オンライン・イマーシブシアター『泊まれる演劇 In Your Room』の新作が決定! “オンライン演劇型” 制作発表会をレポート
-
ポスト -
シェア - 送る
「泊まれる演劇 In Your Room」新作メディア発表会
2020年12月15日(火)〜12月23日(水)、『泊まれる演劇 In Your Room』の新作公演「泊まれる演劇 In Your Room『ANOTHER DOOR - ホーリーシーズン』」が開催されることが決定した。今回は本公演に先立ってオンラインで開催された、その “オンライン演劇型” メディア発表会の様子をレポートする。
日本でのイマーシブシアター(没入型演劇)の先駆けともいえるホテル一棟を丸ごと使った『泊まれる演劇』。2020年6月に第1回公演を予定していたが、ほぼ時を同じくして、この春、世界や舞台興行のあり方は大きく変わってしまった。予定されていた第1回公演『MIDNIGHT MOTEL』はおよそ1年の延期を余儀なくされ、2021年6月にシフトして上演される。
そんな中、表現の新しい可能性を求めて『泊まれる演劇』から分岐して進化した企画が、オンライン会議ツールを利用した『泊まれる演劇 In your room』だ。いわゆる “zoom演劇” である。
「泊まれる演劇」イメージビジュアル
物語への没入感を自宅で味わう「オンラインイマーシブシアター」、そう聞くとどうも「オンライン」と「イマーシブ」が相反するような印象を抱いてしまい、(雑念だらけの自宅で見ていて、果たして没入できるのか?)と思っていたのだが……結論から言うと、その心配は無用だった。
今回の制作発表会では、実際の公演スタイルと同じ方法で、物語の前日譚となる短編の生配信が行われた。40分ほどの体験を経て実感できたのは、これって確かにイマーシブかもしれない、ということだ。
「泊まれる演劇 In Your Room」新作メディア発表会
開始時刻に指定されたオンライン上の会議室に入ると、司会者による導入挨拶の後に、短編の上演がスタート。テンションの高い俳優がナビゲートしてくれるおかげで、安心感がすごい。
この短編『ANOTHER DOOR -ホーリーシーズン スタイルアップ編-』では、本編の舞台となる「恋愛マッチングイベント」に向けて、それぞれの部屋で身支度をする3人の女性が登場する。観客は好きな部屋(zoomのミーティングルーム)を行き来して、彼女たちの話を聞き、チャットを使ってファッションやメイクのアドバイスをする。
チャット機能を使ったインタラクティブなコミュニケーションが可能
『ピアスは大き目なものとシンプルなものと、どっちがいいと思う?』『髪は外ハネにしようかな〜、内巻きにしようかな〜』
まずはチャットするハードルが低い2択問題を投げかけてくる女子たち。書き込む→女子喜ぶ→話が進む、の流れが身につくと、あとはもう距離が近づくばかりである。次第に、チャット欄には「似合う!」や「あれ、泣いてるの?」といった、2択だけでない声掛けが増えていった。
複数のミーティングルームを行き来しながら観劇するため、zoomに慣れていないと操作が思うように行かなかったり、時にはもどかしく感じる瞬間も。しかし、運営チームの細かなフォローのおかげで迷子にならず楽しむことができた。
女子3人が身支度を整えて、再度集合
個人的に一番面白かったのは、各ルームに散った観客たちが再集合するまでの待ち時間をつなぐため、案内役の俳優が突然披露してくれた「マッサージチェアのものまね」だった(笑っていてコメントできなかったのが申し訳ない)……。
ホテルの各室を舞台にしていることもあり、俳優と深夜の長電話をしているような “近さ” を感じる体験だった。目の前の情報の少なさが、かえって没入を呼ぶ。とにかく時間があっという間に過ぎていたのに驚いた。
終演後にはチャット欄に観客から「8888888(パチパチパチパチ)」のコメントが集まってほっこり
そして、本公演はダイソンとのコラボレーション企画というのも見どころのひとつだ。劇中には、ダイソンヘアケア製品の「Dyson Supersonic Ionic」と「Dyson Airwrap™」が、物語の展開を握る? アイテムとして登場する。
エアラップ(ヘアアイロン)を使って、目の前で女子の髪型が美しくキマっていく。カメラに向けて演技しながら、チャット欄をチェックしつつ、慣れた手さばきで髪を巻く彼女たちに惜しみない拍手を送りたい。そしてエアラップは本当に使いやすいのだろう。
ヘアスタイリング Before & After
上演後には、「泊まれる演劇」プロデューサーの花岡直弥氏、脚本・演出を担当した山崎彬氏(悪い芝居)が登場。本公演への思いを語った。
「従来の表現が難しくなってしまったからこそ、配信でしかできない新たな表現を探りたい」と花岡氏。「この作品では、見ている人が登場人物と会話をすることによって物語が動いたり、8つのルームから好きな部屋を覗き見ることができる。映画やドラマとは全く違った映像体験をお届けできると思います。」
また、作中に登場するダイソンのヘアケア商品については「大切な人に会う前に美容室に行ったりしておしゃれするような、特別感を持ったアイテム。(商品を)使っている時間だけでなく、その先にある時間のワクワクまでも感じさせてくれると思いますね。」と丁寧にコメントした。
続いて山崎氏も、「性能や見た目の素晴らしさに加え、物語とコラボするということ自体が初めてだそうで、芝居作りにとっても興味深い体験でした。いや、本当に……ありがとうございますといった感じです(笑)」と企画への謝意を表した。
ヘアスタイリングはおしゃれの肝ですね
出演者4名の中には、今回がzoom演劇初挑戦だという俳優も。観客とのやりとりをしながら物語を進める独特のライブ感について「本当に楽しかったです」と自然な笑顔をこぼしたのが印象的だ。
発表会の最後には、軽く質疑応答の時間が取られた。
「家電メーカーのダイソンが、こうして演劇公演とコラボレーションを実現させたのは何故でしょうか?」との問いかけに、ダイソン担当者は「機能やデザイン性をアピールするだけではなく、12月のホリデーシーズンに向けて、スタイルアップを通じて盛り上がっていく心や気持ちを表現できたら……」と語り、物語や登場人物の感情に乗せることで、さらに商品の内面的な価値も感じてもらいたい、と結んだ。
12月15日(火)からの本公演「泊まれる演劇 In Your Room『ANOTHER DOOR - ホーリーシーズン』」ではさらにパワーアップし、観客は男女8名の恋愛模様を覗き見・応援(時にはジャマも?)することになるという。日ごろ恋愛リアリティーショー番組を見ていて「なんでそっち選ぶかなあ〜!」と画面に物申している人は特に要チェックだ。なんせこのオンライン演劇は、実際に物申せる。
劇場通いとはまた違った中毒性を持つ「オンラインイマーシブシアター」。今年のホリデーシーズンは、ぜひその魅力を味わってみては。
取材・文=小杉美香
公演情報
ホテル協力:ミスモーガンホテル
脚本・演出:山崎 彬
特別協力:Dyson Supersonic Ionic、Dyson Airwrap™