森山良子が語る、コロナが及ぼした影響と原点を見つめ直すことの大切さ
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森山良子
森山良子が毎年恒例のBunkamuraオーチャードホール公演を2021年1月15日に開催する。本記事では、コロナが及ぼした影響や同公演に向けて語ったオフィシャルインタビューをお届けする。
森山良子による毎年恒例のBunkamuraオーチャードホール公演が2021年1月15日に開催される。この知らせをこんなに感慨深く受け止めたことがこれまであっただろうか。新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、音楽をはじめとするエンターテイメント・シーンの景色が大きく様変わりしてしまった2020年。言うまでもなく、森山主催のライブも春先から立て続けに延期・中止という処置が取られ、停止することを余儀なくされた。「こんなことは生まれて初めてです」とあの日々を振り返りながら彼女が話す。
「何もできない自分が本当に情けなく感じましたね。本当の自分の仕事というべきライブができないもどかしさ。ライブがあるから何とか生き永らえている、と言えるような日々でしたから。ライブのスケジュールに合わせて体調管理を行い、喉のコンディションを整えていく。そんな日々の目標が目の前から消えてしまい、路頭に迷ってしまった」
コロナの影響がこんなに長引くとは夢にも思わなかった、と誰もが彼女と同じことを考えたと思う。だからこそ落胆も大きかったし、痛みが長引く結果にもなったのだ。彼女がようやくお客さんの前に立てたのは9月半ばのこと(八ヶ岳高原音楽堂でのアコースティック・コンサート)。前回のステージから7か月半もの月日が流れていた。
「あの日は、しっかりと歌を聴いて頂かなくては……と、万全の心構えで臨みました。でも1回目のステージの1曲目で、涙が溢れ出てきてどうしようもなくなってしまったんです。お客さんに対しては、ごめんなさい!って気持ちでした。それまで私は、歌いながら泣く事はしない、というポリシーだったのに、どうした事か、気づかないうちに気持ちを押さえこんでいたんでしょうか。一気に感情が溢れてしまって。でも私自身が少し救われた気持ちになったんです。そしてあの日学んだことは、泣くことがその後の歌唱にどれだけのダメージを及ぼすか、ってこと。鼻水も止まらないし、喉のあたりがグシャグシャになってしまったからコントロールが効かない。不覚でした。猛反省で、夜の部は本来の自分を取り戻しました」
愉快な調子でその日の様子を話してくれた彼女だが、もしその場に居合わせたら、こちらもどんなにグシャグシャになっていたかわからない。実際多くのお客さんが泣いていたそうだし、特別な思い出として胸に刻み付けられただろう。ところでコロナ禍における彼女の日常だが、毎日料理を作り、毎晩のように娘さん家族と食卓を囲んでいたそう。
「こんなに家庭人らしい生活生まれて初めてかも。とにかく慣れないことをいっぱいしました。歌との向き合い方については、最初の頃は茫然自失状態で、スタッフやミュージシャンも含め一体どうなっちゃうの?って不安が過ってばかり。しばらくすると、錆びついていく自分にハタと気づき、このままではいけない!と、発声練習を始めました。又、毎週ラジオの生放送があったおかげで(「オールナイトニッポン MUSIC10」)、細々と練習ができた。リスナーのリクエストでぜんぜん歌ったことのない曲や知らない曲をギターで弾き語りをするのですが、こんなに知らない曲を練習をしたのも生まれて初めてかも、ってぐらい毎晩ギターを弾いていましたね。いろんな曲を歌いながら、こんなに音楽といっしょに過ごせている、という実感が得られて嬉しかった」
予期しない形でおとずれた長いブランク。それを彼女は原点を見つめ直すことでプラスに転換することができたようだ。
「若い頃の1年間と72歳の1年間ではブランクの内容が異なり、かなり錆びつく恐れがある。85歳になる私のクラシックの先生師匠も同じことをおっしゃっていて、ピアノに1日触らないだけでこんなに指が動かなくなるのかってことを切実に感じたんだそうです。ライブを行う直前にレッスンを受けたんですが、もう一度基本の〈き〉から教えていただくことができて、それが不思議なぐらい、いとも簡単にすっと元に戻れたんです。基本と向き合いながらじっくりコツコツとやっていくことが、いくつになっても一番大事なんだな、って改めて教えてもらった気がします」
こういう時代に必要とされる音楽とはどういうものだと考えるか?と問うと、「パンチのある音楽じゃないか」と彼女は答えた。
「例えばバーブラ・ストライサンドのような力のある人の歌が私には必要。彼女は年上だけど、近年のライブを観ても、歳を取っても前に向かって進んでいける、って力強いメッセージを受け取ることができて嬉しかった」
癒しよりも一歩踏み出す勇気をくれる力強い音楽。へこたれることなく前進していこうというメッセージを含んだ歌を届けたいと彼女もまた切に願っている。
「音楽家としては、この期間がマイナスではなく、プラスになったと思いたいですし、また皆さんとご一緒するときには、これだけ共に日々をこらえて我慢したんだから、大いに喜びを分かち合って、モヤモヤした気持ちを発散したい。私もこれからもっと強くなっていきたいと思っています」
そんな彼女のパワーアップした姿を『森山良子コンサートツアー 2020~2021』で拝見できると思うと、いまからワクワクが止まらない。2020年12月26日の大阪・フェスティバルホールを皮切りにスタートするこのツアー。どういうライブを作り上げようと考えているのか、またライブに向けてどういう思いが湧き上がっているのかを伺ってみる。
「決まったときは、胸がふるえるほど嬉しかった。初日がフェスティバルホールになるのですが、一新した森山良子を観てもらいたい。舞台美術もこれまでとは違ったものを考えているし、セットリストの内容も自分寄り。長年やってきて、こういう感じを皆さんが喜んで下さるのかな?と選曲してきたところを、本当に自分が好きなものは何だったんだっけ?と原点を振り返りながら、あまり知られていないかもしれないけれど本当に私が好きなタイプの曲を、又、自分のオリジナルも。いまは団塊の世代の人たちもすごく元気だから、私もよりパワフルでなきゃと思う。今回は若い方にも楽しんでいただけると嬉しいです。ゆったり親子さんで楽しめるようなそんなコンサートに出来たら嬉しいですね」
文=桑原シロー
公演情報
【日時】
2021年1月15日(金)開場 16:00 /開演 17:00
【会場】
Bunkamura オーチャードホール
【出演者】
森山良子
【
前売:7,500 円 全席指定/ 税込
※未就学児童入場不可
※当日は検温と消毒を実施致します。予めご了承ください。
※検温で37.5度以上が検出されたお客様はご入場をお断りする場合がございます。
※体調不良等お客様のご都合で払い戻しをご希望される際は払い戻し手数料を頂戴いたします。
詳しくはサンライズプロモーション東京
HP をご覧ください。
【
2020年11月7日(土)10:00 ~
【主催】サンライズプロモーション東京
【後援】ニッポン放送
【企画・制作】エンジェルソング
【お問合せ】サンライズプロモーション東京 0570 00 3337 (平日 12 00 15 00
※車椅子でご来場予定のお客様は、座席番号を問合せ先までお早めにご連絡くださいませ(受付は公演前日まで)