裕美
公演情報
<東京公演>
2020年10月17日(土)~25日(日)紀伊國屋ホール
<大阪公演>
2020年11月7日(土)~8日(日)サンケイホールブリーゼ
■原作:ヤマザキコレ『魔法使いの嫁』(ブレイドコミックス刊)
■脚本・演出:高羽彩
■出演
工藤遥 神農直隆
広川碧 結城洋平 齋藤明里 櫻井圭登 五十嵐愛 大上のの 七瀬彰斗/三上俊 西丸優子/伊藤裕一 愛原実花
通常:8,800円(税込)、特典付き:12,000円(税込)、U-20:4,400円(税込)
【生配信&ECグッズ発売情報】
生配信:10月24日(土)18時30分の回
発売開始:10月1日(木)15時
販売:特典映像付き 3,800円(税込)
生配信特典:出演者による座談会の映像、キャストからの見所など
グッズのEC販売:同1日(木)オープン
公演パンフレットの他、ヤマザキコレ描き下ろし画を使用したグッズなどを販売
公式サイト:https://mahoyome-stage.jp/
■主催:舞台「魔法使いの嫁」製作委員会
■公式HP: https://mahoyome-stage.jp
■公式Twitter:@mahoyome_stage
配信に関するお問い合わせ:エニー https://www.any-group.jp/contact/
配信/視聴方法に関するお問いせ:イープラスサポートサイト https://eplus.jp/streamingplus-userguide/
公演に関するお問い合わせ :メディアミックス・ジャパン 03-6804-5456(平日12時~18時)