初共演の別所哲也と村井良大にインタビュー! ニール・サイモンのコメディ『ローズのジレンマ』に出演

2021.2.1
インタビュー
舞台

村井良大、別所哲也

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米国の喜劇作家ニール・サイモンが晩年に手掛けたコメディ『ローズのジレンマ』が2021年2月6日(土)から東京のシアタークリエで上演される。男女の恋愛の機微と変わらぬ親子愛、誰もが抱える心の傷や人生の晩年に訪れる黄昏を上質なコメディに昇華させた傑作に、大地真央、神田沙也加、村井良大、別所哲也という豪華なキャスト陣が挑む。
  
今回、ウォルシュ役を演じる別所哲也と、クランシー役を演じる村井良大に、作品の見どころやお互いの印象について語ってもらった。

【ストーリー】
 
ローズ(大地真央)はかつて著名な作家として名を馳せていたが、5年前に最愛の恋人であり自身も人気作家であったウォルシュ(別所哲也)を亡くして以来、新作を書くことができず、破産の危機に陥っていた。助手のアーリーン(神田沙也加)は、贅沢な生活を顧みずに、負債だけが増えていくローズの経済状況を見かねて、必死にローズに新作を書かせようとするが、ローズは毎晩のように、彼女にしか見えないウォルシュの亡霊と過ごしていた。
 
ある日ウォルシュは、彼の未完成の小説「メキシカン・スタンドオフ」を若手作家クランシー(村井良大)と組んで仕上げ、印税を稼ぐようローズに提案する。なぜウォルシュがクランシーを推薦したかわからないローズと、売れない作家である自分がなぜ選ばれたかがわからないクランシー。二人の共同作業はうまくいくはずがなかった。
 
ところが、ローズの預かり知らぬところでクランシーとアーリーンはお互いに惹かれ合っていた。後日、再びローズの家に現れたクランシーは、思わぬ発想でアーリーンを驚かせる。
そして、アーリーンはローズにある告白をする――。

 

掘れば掘るほど面白く、練れば練るほどいい仕上がりに

――まず、ご出演が決まった際のお気持ちをお聞かせください。

別所:最初に大地真央さんと共演すると聞いたとき、ミュージカルだと思ったんです(笑)。けれど、作品名は『ローズのジレンマ』だと。憧れていたニール・サイモンの作品で、大地真央さんとミュージカルでなく共演する。どんなものができるか。村井(良大)さんや神田(沙也加)さんも、みんなミュージカルをやってらっしゃるので、「東宝、面白いチャレンジするな〜」という感じでしたね。

村井:初めてのニール・サイモン作品なので、どういった世界観なのかということに、最初に興味を持ちました。それから、大地真央さん、演出の小山ゆうなさん、そして、神田さんと別所さんと、僕は全員が初めましてですし、全てが新しい世界だなと思っていました。今、稽古を重ねてみて、やはりこの作品に触れられることができてよかったな、出会えてよかったなと率直に思います。

ーー別所さんは亡霊のウォルシュ役、村井さんはクランシー役を演じられます。製作発表で別所さんは「見えない役」ならではの難しさを語っていらっしゃいましたが、それぞれ、どういうところが魅力的で面白い役だと感じていらっしゃいますか?

別所:まず、登場人物が全員物書きなんですよ。物語を作る人たち。僕ら俳優も似たようなところがあるんですね。イマジネーションの世界、妄想・空想の世界に生きているところがある。村井さんもそういうときあると思うんですけど、台本をぶつぶつ言ってね(笑)。

別所哲也

ウォルシュは、二重構造のようになっていまして。ウォルシュそのものと、ローズの頭の中で美しい思い出というか、彼女のイマジネーションの中で生きているウォルシュというのが混在する。だから、意外と雄々しかったり、ローズにとってこうあってほしかったっていうウォルシュだったり、ローズが実は悩んでいることを代弁している「もう一人のローズ」になったり。今はまだ取っ散らかっているんですけど、演じながら、随分ニール・サイモン様に面白い役をいただいたなと思っております。

ただ一つ言えるのは、ローズという、自分にとって大切な人に思いを寄せて、亡くなった後もやってくる。それはローズの中の妄想かもしれないし、ひょっとしたらウォルシュの本当の思いかもしれないし。この辺がやりがいがありますね。
 
村井
:日々クランシーの役をいろいろ考えて稽古しているんですけど、その中で一つ、好きなセリフがありまして。神田沙也加さん演じるアーリーンにちょっかいを出すというか、お互いの距離が近づいてきた時に、失礼なことをクランシーがいうんですね。そうすると「あなたが持っているコーヒーを顔にかけてあげますけど?」みたいな返しをされるんです。それについて「いや、初めてじゃない、そういうのは。この眉毛、3つ目なんだ」というセリフがあるんです。

何回もやられて、眉毛が生え変わるぐらいの火傷をしたのかなと、どんな人生を歩んできたんだろうって思って。普段の僕とはあまりにもかけ離れていて……(笑)。

別所:いやいやいや、(村井さんは)プレイボーイなんですよ、プレイボーイ!

村井:何言っているんですか!(笑)……そういうところがすごくクランシーらしいと思います。(舞台設定である)1989年のアメリカのやんちゃな部分というか、それはクランシーだけかもしれないですけど、そういうところが垣間見えて、掘れば掘るほど面白く、練れば練るほどいい仕上がりになっていく作品だなと思っています。初日までまだ時間があるので、濃密な作品にしていって、初日にいいものが出せればと思います。

村井良大

お互いの印象は?「チャーミング」「好青年」!

ーー製作会見を拝見していても、4人という人数もあるかもしれないんですけど、非常にアットホームなカンパニーだなという印象を受けました。お互いの印象を教えてください。まず、村井さんは別所さんにどんな印象をお持ちですか。

村井:えっと……

別所:でかい。

村井:はい、でかいです。僕より全然でかいです(笑)。先ほどツーショットを撮った時に、カメラマンさんに「背中合わせで」と言われて、「これ高低差すごいな」と思いました。別所さんは、それこそ『デスノート THE MUSICAL』の再演(2017)の時に、お父さん役を演じられていて、(自分自身は再再演に出演したので)共演はできなかったんですけど、その映像を見させていただいたことがあって。それが、とにかくロートーンの声が響いて、ダンディで、格好良かったんですよ。だから渋い方なのかなって思っていたら、めちゃくちゃチャーミングな方でした。とても温かい方です。

僕の役クランシーは、ウォルシュのことは見えていない設定ですけど、別所さんは、本読みの時でも、結構体を使って、いろいろ遊んでくださるんです。それがすごく面白い。僕はウォルシュが見えない役だから悲しいんですけど、もし見えている設定だったら、すごく絡みたいなということを毎日思っています(笑)。

ーーでは、別所さんからご覧になって、村井さんの印象は?

別所:本当に好青年。僕も数十年前はこんなに好青年だったなぁ、って思い出します(笑)。本読みも進んで、立ち稽古も始まったんですけれど、もうね、出来上がっている。

村井:いやいや……

別所:すごいなぁって思います。数々のミュージカルもやられているし、今までなぜ共演しなかったんだろう。一緒にやれる機会があったらよかったなぁって思います。というのもね、今日のような取材じゃないと話せないんですよ!

村井良大、別所哲也

村井:そうなんですよね。

別所:そう。感染予防のために、稽古場では舞台に立ったり、本読みをしたりする時間以外は、お互いのコミュニケーションの時間を極力最小限にしなくてはいけなくて。でもね、とにかく役にまっすぐ向き合おうとしていて。すごく、真面目なふりをしているプレイボーイです(笑)。

村井:あはは。実は、僕、別所さんが舞台に立たれている時のウォルシュの身振り手振りや言葉のニュアンスをすごく見ているんですよ。なぜかというと、別所さんは、英語が堪能でいらっしゃいますし、アメリカの空気を知っている方なので。この作品は翻訳劇ですから話す言葉は日本語ですが、原文は英語ですし、別所さんがもともとの英語のニュアンスをすごく大切にされている感じがして。アメリカの匂いがプンプンしているんです。
 
別所
:つまりね、バタ臭いんですよ(笑)。

村井:バタ臭くはないですよ!(笑)そういうのって、なかなか体現できないというか。やっぱり実際の空気感を知っているからこそ、にじみ出るものがあると思うので、研究しています。

――なかなか稽古場では雑談ができないということなので……、せっかくの機会ですし、別所さんから村井さんに聞きたいことはありますか?実は村井さんのこういうところが気になっていた、などなど。

別所:何も知らないからな(笑)。何やっているの?普段。なんか悪いことしている?おうちで。

村井:なんで悪いことしている前提なんですか!(笑)。今は、つまらないぐらい家にいますよ。

別所:家で何しているの。テレビ見ていたりするの?

村井:そうですね、テレビ見たり、映画は最近見れていないんですけど、ギターやったり……。

別所:あー格好いいね!この辺が好感度をあげているね!(笑)

村井:いやいや、まだ始めたてで。幼稚なギターです(笑)。

別所:だいたい若手俳優は、ギターをやるか、カメラを持つか。どちらかが多い。

村井:別所さんもやってそうじゃないですか!

別所:うん、昔ちょっとやっていた(笑)。

村井:もう、別所さんずるいですよね。ダンディでシックな感じなのに、すごく可愛らしさを出してくるから。

別所:いや、俺がウクレレを持つとね、巨人がミニチュアを持っているみたいな感じよ。それが、良いわけ。

村井:別所さんって、身長おいくつですか?

別所:3m50cmです。

村井:そ、それはすごい(笑)。

村井良大

コロナ禍だからこそ、生の舞台で届けたいこと

――演出家の小山ゆうなさんのことを伺います。どんな印象をお持ちですか?

村井:製作会見でも言ったのですが、まだ何を考えていらっしゃるか分からないところがあって。でも、多分それは、役者ファーストな方だからだろうなと思うんです。よく「皆さん、今どうですか」ということを仰るんですね。役者が気持ち悪くない状態にしたいんだろうなと思っているんですけれども、逆に僕は小山さんが「実はこうしたいんです」というのを聞きたいなと。

別所:分かる分かる。

村井:そうなんですよ!とても気を使っていただいているのは、分かるんですけど、逆に「小山さんどう思いますか?」ということを稽古で聞いてみたいなと思います!僕自身が今まで男性の演出家とやることが多かったこともあると思うんですけど、すごく柔らかいんですよね。まだ僕は小山さんが本当に考えていることを取り出せていないような、気づけていないような気がしていて。とても気になりますね。

別所:俳優が心地よい状態でいてほしいんだろうね。「どう感じていますか?」「大丈夫ですか?」ということをよく言っている。小山さんは海外で演出の勉強されていたことも影響していると思っていて。日本の演出がそうではないという意味ではないけれど、海外の演出の人って、「Are you happy now?」とか「You're comfortable?」とか、確認しながら、自分たちがちゃんと腑に落ちる方向に持っていく感じがする。それに似ているかな。

最終的には、十中八九、小山ワールドに持っていかれるのかなという気はしているんですけど、ニール・サイモンという大巨匠の作品を翻訳もされて、演出もされて。設計図となる台本を翻訳するという作業にものすごく時間をかけられたと思うし、これから僕たち演じる者をどう動かすか。小山さんがシェフとして、どう料理してくださるのか楽しみです。

別所哲也

ーー2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、演劇界は大きな影響を受けました。2021年になっても、まだまだ状況は見通せないのですが、そういった状況も踏まえつつ、楽しみにしてくださっているお客様やファンの皆さまに一言ずつお願いします!

村井:今、非常に厳しい状況ではありますけれども、だからこそ、生でお客様の目の前でお届けすることを大切にしていきたいですし、今この作品をやる意味をしっかりと持ちながら、舞台に立てる喜びを噛み締めて、頑張りたいと思います。

別所:人間に与えられた想像力、イマジネーションは、すごく大切なもので。映画、演劇、舞台芸術はとりわけ同じ空間で同じ旅をするというか、ものすごく大切な、人間らしいイマジネーションの世界だと思っていて。この体験を、コロナ禍だからこそ、貴重な大切な、かけがえのないものとして届けたい。今回の作品は、僕はゴーストで、見えない設定ですけど、見えないことを手繰り寄せる人間の素晴らしさを、劇場という空間で、みんなで大切に表現していきたいなと思っています。お待ちしております。

取材・文=五月女菜穂 撮影=池上夢貢

公演情報

『ローズのジレンマ』
 
出演:大地真央 神田沙也加 村井良大 別所哲也
作:ニール・サイモン
翻訳・演出:小山ゆうな
製作:東宝
 
東京公演:日比谷・シアタークリエ
公演期間:2021年2月6日(土)~2月25日(木)
料金:11000円(全席指定・税込)
 
【全国ツアースケジュール】
大阪公演:新歌舞伎座 2021年2月27日(土)~3月1日(月)
お問合せ 新歌舞伎座 06-7730-2121
愛知公演:刈谷市総合文化センター アイリス 2021年3月3日(水)
お問合せ キョードー東海 052-972-7466(10:00-18:00)
 
公式サイト https://www.tohostage.com/rose/  
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