変幻自在な音と表現で海外からも注目を浴びるシンガーソングライター・Doul 【『SONAR×SPICE』特別コラムVol.1】
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Doul
FMラジオ局J-WAVE(81.3FM)とSPICEがタッグを組み、3月15日(月)に配信する注目のニューカマー・アーティストのショーケースライブ『SONAR×SPICE ~J-WAVE SONAR TRAX SHOWCASE LIVE with SPICE~』。本稿ではその注目のラインナップから、Doulのこれまでとその音楽性を紹介する。
遥か彼方の目的地をじっと見据えているかのような視線。そこには揺るぎない志の強さを感じさせるからこそ、挑戦的な姿勢も滲んでいる。2020年に若干17歳で音源デビューしたDoulの表情を目の当たりにしたとき、最初に抱いた印象はそういうものだった。さらに驚きだったのは、彼女の極めてフォトジェニックなビジュアルや、楽曲のすべてにも、あの視線と同様の志の強さや挑戦的な姿勢が横たわっていたことだ。
福岡県出身のDoulは、デビュー作となる2020年9月のデジタルシングル「16yrs」を皮切りに、3週連続で「BYE HOUSE」、「Don’t」と立て続けに楽曲を発表。それぞれに趣向のまったく異なる音楽性でシンガーソングライターとしてのポテンシャルを知らしめながら、とりわけ「16yrs」は全世界90カ国、約9000のプレイリストに取り上げられることになった。これまでのDoul楽曲はすべて自主レーベル=Dooからリリースされているが、大きなプロモーションを受けることなく楽曲の力だけで爆発的に拡散した点が現代的だ。
デビュー前のDoulは、地元・福岡でストリートライブを行ったり、リアーナやエド・シーラン、ビリー・アイリッシュらのカバー曲動画をYouTubeに投稿していた。また、インスタグラムでは鮮烈な色使いやユニークなコーディネートセンスが発揮された写真の数々も公開されており、音源デビュー後は国内フォロワー数を凌ぐほどに海外のフォロワーが増えたという。ときにグラマラス、ときにエレガント、ときにカジュアルでストリートな感覚を振り撒く変幻自在のファッションは、ロックなアイテムも散りばめられていて実におもしろい。
公開されてきた動画の数々では、ギターやキーボードで弾き語りするDoulの姿を確認することができるけれども、彼女は作詞・作曲やトラック製作のみならず、自身のスタイリングや映像ディレクションなど、様々な手段で高度な自己表現を達成してしまう「完全自己プロデュースアーティスト」だ。歌詞は独学の英語で綴られており、「16yrs」では<You know, age doesn’t matter.(大事なのは年齢じゃないって分からない?)>と歌っている。音楽やファッションといったカルチャー、そして国籍や文化の違いも一跨ぎにして、彼女はまさにそのメッセージを体現するような自己表現を行なっている最中なのだ。
人気ゲームアプリ『Fate/Grand Order』のCM曲「The Golden Path」や、国内外の大型フェスでも活躍する気鋭音楽ユニット=AmPmの楽曲「On The Black and White (feat. Doul)」にもボーカル起用されてきたDoulは、この2月に自身5作目となるデジタルシングル「Dearest Friends」を発表。妖艶にしてゴージャスなエレクトロスウィングの中で、彼女は邁進する夢の途上に立ち、大切な仲間たちとの絆を歌い上げている。ポスト・グランジ、サッドコア、トラップ、フューチャーベースなど、彼女のこれまでの音楽性を形容する言葉も都度変化してきたが、Doulはまたもや、新鮮な音の風景と共にしなやかなメッセージを発信してみせた。
ピュアな自己表現の意欲を燃やすことで、年齢や文化の枠組み、そして既存の価値観までも軽々と踏み越えてゆくDoulの姿は、実に不敵で痛快だ。なお昨年秋、初の無観客ショウケースライブ配信を行った彼女は、来たる3月15日、期待のニューカマーたちがパフォーマンスを繰り広げる配信プログラム『SONAR×SPICE ~J-WAVE SONAR TRAX SHOWCASE LIVE with SPICE~』への出演を予定している。
文=小池宏和