『ファウスト』と『セビーリャの理髪師』が藤間蘭黄の手で日本舞踊に！ 日本舞踊の可能性 vol.3『禍神』『徒用心』が「Streaming+」にて配信

日本舞踊家の藤間蘭黄が芸術監督を務める「日本舞踊の可能性 vol.3」が、2020年11月3日（火・祝）、東京・浅草公会堂にて行われた。ゲーテの「ファウスト」を日本舞踊化した『禍神（まがかみ）』、ロッシーニのオペラによって名高い「セビーリャの理髪師」を翻案した『徒用心（あだようじん）』による創作長唄二本立てだ。満席御礼となった1日限りの公演の模様が、2021年1月20日（水）15:00から1月26日（火）23:59までイープラス「Streaming+」にて配信される。

『禍神』（2009年初演）はゲーテの長編戯曲「ファウスト」全二部作を35分の日本舞踊作品に翻案したもの。悪魔メフィストーフェレスを主人公とし、蘭黄がファウスト博士、マルガレーテ、魔女たち、天使たち、王、ヘレネーなどの役柄を一人で踊り分けていく。原作のエッセンスを凝縮し、テンポのいい展開で魅せていくので飽きさせない。シンプルな袴姿でさまざまな登場人物に変化していく妙味を味わえるだろう。作曲・作調の杵屋勝四郎、作調の藤舎呂英、照明の足立恒、美術の河内連太との絶妙なコラボレーションにも注目したい。

『徒用心』はボーマルシェによる風刺戯曲のコミカルな物語、ロッシーニの軽妙なオペラ・ブッファの味わいを江戸を舞台に翻案した作品で、「洗練された馬鹿馬鹿しさ」を日本舞踊で表現している。2012年に「蘭黄の会」で初演され、『禍神』同様に杵屋勝四郎が作曲・作調、藤舎呂英が作調を手がけた。全員が群舞も踊り、さまざまなキャラクターにも扮する趣向で、一人の踊り手が何役も演じ分けることができるという日本舞踊の面白さが生かされている。初演時から蘭黄と西川箕乃助、花柳寿楽、花柳基、山村友五郎という五耀會の同人たちによって上演されてきたが、今回は藤間蘭翔（有馬林之進）、花柳喜衛文華（彦郎）、花柳楽彩（お梅）、藤間鶴熹（萬蔵）、藤間聖衣曄（幡土十郎）という気鋭の女性たちによって踊られるのが新機軸。所作の一つひとつから華やかな香りが立ち上がってくる。

蘭黄は令和2年度日本芸術院賞受賞に続いて、令和2年秋の褒章で紫綬褒章を受章。江戸時代から続く「代地」藤間の継承者として古典に取り組みながら、『信長』をはじめとする創作によって、まさに「日本舞踊の可能性」を広げている。2020年には大作『GOSAMARU-勇者たちの物語-』をはじめとする数々の舞台を上演する予定であったが感染症拡大の影響を受けて延期・中止となった。そうした中で、「いま実現可能な」取り組みとして大事なレパートリーである『禍神』『徒用心』を披露し、国内外に向けて動画配信する。各作品の前に桂吉坊によるナビゲートが入る。そして特典映像付きだ。蘭黄の心意気あふれる珠玉の舞台をじっくりと楽しみたい。

藤間蘭黄 コメント

他ジャンルとのコラボ、さまざまな題材など、日本舞踊には沢山の可能性があります。

18世紀フランスの劇作家ボーマルシェの『セビーリャの理髪師』。ロッシーニのオペラで有名なこの喜劇の日本舞踊版が『徒用心』です。5人の女性日本舞踊家がカラフルに表現します。

ドイツの文豪ゲーテが一生涯かけて綴った戯曲『ファウスト』。この長大な作品を、ひとりで踊りきる創作長唄作品が『禍神』です。メフィストーフェレス＝禍神と契約を結んだファウスト博士の波乱万丈な生涯を、禍神の視点で描きます。時空を超えてひとりで何役も表現できる日本舞踊の真骨頂をご覧ください。

開幕前には落語家、桂吉坊さんがわかりやすく筋立てを解説。フランス喜劇やドイツ戯曲の世界が鮮やかに、そして立体的に現れます。

細かい動きから、微妙な目の表情までしっかり捉えている映像は、様々なPVから「はやぶさⅡ」の記録まで手掛ける気鋭の編集の手により命を吹き込まれます。

劇場の客席では決して観ることのできない新たな日本舞踊の姿。これもまたもうひとつの「日本舞踊の可能性」です。是非お楽しみください。

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