SUPER BEAVERが4人ぼっちで挑んだ横アリ無観客生配信ライブを約7万人が目撃「次はライブハウスで会いましょう」
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SUPER BEAVER
『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP〜全席空席、生配信渾身〜』 2020.12.9(WED)神奈川・横浜アリーナ
SUPER BEAVERが、無観客生配信ライブ『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP〜全席空席、生配信渾身〜』を、12月9日に神奈川・横浜アリーナにて開催した。
前日8日は、コロナ禍で公演中止となった『SUPER BEAVER 15th Anniversary 続・都会のラクダ TOUR 2020〜ラクダの前進、イッポーニーホー〜』の
開演が近付くにつれ高速で流れるYouTubeチャットやTwitterのタイムラインが、高まる熱気と早まる鼓動が、いつものライブさながらの高揚感となってその決壊を待つ。そんな爆発寸前の期待感とスモークの中で揺らめくオレンジの光と共に、メンバーの姿が浮かび上がってくるオープニングにはいきなり鳥肌が止まらない。そして、ステージを支配する静寂に灯りをともすように、渋谷龍太(Vo)が1つ1つの言葉を丁寧に放ったのは、「ひとりで生きていたならば」。7月に行われた無観客ライブ&ドキュメント『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~LIVE document~』同様に、4人が向かい合い音を鳴らす姿は、ほんの数カ月前、希望と不安が入り混じったSUPER BEAVERの新しい「初めて」に立ち会ったあの瞬間とは違って、画面の前で彼らを頼もしく、そして、誇らしく思う気持ちに満ちていて、それに応えて超えていく4人との見えない絆の心地良い重さが、ズシリと胸を揺さぶる。まさに、1曲目にして渾身。
SUPER BEAVER
「あなたにお送りする1時間、横浜アリーナより生配信。しっかりと目に焼き付けて楽しんで帰ってください! このときが、あなたにとっての「突破口」となりますように」(渋谷)
柳沢亮太(Gt)が空を切り裂くギターリフが、上杉研太(Ba)の繰り出す野太いグルーヴが、藤原“32才”広明(Dr)の叩き出す強烈なビートが、メンバーに肉薄するド迫力のカメラワークもろとも迫りくる「突破口」は、渋谷が幾度となく画面越しに煽り倒すなど配信ならではのシーンの連続で、演奏終わりの残響音という余韻には、広大なアリーナに誰もいないことを感じさせる、ある意味、この2日間だけの特別な演出。
「お家から、職場から、移動中の道から(笑)、拍手をお願い致します! みんな元気? 我々としては初の無料生配信、ホントのことを言いますと、無料というのはどうなんだろうと思ってはいるんですよ(笑)。自分たちはお金を取ってしかるべき活動をしてると思ってるし、そういうスタンスであなたの前でオンステージしてないと、逆に失礼だと思うんですよね。ただ、今年はいろいろなことがありました。イヤなことの方がもしかしたら多かったかもしれない。だったら、1年の最後に良いことがあったっていいじゃないかと思って、こう踏み切りました。広げたいのは認知ではなく、間口です。欲しいのはお金ではなく、あなたの時間です。なぜかと言うと、俺たちが楽しいから(笑)。俺たちのエゴに付き合ってくれてありがとうございます。責任を取って、今日は最高の1日にします! 改めまして、16年目の新人バンドSUPER BEAVER、これが俺たちの戦い方です」(渋谷)
SUPER BEAVER
そんな最高のエゴが生んだ空間に、「一緒に楽しもうぜー!」という柳沢の咆哮がこだました「正攻法」の疾走感と躍動感、その絶景をあらゆる角度で捉える映像美の三位一体の総攻撃に、心も身体もぶちのめされるようなこの快感……これで本当に配信かよ! なんて思いつつ、ライブバンドの凄みと歩みが絵になったようなパフォーマンスに圧倒され、「嘘つきな言葉は信じない、だからあなたのことを信頼してます」なんてさらりと告げる渋谷の言葉に、例え同じ場所にいなくとも、同じ時間を一緒に作っている確かなつながりを感じる。そして、「閃光」のすさまじい音圧をブチ抜く「今しかない」というメッセージに、何度打ちのめされても、何度でも生きる原動力をもらうようなこの感覚。10月の東京・日比谷野外大音楽堂公演より8カ月ぶりに有観客でのライブを再開したとはいえ、例年より格段に場数が少なかったはずのSUPER BEAVERが、ヤワになるどころかタフになっているのはどういうことだ!?
「我々SUPER BEAVERは今年で結成15周年です。なので、面白いことをたくさんやりたいなと思って、いろんなツアーを組んだりしてみましたが、計画の9割9分9厘が頓挫いたしました(笑)。ただ、こんな最低の1年の中でも最高の瞬間を作れたらいいなと思って、本日はあなたに向けての無料配信です。ということで、愛しのメンバーからひと言ずつもらおうかな。誰からいきたい? ハイ、柳沢! 挙手が早かった」
「挙げてないですけどね(笑)。本当に今日は見てくれてありがとうございます! 初めましての方もたくさんいらっしゃると思いますし、ずっとSUPER BEAVERが好きだよという方も見てくださってると思います。まぁいろんなことがあって開催しようと決めましたが、基本的には楽しいことをどうやったら届けられるかをずっと考えて、今日があると思います。それも見てくださる方がいてこそだと思うので、最後までよろしくお願いします!」(柳沢)
「こんな年になって、大変なのは音楽業界だけじゃないですよね。だけど、こういう形で初めて僕たちを知ってくれた人が1人でもいるなら、すごくポジティブなことだと思うから。それを無駄にしないで、一生懸命良い音楽ができたらなと思います。来年はもっと活動できることを願ってるし、そうならなかったとしても俺たちは何とかしてやっていくから。これからも見ていてくれたらと思います」(上杉)
そして、渋谷から「うちのかわいこちゃん」と紹介された藤原は(笑)、「こういうときこそ歌えるバンドでありたいなと思ってやってきたので、よろしくお願いします!」と続け、再び渋谷が「そういうわけで、本日は無観客の横浜アリーナでございます!」と広大な会場を見渡すと、本来ならば1万7000人×2日間が満パンになるはずだった横浜アリーナの全景が映し出される。
SUPER BEAVER
「本当なら我々のツアーファイナルで全部埋まった状態で2日間やる予定でした。それが叶わなくなって……まぁフルキャパシティで人を入れるのは今はちょっと難しいということで、一度当たった
そのいざないに静かなる熱を秘めてシンクロするリズムに乗せ、「聴かせて!」と渋谷が呼びかければ、チャットやタイムラインには全国のオーディエンスの心の声が文字となって駆け巡る。藤原を頭上から見下ろすショットなど、通常のライブではまず見ることができない画角でも「予感」の世界観をパラレルに魅せ、「今この場所には、俺たちの声しか聴こえませんが、いつか「あんな日もあったな」と笑い話に変えるのは俺たち自身、そして、あなた自身だと思ってます」と渋谷。ライブハウスという居場所で笑って再会できる日が待ち遠しくなるような同曲に続き、「できればこの会場で一緒に歌いたかったナンバーを。壁、線引き、隔たり、排除。この音楽がどうとか、この人がどうとか、この仕事がどうとか、どこかで誰かが何か言うでしょう。けれども、あなたがカッコいいと思ったものが、宇宙で一番カッコいいと思ってます」(渋谷)との言葉と、地を這うようなベースラインが唸りを上げたとき、画面の前で思わず声を上げたオーディエンスがいったいどれだけいたことだろう。例え横浜アリーナにいなくとも、同じ星空の下にいるあなたの街で鳴り響く「東京流星群」が今、自分を奮い立たせているという紛れもない事実は、コロナに何を奪われても決してなくならない圧倒的な感動であり感情で、それは苦難の2020年に知恵を絞って、想いを込めて、「楽しい」を求めて、1つ1つのプロジェクトを実行してくれたSUPER BEAVERからの何よりの贈り物だと言える。
SUPER BEAVER
間髪入れず「全身全霊、心を込めて、しっかりとかかってきてください!」とブチ上げた「ハイライト」といい、アンセムに次ぐアンセムの息もつかせぬセットリストに、こっちはもうノックアウト寸前。今年は各所で多くの配信ライブが行われた1年だったが、SUPER BEAVERのそれはやはり異質で、目には見えずとも確かに感じる想いの総量、感動とワクワクが絶え間なく押し寄せる相変わらずの濃度は、配信であってもケタ違い。そして、いよいよライブは最後の1曲を残すのみに……。
「本日はどうもありがとうございました。こんなバカでかい会場で、4人ぼっちで演奏しております。でも、たくさんの方の力を借りて、我々の何倍ものスタッフの方に助けていただいて、今日のこの公演が叶ってます。その方々にも届くように大きな拍手を。そして、今この瞬間に会えているあなたも、今年はよく頑張りました。あなた自身にも何より大きな拍手を!」という渋谷の呼びかけに、チャットには拍手の絵文字が溢れ、マイクに向かって拍手を送るメンバーも本当に良い表情。
「メンバーチェンジなしで15年間駆け抜けてきました。我々は紆余曲折、山あり谷ありがすごく多いバンドだと思ってます。自分たちは10年前にもメジャーデビューして、そこから転落して10年間インディーズでやりました。足りないこと、至らないことも多いんですけど、その分、人に恵まれたことだけは何よりの自慢です。だから、こうやって会えたのも何かの縁だと思ってます。自分たちが間口を開いても、あなたが手を差し伸べてくれないことには、この時間は成立しなかったと思ってます。一度差し伸べてくれた手ですので、しっかりつかんでいようと思います。つかんだら離さないように、離れないように、離したいと思われないように、そういうスタンスのバンドでいたいなと思ってるので、安心してついてきてください。こんな形で横浜アリーナをやるとは思わなかったけど、こういう形じゃないと出会えなかった人もきっといるでしょう。大事な時間を頂戴して、今日は真正面からオンステージすることができたと思ってます。次はライブハウスで会いましょう」(渋谷)
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そうしてSUPER BEAVERが最後に奏でたのは、「人として」。バンドの支柱とでも言うべき根源的なメッセージが込められたこの曲で、激動の2020年を象徴する配信ライブを締めくくるところに、彼らの並々ならぬ想いが伺える。その壮大な名曲がたぐり寄せる感動を、総勢6名の美央ストリングスがさらに増幅! 目の前に人っ子一人いないはずのライブでも、この音楽はドームでも、スタジアムでも絶対に届くと確信させる万感のラストシーンには、自ずと胸が熱くなる。2020年=8784時間の、このたった1時間に救われたオーディエンスは、きっと少なくはなかったはずだ。
終演後には、2021年2月3日(水)に2年半ぶりのニューアルバム『アイラヴユー』がリリースされること、そして、1月15日(金)・21日(木)・27日(水)東京・チームスマイル・豊洲PITにて、有観客ワンマンライブ『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~ラクダの決着、豊洲3本勝負!~』が開催され、その全公演をSUPER BEAVERのYouTube公式チャンネルにて無料生配信することが発表。さらには、アルバムのリリースツアー第1弾として、2月3日(水)東京・Zepp Tokyoを皮切りに、『SUPER BEAVER 『アイラヴユー』 Release Tour 2021~愛とラクダ、15周年ふりかけ~』が開催されることも重ねてアナウンスされるなど、幸福な情報過多に嬉しい悲鳴を上げながら、約7万人がそれぞれの最前列で最後まで見届けた忘れられない1時間となった。
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取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=青木カズロー